高齢になるとかむ力や飲み込む力が衰えやすくなり、それまで食べていたものが食べられなくなるケースも増えてきます。食事を提供している病院や介護施設では、うまく食べられない高齢者のために介護食を準備しなければなりません。今回は、味や見た目が普通食に近いきざみ食とソフト食の違いを解説。ミキサー食なども含めた介護食の主な種類もまとめてご紹介します。
また、病院や介護施設ではスマイルケア食、ユニバーサルデザインフードの活用もおすすめ。記事後半では、それぞれの詳細もお伝えします。食形態についての基本をしっかりと学び、介護食を安定して提供できる体制を整えましょう。
目次
きざみ食とソフト食の違いとは
はじめに、きざみ食とソフト食の違いを表で比較してみましょう。
|
比較項目 |
きざみ食 |
ソフト食 (軟菜食、軟食、やわらか食と呼ばれることもある) |
|
適合する人の咀嚼・嚥下レベル |
かむ力は弱っているが、しっかりと飲み込める |
かむ力と飲み込む力がどちらも弱っている |
|
調理のポイント |
食材を5mm〜2cmほどに細かく刻む |
食材を歯ぐきや舌でつぶせる程度までやわらかくする |
|
味や見た目 |
普通食に似ているため、食欲減退が起こりにくい |
|
|
注意点など |
・食材を刻む手間と時間がかかる ・口の中でバラバラになりやすいため、ソフト食よりも誤嚥の可能性が高い |
・食材ごとに調理する必要があり、時間がかかる ・ほぼかまずに食べることができ、誤嚥しにくい |
ソフト食ときざみ食の大きな違いは、食材の状態と飲み込みやすさ。かみやすさについては、どちらも共通して重視する部分といえるでしょう。この特徴については、記事後半で取り上げるスマイルケア食やユニバーサルデザインフードとも関連しています。
介護食の主な種類をみてみよう

介護食は、普通食が食べられなくなった人でもきちんと食事ができるよう工夫されています。バリエーションが豊富で、さまざまなケースにあわせて選べることが魅力です。最初に挙げたきざみ食とソフト食も含め、主な種類をみてみましょう。
|
介護食の種類 |
調理の基本 |
咀嚼・嚥下のレベル |
見た目・食感 |
注意点・調理のポイントなど |
|
きざみ食 |
・食材を約5mm〜2cmに細かく刻む |
・咀嚼する力が弱っている |
・介護食の中では、最も普通食に近い |
・飲み込む力が弱い方は、誤嚥の可能性がやや高まる |
|
ソフト食 (軟菜食) |
・食材が歯茎や舌でつぶせる程度にやわらかくする |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・きざみ食は難しい |
・見た目は普通食に近い |
・細かく刻んだり、すりつぶしたりする手間はない ・食材ごとに分けて、丁寧に調理する必要がある |
|
ムース食 |
・食材をミキサーにかけ、固め直す |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・口の中で食べ物がまとまりにくい |
・固める際の形によって、おいしそうな見た目に仕上げることができる |
・ソフト食の一種として扱われることも多い ・少しでも咀嚼できる場合の選択肢として有効 ・調理の手間がかかる |
|
ミキサー食 |
・食材(料理)をミキサーにかけ、なめらかなポタージュ状にする |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・きざみ食やソフト食が難しい |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・水分量が多ければ、適宜とろみをつける ・彩り良く仕上げると食欲増進につながる ・攪拌前の食材(料理)について、実物や写真などで説明する |
|
ペースト食 |
・食材をミキサーにかけ、しっかりとすりつぶす |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・ミキサー食では誤嚥する可能性がある |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・基本はミキサー食と同じだが、水分量が少ない ・ペースト状で粘度があるため、誤嚥しにくい ・彩り良く仕上げると食欲増進につながる ・攪拌前の食材(料理)について、実物や写真などで説明する |
|
ゼリー食 |
・食材をミキサーにかけ、ゼラチンや寒天などで固める |
・咀嚼する力がかなり弱っている |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・型抜きして、もともとの食材に似せると食欲増進につながる |
|
流動食 |
・固形物をこして、液体状にする(経口摂取の場合) |
・咀嚼する力と飲み込む力だけでなく、消化する力も弱っている |
・液体状 |
・具体例として、具材なしのスープ、重湯、ヨーグルトなどがある ・経管摂取する場合の流動食は、専門的な栄養剤などが選択される |
調理スタッフによる品質の違いをなくすには
介護食は調理する人によって品質(仕上がり)が変わりやすいため、病院や介護施設で提供する際には特に注意しなければなりません。「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」は、スタッフ同士で共有できる基準としてよく使われています。記載内容に従って準備することで、介護食の品質安定につながります。
スマイルケア食とユニバーサルデザインフード

