急速に高齢化が進む近年では、介護サービスのニーズが高まっています。本記事は、そんな介護サービスに関連する新システム、LIFEについて詳しく解説。LIFEの概要と共に、加算の算定や食事満足度の向上にもつながる基本的な活用方法をまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
LIFE(科学的介護情報システム)の概要
LIFEは、厚生労働省が運営する科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence)の略称です。令和3年度介護報酬改定のタイミングで運用が始まりましたが、それ以前はVISITとCHASE、2つのシステムがありました。各システムの概要については、次の通りです。
◆VISIT(monitoring& eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care)
2017(平成29)年度から運用が始まったシステムです。通所・訪問リハビリテーション事業所を対象としたもので、利用者の興味・関心、リハビリテーションの計画書や会議録などのデータを収集。介護施設・事業所に対してフィードバックを行います。
◆CHASE(Care, HeAlth Status & Events)
2020(令和2)年度から運用が始まったシステムです。すべての介護サービスを対象としたもので、高齢者のADL(日常生活動作)、栄養状態、口腔・嚥下機能、認知機能などのデータを収集。ほかにも、既往歴や服薬情報、家族構成など、幅広いデータを取り扱います。VISITと同様、介護施設・事業所に対してフィードバックを行います。

LIFEは、VISITとCHASEを統合したシステムとして誕生しました。介護施設・事業所がデータを提出し、フィードバックを受けることで業務改善やサービスの品質向上につなげることを目的としています。そして同時に、科学的介護の推進を図る役割も担っています。では、科学的介護とは一体どのようなものなのでしょうか?
科学的介護とは
科学的介護と類似するものとして、医療分野におけるEBM(Evidence Based Medicine/エビデンスに基づいた医療)が挙げられます。日本でEBMが浸透してきたのは1990年代以降。「最新の文献などから科学的根拠のあるデータを参照し、それに基づいた最適な医療を提供する」というのが基本的な考え方です。信頼できるデータのみを活用するのはもちろんですが、医師の経験や勘などにも頼りません。これを従来の医療と組み合わせることで、患者にとってはより安心できる医療が受けられるようになるのです。
科学的介護では、EBMと同様、信頼できるデータを活用します。参照先は文献ではなく、介護施設・事業所において蓄積されてきた利用者のさまざまなデータです。従来の介護は、職員の経験や主観などに基づいたケアが行われてきました。しかし、現在はLIFEで分析されたデータを閲覧し、ケアの効果や利用者の変化などを客観的に見ることができます。このような科学的介護には、以下のようなメリットがあります。
メリット①介護サービスの品質向上
先にもお伝えしている通り、データを有効活用することで的確な業務改善が期待できます。客観的な視点が生まれるため、介護施設・事業所においては利用者にどのようなケアが適しているのか判断しやすくなるでしょう。また、利用者は希望に近い介護サービスを探しやすくなります。
メリット②介護サービスの標準化
科学的介護を取り入れると、ケアの内容や品質が職員によって大きく変わることがありません。介護サービス全体が標準化されるため、経験が浅い職員でも、ある程度の自信を持って安心して働くことができます。もちろん、安定したサービスを受けられるようになれば、利用者の不安や不満も少なくなるでしょう。
メリット③職員の負担軽減
利用者の状態や状況は一律ではありません。最適なケアをするためには、さまざまな要素を考慮しながら個別で内容を決める必要があります。その際、利用者のデータがまとまっていれば業務が効率化され、職員の負担軽減になるでしょう。
メリット④利用者理解の向上
介護施設・事業所が質の高い介護サービスを提供するには、利用者や家族に詳細を説明して納得してもらうことも重要です。ケアの効果などをデータで示しながら丁寧に説明すると、理解度も高まるでしょう。
LIFEのフィードバックデータ活用方法
LIFEのフィードバックデータを効果的に活用するには、PDCAサイクルを回す必要があります。PDCAサイクルは「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」という4つの工程を繰り返し、業務効率化や生産性向上を図るものです。これにLIFEの仕組みを当てはめてみると、以下のような流れになります。
Plan(計画)
どのようなケアを行っていくのか、計画書を作成します。目標を設定し、達成するための計画を立てます。目標や計画に具体性がないと達成状況が確認しづらくなってしまうため、できるだけ詳しく決めておくことが重要です。
↓
Do(実行)
作成した計画書に沿ってケアを行います。LIFEにさまざまなデータを提出する必要があるため、実行後は丁寧に記録を残しておきます。
↓
Check(評価)
LIFEでは、施設・事業所単位と利用者単位のフィードバックデータを閲覧することができます。複数人の職員を集めて内容を確認し、気付いた点を共有。現状を把握するだけでなく、同じサービスを提供する他施設・事業所と比較し、自施設・事業所がどのような位置にいるのか認識することも大切です。
↓
Action(改善)
LIFEのフィードバックデータに基づき、計画を見直します。これまでのケアによる効果を確認しながら改善点や修正点を検討し、利用者の意向や状況も踏まえて新たな課題を整理します。

