高齢者の低栄養状態は以前から課題であり、介護施設でも低栄養予防が日頃から意識されています。それに伴い、管理栄養士の役割も重要視され、需要の増加とともに能力を十分に発揮できる環境が望まれています。しかし、介護施設の人手不足により、管理栄養士の確保も容易ではありません。また、病院や介護施設では厨房の人手不足が深刻化しており、厨房業務の増加などにより管理栄養士の重要な業務である栄養管理に十分な時間を割けないケースも見られます。
近年では、このような人手不足の課題解決にAIを活かす取り組みが見られるようになってきました。管理栄養士の業務に役立つAI搭載のシステムもさまざまに開発されています。そこでこの記事では、AIによる栄養管理サポートに注目し、献立提案AIや栄養価計算AIの機能、AI機能が個別最適化メニューに役立つ可能性について解説します。AI機能の導入事例や未来像、AI機能を活用する際の注意点も踏まえながら、その他の解決策として実現しやすい厨房省人化と外注活用についてもまとめました。
目次
栄養管理サポートに役立つAI機能
管理栄養士の業務を助け、栄養管理サポートに役立つAI機能はさまざまにあります。ここでは、業務のベースに関わる献立提案AIや栄養価計算AIの機能やシステム、AI機能が個別最適化メニューに役立つ可能性を解説します。

献立提案AI:指定した条件で献立作成をサポート
病院や介護施設では、患者さまや利用者さまに合わせてさまざまな条件を満たす食事を提供しなければなりません。さらに、マンネリ化を防ぎながら毎日3食の献立を作成するのは、手作業の場合大きな負担になりがちです。献立提案AIは、献立作りに必要なさまざまな条件を設定すると、条件を満たす献立を自動で作成してくれます。例えば、次のような条件の指定が可能です。
- エネルギー
- 塩分量
- その他の栄養価
- 原価
- 過去の献立や食材の重複回避
- 調理方法
ただし、指定できる条件は個々のシステムによって異なります。献立提案AIに特化したサービスだけでなく、病院や介護施設の給食業務に役立つ給食管理システムと連動しているものもあるため、給食管理全体を見据えて活用できるシステムを導入することも一つの方法です。
献立提案AIは、給食向け以外に、医療機関で自宅での食事指導を行う際に活かせるアプリや、一般向けの普段の献立作り用に開発されたアプリなど、幅広い場面で活用されています。アプリによって機能は異なりますが、その時の体調や抱えている疾患、減塩、好みの食材、アレルギーのある食材、といった詳細な条件を指定して献立を提案してもらうことが可能です。

栄養価計算AI:食品画像から素早く栄養素を算出
食品画像やメニュー内容から、AIが栄養素を自動で分析するシステムも開発されています。このような機能が搭載されたシステムやアプリを使用すれば、食事ごとの栄養価計算を効率化できるでしょう。すでに、栄養素を自動解析・計算できるアプリは一般的に普及しつつあり、日々の栄養管理やダイエットなどに活かされています。栄養素の算出だけでなく、食事や運動の記録ができたり、歩数管理ができたり、設定した目標に沿ったアドバイスをもらえたりと、アプリによって機能はさまざまです。
病院や介護施設で利用する場合は、法人向けや管理栄養士向けに開発されたシステムやアプリを導入するとより使いやすいでしょう。栄養価計算機能が給食管理システムに組み込まれていることはよく見られるため、給食管理システムを選ぶ際に献立作成機能とあわせてチェックしておくと役立ちます。
個別最適化メニューはAI機能で可能?
献立提案AIの中には、アレルギーや禁食を指定できるものもあります。こうした機能を活用することで、個々の患者さまや利用者さまに適した献立をより作成しやすくなるでしょう。食べる方に合わせて内容を調整する作業は、わずかなミスが重大なトラブルにつながる危険性があるため、業務効率化によってより注意深く取り組むことができます。
システムによっては、アレルギーや禁食の食材指定をするとアラートで教えてくれる機能を備えているものもあります。また、高血圧の方向けなどのように、個々の疾患に合わせてより適した献立の提示が可能なシステムもあります。今後のAI機能の発展によって、個別最適化メニューの充実が期待できるでしょう。
栄養管理サポートAIの導入事例と未来像
栄養管理サポートに役立つAI機能の導入では、献立作成に生成AIを活用したシステムを利用し、業務効率化につなげた事例があります。管理栄養士の業務を8~9日から数時間に短縮できる見込みがあるため、大幅な時間の節約につながるでしょう。

すでに活用されているアプリでも、AI画像解析機能の解析精度を向上させるなど、AIを搭載したシステムは成長し続けています。また、栄養管理サポートシステムと連動し、療養計画書の作成や管理まで行えるシステムなど、総合的なサービスにつなげている例もあります。今後、栄養管理サポートAIが発展することで、自社施設により適したサービスの開発や、幅広い業務効率化が期待できるでしょう。
参考:PR TIMES 高齢者向け配食サービスの献立作成に生成AI活用 2025年
PR TIMES 『あすけん』、食事内容を共有できる新機能が登場!~生成AI活用で「AI画像解析機能」もパワーアップ~ 2025年
PR TIMES AI献立提案・栄養管理アプリ『おいしい健康』医療機関向け生活習慣病管理DXソリューション「Kakaris(カカリス)」をリリース 2024年
栄養管理にAI機能を取り入れる際の注意点
栄養管理にAI機能を取り入れる際には、デメリットや注意点についても把握しておくことが大切です。栄養管理に限らずAIの活用全般に言えることですが、AIが生み出す回答は必ずしも正確とは限りません。例えば献立提案AIでは、一見整っているように見える献立内容でも、細かく確認すると全ての条件を満たしていない場合があります。AIを用いた画像解析機能についても、解析結果が正確でないケースについて挙げられることもあり、AI機能はまだ発展途上にあります。

