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外国人労働者と働く際には、さまざまな問題点に悩まされることが多くあります。この記事では、こうしたトラブルを防ぐために、根本的な法整備の知識に触れながら、発生しやすい問題点やトラブルとその改善例、安全対策として役立つ外国人労働者が働きやすい労働環境作りのコツを解説します。

外国人労働者に関する法整備

外国人の雇用は法律に従って行う必要があるため、見落としのないようにまずは雇用のルールから確認しておきましょう。第一に確認が必須なのは、就労可能な外国人かどうかです。日本で就労できる外国人は、入管法(出入国管理及び難民認定法)で定められている在留資格の範囲内に限られます。在留資格は種類によって就労の制限などがあるため個々に確認しましょう。下記は、就労の制限を基に在留資格を分類したものです。

 

在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格

就労活動に制限がない在留資格

原則として就労が認められない在留資格

・外交
・公用
・教授
・芸術
・宗教
・報道
・高度専門職
・経営・管理
・法律・会計業務
・医療
・研究
・教育
・技術・人文知識・国際業務
・企業内転勤
・介護
・興行
・技能
・特定技能
・技能実習

・永住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者

・文化活動
・短期滞在
・留学
・研修
・家族滞在

 

就労が認められない在留資格や許可された在留期間を超えているなどの外国人の就労は不法就労となり、不法就労外国人を雇用した事業主に対しても3年以下の懲役又は300万円以下の罰金といった処罰があるため注意してください。

 

外国人労働者に関する法律は法改正なども行われることがあるため、随時確認しておくと安心です。2027年中までには、技能実習制度に代わり新しく育成就労制度が施行され、特定技能制度も改正となるため、常に情報収集に努め理解しておきましょう。

外国人労働者との間で発生する問題点

外国人労働者との間で発生する問題はさまざまですが、近年問題になっている事柄の一つが技能実習生の失踪です。2019年から2023年の間の技能実習生失踪者数は、2020年に一度減少したものの、その後は増加傾向となり、2023年には9,753人に達しました。

 

新しく施行される育成就労制度により、こうした失踪対策も含め、法整備によって外国人労働者が働きやすい職場環境への改善が期待できます。しかし、失踪の原因では事業所側の問題も挙げられているため、雇用する側の意識改革も場合によって必要です。例えば、技能実習生の失踪理由として考えられる事柄に下記があります。

 

  • 暴行やハラスメントなどの人権侵害行為があった
  • 就労前に想定していた内容と実態が違った
  • 想定していたよりも低い賃金だった
  • 長時間労働を強いられた

 

また、厚生労働省による「令和5年外国人雇用実態調査」の中では、事業所側と外国人労働者側におけるさまざまな課題やトラブルが挙げられました。それぞれ割合が高かった課題やトラブルは下記です。

 

事業所側の外国人労働者の雇用に関する課題

 

1. 日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい
2. 在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑
3. 在留資格によっては在留期間の上限がある
4. 文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある
5. 生活環境の整備にコストがかかる

 

外国人労働者側の就労におけるトラブル

 

1. その他
2. 紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった
3. トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった
4. 事前の説明以上に高い日本語能力を求められた
5. 事前に説明された内容と実際の仕事内容が違った・事前の説明以上に会社に入るまでに時間がかかった

 

これらを見ると、日本語能力の不足やコミュニケーションがうまく取れないことが双方にとってデメリットになっていることがわかります。また、外国人労働者側のトラブルではその他の割合が一番多いことから、さまざまなトラブルが起きていることが予測できます。外国人労働者との間で起きる問題には、こうした現状を把握し、双方にとって仕事を行いやすい環境作りが必要です。

 

参照:出入国在留管理庁 技能実習生の失踪者数(速報値)国籍別の失踪者数(令和元年~令和5年)

参照:厚生労働省 「令和5年外国人雇用実態調査」2024年

 

外国人労働者の雇用で起きやすいトラブルと改善例

ここでは、日本で働く外国人労働者との間で起こりやすい代表的なトラブルの紹介と解決策のヒントや、外国人労働者が働きやすい職場への改善例を解説します。

外国人労働者と働く際に起きやすいトラブルと解決策

外国人労働者を受け入れた際に悩みやすい事柄には下記があります。いずれの場合も、対応を工夫することで解決できる場合があるため参考にしてみてください。

遅刻が多い

海外では日本のように時間を厳密に守る習慣がないことが多く、5分や10分の遅刻は自然と考えられ、気にされないこともよくあります。時間を守る目的と守らない場合にどうなるかをまず伝え、理解を促しながら遅刻に気を付けてもらいましょう。

