医療・介護の現場では、人手不足や業務負担の増加が年々深刻になっています。外来患者数は増える一方で、職員の数は思うように確保できない状況が続くなか、AIを活用した業務効率化に注目が集まっていることをご存知ですか?
受付業務の自動化やスケジューリング、薬や衛生材料の在庫管理など、業務の正確さやスピードが求められる医療現場だからこそ、AIが担う役割は少しずつ広がりをみせています。今回は、医療現場で広がりつつあるAI活用の現在を解説し、実現していない未来の可能性についても整理していきます。
目次
医療現場でAIによる業務効率化が注目される理由
医療現場では、限られた人員で膨大な業務を回さなければならない状況が続いています。受付、会計、カルテ入力、物品の管理など、非医療業務にかかる手間は想像以上に大きく、これが現場の疲弊につながることも少なくありません。事務作業など業務の一部をAIに任せて、本来行うべき業務に多くの時間を使えるようにするため、業務効率化への動きが強まっています。
人手不足とDX推進の流れ
医療現場の人手不足は、もはや一時的な問題ではなくなってきています。看護職員の離職率の高さ、採用競争の激化など、どんな施設でも人が足りない状態が慢性化しており、とくに看護師や介護職といった専門職の不足は深刻。人材確保が難しいからこそ、限られたスタッフで業務をまわしていかなくてはなりません。
国が進める「医療DX」の動きが後押しとなり、ITやAIを活用した業務効率化が注目されるようになりました。オンライン資格確認や電子カルテの標準化など、医療機関のデジタル化が進むなかで、AIを取り入れて業務負担を軽くしようと考える施設が増えてきています。
AIを導入すれば、受付での待ち時間を短縮したり、書類作業を減らしたりと、限られた人員を患者ケアに集中させることができます。人を減らすのではなく、今いる人が働きやすくなるように環境を整えるための手段として、AI導入は広がりつつあります。

AI導入の目的は現場を助けること
医療現場におけるAIの立ち位置はあくまで「スタッフを支えるためのツール」。受付の自動化、問診の入力支援、予約調整の自動化、在庫の把握など、AIは事務的な作業の効率化に役立ちます。しかし、いざ導入を考えた時、費用という大きな壁があります。システムの初期導入費用に加え、毎月の利用料やサーバー運用費、人材育成にも費用がかかります。AI導入を検討する際は、コストに見合う効果が得られるかを見極めることも大切です。
また、医療の最終判断は人間の役割。AIは膨大なデータを処理するのが得意ですが、患者の感情や些細な変化をくみ取るのは医療スタッフにしかできません。「AIに任せるところ」と「人が担うところ」を上手に分けることが、導入成功のカギを握ります。
医療現場で進むAI活用|受付業務自動化・スケジューリング・在庫管理の今
AIの導入が始まっている領域は、負担が集中しやすい毎日の定型業務からです。すでに導入されている例をもとに、現場でどんな変化が生まれているのかを紹介します。
受付業務自動化で待ち時間と事務負担を削減
外来患者が来院してから診察を受けるまでの流れには、受付や問診票の記入、保険証確認に会計など、細かな作業がいくつもあります。さらに、これらの合間に電話対応をおこなう場合も。これらは医療従事者にとって本来の医療とは直接関係しない部分ですが、患者数が増えると受付作業も大きな負担になります。最近では、受付周りの業務を下記のように自動化している医療機関も増えています。
- QRコードによる受付
- タブレット問診
- 保険証の自動読取
- 診療時間外予約に対応 など
タブレット問診はiPadなどのタブレット端末を使い、患者が来院時に症状や既往歴を入力します。手書きの問診票をカルテへ転記する作業などの手間がなくなるため、患者にとっては書く手間が減り、医療機関にとっては入力ミスや書き漏れが減るというメリットがあります。受付がスムーズになれば、患者の待ち時間が短縮されるだけでなく、スタッフが慌ただしくなるピーク時間帯の負担も軽減できるでしょう。

スケジューリングAIでシフトをスムーズに
診察の予約管理やスタッフのシフト作成は欠かせない業務ですが、時間も手間もかかってしまうもの。特に医師や看護師の勤務は専門性が高いため、単純に人数をそろえれば良いわけでもありません。個人のさまざまな事情も把握しながらシフト作成を行う必要もあり、担当者にとっては大きな負担となっています。
勤務時間のバランスや医師の配置を高度に分析し、適切なシフトプランを生成してくれるシフトスケジューリングAIを活用するのもよいかもしれません。中規模以上の病院では、診療科や職種が多く、スケジューリングは人の判断だけでは追いつかない場面もあります。このようなAIを使うことで偏りのない配置や、無理のない勤務計画作成ができます。
在庫管理AIで物品や医薬品のムダを減らす
医療現場では、医薬品、衛生材料、医療機器のパーツ、厨房材料など、多種多様な物品を扱います。これらの在庫管理を適切に行うためには、使用量や発注のタイミング、余剰在庫のチェックや使用期限の確認など、多岐に渡る作業が必要です。
AIを使った在庫管理システムでは、過去の使用状況から適正な在庫数や需要数予測も可能です。また、オンライン上で発注できたり、在庫が設定数を下回ると通知されたり、正確かつ安定した在庫管理のための強い味方となるでしょう。医療現場では、直接患者に関わらない業務ほど負担が見えにくいものです。AIはその「見えない負担」の部分を静かに支える存在なのです。
これからの医療AIが拓く未来とは
AIの導入は、まだすべての医療現場で当たり前になっているわけではありません。医療にAIの導入が少しずつ浸透し始めた今、次に期待されているのは「AIと人がどのように協働していくのか」ということ。これからの医療AIの姿とその課題について確認していきましょう。
AIと人の協働が生むあたたかい現場
AIがさまざまな業務に使われはじめたとはいえ、医療現場の中心にいるのはこれからも人であることに変わりはありません。問診システムやデータ整理の自動化で診療の流れがスムーズになり、スタッフが慌ただしく動き回る時間が減ることで、落ち着いて患者と向き合える場面が増えていきます。
AIが担うのは、時間のかかる単純作業や、医療従事者の判断材料をそろえるような裏方の仕事。一方、人が担うのは、患者の不安に寄り添ったり、表情や声のトーンから状態を感じ取ったりする 「人でなければできない部分」です。AIと人の役割分担が進むことで、業務に追われて見えなくなっていた患者の様子に目が向けられたり、ほんの短い雑談を交わせたりする瞬間が増えていくようになるでしょう。AIと人がそれぞれ得意な部分を活かし合うことで、人のあたたかさをより感じられる現場になっていくかもしれませんね。

