セントラルキッチンは、ファミリーレストラン、スーパーマーケット、病院、介護福祉施設、学校給食施設など幅広い業界で活用されているシステムです。本記事では、医療・介護分野の食事提供における自社運営セントラルキッチン(以下、自社セントラルキッチン)に注目。導入の利点やコストについて解説し、外注サービスとの相違点もまとめてお伝えします。
目次
病院・介護給食における自社セントラルキッチン導入の利点

セントラルキッチンの主な役割は、食材の調理や加工を一カ所に集約し、いくつもの店舗・施設に配送を行うことです。医療・介護分野では、一つの法人が複数の病院・介護福祉施設を運営していることが多く、自社セントラルキッチンを活用している事例もあります。では、「病院・介護給食を提供する」という視点からみると、自社セントラルキッチン導入にはどのような利点があるのでしょうか。
利点①各種コストの削減
近年は、各種コストの高騰化が幅広い業界に影響を与えています。診療報酬や介護報酬によって食費が決まる病院・介護給食は価格転嫁しにくいため、自社セントラルキッチンの導入がコスト削減に有効となる場合があります。参考までに、高騰が続く主なコストについて簡単にまとめてみました。
エネルギー資源価格
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年〜)に続き、イスラエル・パレスチナ問題の再燃(2023年〜)、アメリカとイスラエルのイラン攻撃(2026年〜)によって中東情勢が悪化。原油・天然ガス・石炭などの価格が上昇。日本はエネルギー自給率が12.6%(2022年度)と低いため、水道光熱費やガソリン価格などが上昇しています。
原材料費や物流費
先に挙げたエネルギー資源価格の高騰により、原材料費や物流費などが急激に上昇。食事提供に直結する食品価格(消費者物価指数)は、2020年を基準の100とした場合、2026年2月時点で129.0(生鮮食品を除外しても128.5)に達しています。
人件費
令和6年10月1日現在における日本の高齢化率は29.3%となっており、少子高齢化は急激に進行中。国が経済対策として最低賃金額を引き上げ、企業も人手不足対策として積極的に賃上げを行う傾向にあることから、人件費は増大しています。
参考:日本のエネルギー自給率は1割ってホント?|資源エネルギー庁 (2025年1月8日更新)
利点②人手不足や職員高齢化への対策
人手不足や高齢化が進めば、「経験が浅く不安が大きい」「経験はあるが体力に自信がない」「一人当たりの負担が大きく、効率が悪い」という厨房職員も出てくるでしょう。自社セントラルキッチンを活用すれば、負担軽減や万一の事故防止、業務効率の維持につながります。

利点③衛生管理体制の徹底
厨房業務では、HACCPに沿った衛生管理が義務付けられています。業務を一カ所に集約すれば、衛生管理体制も整えやすくなるでしょう。ただし、セントラルキッチンでの事故発生時は被害が拡大しやすいという点を理解しておくことも重要です。
利点④味・品質の安定化と食事満足度向上への期待
味や品質が管理しやすいことも大きな利点。施設や調理員によってバラつきやすい味を均一化し、品質管理を徹底することができます。工夫は必要ですが、自社運営であれば現場との連携がとりやすく、治療食や介護食、禁食などに対応できるケースもあるでしょう。このような点から、患者や利用者の食事満足度向上も期待できます。
利点⑤BCP対策
病院・介護福祉施設では、自然災害やテロ発生時にも重要な業務が続けられるよう、BCP対策が求められています。患者と利用者の健康維持にかかわる病院・介護給食は、緊急時にも継続して提供できるかどうかがポイント。セントラルキッチンでクックチル(保存期間目安:5日間)やクックフリーズ(保存期間目安:約8週間)を採用していれば、BCP対策の一環として役立つ可能性もあります。
自社セントラルキッチン導入コストの主な試算項目

