
2025年大阪・関西万博(以下、万博)にて、オフィスや商業施設などの空間をトータルプロデュースする株式会社オカムラと、医療・福祉業界で食事を届けている株式会社ナリコマホールディングスは、フューチャーライフエクスペリエンスに参加。それをきっかけに、ナリコマのステージ「キモチとキオクがつくる、未来の食と空間」にオカムラが登壇する共創イベントを実現しました。
両社が参加したフューチャーライフエクスペリエンスは、テーマとして、参加者同士や来場者との対話を通じた「共創」が掲げられています。
オカムラが掲げた「キモチのトレード」、ナリコマが掲げた「おいしいと記憶」。会社として提供できる価値をいかにして体験に落とし込むのか。
万博での「共創」を通じて得た新たな気づきと今後の可能性についてクロストークを行いました。
株式会社オカムラ
WORK MILL コミュニティマネージャー
一般社団法人demoexpo 理事
大阪府出身。関西学院大学で社会学を学ぶ。株式会社オカムラでは経理、営業事務、秘書を経て2017年6月よりWORK MILLコミュニティマネージャーに。「働く」をテーマにした共創空間・Open Innovation Biotope “Sea”を拠点に、全国の共創を創発するリーダーとして活動中。2023年6月より一般社団法人demoexpo理事に就任。街から万博を盛り上げる活動に力を入れている。
株式会社オカムラ
商環境事業本部
お店のみらいを創造する研究所:みせいくラボ
東京都出身。明治大学商学部卒。2018年株式会社オカムラに入社、小売店舗向け什器・内装の営業を担当した後、2024年4月よりお店のみらいを創造する研究所(通称 みせいくラボ)に所属。小売業に限らず幅広い業界と接点を持ちながら、未来の暮らしや小売の将来を日々探求している。個人では全国床張り協会に所属し、「床さえ張れれば家には困らない」を合い言葉に全国各地の古民家を修繕している。
株式会社ナリコマホールディングス
デジタルマーケティング室
カスタマー・リレーションズ・マーケター
京都府出身。食品メーカー、介護SaaSベンダーなどを経てナリコマに入社。YouTubeチャンネル『ナリコマタケルの医療介護チャンネル』やnote・SNS・セミナーなどを通じて、現場の気づきや想いを言葉に変えて発信している。 大阪・関西万博2025では、株式会社オカムラと「キモチとキオクがつくる、未来の食と空間」ステージ発表を行った。社内外へ情報発信や共創活動を推進している。
山岡
私たちナリコマは、医療・福祉業界に特化したサービスを提供していることもあり、もともと社外との接点が少なかったんです。一般の方を含め、ナリコマの存在をもっと広くしっていただきたいという思いが出発点でした。
岡本
オカムラには「WORK MILL」という共創活動をする組織があります。当時、私は大阪の共創空間「Open Innovation Biotope “bee”」のリーダーを務めており、「はたらく」にまつわる様々なイベントを企画実施しておりました。そんな中で共創パートナーの方から「オカムラは共創空間もあるしイベントの実績もあるので、TEAM EXPO 2025プログラムに登録し万博のプロジェクトも参画しては」とお声がけを頂いたのがきっかけで、万博に関わることになりました。2025年日本国際博覧会協会と「EXPO PLL Talks」という万博の機運醸成を図るイベントを長らくやってきた功績から催事の枠を頂き、さらに「フューチャーライフヴィレッジにも出ませんか?」ということで展示も実施することになりました。
山岡
万博に出ることが決まったものの、最初からすんなりとコンセプトが決まったわけではありませんでしたよね。
岡本
そうですね。フューチャーライフヴィレッジへの参加だったことから、「未来の〇〇」というテーマが決められていましたが、それ以外は自由。自由度が高いが故に、コンセプトを確定させることは難しかったですね。
山岡
私たちもコンセプトづくりについてはかなり悩みました。商品PRはNGという共通ルールもあったので、会社やサービスのPRと絡めた展示はできない。手探りな状態の中で、「そもそも“おいしい”ってなんだろう?」という問いかけからスタートしました。
岡本
