2025年度の最低賃金改定により、医療業界でも負担の増加が懸念されています。以前から人件費増などにより赤字を抱える病院は少なくないこともあり、今回の最低賃金引き上げに伴い、さらなる経営の工夫が求められるでしょう。また、病院では、看護助手・看護アシスタントなどの看護補助者や、調理師・調理補助などの人手不足が深刻化しています。最低賃金改定が人手不足をさらに加速させる懸念もあるため、賃金対応と並行して人手不足対策も行う必要があります。
この記事では、最低賃金改定が医療業界に与える影響を紐解きながら、看護補助や調理補助の業務委託の活用方法、給食部門の人手不足対策に役立つ厨房改革などについて解説します。
目次
最低賃金改定が医療施設に与える負担
まずは、2025年度の最低賃金引き上げの概要から見ていきましょう。医療業界の現状を踏まえたうえでの、最低賃金改定の影響と負担内容を解説します。

2025年度の地域別最低賃金について
「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧」では、時間額1,029円(青森県)〜1,226円(東京都)の範囲で設定されており、2025年の10月から2026年の3月にかけて地域ごとに順次改定されます。今回の改定による全国加重平均の引き上げ額は66円で、時間額としては過去最高です。
2024年の産業別の最低賃金の影響率を見ると、医療・福祉の分野は4.2%とそれほど高い数値ではありませんが、一定の影響は想定されます。影響率に関しては「産業大分類×企業規模別 影響率(2024年、常用労働者計)」によると、企業規模が小さいほど影響率が高まる傾向があり、医療・福祉の分野でも同様の傾向が見られています。
病院経営に響く人件費増と赤字の課題
帝国データバンクによる「全国「病院経営」動向調査(2024年度)」では、民間病院約900法人のうち61%が営業赤字である、という結果が出ています。この結果は、前年度よりも増加しており、過去20年で最悪の水準といわれるほどです。
また、病院給食の赤字問題は以前から課題となっていました。人手不足を理由に運営形態を直営から委託に変更する施設は増加傾向にありますが、同時に委託によるコスト問題に悩む割合も増加傾向にあり、給食運営の難しさがうかがえます。多くの病院で給食部門の赤字が目立っており、人件費増は赤字の原因の一つです。

最低賃金改定が影響しやすい職種と賃金制度の見直し
最低賃金の改定は、看護補助者(看護助手、看護アシスタント、ナースエイド、ケアワーカーなど)や調理補助等の職種にとくに影響しやすいと考えられます。これらの職種は、無資格や未経験でも働くことができ、他の医療関係職種より給与水準が低く最低賃金に近い場合が多いためです。そのため、最低賃金の引き上げに伴い、給与のバランスを保つため、他の医療関係職種の給与の見直しも必要になる可能性があります。
すでに経営状況の負担が大きい場合、一律で全ての職種の賃上げをすることは難しいでしょう。そのため、賃金制度そのものの見直しが求められる場合もあります。また、支払う賃金総額の削減の必要が生じた場合には、労働時間削減のための業務効率化などの工夫も必要です。
最低賃金改定が人手不足を加速させる?
病院では、看護補助者や、調理師・調理補助などの給食業務の人手不足が深刻化しており、人材確保の課題を抱えています。独立行政法人福祉医療機構による「2025年度 病院の人材確保に関する調査について」では、74.7%の病院が職員不足に陥っていることがわかりました。同調査によると、職員確保が難しい要因の第1位は「他産業より低い賃金水準」です。一方で、2024年度と2025年度と続けて賃上げを実施した病院は約4割にとどまっています。

