病院や介護施設の厨房では、深刻な人手不足が続いています。病院や介護施設の給食には、調理や配膳だけでなく、栄養素等に配慮した献立作成、品質・衛生管理、食材の発注や在庫管理など、さまざまな業務が求められます。人手不足が続くと、個々の業務を十分に行えず、負担が積み重なって悪循環に陥る恐れがあります。衛生面でのリスクや食事の品質低下に加えて、食べ残しや期限切れ食材などによる廃棄の増加、食材の在庫の過剰または不足などのさまざまな課題を生む可能性があるため注意が必要です。
人手不足は早急な解決が難しいこともあり、近年ではAIの活用で可能な限り業務を自動化する取り組みが広がりつつあります。AIを併用し少ない人数でも業務を回せる体制を整えることで、厨房の課題解決にも役立つでしょう。本記事では、厨房の業務負担につながりやすい在庫・発注管理をAIを用いて最適化する方法に注目し、食材発注AIで厨房業務を効率化できる仕組みや、需要予測AIが廃棄ロス削減に役立つ理由などを解説します。
目次
AIの在庫・発注管理は業務効率化にどう役立つ?
AIによる在庫管理や発注管理は、病院や介護施設の厨房に限らずさまざまな業種で活用されつつあります。ここでは、AIによる在庫管理や自動発注システムによる業務効率化のポイントと、AI搭載の在庫・発注管理システムの導入事例を解説します。
AI在庫管理で在庫を最適化
AI在庫管理を活用すると、膨大なデータ分析や自動化できる業務範囲の拡大などにより在庫管理業務を効率化できます。従来の方法と比較して、業務の自動化だけでなく、在庫管理の精度向上が期待できることもメリットです。AIによるデータ分析・機械学習・需要予測などの機能が、こうした精度向上につながります。
AIシステムは学習し続けるため、より多くのデータを収集することで在庫管理の精度も向上しやすくなります。データ量が多いと人の目では見落としやすい部分も出てくるため、AIの使用により従来のミスも防ぎやすいでしょう。さらに、AI搭載のカメラを用いたシステムでは、在庫状況をリアルタイムで自動的に把握することも可能です。

AI自動発注システムで発注業務を自動化
AIを使えば、発注業務の自動化も可能です。AI自動発注システムはAI在庫管理で役立つ機能の一つで、自動発注によってさらに業務を効率化できます。例えば、リアルタイムで在庫状況を把握し、発注が必要なタイミングを自動で判断し発注作業まで行うといった流れで自動化されます。
予め条件を設定しておくと、個々の取引先への発注を自動で行うことが可能です。また、需要予測機能を備えたシステムでは、過去のデータに加えて天候やイベントなどの情報も踏まえて予測し、適切な発注につなげることができます。
AIの在庫・発注管理の導入事例
AIの在庫・発注管理の導入によって、コスト削減や業務時間削減につながった事例があります。コスト削減では、AIが提示した発注点の見直し提案を反映し、半年間で欠品を防ぎながら在庫金額を約15%削減できた事例がありました。在庫の最適化によって棚スペースの有効活用にもつながったようです。
また、AI自動発注システムの導入で、発注時間の70〜80%を削減できた事例もあります。専門性の高い発注業務だったものの、AIによる自動最適化で属人化を解消できたようです。
食材発注AIで厨房業務を効率化できる仕組み
給食の食材発注にはさまざまな課題が伴います。ここでは、給食の食材発注に伴う業務課題を改めて振り返りながら、AI自動発注システムの仕組みや利用におけるメリットとデメリットを解説します。
給食の食材発注に伴う業務課題
給食の食材発注を手作業で行う場合、下記のようにさまざまな課題が伴う場合があります。
- 発注量の過不足が生じる
- 複雑な発注作業によるミスが起きやすい
- 発注作業が属人化する
- 在庫状況を正確に把握しづらい
- イベント食に対応しづらい
- 物価上昇に伴うコストへの対応が難しい
給食の発注管理には、食材の賞味・消費期限ごとの発注や、食材の廃棄率を計算したうえでの発注など、手間のかかる業務が多いため、手作業で行う場合にミスが発生しやすくなります。
また、近年の物価高騰により、予算内で食材を調達することが難しくなっています。さらに、株式会社エス・エム・エスによる2025年の「管理栄養士・栄養士1,990人に聞いた働き方の実態調査」 では、イベント食の提供でも約50%が予算の増額が行われない環境であることが明らかになりました。
AI自動発注システムの仕組みとは?
AI自動発注システムでは、設定したルールや予測機能などを基に発注が行われます。また、発注方式には種類がありそれぞれ仕組みが異なります。
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AI自動発注システムの発注方式 |
特徴 |
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定期発注方式 |
設定した曜日などに定期的に自動で発注する。 消費のサイクルが安定している場合に効果的。 |
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発注点方式 |
設定した発注点を基に自動的に発注する。 リアルタイムで在庫数の把握が難しい場合に効果的。 |
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セルワン・バイワン方式 |
基準となる数量を設定し、売れた商品の数を基に同量を自動的に発注する。 特定の商品の需要が把握できており、大量発注が不要な場合に効果的。 |
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需要予測方式 |
さまざまなデータを基に将来の需要を予測し、最適な発注量を自動的に発注する。 需要変動が激しい場合や、より適切な発注量を見出したい場合に効果的。 |
給食の食材の発注の場合は、献立や食数、調理日が基準になることが多いでしょう。

