現在、給食委託は病院や学校などをはじめとする多くの施設で利用されています。
特別養護老人ホーム(以下、特養)もそのうちの一つで、超高齢社会が進む近年は需要が増加。今回の記事は、そんな特養の給食委託についてお届けします。
特養に最適な給食委託会社の選び方をポイント別に解説。
後半では、給食委託以外の選択肢についてもお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、ご参考になさってください。
目次
特養の給食では何が求められるか
特養は在宅生活が難しい高齢者向けの介護施設で、正式名称を介護老人福祉施設といいます。原則として要介護3以上の認定を受けた高齢者が対象。入浴や食事といった日常生活に関する介護のほか、健康管理や機能訓練なども行っています。ちなみに、“特別”が付かない養護老人ホームは身体的に自立した高齢者が対象。環境的・経済的に在宅生活が難しくなった高齢者の支援を行っています。特養と養護老人ホームは一見似ているようで、実は目的が大きく異なるのです。
先にお伝えしたように、特養には要介護3以上=中度〜重度の介護を必要としている高齢者が集まっています。何らかの疾患を抱えている場合もあり、身体的機能は個人差が大きいでしょう。食事に関することでいうと「大きなものは食べにくい」「歯がなくてしっかりかめない」「水も飲み込みにくい」など、嚥下機能が低下している方も少なくありません。
つまり、特養の給食は個別の細かい事情に合わせて提供する必要があるのです。献立作成では、栄養価やカロリーへの配慮が欠かせないでしょう。さらに、介護食としての食形態(ミキサー食など)を増やし、食材の下ごしらえや調理の仕方も考えなくてはなりせん。しかし、現実にはこうした業務に手が回らない特養もあります。そこで注目されているのが給食委託なのです。次の項目では、給食委託会社の選び方を詳しく見ていきましょう。
給食委託会社を選ぶためのポイント
特養で給食委託会社を利用する際、何を重視すればいいのか、成功事例から考察した選び方のポイントをまとめました。
①高度な品質・衛生管理
多くの人が口にする給食において、品質の安定や安全性の確保は最も重要といえる部分です。厚生労働省は、食品等事業者に対しHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理を義務付けています。
また、給食の品質を安定させるため委託に切り替える特養もあります。品質・衛生管理の方法については、事前に確認しておくと安心できるでしょう。
②柔軟性のあるコミュニケーション
先に述べたように、特養で過ごす高齢者の健康状態はさまざまであり、給食も個別の事情に合わせなくてはなりません。長い目で見ると、企業や担当者との信頼関係が築けることはとても重要。「厨房運営の悩みを聞き、コスト削減を実現するための提案をしてくれた」という事例もあります。些細なことでも親身になってくれる企業は、トラブルなどが生じたときも頼れる存在になりそうです。
③給食の味やバリエーションへのこだわり
ある特養の事例では「おいしいだけでなく、献立の種類も多いので高齢者の方々に喜ばれる」という声がありました。特養で豊かな生活を送ってもらうためにも、味やバリエーションにこだわった給食を提供している点は重要といえるでしょう。
④コストパフォーマンスの良さ
給食のおいしさと価格のバランスがとれていることも重要です。いくら給食の質が良くても、価格が高くて経営を圧迫するようでは本末転倒。長くお付き合いしていけるように、コストパフォーマンスも納得した上で選びましょう。
⑤サービスやサポート体制の有無
給食委託に付随するサービスやサポート体制は、企業によってさまざまです。緊急時のサポートが受けやすいことを重視し、施設の近くにある給食委託会社を選んだ事例もあります。日本では災害も多いため、非常食などの物資までカバーしてくれるのであれば、より心強いでしょう。
特養における食事の多様性
特養で提供される食事は、主に嚥下機能が弱った高齢者向けであることを前提とし、常食より食べやすいように調理するのが基本です。では、その食事内容と食形態について詳しく解説します。