スマイルケア食とユニバーサルデザインフードは、介護食の種類をわかりやすく分類したものです。どのような基準で分けられているのか、詳しくみておきましょう。
スマイルケア食とは
スマイルケア食は、市販されている介護食品の新しい呼び名です。平成25年2月から農林水産省主導で検討が進められ、のちに呼び名が決定しました。咀嚼・嚥下のレベルに適した食品が選べるよう、スマイルケア食識別マークを以下のように設定し、表示しています。
「青」マーク
かむ力と飲み込む力に問題はないものの、健康維持のために栄養補給が必要な人向けの食品です。
「黄」マーク
かむことが難しい人向けの食品です。「黄2(かまなくてよい食品)」「黄3(舌で潰せる食品)」「黄4(歯茎で潰せる食品)」「黄5(容易にかめる食品)」の4段階に分かれます。
「赤」マーク
飲み込むことが難しい人向けの食品です。「赤0(ゼリー状の食品)」「赤1(ムース状の食品)」「赤2(ペースト状の食品)」の3段階に分かれます。
スマイルケア食の考え方では、栄養価や食べやすさだけでなく、味のおいしさや見た目の良さ、入手しやすさなどへの配慮も重要です。治療食や病院食、カプセルや錠剤などの特殊な食品は対象外となっています。
ユニバーサルデザインフードとは
ユニバーサルデザインフードは、日本介護食品協議会が考案した規格です。ソフト食やミキサー食などの介護食を咀嚼・嚥下のレベルによって区分し、ロゴマークと一緒に表示。「区分1(容易にかめる)」「区分2(歯茎で潰せる)」「区分3(舌で潰せる)」「区分4(かまなくてよい)」の4つに分けられています。
また、食べ物や飲み物に混ぜて使えるとろみ調整食品にもユニバーサルデザインフードのマークを表示。とろみの強さが4段階で表示されており、食べる人にとって最適な食品選びをサポートします。
飽きのこないおいしさが魅力!ナリコマの介護食

ナリコマの献立サービス「すこやか」は、和食から洋食まで幅広く、365日日替わりで楽しんでいただくことができます。旬の食材や郷土料理なども取り入れ、食本来の楽しみを損なわず、毎日飽きのこないおいしさを追求しています。もちろんアレルギーの個別対応も可能です。
介護食は、普通食と同じ献立でご用意。食材の食感まで楽しめるソフト食、味や香りにこだわったミキサー食、つるんと食べやすいゼリー食からお選びいただけます。量が少なく低栄養になりがちなミキサー食とゼリー食には、エネルギー源となるMCTオイルを使用。よく取り上げられる介護食の問題点も、しっかりカバーしています。
また、クックチルやニュークックチルに対応しているため、コストを削減しながら厨房のオペレーションもスムーズに。導入前後も充実したサポート体制で、厨房運営をお手伝いします。
介護食に関するお悩みは、お気軽にご相談ください

直営による食事提供では、手間や時間のかかる介護食への対応が負担になるケースも多くみられます。しかし、日本では高齢化が進んでおり、病院や介護施設における介護食のニーズはさらに高まるでしょう。今後も安定した食事提供を続けるには、介護食に関するお悩みも早めに解決しておきましょう。ナリコマは、どんな小さなお悩みでも丁寧にお聞きします。気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
完調品に関する記事一覧
-
食形態の変更はQOLに影響あり!工夫を凝らして高齢者の「食べる楽しみ」を支えよう
咀嚼機能や嚥下機能が低下した高齢者は誤嚥などの危険性があるため、食形態を調整した食事にする必要があります。主な種類としてきざみ食・ソフト食・ムース食・ミキサー食・ペースト食・流動食などが挙げられますが、安全性の確保と引き換えに、食欲が低下してしまうケースもよくみられます。
食欲低下は食事量の減少につながり、低体重・低栄養のリスクも高まってしまうのです。低体重・低栄養はフレイルなどを発症するきっかけとなり、QOLを著しく低下させます。高齢者のQOL向上を重視する介護施設では、単に食形態を変更するだけではなく、「食べる楽しみ」を維持する工夫も必要です。次のような点を心がけ、高齢者の豊かな食生活、QOLの維持・向上を目指しましょう。
・五感を刺激する
・本人の嗜好や希望に応える
・季節や行事にあわせた演出をする
・共食の機会を設ける -
医療・介護における高栄養食の重要性|特別食加算の対象となる嚥下調整食の課題とは
医療機関や介護施設で提供される食事は、「治療と健康維持のサポート」「日常的な楽しみの一つ」「自宅療養や在宅介護における食生活の向上」といった役割を担っています。近年では、咀嚼機能(かむ力)や嚥下機能(飲み込む力)が低下した患者や利用者に提供する嚥下調整食の重要性が再認識され、診療報酬における特別食加算の対象項目に追加されました。
嚥下調整食は食べやすさや飲み込みやすさを実現する一方、見た目の違和感などから食欲不振を招きやすく、低栄養になる可能性もあります。食事量が少ない患者や利用者には、高栄養食がおすすめです。
・カロリーや栄養価の高い食材を使う
・筋肉のもとになるたんぱく質を積極的にとる
・栄養価が下がりにくい調理方法にする
・栄養補助食品や医薬部外品を取り入れる
・一日の食事回数を増やし、必要な栄養を確保する
特に、高齢者は低栄養から体重が減少し、フレイル、ロコモティブシンドローム、サルコペニアなどを発症するリスクが大きくなります。日頃から、低栄養にならないような食生活をサポートしましょう。 -
低体重・低栄養のリスクと対策を解説!食事量が少ない高齢者のケアには嚥下調整食を活用しよう
高齢者の食事量・体重の減少は、フレイルや要介護への移行サインである可能性が高く、早期ケアが重要です。健康維持のためには、低栄養予防につながる以下のような対策が求められます。
◆生活習慣:「一日三食」「一汁三菜」を基本とし、一度に食べられない場合は分食による食事量の確保を行う。
◆栄養補給:毎日の食事における“ちょい足し”アレンジ、効率よく栄養がとれる食材の選定を心がける。
◆健康管理:歯科健診による口腔ケアを行い、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れる。
◆嚥下調整食(介護食)の活用:摂食機能のレベルにあわせた食形態に変更し、安全な食事環境を整える。
こうした日常的な取り組みによって栄養状態を改善し、自分らしくイキイキとした生活の基盤をつくりましょう。