最低賃金改定によって給与水準が改善されれば、仕事へのモチベーション向上とともに人材確保につながる可能性があります。しかし、先述の調査結果で示されているように、2年度連続の賃上げが難しい病院も多く、最低賃金改定への対応だけでも負担になるケースが想定されます。
さらに最低賃金の引き上げが、かえって人手不足を加速させる懸念も挙げられています。以下では、最低賃金改定と人手不足との関係について解説します。
採用の競争力が低下する
採用力を高めるためには、労働条件の改善が役立ちます。しかし、最低賃金に合わせて給与水準を引き上げても、一律でベースが上がるため他施設との差別化が難しくなり、結果として採用の競争力が低下する可能性があります。そのため、最低賃金改定が人手不足の課題解決に直接つながるとは限りません。
採用力を上げるためには、より魅力的な条件の提示や働きやすい環境づくりが求められることもあり、人材確保に向けてさらなるコストが発生する可能性があります。
扶養の壁が勤務時間制限につながる
最低賃金改定により給与が上がると、働く側は扶養の壁に達しやすくなります。扶養内で働くためには、勤務時間を減らす必要があるため、その結果、全体の労働力の減少につながります。この扶養の壁による人手不足の恐れは、幅広い業種で懸念されているポイントです。
すでに人手不足の状態で、さらに従業員一人ひとりの勤務時間が減れば、全体の労働時間減少とともに一人当たりの業務負担も大きくなります。業務負担の偏りは疲弊やミスにつながり、離職を招く可能性もあるため注意が必要です。
看護助手・調理補助を業務委託するメリット
病院で従業員の採用が難しい場合には、業務委託サービスを活用する選択肢もあります。例えば、看護補助業務や調理補助業務を提供する外部企業と契約し、人材を確保する方法です。このような業務委託サービスを活用すると、下記のようなメリットが期待できます。
- 採用コストや教育コストの削減
- 人員配置の最適化
- 既存職員が本来の業務に集中できる

直接人材を募集すると、採用コストや教育コストなどが発生するため、業務委託によってこれらのコストを削減しやすくなります。一定のスキルを持つスタッフがすぐに来てくれるため、業務効率化も期待できるでしょう。しかし、外部スタッフを受け入れるための体制は別に整える必要があります。また、委託によるコストが発生するため、コスト面では総合的な検討も大切です。
給食部門の課題解決には厨房改革がカギ
給食部門の人手不足や赤字を解決するためには、厨房の環境そのものを変革させることも役立ちます。先述した「2023年 日本医労連 病院給食実態調査」の中では、残念ながら委託によるトラブルも複数見られ「人が来ない」「コスト問題」といった課題が上位に挙げられていました。給食業務をそのまま外部に委託するだけでは、根本的な課題解決が難しい点もうかがえます。そのため、委託先選びは慎重に、病院の運営方針に合う企業やサービス内容を見極めることが大切です。

給食業務を効率化させるニュークックチル
給食業務の効率化に向けて、ニュークックチルシステムの導入はよく取り上げられる方法です。ニュークックチル方式では、加熱調理した食品を急速冷却し、盛り付けまで行ってから専用機器内でチルド保存します。食事提供のタイミングに合わせて自動で再加熱し、そのまま配膳できるのが特徴です。
そのため、調理作業を効率化でき、朝夕のシフトの無人化も可能です。従来のクックサーブ方式と比較すると、人員やシフト時間を削減しても業務を回しやすいため、人手不足対策と人件費削減の両面で効果が期待できます。
完全院外調理も可能
給食の委託サービスでは、完全院外調理に対応したサービスもあります。サービス内容によって、病院側で行う作業が異なるため、給食業務をより効率化できる方法を選ぶことがポイントです。院外調理の場合、配送された食品を再加熱や盛り付けなどの簡単な作業で提供でき、システムによっては配膳のみで食事の用意が完結することもあります。盛り付け済みの食品が入った専用カートで配膳と下膳のみを行い、食器の洗浄すら不要になるケースもあります。
ナリコマの病院食対応クックチル食品
ナリコマでは、病院食や介護食に対応したクックチル食品をご用意しております。急性期・回復期病院から、入院生活が長い患者さまのいる環境まで対応できる、28日サイクルと365日サイクルの日替わり献立がございますので、飽きの来ないお食事をご提供できます。また、院内基準の治療食にも対応可能です。ナリコマのオリジナルシートでわかりやすく可視化した、コストシミュレーションのご用意もありますので、まずはご相談ください。

クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
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