スタートは私たちも同じです。もともと福田が所属する、みせいくラボと「なにかやりたいよね!」と話していたこともあり、今回は万博という世界中の方々が生活者として参加する展示会に相応しいテーマは何かを考え、「未来のお店」に決めました。テーマは決まったものの、どんな体験を提供すればいいのか、納得のいく答えがなかなか導き出せませんでした。「未来」というとロボットやARといったものを連想しがちですが、どこか腹落ちしきらない感じでしたね。
福田
コンセプトを考えはじめたころは「なにを展示するか」のような見せ方から考え始めていた部分がありました。チーム内でも「これで本当にいいのだろうか」という、もやもやした空気のまま進んでいましたね。
岡本
今思えば、「これが伝えたい!」といった事業としての思いをもっと掘り下げていくべきでしたね。はじめての経験だったこともあり、そこに気づいたのはもう少しあとになります。
山岡
私たちは「食」を提供しているので、「おいしいとはなにか?」考え続けましたね。こんなに「おいしい」について考えたことはありません(笑)。結果、「おいしい」とは単なる味覚だけでなく、誰と、いつ、どんな状況で食べたかという「記憶」と強く結びついているのではないか、という仮説にたどり着きました。
福田
自社サービスの提供価値を深掘りしたんですね。
山岡
そうですね。
食事を提供するということは、その人の人生の物語の一部を支えることでもある。おいしいには、食べる人の記憶とそこに結びつく人の感情(気持ち)が強く結びついているんですよね。この機会に自分の「おいしい記憶」を可能な限り思い浮かべてみたのですが、やはりそこには人や気持ち、その場の空間、いろんなものが「おいしい」をつくっていると気づかされました。
オカムラさんは「キモチをトレードする」というコンセプトに決定されましたよね。「キモチ」を物々交換するといったアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか。
岡本
アイデアを練り直し、もうこのタイミングで決めないと間に合わない!という時期に社長にプレゼンを持っていったのです。そうすると社長から『これ、本当に君たちがやりたいことなの?』という、本質を突く問いを投げかけられました。この一言が大きな転機となり、私たちは一度すべてを白紙に戻して、プロジェクトとゼロから向き合い直すことになりました。
山岡
一度、作り直しになったのですか。
岡本
はい、完全に振り出しに戻りましたね。そこから、クリエイティブ面でご協力いただいたパートナー企業とも、お互いに忖度なしで議論を繰り返していきました。「買い物って、何でするんだっけ?」という原点に立ち返ったとき、「誰かを想って買い物する」というキーワードが出てきて。そこから「買い物の本質は“キモチの交換”である」というコンセプトが生まれたんです。
山岡
それは食も同じですね。「誰かを想って食事を届ける」ということは「想いや気持ちを届ける」ということだと思います。一度立ち止まって、自分たちの事業の本質は何かを徹底的に掘り下げたからこそ、ブレないコンセプトが生まれたのだと感じます。
山岡
「おいしいは記憶からつくられる」という抽象的なテーマでしたから、来場者にどう伝えるかが次の課題でした。そこで、「おいしい」にまつわるストーリーをつくり、イラストとともに表現することにしたんです。
岡本
物語をイチから作られたのですか?
山岡
はい、社内にクリエイティブがいるのですべて内製でつくりあげました。
ナリコマの展示「未来のおいしいをつくるのは、だあれ?」
岡本
すごいですね!オリジナリティ溢れるチャレンジです。
私たちも、モニターやパネル展示のようなありきたりな形は避けたいと思っていました。「キモチそのものが商品になったら面白いんじゃないか」というアイデアを、実際の買い物の動作を通して体感できるような設計を目指しました。
山岡
「オツカレーライス」「この前はご麺」といった商品たちですよね。私も実際に伺って体験しましたが、商品にすることで気持ちを伝えやすくなるというか。「どんな気持ちを伝えようか?」というのがとても楽しかったですね。
オカムラの展示「キモチキオスク」
山岡
コンセプトが固まってからも、本当に来場者に受け入れられるか、不安はありましたか?