未来の医療AI
医療AIは、これからさらに活用の幅が広がると期待されています。
個別化医療と予防医療への広がり
患者一人ひとりの遺伝子情報、診療データ、生活習慣などのデータに基づき、最適な治療方針を検討することを個別化医療と言います。同じ病気、同じ治療法であっても、効果は人それぞれな部分がありますが、同じ病気であっても「患者ごとに異なるアプローチを取ること」が大きなポイントです。
今は主にがんの治療に用いられることが多いですが、個別化医療によって腫瘍の遺伝子変異の結果から効果のある治療法を選ぶことができ、がんの他にも、糖尿病や精神疾患など、多くの分野で個別化医療の応用が期待されています。また、生活習慣や既往歴などの情報から、今後どんな病気になりやすい傾向にあるかのリスク予測も可能になり、医師が生活習慣の改善や予防的な治療の提案を行うといった未来がやってくるかもしれません。
AI導入をスムーズに進めるために|今できる取り組みから始めよう
AIと聞くと「ハードルが高い」「大きな費用がかかる」というイメージを持っている方もいるかもしれません。すべてを一度に整える必要は全くありません。無理なく医療AIを定着させるには、ちいさなことから始めていくのが現実的でしょう。
コスト面の課題をどう乗り越えるか
医療AIシステムには初期費用やランニングコストがかかるため、導入に慎重になる医療機関も少なくありません。2025年の日経リサーチによる調査では、導入している施設は19%にとどまっている状況です。未導入の理由として、51%が「費用対効果がわからない」とコスト面がネックであることを挙げています。
こうした費用面のハードルは依然としてありますが、最近では院内にサーバーを置かずに始められるクラウド型のサービスが広がっており、初期費用を抑えながら運用をスタートできる選択肢もあります。また、すべての機能を一度に導入するのではなく、問診だけ・受付だけといった部分的な導入ができるプランもあるため、施設にあった使い方を選ぶこともできます。

また、新しいシステムを使いこなすためには、事務職や看護職など、関わるスタッフの研修も欠かすことはできません。最近では、オンラインで導入説明や操作方法を確認できるサービスも増えています。スタッフの経験値や施設の環境によって使いやすさは異なるため、自院に合った形で段階的に導入していくことが大切です。
AIと同じく注目される「厨房省人化」への取り組み
AIを活用した受付や在庫管理の効率化が進むと、情報まわりの業務は少しずつスムーズになっていきます。一方で、現場の負担は情報だけではなく、日々の食事づくりのような業務にも存在します。そのため、AIとは別に厨房業務をどう軽くするかという視点も欠かすことはできません。
厨房省人化の解決策として注目されているのが、ナリコマの「ニュークックチル」です。
ニュークックチルとは、セントラルキッチンで厳しい衛生管理のもと調理されたチルド状態のお食事を、提供する直前に再加熱する方式のこと。厨房での仕込みや調理作業がいらないため、食事の質と安全性だけでなく、業務効率化や厨房省人化に大きく貢献します。
AIは情報を整理し、業務の流れを整える部分で力を発揮する一方で、ニュークックチルは厨房の作業負担を軽くするしくみとして役割を果たします。医療AIとニュークックチル、領域は異なりますが、どちらの取り組みも「負担軽減によって現場を支えるしくみ」 という点では共通しています。この2つがそれぞれの得意な部分で働くことで、結果として医療機関全体の業務負担が分散され、スタッフが動きやすい環境づくりにつながっていくでしょう。
🔍ナリコマのニュークックチルについては下記をご覧ください。
AIとナリコマのクックチルで医療現場にゆとりと効率を
医療現場では、受付や在庫管理などの事務業務から、毎日の食事づくりまで、さまざまな業務が積み重なっています。AIはその中でも、情報整理や手続きの業務効率化といった目に見えない作業を支える心強いツールです。無理なく小さな業務から取り入れることで、現場の負担を少しずつ軽くしていくことができます。一方で、厨房業務のように作業負担が大きい業務では、ナリコマの「クックチル」「ニュークックチル」が効果を発揮します。調理工程を見直すことで早朝勤務の削減やスタッフ配置の調整がしやすくなり、働きやすい環境づくりにつながります。

AIとクックチルは役割こそ異なりますが、どちらも医療現場の「無理を減らす」取り組みです。情報面と作業面、それぞれの負担が軽くなることで、スタッフが患者に向き合うためのゆとりも生まれるでしょう。AI×厨房省人化という二つのアプローチを組み合わせながら、無理なく続けられる医療現場づくりを進めていきましょう。
クックチル活用の
「直営支援型」は
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急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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