ユニバーサルデザインフードの区分に沿った食事内容
日本介護食品協議会が制定したユニバーサルデザインフード(UDF)の区分は、食事内容の基準となります。各区分について、ご飯に置き換えたイメージと共に解説していきましょう。
区分①容易にかめる:普通のご飯〜やわらかご飯
ほぼ常食と同じものが食べられる人向けの区分。かむ力はありますが、かたい食材や大きな食材がやや食べづらく、飲み込む力は問題ないレベルです。食事によっては、わずかなとろみを付けることもあります。
区分②歯ぐきでつぶせる:やわらかご飯〜全粥
かたい食材や大きな食材が食べづらく、飲み込む力が少し弱っている人向けの区分。区分①に比べて食材は小さく、やわらかく調理します。とろみもやや濃厚で、とんかつソース程度です。
区分③舌でつぶせる:全粥
細かくやわらかな食材なら食べられる人向けの区分。水やお茶などが飲みづらいと感じることがあるレベルです。区分②よりも食材本来の形がわかりにくくなり、とろみはケチャップ程度になります。
区分④かまなくてよい:ペースト粥
大きさにかかわらず固形物が食べづらく、飲み込みづらい人向けの区分。水やお茶なども飲みづらいレベルです。とろみは強くなり、マヨネーズ程度のこともあります。
食形態の種類
特養では、ユニバーサルデザインフードの区分に加え、以下のような食形態を採用しています。
ソフト食や軟菜食
食材をやわらかくなるまで長時間煮込んだり、ゆでたりした食事のこと。舌でつぶせる程度が目安で、中期の離乳食に相当します。食材の見た目は常食と大きく変わらない場合も。
きざみ食
食材を5mm〜1cm程度に刻んだ食事のこと。主に、かむ力が弱っている場合に適しています。食材の見た目は変わりますが、味は大きく変わりません。
ミキサー食
調理済みの食材をミキサーにかけ、液体状にした食事のこと。かむ力も飲み込む力も弱っている場合に適しています。飲み込みづらいときは、とろみを追加。食材の見た目が完全に変わるため、彩りや味のバリエーションにも配慮する必要があります。
流動食
スープや果汁、重湯など、最初から液体状になっている食事のこと。手術後や体調不良などで食事ができない人向けのため、個別で栄養バランスやカロリーが調整されることもあります。
特養の食事では、このような細かい配慮や対応が求められるのです。改めて、給食委託会社の選び方が重要であることがお分かりいただけるでしょう。
給食委託以外の選択肢はある?
特養における給食の提供方法は、給食委託以外にも直営給食と配食サービスがあります。それぞれ詳しくご説明しましょう。
選択肢①直営給食
施設内に厨房などの給食設備を配置。栄養士や調理師などを直接雇用し、給食運営を行います。喫食者の声が聞きやすくなる一方、給食を担当するスタッフの業務量は増えがちに。また、食材は必要量のみ仕入れるため、選び方によってはコストが高くなるかもしれません。
選択肢②配食サービス
調理済みのお弁当やお惣菜を冷蔵・冷凍、レトルトパックなどで配達してもらうサービス。施設は設備費や人件費などが大きく削減できます。サービスによっては少数から注文でき、急な変更やキャンセルも可能です。
特養の給食委託でお悩みなら、ナリコマへお問い合わせください
今回は、特養における給食委託会社の選び方などを中心にお届けしました。最後の項目で給食委託以外の選択肢についてお伝えしましたが、ナリコマでは医療/介護福祉施設に向けて委託、直営、配食サービスのメリットを取り入れた“直営支援型”の厨房運営をご提案しております。
お届けする食事は栄養バランスがよく、バリエーションも豊富です。再加熱すれば提供可能なクックチルのため、現場では業務の効率化、労働環境の改善につながったというお声をいただいています。ほかにも、シフト管理や帳票作成などの厨房業務をしっかりサポート。給食のことでお悩みの際には、ぜひ一度ナリコマへお問い合わせください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
委託に関する記事一覧
-
介護施設に適した食事の提供体制とは?外部委託の選定ポイントも紹介