自社セントラルキッチンを導入する場合、大きく分けて初期費用と維持費用がかかります。各費用に関して、事前に確認すべき主な項目をまとめてみました。
初期費用(イニシャルコスト)
自社セントラルキッチンを開設する場合、少なくとも500万〜2,000万円以上の初期投資が必要といわれています。主な試算項目として、次のようなものが挙げられます。
- 土地・建物
- 厨房設備(採用する調理方式に対応した厨房機器など)
- 内部システム(受発注管理、在庫管理、衛生安全管理、配送管理など)
- 配送車
こうした項目のほか、建設や各種工事に関連するコストの追加も想定されます。また、具体的な金額は、セントラルキッチンの規模によって大きく変わります。初期段階におけるトラブルを防ぐには、事前にできるだけ細かく見積もりを出し、綿密な計画を立てることが重要です。
維持費用(ランニングコスト)
自社セントラルキッチンの運用がはじまると、次のような維持費用がかかります。
- 人件費
- 食材費
- 水道光熱費
- 設備メンテナンス費
- 配送費
こちらも規模によって金額は異なりますが、利益が出なければ初期費用を回収することができません。導入を成功させるには、実際の食数なども考慮した運用状況をシミュレーションし、費用対効果が期待できるか見極めなくてはならないでしょう。
自社セントラルキッチンの導入コスト削減策

先にお伝えした試算項目から分かるように、自社セントラルキッチンのすべてを一から準備する場合には莫大なコストがかかります。本項目では、初期費用や継続費用の削減につながるポイントをまとめてみました。
居抜き物件・スケルトン物件の活用
土地の選定も含め、一から設計すれば希望通りのセントラルキッチンが完成するでしょう。しかし、かかったコストの回収に追われるのも事実です。厨房設備や内装が再活用できる居抜き物件、改装の自由度が高いスケルトン物件などを活用すれば、初期費用は大きく削減することができます。
厨房設備のリース契約や中古購入
小規模のセントラルキッチンであれば、厨房設備をリース契約にするのもおすすめです。月額などで小分けに支払いを行うため、初期費用は抑えられます。また、中古品は新品よりも安く購入できますが、定期メンテナンスなどのアフターサービスがありません。そのリスクを理解した上で検討するといいでしょう。
DX化の推進
業務効率化や省人化につながるDXの推進は、継続費用の削減に効果的です。従業員の様子をIoT技術により可視化し、無駄な動きを改善することで労働時間・人件費を削減した事例があります。このほか、膨大な量の紙帳票をデジタル化したり、時間も労力もかかる献立作成をAIで行ったりする方法もあります。
補助金制度・税制優遇制度などの活用
自社セントラルキッチンであれば、「新事業進出補助金」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などが申請できるかもしれません。また、適用期限は2026年度末までとなりますが、「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」が活用できる可能性もあります。
自社運営が厳しい場合は外注サービスの検討もおすすめ

自社セントラルキッチンの導入が難しい場合は、外注サービスを検討するのもいいでしょう。本項目では、病院・介護福祉施設で活用する場合についてまとめました。
委託サービス
委託サービスは、全面委託と部分委託の二通りがあります。
全面委託
病院・介護給食の業務を、まるごと専門業者に任せます。厨房職員の採用・育成、献立作成、調理、配膳など幅広く対応してもらうことができますが、「自社の人材育成につながらない」「コストがかさみやすい」「要望が伝わりにくい」などのデメリットがあります。
部分委託
業務の一部のみを専門業者に任せるため、スムーズな連携体制が求められます。連携がうまくいかないとミスが発生するリスクもあります。全面委託に比べて低コストで要望も通りやすくなりますが、病院・介護福祉施設の職員には多少の負担がかかります。
配食サービス
配食サービスは、業者によって提供内容が大きく異なります。弁当から惣菜まで幅広いラインアップがそろっていたり、朝昼晩のうち一食のみでも対応可能だったりする業者も多くみられます。ただし、高コストになりやすい点はデメリットです。また、配送地区が限定されていることもあるため、丁寧に比較検討したほうがいいでしょう。
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