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病院給食の現場では、慢性的な人手不足や一部のスタッフにしか対応できない業務体制など、さまざまな課題が深刻化しています。限られた人員で安定した食事提供を続けていくためには、厨房省人化や業務の効率化といった視点から、体制の見直しも必要になってきました。

そこで注目されているのが、ニュークックチルの導入です。調理から提供までの流れを見直し、再加熱カートなどを活用することで、人手不足に悩む現場でも効率的な運営が可能になります。

今回は、導入に向けた準備についてや、実際の導入事例も交えながら期待できる効果など、ニュークックチルの魅力を詳しくご紹介します。

病院給食を取り巻く課題とニュークックチルという選択肢

人手不足や業務負担の増加が続く中、病院給食のあり方を見直す動きが広がっています。省人化を実現する新たな調理方式として、「ニュークックチル」が注目されています。

慢性的な人手不足と厨房業務の負担

病院給食の現場では、長年にわたり人手不足と業務過多が深刻な課題となっています。調理師や栄養士が限られた人数のなか、献立作成・発注・調理・盛り付け・配膳・帳票管理など、多岐にわたる業務にあたっているのが実情です。

 

病院給食実態調査|日本医労連」を見ると、現場の状況がよくわかります。「勤務表の時点で超過勤務が組み込まれている」と答えた調理員は全体の約2割にのぼり、10時間を超える勤務が日常的に必要とされている職場も少なくないようです。こうした長時間労働は、まさに人員不足によって起きているものです。

 

さらに、調理スタッフの60.2%が「人員不足」を職場の最大の問題点に挙げており、「高齢化」(38.2%)とあわせて、持続可能な体制づくりへの不安が浮き彫りになっています。

 

そんな実情をふまえ、「このままの厨房運営ではもう回らないのでは」と感じながらも、根本的な改善策が見いだせずにいる施設も多いのではないでしょうか。人手不足の現場にとって、これまでとは違った調理の仕組みを取り入れることは、大きな一歩につながります。その選択肢の一つとして、注目されているのがニュークックチルです。

なぜ今「ニュークックチル」が注目されるのか

ニュークックチルとは、調理済みの食材を急速冷却したものを盛り付け、食事時間の前に再加熱することで安全・効率的に提供できる調理方式です。早朝や夕方といったピーク時間に調理員を配置する必要がないことが最大のメリットです。

特に病院では、朝食や夕食の準備がどうしても早朝・遅番の勤務に偏ってしまいがち。これがスタッフ確保を難しくしている要因のひとつになっています。ニュークックチルの導入によって、人の集まりにくい勤務時間帯を無人化でき、働き手の確保がしやすくなるほか、スタッフのワークライフバランス改善にもつながるでしょう。

 

また、調理・冷却を行ったものを再加熱して提供するこの方式は、温度管理もしやすく、HACCPへの対応が求められる現在の食品衛生管理とも相性が良いとされています。調理の効率化・人手不足対策・衛生管理の強化を一度に叶えられる調理システムという点が、ニュークックチルが選ばれる理由のひとつです。

 

ニュークックチルは厨房全体の働き方を見直したいと考える医療施設にとっておすすめな調理方式なのです。

ニュークックチルの導入はどう進める?

人手不足の現場の救世主ともいえるニュークックチル。スムーズな導入のためにも、事前準備は欠かせません。実際の導入をどのように進めて行くのか、抑えておきたいポイントをご紹介します。

導入前に確認しておきたいこと

ニュークックチル導入の成功は、入念な事前準備がカギを握っています。

 

無駄な移動を減らす動線設計を

特に注意したいのは、再加熱機器の設置場所と厨房内の動線設計。ニュークックチルにとって、再加熱機器はなくてはならない重要な存在です。既存の厨房スペースを活用する場合でも、再加熱機器のサイズや設置場所によっては、作業効率に大きな影響を与えることがあります。

 

再加熱後の食事の温度低下を防いだり、スムーズな配膳のためにも、再加熱機器の移動距離はなるべく少ないように設計します。そのほかにも、他の作業の妨げにならないような場所に設置することも考慮しましょう。

 

事前準備は念入りに

やはり一番避けたいのは、現場が混乱すること。導入開始直後からスムーズに運用するためには、再加熱機器の操作方法や注意点など、事前にスタッフ向けの説明会を行う必要があります。さらに、誰が見ても分かりやすいような手順書や運用マニュアルを整えておかなければなりません。

 

調理だけでなく、盛り付け・配膳・再加熱の工程までを、限られた時間の中でスムーズに回せるかどうかが大切です。準備の段階でどこまで整えられるかが、その後の運用を大きく左右するといってもいいでしょう。

必要な設備の導入

ニュークックチルの運用には、再加熱カートやリヒート機といった専用の再加熱機器が必要です。

 

再加熱カートの特徴

  • 移動式:キャスター付きで配膳車としても利用可能
  • 温・冷スペースの両方がある(冷菜やフルーツなども一緒にセットできる)
  • サイズは大き目
  • 価格は比較的高め