日本は65歳以上の高齢者人口が年々増加しており、2043年には3,953万人でピークを迎えるといわれています。一方、2024年10月1日時点で1億2380万人余の総人口は減少していく見込み。今後は高齢化率が上昇し、2070年には2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると推測されています。
こうした背景から、近年では介護福祉サービスの需要が高まっています。今回お届けする記事のテーマは、そんな高齢者ケアの拠点となる介護施設の食事。食事の重要性や提供体制について解説し、外部委託業者の選定ポイントなどもあわせてお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。 -
地域包括ケアの仕組みとは?多職種連携や課題についても詳しく解説
日本は将来的に高齢者が激増するといわれています。そんな高齢化社会を支える医療・介護・福祉のあり方として推進されているのが「地域包括ケア」というシステムです。本記事では、地域包括ケアの基本的な仕組みについて詳しくお伝えします。また、その中で重要視される多職種連携や、今後の課題や対策についても解説。ぜひ最後までお読みください。
-
週休3日制のメリット・デメリットは?導入事例から学ぶ働き方改革の今
週休3日制とは、週に4日間勤務し3日間を休日とする働き方です。「経済財政運営と改革の基本方針」においても、選択的週休3日制の導入と普及の促進が明記されました。週休3日制は従来の週休2日制とくらべると、働く人のライフスタイルに寄り添った柔軟な制度として注目されています。2025年からは東京都も独自に導入を開始し、子育てや介護といった個別の事情を抱える職員でも働き続けられるよう、働き方の選択肢を増やす取り組みが進められています。
今回は、週休3日制の基本から導入のポイント、現場でのメリット・デメリットまで詳しく解説します。
人材不足に関する記事一覧
-
その知識もう古いかも?アンラーニングで働き方をアップデート!
今の働き方にモヤモヤしているなら、まずは「忘れること」からはじめてみませんか?
日々の業務に追われながら、「このやり方でいいのか?」「もっと柔軟に働けないのか?」などと感じたことはありませんか?これまで培ってきた経験や知識は、確かにあなたの武器ですが、それが時として変化を受け入れにくくする足枷になることもあります。変化の激しい今の時代に求められるのは、ただのスキルアップではなく、「一度手放す」という選択。そこで注目されているのが「アンラーニング」という考え方です。
今回はアンラーニングの意味や必要性をわかりやすく解説し、リスキリングとの違いやビジネススキルの向上に役立つ実践事例も紹介していきます。働き方やキャリアのあり方を見直したいと感じているあなたに、きっと役立つヒントが見つかるはずです。 -
クックチルとニュークックチルの違いは?メリットデメリットを解説!
入院患者を受け入れる医療施設、高齢者をサポートする介護施設などでは、毎日何かしらの食事を提供しています。提供方法はいろいろありますが、今回取り上げるのはクックチルとニュークックチル。この二つは医療施設や介護施設の給食現場などで重宝されている業務用の調理システムです。
本記事ではクックチルとニュークックチルの違いがわかるよう、メリットやデメリットを解説。ニュークックチルシステムの導入時に欠かせない再加熱機器(再加熱カート、リヒート)についても、詳しくお伝えします。 -
BCPマニュアルの作成・活用 実践的な手順と注意点を徹底解説
BCPとは「Business」「 Continuity」「Plan」の頭文字を取ったもので、災害や緊急事態が発生した際に事業の中断を最小限に抑え、迅速な復旧を目指す「事業継続計画」を指します。介護施設に関しては2024年4月よりBCPの作成が義務化となり、すべての介護施設でBCPマニュアル策定が必須になりました。
医療・介護事業者にとっては、利用者の命や生活を守るためにBCPの策定が欠かせません。非常事態が起きた時でもBCPマニュアルを作成しておけば、短期間での業務復旧や多くの人々の命を守ることができます。BCPマニュアルの作成から運用、さらに病院・介護施設特有の対策について詳しく解説します。