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医療現場はこれまでも数多くの課題と向き合ってきましたが、今後はさらに過酷な状況となる可能性が指摘されています。本記事では近年における医療現場の状況を解説し、政府が推進する医療制度改革の一部をご紹介。また、病院の業務改善において注目される厨房にも焦点を当て、課題や負担軽減策などをまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みください。

さまざまな改革が進む医療現場

人手不足や負担増加、医師の偏在が問題に

近年の医療現場にとって重要な課題といわれているのが、人手不足と業務負担の増加です。高齢化が急激に進む日本では、医療系サービスの需要が高まっています。第一次ベビーブームに生まれた団塊世代が高齢者になる2025年、第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年は、総人口の内訳が大きく変化するタイミング。どちらも高齢者が一気に増えることで、医療費が増大したり、医療現場が逼迫したりするといわれているのです。

人口統計の数値には、高齢化社会の現状が明確に表れています。「令和7年版 高齢社会白書」によると、令和6年10月1日時点の総人口は1億2,380万人。そのうち、65歳以上人口が占める割合(高齢化率)は29.3%となっています。昭和25年時点で5%未満だった高齢化率は少しずつ上昇し、昭和45年には7%、平成6年には14%を超えました。平成17年には世界各国と比べて最も高い水準の20.2%を記録し、その後も毎年のように上昇を続けています。

 

このような高齢化とあわせて大きな問題となっているのが、少子化の進行です。令和6年の出生数は初の70万人割れとなり、それまで9年連続で減少してきた出生率も過去最低の1.15を記録しました。婚姻件数も過去10年間で15万組余り減少していることから、少子化は今後も続いていくと考えられています。ところが、働いて日本を支える若者が少なくなれば、現在のような社会の仕組みが維持できなくなるかもしれません。

 

医療機関において特に問題となるのは、増加する高齢者からの需要に応えられなくなる可能性があるということ。人手不足になると従来の医療提供体制が崩れ、医療従事者一人当たりの業務負担が増加します。さらに、負担が大きい現場は人材が集まりにくくなり、悪循環が生まれてしまうのです。

 

また、医師が都市部に集中してしまうことも問題視されています。総人口や若者の減少によって特定の地域で過疎化が進めば、適切な医療の提供は難しくなるでしょう。このような医師の偏在は地域別に限ったことではなく、救急科・外科・産婦人科などの負担が大きい診療科においても顕著であり、どちらも早期の解決が求められています。

政府が推進する医療制度改革とは

これまで、政府は医療提供体制を安定させるためにさまざまな取り組みを行ってきました。医療現場や社会の状況にあわせ、法改正・法整備も実施されています。近年特に注目を浴びているのは、あらゆる業界を対象とした働き方改革です。医療業界においては医師の負担軽減に向けた取り組みが中心となっており、時間外労働の上限規制や業務分担につながる多職種連携などが進められています。

2016年度に策定された地域医療構想は、都道府県が需要と供給のバランスをとり、地域住民が最適な医療を受けられる環境づくりに向けての動きです。2024年に公表された新たな地域医療構想では、今後訪れる超高齢化社会に対応できるよう、外来・在宅医療や介護分野の充実も目指しています。さらに、前述した地域・診療科による医師偏在への対策も推進中。大学医学部などと連携して医師が少ない地域・診療科に人員を配置し、誰もが安心できる医療提供体制を整えています。

 

また、AIなどのデジタル技術を活用する医療DXも重要な取り組みです。逼迫する現場の業務効率化を図ると共に、医療の質を上げ、国民一人ひとりの健康を増進する目的があります。日本の医療DXは諸外国よりも遅れているため、急務の一つといえるでしょう。

課題が多い病院の厨房業務

ここまで医療現場の現状と改革についてお伝えしてきましたが、ほかにも注目すべき点があります。病院や診療所は、治療などの医療行為だけでは成り立ちません。実際には、経理、事務、厨房、設備メンテナンス、清掃、警備、送迎といった多種多様な業務が存在しているのです。先に述べたような人手不足や負担増加は、非医療部門の業務においても問題となっています。その中でも、大きな見直しや改善を必要としているのが厨房業務です。本項目では、病院給食を提供する厨房の課題を具体的にまとめました。

①厳しい労働環境

入院患者に提供する病院給食は、治療の一環として扱われます。一日三食、決められた時間通りに配膳しなくてはなりません。朝食の準備や夕食の後片付けなどを考慮すると、勤務時間帯が早朝・深夜になることもあります。また、暑い厨房内での作業は熱中症の危険性も高く、常に注意が必要です。また、管理栄養士や栄養士は献立作成、栄養指導など幅広い業務を担っており、特に負担が大きい職種といわれています。こうした厳しい労働環境が改善されなければ、人手不足はなかなか解消されないかもしれません。

②従業員の高齢化

厨房は、若い世代の勤務希望が少ない部門です。従業員の高齢化が進むと、負担増加によって業務効率が落ちたり、体力面での不安が生じたりするかもしれません。病院給食の提供は止められませんが、新たな従業員を育成しなければ、将来的に厨房業務も回らなくなります。若い世代の雇用はもちろん、年齢を重ねたベテラン従業員の負担軽減も重要な課題といえるでしょう。

③各種コストの高騰

近年では食材費、人件費、水道光熱費など、あらゆるコストが高騰しています。ところが、病院給食の費用は入院時食事療法費制度によって決められているため、コストが増えても価格転嫁できないのです。こうした事情から、病院給食は赤字になりやすいといわれています。

 

厨房業務における具体的な負担軽減策

最後は厨房業務の負担軽減に焦点を当て、具体的な対策をご紹介します。

自動調理機やロボットの導入

自動調理機やロボットの導入は、調理業務の負担が軽くなります。作業時間が短縮できれば、調理工程全体の効率も上がるでしょう。導入費用や設置スペースの調整は必要ですが、省力化による人件費削減も期待できます。

業務委託による運営

厨房運営をまるごと委託化するのも一つの方法です。直営より費用が高くなる傾向にありますが、従業員の採用や育成、食事の衛生・品質管理、献立作成などの負担がなくなります。方針が合致する委託業者であれば、導入のメリットは大きいといえるでしょう。

完全調理済み食品や配食の活用

クックチルやクックフリーズなどの完全調理済み食品を取り入れると、調理工程をかなり省くことができます。また、そのまま提供できる配食サービスも負担削減に効果的。盛り付け作業がなくなるため、配膳の効率化にもつながります。どちらを活用する場合も、不要な調理機器や設備を処分すれば、厨房空間の省スペース化になるでしょう。

デスクワークの効率化

デスクワークも含まれる管理、事務、献立作成などの負担軽減には、業務効率を上げるAIアプリなどの活用がおすすめです。特に、管理栄養士や栄養士は職場に同職種がいないケースも多く、一人で幅広い業務をこなさなくてはなりません。効率化によって働きやすい環境が整うため、管理栄養士や栄養士の離職防止にも一定の効果があるでしょう。

厨房業務のお悩みはナリコマにご相談ください

ナリコマでは、病院給食に最適な献立サービスを提供しております。当社セントラルキッチンより完全調理済み食品をお届けするため、厨房業務の負担軽減に効果的。もちろん、介護食や治療食への展開も可能です。帳票類の作成や従業員の研修など、調理業務以外のサポート体制も充実しております。厨房に関するお悩みは、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。

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