ナリコマの取り組み

日常を届けたい
妥協しない非常食開発

商品企画部 早川英斗

商品企画

新しいノウハウを作り上げる 「非常食」という未知の世界への挑戦

ナリコマとしては初となる非常食の開発を担当しました。開発のきっかけは、東日本大震災や台風などの近年多発する災害です。これまで災害で運送網が麻痺したときには、社員がトラックでご契約施設に届けるなど、なんとか人力でしのいできました。しかし、約1700施設とお客さまが増えたことで、配送エリアも拡大。人力の限界とともに、非常食の必要性が浮き彫りになりました。「どんな状況であっても、ナリコマのお食事を食べて笑顔でいてもらいたい」。そんな強い想いから開発がスタートしましたが、高齢者食や介護食は経験豊富な私たちも、非常食は全く未知の世界。どうすれば常温で長期保存できるか?どういった設備と環境が必要なのか?非常食に必要なレトルト加工のノウハウを、0から作り上げる必要がありました。

災害時の支えになるお食事だからこそ 「献立」も「美味しさ」も妥協しない

災害時はあらゆることが日常とは違い、気力や体力を消耗してしまいます。そんな環境下では、心と身体を回復させるためにもお食事は不可欠な要素。開発コンセプトを「日常食としての非常食」とし、災害という非日常を感じさせないお食事提供を目標にしました。
こだわったポイントは「献立」と「美味しさ」。災害時にライフラインが復旧する目安が3日間と言われており、朝昼夕の「3食3日間セットの献立」を開発することに決定。朝食は朝食らしく、夕食は夕食らしく、食べ合わせや色のバランスにも配慮しながら、普段のお食事と大差なく食べられる献立を組み立てました。そして「美味しさ」は、ナリコマとして妥協できない部分です。一般的に非常食は美味しくないイメージがありますが、非常食”だから”と残念な気持ちになって欲しくない。いい意味でイメージを裏切り、非常食”だけど”美味しいと感じてもらえる味を目指しました。とはいえ、開発は一筋縄ではいきません。レトルト加工には加熱が必要ですが、熱を加えすぎると味が落ちてしまう。さらに、長期保存の経年によっても味が劣化していきます。これらをクリアして美味しい非常食を完成させるには、最低限の熱で加工し、出荷段階でどれだけ味の質を高められるかが重要です。細かく条件を変えてテストを繰り返し、経年劣化も熱処理で時間経過を再現しながら、一つずつ課題を解決していきました。
また、普通食の非常食開発を進める中、ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の開発も並行して進めていきました。レトルト加工の技術に介護食のノウハウを加え、高齢者さまに寄り添ってきた私たちにしかできない「介護食の非常食」も誕生させることができしました。急ピッチな開発でしたが、一切妥協することなく、ナリコマらしい非常食を世に送り出せたと思っています。

当たり前の毎日を、当たり前に届ける 改めて気づいた食品会社の使命

非常食の開発を通じて感じたのが「お食事は生きることそのもの」だということ。お食事を作るには、水や火、電気などの環境が必要です。しかし、非常時にはそれらがなく、手に入れることも難しい。裏を返せば、人は大変な手間を掛けて環境を整え、お食事を作っているということ。それだけの価値がお食事にはあるのだと気付きました。特に高齢者さまには、お食事を何よりの楽しみにしている方が多くいらっしゃいます。非常時だからといってその生きがいを無くすことはできませんし、非常時だからこそ「お食事という日常」を届けたい。お食事の大切さを再認識し、技術以上に大切なものを手に入れられました。今後はよりクオリティを高めて、一般家庭にも届けたいと思っています 。日本中の全世帯、全世代へ届けるのが私の目標。世界でいちばん美味しい非常食を目指して、これからも取り組みたいと思います。

プロフィール

洋食店での料理人を経てナリコマに入社。広報業務、人材育成などの業務を担当しながら、ソフト食の立ち上げといった商品開発も兼任。現在は商品企画部の責任者として、幅広い業務経験を活かした商品企画に取り組む。
※ 所属は取材当時のものです。

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