福田
もちろんです。特に私たちは会期序盤での参加だったので、万博そのものへの期待感はそれほど高くなかったように思えました。ですので、「本当に人が来るんだろうか」「自分たちだけが盛り上がっているんじゃないか」と、ずっと不安でした。スタッフも多めに配置したんですが、暇になってしまうかもしれない、と。
岡本
でも、蓋を開けてみれば、予想をはるかに上回る数の方々に体験していただけました。最終的に7日間で7,000人近くの方が訪れてくださいました。ナリコマさんのブースも、すごい盛況でしたよね。
山岡
はい、私たちも配布物としてカードを10,000枚用意したんですが、結果的には足りなくなるほど多くの方々に足を運んでいただきました。展示体験について考え抜いたからこそ、これだけの反響があるのは本当にうれしいことですよね。
福田
「一度体験して楽しかったから、今度は家族を連れてきました」と、笑顔で再訪してくださる方がいらっしゃったんです。特に印象的だったのは、海外からお越しの方に「この万博で、一番対話を大事にしているブースだと感じた」という言葉をいただいたことですね。国境を越えて、私たちの想いが伝わったようで本当に嬉しかったです。
山岡
私たちも「ここまで対話を大事にしているのはアメリカ館とここだけだよ!」といったコメントをいただきました。やはり、対話といった体験要素は来場者にとっても新鮮だったのかもしれません。
福田
そのとおりだと思います。
当社のブースで起こった印象的な話があります。若い2人組が「ずっと一緒にいよう」という商品を交換しあっていたので「幸せそうですね」と伝えたら、「今日が初日になりそうです」と言われて。
山岡
すごい!カップルが生まれたんですか。
福田
はい、私も驚きました。嬉しそうに帰っていかれた様子は忘れられません。この「キモチのトレード」をきっかけに、来場者の方々の関係にポジティブな変化が生まれる瞬間に立ち会えました。
山岡
まさに、「キモチのトレード」ですね。
私たちのブースでは、イラスト中心の展示だったからこそ、来場者の方々と私たちスタッフとの間で自然とコミュニケーションが生まれていきました。
岡本
意図せずして「対話」が生まれたんですね!
山岡
ここは想定していませんでした。来場者同士で感想を話し合っていただきたかったので、ブースのスペースには余裕を持たせていました。蓋を開けると、スタッフや来場者といった属性に関係なく、「食の記憶」を語り合う場へと発展していったんです。
ある来場者の方が「子供の頃に食べたお好み焼きの味が忘れられず、今でも探し続けているんです」と、遠い目をしながら話してくださったことが忘れられません。その方にとって、お好み焼きは単なる料理ではなく、人生の大切なワンシーンそのものでした。
岡本
素敵です。食事の記憶は、自分の体験でなくてもなぜか共感できてしまいますよね。来場者の心に眠っていた物語を引き出す、コンセプトの持つ力を改めて感じます。
山岡
他にもたくさんの方々から食事のエピソードを聞く機会をいただきました。私たちはただ食事をお届けしているのではなく、その方の人生の物語、その1ページに深く関わっているのだと。おいしい記憶が、いかにして人の心や人生そのものを豊かにするか、改めて実感した瞬間でした。
山岡
お互い万博での経験を通じて、自社が提供している価値や今回の取り組みへの自信をいっそう深めることができたのではないでしょうか。
福田
そうですね。ブースの入口で口数控えめだった皆さんが、最後笑いあって出ていく場面を何度も目の当たりにしました。「買い物の本質は“キモチの交換”である」という自分たちのコンセプトが持つ力を確信できた、大きな手応えを感じる経験でした。
山岡
それは素敵ですね!自分たちの想いに共感いただき、それが想像を超えた反応として返ってくる。これは自分たちがいくら頭のなかで思い描いても得られないものだと思います。まさに、それこそが共創の醍醐味ですよね。
福田
本当にそう思います。オカムラはBtoBの事業をやっているので、普段は企業の方と話す機会しかありません。その先にいる人々と関わることが少なかったので、直接反応が得られたことは本当に貴重な体験でした。
山岡
私たちも同じです。自分たちの仕事が、単に食事を提供するだけでなく、その方の「人生を支える」という想像以上に大きな役割を担っているのだと、改めて胸に刻まれました。来場者一人ひとりの食の記憶を知ることができたのは、共創ならではの気づきだと思います。
福田
この対談を行っている空間は、私たちのオフィスの中で「やっちゃば」と呼んでいる空間ですが、青果市場を指す東京の方言から名付けました。競りの掛け声「ヤッチャヤッチャ」から派生したとも言われています。とりあえずやってみるか!と思える勢いが私のいる事業部の雰囲気に似ていて気に入っています。勢いそのままに、事業部を越えて一緒に何かできたらいいなと思っています。みんなが平等に交われる場があることが当たり前になって、よりたくさんの気づきや自由なアイデアが社内で生まれることを期待したいです。
岡本
万博をきっかけにその輪が一気に広がった感覚があります。だからこそ、共創的な働き方を当たり前にしたいという想いが強いです。全然違う業種の方と話しながら、すごくおもしろいアイデアがでてくるとか、もっと自分を出していいんだとか。そういう働き方を広げていきたいと思いますね。
山岡
まさにそうですね。万博をキッカケに外に出ていろんな人に会う機会が圧倒的に増えました。よりたくさんの方々と対話する機会を作り、共創していきたいですね。たくさんの方と対話し、気づきを得ることで、より伝えられる幅も広がっていくと思います。共創活動を通して、社会に提供できる価値を大きくしていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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