フィードバックデータは、介護サービスの正確性をみるものではありません。自施設・事業所の現状を把握し、継続的に改善するための判断材料として提供されています。これを共通認識として職員に浸透させることも重要です。
また、PDCAサイクルをスムーズに回すためには、以下のような取り組みで組織の一体感を高めることも有効でしょう。
- 介護施設・事業所としての方針やビジョンを職員に周知する
- 各職員の専門知識、多角的な視点を生かせるような情報共有体制を構築する
食事満足度の改善にも役立つLIFEのデータ
LIFEでは、食事摂取量や食事介助の状況、口腔の健康状態など、利用者の食生活に関するデータも収集・分析します。そのため、フィードバックの内容が食事満足度の改善にもつながります。
例えば、口腔に関する課題が多く、食事摂取量が減っている状況が明確になった場合、「歯科衛生士による口腔ケアをより細やかに実施する」「経口摂取で楽しく食事ができる環境を整える」などの対策をとることができます。利用者にとっての食事は、健康維持のためにも欠かせません。満足度を上げ、利用者が積極的に食事をするようになるメリットは大きいといえるでしょう。
科学的介護推進体制加算の算定によるメリット
科学的介護推進体制加算は、LIFEに関連する加算の一つです。その名の通り、科学的介護が広く浸透していくよう、LIFEの運営開始にあわせて新設されました。算定要件はサービスによって多少異なりますが、基本的には利用者のADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況などのデータ提出が必須項目として含まれます。対象となるサービスの種類、利用者1人当たりの加算単位は以下の通りです。
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施設系サービス |
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介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設 入所者生活介護 |
(I) 40単位 (II) 50単位 |
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介護老人保健施設 介護医療院 |
(I) 40単位 (II) 60単位 |
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通所・居住系・多機能系サービス |
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通所介護 地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護(予防含む) 特定施設入居者生活介護(予防含む) 地域密着型特定施設入居者生活介護 認知症対応型共同生活介護(予防含む) 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 通所リハビリテーション(予防含む) |
40単位 ※1区分のみ |
科学的介護推進体制加算には、次のようなメリットがあります。
収益の増加
利用者数が100名と仮定した場合、科学的介護推進体制加算を取得すると月に4万〜6万の増収となります。LIFEの活用が算定要件として含まれる加算はほかにもあるため、同時に算定できるものがあれば、さらなる増収が見込めます。

利用者満足度の向上と信頼関係の構築
科学的介護推進体制加算を取得すると、先に述べたような介護サービスの品質向上や標準化が期待でき、利用者満足度の向上につながります。また、利用者が安心感を得るようになれば、介護施設・事業所との信頼関係も構築しやすいでしょう。
職員のモチベーション維持
科学的介護は業務効率化につながるため、毎日ケアを行う職員のモチベーションも維持しやすいでしょう。科学的介護推進体制加算の取得に向けてデータ活用を積極的に行うようになれば、労働環境が改善され、離職率の低下も期待できます。
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