2025年の最低賃金の引き上げ率は、医療・介護・給食をはじめとする施設運営にも影響が出やすい水準となりました。とくに地域別の違いは人件費の見通しに直結するため、年次比較も含めて、どれくらい上がってきたのかを押さえておくことが大切です。
今回は、厚労省のデータをもとに2025年の最低賃金動向を整理し、業界ごとの影響を踏まえつつ、厨房運営の見直しといった視点も交えながら、自施設に合ったコスト対策を解説します。
目次
2025年の最低賃金 引き上げ率は何%?|全国平均と地域別のポイント
2025年の最低賃金の引き上げ率は、これまで以上に多くの業界・施設運営へ影響を与える水準となりました。特に、人件費比率の高い医療・介護・給食分野では、どの程度上がったのか、地域差はどれくらいあるかを正しく把握しておくことが、今後のコスト対策を考えるうえでは大切です。ここでは、2025年の最低賃金の全国的な動向と、地域別の特徴を整理していきます。

2025年度最低賃金の引き上げ率と全国平均の水準
2025年度の最低賃金改定では、政府が掲げる「最低賃金1,500円」を中長期目標とした流れを背景に、引き上げ幅が引き続き大きくなりました。
|
2024年度 |
2025年度 |
|
|
全国加重平均額 |
1,055円 |
1,121円 |
|
前年度からの引き上げ額 |
51円(5.1%) |
66円(6.3%) |
|
最低賃金1,000円未満の都道府県 |
あり |
なし |
全国加重平均額は1,121円となり、前年度の1,055円から66円の引き上げです。この66円という引き上げ額は、昭和53年度に最低賃金の目安制度が始まって以降、過去最高額となりました。
また、2025年度の改定により、すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えた点も大きな特徴です。これまで一部地域に残っていた1,000円未満の水準が解消され、最低賃金の底上げが全国的に進んだことを示しています。
地域別最低賃金とは?都道府県ごとの違いと確認ポイント
「地域別最低賃金」とは、産業や職種を問わず、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用される最低賃金のことです。正社員だけでなく、パート・アルバイトなど、雇用形態にかかわらず適用されます。事業者には最低賃金以上の賃金を支払う義務があるだけでなく、最低賃金の概要を作業場の見やすい場所に掲示するなど、労働者へ周知するための対応も求められています。
2025年度の地域別最低賃金を見ると、地域間の差はあるものの、全体として高水準へ引き上げられていることがわかります。
|
地域 |
2025年度 最低賃金 |
特徴 |
|
|
上位水準 |
東京都 |
1,226円 |
※全国最高水準 |
|
下位水準 |
高知・宮崎・沖縄 |
1,023円 |
※地方部でも1,000円超 |
金額だけを見ると都市部と地方部で差があるように見えますが、地方ではもともとの賃金水準が低いため、引き上げ率による影響は決して小さくありません。特に人件費比率の高い施設では、地域別最低賃金を前提にした人件費シミュレーションを行い、早めに運営体制を見直しましょう。
年次比較で見る最低賃金の上がり方|過去5年からの推移
2025年の最低賃金の引き上げ率を年次比較でみてみると、その流れが一時的なものでないことがよくわかります。施設運営のコスト対策を考えるうえでは、「今年はいくら上がったか」だけでなく、「ここ数年でどれだけ上がってきたか」を把握することも大切なのです。過去5年の最低賃金推移をもとに、引き上げ率の変化を確認していきましょう。

直近数年の最低賃金推移と引き上げ率の変化
全国加重平均で見た最低賃金の年次推移は下記のとおりです。
|
年度 |
全国加重平均額 |
前年比 |
|
2021年度 |
930円 |
+28円 |
|
2022年度 |
961円 |
+31円 |
|
2023年度 |
1,004円 |
+43円 |
|
2024年度 |
1,055円 |
+51円 |
|
2025年度 |
1,121円 |
+66円 |
この表から、最低賃金の引き上げ額は年々拡大していることがわかります。特に2023年度以降は40円を超える引き上げが続いており、最低賃金の引き上げが一時的な物ではなく、継続していくことを前提とした動きになっています。このように年次比較で見ると、施設運営において人件費の増加は毎年避けられない形で積み重なっていることがわかります。
2025年に引き上げ幅が大きくなった理由とは
2025年の最低賃金で引き上げ幅が拡大した背景には、複数の理由があります。まずは、物価高騰への対応です。食料品や光熱費などの高騰によって生活コストが上昇する中で、最低賃金の水準を引き上げ、働く人の生活を支える狙いがあります。
また、もう一つの理由は人手不足の対応のためです。少子高齢化により労働人口が減少している中、最低賃金の引き上げは、人材を確保・定着させるために必要とされています。このような背景をふまえると、2025年度の引き上げも例外的な調整ではなく、中長期的な賃上げの流れの一部として捉える必要があるのです。
今後も最低賃金が上がり続けるとどうなる?
政府は中長期目標として、最低賃金の全国平均を、2020年代に1,500円にすることを掲げています。実現には、年平均で7%以上の引き上げを継続していく必要があるとされており、最低賃金は今後も上昇し続けることを前提に考えなくてはなりません。最低賃金の引き上げが続くと、毎年の人件費上昇を前提にした経営判断が必要になり、単年度ごとの賃上げ対応だけでは吸収しきれない場面も増えていきます。
医療・介護の給食業務など、制度の都合上すぐに価格転嫁ができない分野においては、最低賃金が上がるたびに対応するのではなく、上がり続けることを前提に「耐えられるしくみを整えること」が、施設運営において大切になってくるのです。
最低賃金引き上げが業界・施設運営に与える影響とは
最低賃金の引き上げは、人々の生活を支える大切な取り組みである一方で、業界や事業の形によっては、運営面での負担が大きくなるという側面もあります。最低賃金の引き上げによって、業界全体や医療・介護・給食といった施設運営にどのような影響をもたらしているのかを整理しましょう。