備品を持ち出してしまう

特別な悪意がなく、悪いことだと気付かないために備品を私用に使ってしまう外国人労働者もいます。持ち出しが禁止されていることをまず伝え、日本での備品の持ち出しや私的利用は、窃盗罪や横領罪などの罪にあたることをあらかじめ説明しておくと安心です。

指示が伝わらない

指示が伝わらない原因には、専門用語が伝わっていないケースや指示自体が曖昧なケースがあります。説明をする際には、言葉の意味が伝わっているかを確認しながら繰り返し伝えていきましょう。また、外国人は日本人のように空気を読む文化が根付いていないため、明確で具体的な指示を心掛けることがポイントです。

スタッフ間でのもめ事が起きる

宗教や文化の違いによって、些細なきっかけでもめ事が起き、規模が大きくなり監督責任を問われるケースもあります。外国人労働者を受け入れる前に、「政治や宗教に関する話はしない」などのルールを決めておき、個々の価値観を尊重できる職場作りを意識しましょう。

音信不通になる

外国人労働者と音信不通になった場合は、焦らず登録支援機関に報告を行い、警察に相談するなどしましょう。不当な雇用条件や信頼関係がないことが失踪につながります。日頃から良好なコミュニケーションを取り信頼関係を築けていれば、大事になる心配は少ないでしょう。

外国人労働者が働きやすくなった改善例

事業所の工夫次第で、外国人労働者のより働きやすい環境を整備することができます。ここでは、外国人労働者が働きやすくなった改善例をいくつかご紹介します。

面接の際に英語を活用する

外国人労働者によって日本語力には差があります。日本語が不得意な外国人労働者に対しては面接の際に英語を活用し、コミュニケーションの行き違いを防ぐことでトラブル防止に役立っている事例があります。

外国人労働者に対する相談役を配置する

先述したように、外国人労働者の間では「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」というトラブルも多くあります。外国人労働者に対して英語で話せる相談役を配置したことで、話しやすい言語で悩み事などを気軽に相談できるようになった事例があります。

日本語能力向上に向けた手紙やメールの活用

外国人労働者が入社する前から、日本語で手紙やメールのやりとりを行い、文章の添削を通じて日本語能力の向上を支援する事例や、日本語能力試験の受験費用の補助を行うなどの支援によって受験率が向上した事例があります。

外国人労働者がいて当たり前の職場環境

外国人労働者に日本の習慣に合わせてもらうのではなく、自社の理念などは押し付けずに、外国人がいて当たり前という職場環境を定着させることで、外国人労働者の働きやすさにつながっている事例があります。

 

参照:厚生労働省 「外国人の活用好事例集~外国人と上手く協働していくために~」2017年

参照:鹿児島県 「外国人労働者が働きやすい工夫をしている企業事例集」2024年

外国人労働者が働きやすい労働環境作りのコツ

外国人労働者が働きやすい環境作りにはさまざまなコツがあります。下記では主なポイントをまとめました。

従業員全員で受け入れ体制を作る

外国人労働者と良好なコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくためには、従業員全員での受け入れ体制が必要です。受け入れ前の準備段階で、従業員の理解を得ておきましょう。

異文化を理解しようとする姿勢を保つ

外国人労働者と接する際には、異文化を理解する姿勢が欠かせません。事業所側の従業員が理解を示すのはもちろんのこと、外国人労働者にも日本の文化を理解してもらい、相互理解を深めていきましょう。

外国人労働者の安全衛生対策を心掛ける

外国人労働者は、日本語の理解が不十分であることや、コミュニケーション不足や業務経験不足などにより、労働災害につながることが少なくありません。厚生労働省による外国人労働者の安全衛生対策用の教材なども参考に、外国人労働者の安全衛生対策をしっかりと行いましょう。

 

参照:厚生労働省 外国人労働者の安全衛生対策について

外国人労働者とコミュニケーションをとる際のポイント

外国人労働者と話すときには、やさしい日本語を意識すると役立ちます。敬語はなるべく使わず、一つの文章を短く区切りながら、主語や文末の言葉を明確にしてわかりやすく話しましょう。ゆっくりとはっきり発音することもポイントです。

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ナリコマでは、外国人介護技能実習生の紹介も行っています。技能実習生は、受け入れまでに約1年の準備期間が必要ですが、制度の説明や情報提供にはナリコマの担当者も同席しますのでご安心ください。今までに技能実習生を受け入れた施設さまからもお喜びの声をいただいております。人手不足にお悩みの施設さまは、ぜひ一度ご相談ください。

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