現在、障がい者向けの施設はどのくらいの数あるのでしょうか? 厚生労働省が令和4年10月1日に行った「社会福祉施設等調査」によると、障がい者支援施設等の数は約5,500施設で、在所者は約15万人だそうです。
給食はすべての施設が提供しているわけではありませんが、障がい者の方々にとって非常に重要な要素の一つ。今回の記事は、そんな障がい者施設における給食を取り上げます。給食の役割や提供時の注意点、運営方法などを詳しく解説。ぜひ最後までお読みください。
目次
障がい者施設における給食の役割
障がい者施設の利用には「障害者総合支援法」と「児童福祉法」の二つが関係しており、基本的には成人であれば前者、18歳未満であれば後者が適用されます。まず、どのような施設があるのか簡単にみておきましょう。厚生労働省の定義に従い、種類別でまとめてご紹介します。
【施設】
障害者支援施設(施設入所支援)/地域活動支援センター/福祉ホーム/身体障害者福祉センター(A型、B型)/障害者更生センター/補装具製作施設/盲導犬訓練施設/点字図書館/点字出版施設/聴覚障害者情報提供施設/福祉型障害児入所施設/医療型障害児入所施設/福祉型児童発達支援センター/医療型児童発達支援センター
【障がい福祉サービス等】
居宅介護(ホームヘルプ)/重度訪問介護/同行援護/行動援護/療養介護/生活介護/重度障害者等包括支援/計画相談支援/地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)/短期入所(ショートステイ)/共同生活援助(グループホーム)/自立訓練(機能訓練、生活訓練)/宿泊型自立支援/就労移行支援/就労継続支援(A型、B型)/自立生活援助/就労定着支援
【障がい児通所支援等】
児童発達支援/居宅訪問型児童発達支援/放課後等デイサービス/保育所等訪問支援/障害児相談支援
上記のリストからもわかりますが、障がい者向けの施設やサービスは多種多様。「障がい」と一口に言っても、その種類や程度は個人差があるため、細やかな支援が必要とされているのでしょう。では、こうした施設における給食にはどんな役割があるのでしょうか?
障がい者にとっての給食とは
障がい者に限ったことではありませんが、食事は生命維持のために欠かせないもの。しっかり食べて栄養をとることで、健やかな毎日を過ごすことができるのです。さらに、旬の料理や行事食、郷土料理などは、季節の移り変わりや地域の食文化を楽しむことができます。また、障がい者施設においては、自分で食事をするのが難しい方も多いでしょう。栄養摂取や食の楽しみといった部分を考慮すると、給食にはとても重要な役割があるのです。
このほか、障がい者の場合は社会参加の機会が限られてしまうケースもみられます。給食があると、周りとコミュニケーションをとる機会が生まれるため、メンタルヘルスの面でも大きな意味があるでしょう。ちなみに、自立支援などを行う施設では、障がい者本人が職員と一緒に調理することもあります。また、障がい者が幼い場合は、食育の役割も。食べる前の手洗い、食事の挨拶、食べるときの姿勢など、給食は食事に関する習慣やマナーを教える機会になります。
障がい者施設における給食の役割は幅広く、利用者の状態によって変わる部分もあるといえるでしょう。
障がい者施設で給食を提供する際の注意点
給食は栄養バランスがよく、安心して食べられるのが理想的。その点以外で、障がい者施設において注意すべきことをまとめてみました。
給食提供時の注意点①利用者の状態を把握し共有する
障がいの種類や程度については、個人差が大きいところ。施設では比較的似た状態の利用者が多いケースも、まったくタイプが異なる利用者ばかりのケースもあるでしょう。さらに、高齢者施設や児童施設と違い、利用者の年代もさまざまです。
いずれにしても、まずは職員側が利用者全員の状態を把握することが大切。これは給食だけに関することではありませんが、何か大きなミスが起きてからでは遅いため、確実な情報共有の体制を整えておくべきでしょう。
給食提供時の注意点②個別対応があれば徹底する
障がい者も健常者と同じで、持病や食物アレルギーのある方がいます。また、食べるための嚥下機能や咀嚼機能に障がいがあるかもしれません。さらに、給食に関して本人やご家族の要望があることも。こういった個別対応が必要な場合、それを徹底することが非常に重要です。障がい者がいつもと違った対応をされることで、パニックに陥ってしまう可能性も考えられます。
給食提供時の注意点③乳幼児や高齢者は特に配慮する
乳幼児や高齢者の食事は健常者であっても注意しなければなりませんが、障がい者の場合はより慎重に対応すべきでしょう。特に、乳幼児や高齢者は誤嚥が起きやすい年代です。給食に使う食材の種類や調理方法を変えてみる、ゆっくり食べてもらうなど、いろいろと配慮する必要があります。
給食提供時の注意点④献立のバリエーションを増やす
障がい者施設は、長期で利用する方も少なくありません。給食の献立にあまり変化がないと飽きてしまい、食が進まなくなる可能性もあります。健康上のトラブルが起きやすくなってしまうため、献立のバリエーションを増やしたり、行事食に力を入れたりするなどの工夫をするといいでしょう。
障がい者施設の給食運営方法はさまざま
障がい者施設の給食運営方法にはいくつかの選択肢があります。ここでは、よくある三つの運営方法をまとめてご紹介しましょう。
直営
施設が給食業務全般を担う方法です。施設内で完結するので、利用者の要望に応えやすく、食材や献立も細部までこだわることができます。
ただし、衛生管理や栄養管理など業務内容が幅広いため、職員の負担が増えがちな一面も。給食業界では慢性的な人手不足や厳しい労働環境が問題視されており、管理栄養士や調理師などがなかなか集まらないという悩みもよくみられます。
委託
給食業務全般、もしくは一部を外部に委託する方法です。基本的には施設の厨房に委託先の職員が入り、調理業務などを行います。施設職員は利用者のケアなど、本来の業務に集中できるようになります。
その一方、必ず行わなくてはならないのが委託先との調整。安心して委託するためには、信頼関係を築く必要があります。また、委託費が想定以上になることもあるので、きちんと精査しなくてはなりません。
配食サービス等
完全調理済みのお弁当やお惣菜を届けてくれる配食サービスもあります。温めるだけで提供できるものが多く、手配しやすいのが特徴です。献立や食形態のバリエーションは、業者によって異なります。また、委託と同様、コスト増になる可能性があります。
障がい者施設の給食もナリコマにご相談ください
ナリコマでは、障がい者施設にもおすすめの献立サービスを提供しております。「すこやか」は、年代を問わず楽しんでいただける365日日替わりの献立が魅力。おいしさはもちろん、季節感や見た目にこだわり、行事食なども取り入れています。
食形態は常食・ソフト食・ゼリー食・ミキサー食をご用意。嚥下機能や咀嚼機能に不安がある方も安心してお召し上がりいただけます。また、調理方式は自社セントラルキッチンから完全調理済み食品をお届けするクックチル・ニュークックチルを採用。どなたでも扱いやすく、再加熱や簡単な盛り付けを行うだけで配膳ができます。
厨房運営専門のアドバイザーが丁寧にサポートしますので、障がい者施設の給食に関してお悩みの際にはぜひ一度、ナリコマにご相談ください。
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