リヒートの特徴

  • 据置式:厨房内で使用する
  • 冷スペースなし
  • さまざまなサイズから選べる
  • 価格は比較的安め

 

設備導入にはコストが大きくかかってしまいますが、ニュークックチルの導入によって人が集まりにくい早朝・夜間のスタッフが不要になると人件費を抑えられるようになります。水道光熱費の削減にもつながることから、導入時にかかったコストは回収が可能です。

 

また、導入する前には厨房の広さやレイアウト、普段の作業の流れに合っているかをしっかり確認し、無理なく使い続けられるかどうかを見極めておきましょう。

ナリコマはニュークックチル導入もサポート

ニュークックチルの導入には設備だけでなく、厨房の動線や人員体制の見直しなど、入念な準備が必要です。ナリコマでは、導入前の準備から導入後の運用まで、一つひとつしっかりとサポートしています。

 

たとえば、導入コストの見積もりはもちろん、厨房のレイアウト設計や作業工程表、シフト案の作成までお手伝いが可能です。機器を入れるだけではなく、「どう運用するか」を一緒に考えていくのがナリコマの強みです。

 

さらに、導入前には職員向けの説明会や、当日の立ち上げサポートも実施しています。新しい調理方式であるニュークックチルをスムーズに馴染ませるために、調理員やスタッフ一人ひとりに寄り添った支援を行っています。

 

調理の効率化だけでなく、ナリコマは「現場がちゃんと回ること」に重点をおいたサポートを行います。

 

実際の導入事例から見る成功のポイント

実際にニュークックチルを導入した施設では、どのような変化があったのかは気になるところですよね。ニュークックチル導入前の課題や導入後の成果について、現場の声を交えてご紹介します。

人件費・物価高に対応するための省人化

ある介護施設では、物価や人件費の上昇が続く中で、厨房運営にかかるコストをどう削減するかが大きな課題となっていました。調理スタッフの確保が難しいうえに、朝早くから夜遅くまで勤務が必要な体制が続いていたため、省人化と業務の効率化が必要だったのです。

 

そこでナリコマのニュークックチルを導入したところ、調理済みの料理を再加熱して提供するこの方式によって、厨房スタッフの出勤時間を朝4時から7時半まで遅らせることができたようです。また、ニュークックチル導入前にはなかなか叶わなかった「あたたかいものはあたたかく」「冷たいものは冷たく」も叶えられるようになりました。

 

導入事例:味・水分量・栄養価が揃った介護食。ニュークックチルの活用で地域共生社会の受け皿に

 

人手不足と職員高齢化による運営見直し

慢性的な人員不足と職員の高齢化が重なり、日々の業務に疲弊感が広がっていました。朝夕あわせて約160食、昼食で400食を二カ所の厨房で調理するという過密なスケジュール。

見た目がよくなかったり、味が薄くなってしまいがちなミキサー食も、ナリコマの食事に変えると好評で、味のばらつきも少なく、介護食によって利用者の満足度も向上したそうです。

 

ニュークックチル導入前は8人だった厨房スタッフが、導入後は5人に。早出勤務も5時から6時半(炊飯がなければ7時)へと変わり、人材配置に余裕が生まれるようになりました。

さらに、以前は常に求人を出していた状況から一転し、人手が安定。採用活動の負担も大きく軽減されたのです。

 

導入事例:人手不足の厨房「何とか運営」から脱却!ナリコマのニュークックチル導入で省人化

 

省人化で実現した無理のない働き方

ニュークックチルを導入したことで、朝や夜の調理業務が不要となり8時または9時~17時の1勤務帯で人材募集ができるようになった施設もあります。

 

厨房内では、盛り付けと再加熱カートへのセッティングが主な業務となり、スタッフの負担も軽減されるように。空いた時間は帳票の作成や患者さんの栄養管理など、本来の専門業務に集中できるようになりました。高齢化が進む中でも、ニュークックチルの導入によって無理なく働ける体制が整い、人材確保にもつながっています。

 

導入事例:「やめたくない、ずっと働きたい」厨房業務のあり方が変わりました

 

病院給食のこれからを支える調理方式、ニュークックチルという選択

人手不足、スタッフの高齢化、長時間労働など、病院給食の現場が抱える課題は、一つひとつが現場の負担となり、食事提供の質にも直結してしまいます。このような課題に対して、働き方そのものを見直す手段として注目されているのがニュークックチルです。

 

ただの効率化ではなく、省人化とサービス品質の両立を実現できるからこそ、導入する施設が増えています。調理工程をシンプルにし、早朝・夜間の勤務をなくすことで、限られた人員でも無理なく運営できる体制を築けるようになります。スタッフにとっては働きやすく、患者さんにとってはほっとできるような給食体制を可能にするのが、ニュークックチルです。

 

現場を支える人が、無理をせずに長く働ける環境づくり。その第一歩として、これからの病院給食に合った形をナリコマと一緒に見直してみませんか? ナリコマでは、導入前のご相談から厨房設計、導入後のサポートまで一貫して対応しています。ニュークックチルの導入をお考えの際は、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。

新調理方式「ニュークックチル」の概要とメリット、導入事例についてもっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

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