AI自動発注システムで得られるメリット
AI自動発注システムの活用では、下記のようなメリットが期待できます。
- 発注業務にかかる時間を削減できる
- 経験を問わず作業しやすく属人化の解消につながる
- 欠品や過剰在庫を防ぎ、最適な在庫量をキープできる
- さまざまなデータの分析による最適な発注が可能
- 需要予測機能で将来の需要数に対応できる
- 発注業務の自動化で人手不足でも対応しやすい
AI自動発注システムはデメリット対策も必要
AI自動発注システムのメリットを得るためには、デメリット対策も必要です。下記のデメリットも踏まえたうえで運用体制を検討してみてください。
- システム導入や運用、メンテナンス等のコストがかかる
- システム運用のための専門知識を持った人材が必要
- AIの分析や需要予測のためのデータ収集業務がある
- イレギュラーな状況など、システムで対応できないケースが発生する
- 発注業務担当者のスキルが身に付きにくい
需要予測AIの活用で在庫最適化と廃棄ロス削減
AIで需要を予測するシステムは、さまざまな場面で活躍しています。AIによる需要予測では、過去のデータや価格、曜日、時間帯、天候、季節など、多様な情報を基に予測を立てることができます。これによって、人のスキルでは把握しきれない部分も見つけ出し、精度の高い予測を提示することが可能です。

需要予測AIは、食材の需要予測だけでなく、店舗への来客数や予約数を予測したいときにも役立ちます。食品のように賞味・消費期限がある場合はとくに、過剰な仕入れを防ぐことで、廃棄ロス削減に役立つでしょう。
また、給食の献立作成に向けて、AIが食材の価格を予測するシステムも研究されています。これにより、予算内での献立作成や、献立見直しにかかる業務量の削減が期待されています。
病院や介護施設の厨房には給食管理システムの導入が便利
病院や介護施設の給食現場では、AI機能を搭載した給食管理システムが役立ちます。AIによる献立作成機能を活用すると、栄養素や料理の状態、原価などのさまざまな条件を指定しながら最適な献立の作成が可能です。食事のマンネリ化を防ぎ、ニーズに合った食事を提供することで、残食数の減少と共に廃棄ロス削減に役立つでしょう。

給食管理システムによって機能の詳細は異なるため、自施設の需要に合う活用しやすいシステムを選ぶことがポイントです。
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