人件費への影響が大きい業界
最低賃金の影響を受けやすい業界の一つが、食料品関連業種です。調理や製造、配膳など、人の手で行う作業が多く、パート・アルバイトの方が多く働いている現場では、最低賃金の引き上げが人件費に反映されやすい傾向があります。
最低賃金が上がることで、人件費が増え、最終的には商品やサービスの価格についても影響が及ぶといった流れになりやすいため、食料品分野を中心に物価上昇が続いている原因となっています。最低賃金の引き上げは、気づかないうちに業界全体のコストを押し上げていきます。
医療・介護・給食現場で起こりやすいコスト増の実態
最低賃金の引き上げに加えて、物価高騰による食材費・光熱費の上昇も同時に進んでいます。人件費と原材料費の双方が上昇し、施設運営コストは二重に押し上げられているのが現状です。
特に給食分野では、嚥下調整食などの特別食がコスト増の要因になりやすいとされており、最もコストの高い嚥下調整食と普通食では、1日あたりの食材費に約76円の差があるとの報告もあります。提供数が増えれば増えるほど施設全体の負担は大きくなってしまいます。
このような背景の中で最低賃金が引き上げられていくと、今までと同じやり方では、コストの増加に追いつかなくなってきているのが実情です。

賃上げ対応だけでは限界がある理由
最低賃金の引き上げに対して、賃金を引き上げて対応すること自体は避けられませんが、それだけで問題を解決するのは難しいことです。医療・介護分野では、報酬や利用料が制度で定められており、一般の企業のように柔軟に価格の変更ができません。最低賃金が見直されるたびに人件費が増加し、処遇改善加算だけでは最低賃金の上昇幅に追いつかないケースも増えているのです。
その結果、人件費の増加が続くことで収支にゆとりが持ちにくくなり、物価高の影響も重なって、施設運営の負担が少しずつ大きくなっていくことがあります。また、最低賃金に近い職員と中堅層との賃金差が小さくなり、現場での説明や調整に悩む場面が増えてくることも考えられます。最低賃金の引き上げに対しては、コスト構造そのものを見直すことが、今後の施設運営において欠かせないのです。
ナリコマのクックチルで進めるコスト対策|人件費上昇に備える厨房運営
厨房は、施設の中でも人の動きや作業時間が集中しやすいため、人件費や人手不足といった変化の影響が、比較的早く表れやすいです。厨房の運営の見直しは、施設全体のコストや人員体制を整えるきっかけになります。

厨房は運営の変化が表れやすい場所
厨房業務は、早朝からの稼働や時間帯ごとの作業集中が起こりやすく、一定の人数がいないと回らない工程も多くあります。欠員が出た場合の影響が大きいため、他の業務よりも人手不足や人件費の変化を感じやすいです。
厨房業務は下処理、配膳準備など工程が細かく分かれているため、誰か一人の負担が増えると、全体の流れに影響が出やすいといった特徴もあります。そのため、厨房は変化の影響が見えやすく、改善の効果も感じ取りやすい場所だといえるでしょう。
厨房の仕事の組み立て方を見直すという視点
人件費対策というと、「何人必要か」「どこを削るか」といった視点になってしまいがち。しかし、実際には仕事の組み立て方そのものが、人の動き方を左右していることもあります。
厨房業務では食形態の変更などで作業が複雑だったり、特定の人に頼る形になっていたりすると、どうしても負担の割合が偏ってしまいます。工程を整理して、役割を分けなおすことで、同じ人数でも少し余裕をもって業務を回せるようになるでしょう。人件費対策は人を減らすことではなく、人の動きが無理なくつながる形を整えることが大切なのです。

クックチルで変わるこれからの厨房の考え方
仕事の組み立て方を考え直す際の選択肢の一つとして、ナリコマの「クックチル」があります。クックチルは調理にかかわるすべてを施設内で行うのではなく、調理工程はセントラルキッチンに任せ、厨房ではチルド状態で届いた食事の再加熱・盛り付けが主な作業になります。
厨房内での作業がシンプルになるため、経験やスキルに頼ることなく、毎日の厨房業務に臨むことができます。調理経験の浅いスタッフや高齢スタッフでも無理なく作業できる設計になっているため、業務の負担を大きく減らせます。
最低賃金の変化に慌てず向き合える厨房運営へ
最低賃金や人件費をめぐる状況は、これからも少しずつ変わっていくと考えられます。そのたびに慌てて対応するのではなく、変化があっても落ち着いて向き合える状態をつくっておくことが、現場の安心につながります。クックチルは、そうした「慌てずに向き合える厨房運営」を支えるしくみなのです。
コスト対策にも有効なナリコマのクックチルについては、こちらの記事もご確認下さい。
最低賃金の引き上げ率を踏まえて自施設に合ったコスト対策を考えよう

コスト対策を考える際は、その場しのぎの対応ではなく、日々の運営を無理なく続けられる形かどうかを、判断の軸にしていくことが求められます。人件費や業務負担は、すぐに大きく変えられるものばかりではないからこそ、現場の状況に目を向けながら、少しずつ整えていくことが大切です。
その一つの選択肢として、ナリコマのクックチルのように、業務の組み立て方そのものを見直す仕組みを検討してみるのもよいでしょう。最低賃金の動向を踏まえながら、自施設にとって無理なく、長く続けられる運営の形を考えていくことが、これからの施設運営につながっていきます。
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