そのため、AIが生み出した回答を責任を持って提供するには、扱う人間側のスキルも欠かせません。精度の良いシステムやアプリを選定するとともに、AIの回答をそのまま利用するのではなく、根拠を確認しながら提供する姿勢が求められます。また、システムの導入にはコストがかかるため、運用面の計画も必要です。
厨房省人化と外注活用による解決策
厨房の人手不足により、管理栄養士の業務が調理に偏ってしまうことは珍しくありません。そのため、厨房の人手不足を解決することが、結果として栄養管理業務のサポートにつながる場合があります。下記は、厨房省人化のための解決策の例です。
- 自動調理機器や調理ロボットを導入し、調理工程を自動化する
- 調理方式にニュークックチル方式を採用し、シフトを削減する
- 他社の完全調理済み食品を活用する

近年では、高性能の調理ロボットもさまざまに開発されており、厨房業務の効率化に期待が寄せられています。調理方式にニュークックチル方式を導入すると、あらかじめ盛り付けまで行い、食事の提供時に自動で再加熱できるため、早朝や遅番のシフト削減が可能です。また、自施設の厨房で調理を行わず、他社の完全調理済み食品を導入すれば、温めるなどの簡単な調理作業で食事を提供できます。調理工程そのものを外注することで、厨房の負担は大幅に軽減されるでしょう。
ナリコマには病院食・介護食に特化したクックチル食品があります
ナリコマには、介護・福祉施設や慢性期病院向けの365日日替わり献立「すこやか」と、急性期や回復期病院向けの28日サイクル献立「やすらぎ」があり、環境に合わせてお選びいただけます。いずれの献立も、普通食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食のご用意があるため、介護食にも対応可能です。

食事摂取基準に従った献立作成や、ミキサー食やゼリー食にはエネルギーアップにつながるMCTオイルを使用するなど、低栄養予防も心掛けております。また、病院さまの場合は院内基準の治療食への対応も可能です。よりメリットの多い食事提供に向けて導入後も継続的にサポートいたしますので、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
クックチルに関する記事一覧
-
完調品とクックチルを比較!介護施設や病院に最適な給食運営モデルとは?
完調品(完全調理済み食品)の活用やクックチル方式の導入は、介護施設や病院の給食運営で注目される方法です。いずれも厨房の人手不足対策などの課題解決に役立つ一方、目指す方針によって適する運営モデルは異なります。
この記事では、それぞれの特徴を解説しながら、完調品とクックチル方式を活用した給食運営モデルを比較します。また、完調品とニュークックチル方式を組み合わせることで、さらなる業務効率化も可能です。自施設に最適な給食運営を検討する際にぜひご参考ください。 -
厨房業務と最低賃金の関係とは?調理師不足時代に求められる食事提供体制の見直しと外注化
最低賃金の引き上げが続く中、厨房業務を抱える現場では人件費の上昇が避けられない課題となっています。とくに調理師不足が慢性化する医療・介護・給食の現場では、「人を確保したいが、人件費が合わない」という悩みを抱える施設も少なくありません。
今回は、厨房業務と最低賃金の関係を整理しながら、最低賃金の上昇が続く中での課題と、食事提供体制の見直し、そしてナリコマのクックチルを含めた外注という方法について解説します。 -
2025年最低賃金 引き上げ率の最新動向|2025年の地域別・年次比較を厚労省データから読み解く
2025年の最低賃金の引き上げ率は、医療・介護・給食をはじめとする施設運営にも影響が出やすい水準となりました。とくに地域別の違いは人件費の見通しに直結するため、年次比較も含めて、どれくらい上がってきたのかを押さえておくことが大切です。
今回は、厚労省のデータをもとに2025年の最低賃金動向を整理し、業界ごとの影響を踏まえつつ、厨房運営の見直しといった視点も交えながら、自施設に合ったコスト対策を解説します。
人材不足に関する記事一覧
-
障がい者施設における給食の役割とは?提供時の注意点もあわせて解説
現在、障がい者向けの施設はどのくらいの数あるのでしょうか? 厚生労働省が令和6年10月1日に行った「社会福祉施設等調査」によると、障がい者支援施設等の数は約5,400施設で、在所者は約15万人だそうです。
給食はすべての施設が提供しているわけではありませんが、障がい者の方々にとって非常に重要な要素の一つ。今回の記事は、そんな障がい者施設における給食を取り上げます。給食の役割や提供時の注意点、運営方法などを詳しく解説。ぜひ最後までお読みください。 -
介護・厨房の職員ケアに必須のストレスマネジメント研修やメンタルヘルス研修!心理的安全の向上を目指す研修を設計しよう
「精神的ケアに関する研修」は、介護老人福祉施設では必須の法定研修ですが、その他の介護事業所やさまざまな職場で役立つ研修テーマです。この記事では、介護・厨房現場におけるストレスマネジメント研修の必要性や心理的安全の向上との関係に触れながら、ストレスマネジメント研修の構造や内容、メンタルヘルス研修との連携、介護現場での研修設計のコツなど、職員ケアに役立つポイントをまとめました。
-
法改正で改革が進む医療現場!課題多き厨房業務の負担軽減策とは
医療現場はこれまでも数多くの課題と向き合ってきましたが、今後はさらに過酷な状況となる可能性が指摘されています。本記事では近年における医療現場の状況を解説し、政府が推進する医療制度改革の一部をご紹介。また、病院の業務改善において注目される厨房にも焦点を当て、課題や負担軽減策などをまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みください。




