日本は65歳以上の高齢者人口が年々増加しており、2043年には3,953万人でピークを迎えるといわれています。一方、2024年10月1日時点で1億2380万人余の総人口は減少していく見込み。今後は高齢化率が上昇し、2070年には2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になると推測されています。
こうした背景から、近年では介護福祉サービスの需要が高まっています。今回お届けする記事のテーマは、そんな高齢者ケアの拠点となる介護施設の食事。食事の重要性や提供体制について解説し、外部委託業者の選定ポイントなどもあわせてお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
介護施設における食事の重要性

多くの高齢者が集まる介護施設において、食事は欠かせない要素の一つです。本項目では、その主な理由をまとめてみました。
生体リズムを整えるため
食事は一日三食、規則正しい時間に食べることが望ましいといわれています。毎日決まった時間に食事をすると、さまざまなメリットが得られます。特に大きなメリットは、生体リズムが整うこと。生体リズムはもともと人に備わっているもので、加齢によって変化し、不規則になると健康を損なう可能性が高まります。
つまり、食生活の乱れは高齢者の健康を大きく左右するということ。規則正しい食生活によって生体リズムが整うと、自律神経の乱れを防いだり、腸内環境を改善したりする効果が期待できます。精神的な安定や生活習慣病の予防につながるため、心身の健康をバランスよくケアできるともいえるでしょう。
栄養をとるため
高齢者の多くは食が細くなったり、嚥下機能や咀嚼機能が衰えたりします。特に陥りやすいといわれているのが、低栄養状態です。その主な原因は、食事量が少なすぎることや、特定の食品ばかり食べてしまうこと。バランスよく十分な栄養をとるには、ある程度の食事量を保つだけでなく、いろいろな食品を食べたり、主食・主菜・副菜をそろえたりすることも大切です。
低栄養状態になると、体重が減り、筋肉量や筋力も低下します。さらに、免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなったり、心が不安定になったりすることもあります。高齢者の場合、こうした心身の不調がきっかけとなり、要介護状態になってしまうかもしれません。健康維持のためには、毎日きちんと食べることが重要なのです。
食べることが楽しみや生きがいになるため
高齢者にとって、食事が楽しみや生きがいとしての役割を果たすこともあります。食事がおいしかったり、見た目が華やかだったりすると、心が満たされやすくなるのです。提供体制によって状況は異なるかもしれませんが、多くの介護施設では、誰かと一緒に食べる「共食」の機会もあるでしょう。ほかの高齢者や介護職員などとコミュニケーションをとることで、食欲が増したり、孤独感が解消されたりするメリットもあります。
介護施設の食事提供でよくある課題
介護施設では、食事に関してどのような課題があるのでしょうか?食事の内容、提供体制など、さまざまな角度からみていきましょう。
品質の安定化
豊かな食生活が当たり前のようになっている近年では、おいしさにこだわる人が増えているかもしれません。おいしい食事がしたいと思うことは、ごく一般的な欲求です。介護施設も例外ではなく、高齢者が食べたいと思えるような食事を提供しなくてはなりません。
まずい食事が続くと、食欲を減退させてしまう可能性があります。前述したように、食事をしなければ健康上のリスクが生じてしまうのです。味や食感、見た目などに配慮し、品質を安定させることが重要といえるでしょう。

栄養管理や献立作成の負担軽減
介護施設の食事は、管理栄養士や栄養士が栄養管理を行っています。禁止食や治療食の対応が必要な高齢者もいるため、細やかな配慮が求められるでしょう。しかし、栄養管理さえすればいいというわけではありません。
献立がマンネリ化すると、飽きて食べなくなってしまうこともあります。そのため、栄養バランスがよく、飽きのこない献立を考案する必要があるでしょう。もちろん、予算も決まっているため使える食材は限られます。こうした背景から、管理栄養士や栄養士の負担軽減も課題の一つといわれています。
嚥下・咀嚼機能にあわせた介護食
嚥下機能や咀嚼機能が低下している高齢者には、介護食を提供します。きざみ食、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食、ムース食など、高齢者の状態にあわせて調整するのが基本。万一の事故が起こらないよう、丁寧に仕上げなくてはなりません。
こうした介護食を確実に準備するには、十分な知識やスキルを備えた職員が必要です。また、調理に時間がかかるため、ほかの業務に影響が出ることもあります。介護施設では、介護食に対応できる人材や調理時間の確保が課題となるでしょう。
衛生・安全管理体制の構築
食中毒や異物混入といった食事中の事故は、命にかかわることもあります。衛生・安全管理は厳しく行わなければなりません。倉庫、冷蔵庫、調理器具、食器類などの管理体制はもちろん、調理職員の手洗い状況や体調等も入念にチェックすべきでしょう。職員が衛生・安全管理の知識を身に付けるだけでなく、厨房のマニュアルや環境を整えたり、余裕のある勤務体制を組んだりすることも重要です。
慢性的な人手不足への対策
介護施設の厨房は早朝・深夜帯の勤務があったり、長時間労働や力仕事が多かったりすることから、人が集まらないケースも多いようです。人手不足のままでは、食事の提供体制も安定しません。職員一人ひとりの負担も増えてしまうため、人が集まるような労働環境を整えなければならないでしょう。
介護施設の食事を外部委託にする際のポイント
介護施設で食事の提供体制を見直す場合、外部委託にするという選択肢も出てきます。本項目では、委託業者を検討する際に重視すべきポイントをまとめました。

①しっかりとした管理体制
管理体制は非常に重要なポイントです。衛生・安全管理はもちろん、食材管理、献立における栄養管理、食事の品質管理、配送管理などをチェックし、安心して任せられるかどうか見極めなくてはなりません。工場見学や説明会があれば、事前に足を運んでみたほうがいいでしょう。
②味が良く、食形態・献立なども豊富
委託業者の試食会には、積極的に参加すべきでしょう。おいしさだけでなく、介護食や治療食、アレルギーなどの対応可否も判断材料になります。もちろん、献立のバリエーションや提供サイクルも確認しておくと安心です。
③災害対応が可能な供給システム
委託業者の供給システムが安定していることも重視すべきポイントです。自然災害などが発生した場合、まずは高齢者や職員の食事を確保しなければなりません。災害対応も可能な委託業者なら、施設における食事の提供体制が安定しやすくなります。
④サービス内容に見合ったコスト
外部委託による食事の提供体制には、クックサーブ(現地調理)、クックチル(冷蔵食)、クックフリーズ(冷凍食)などがあります。もし施設にある厨房機器・設備の入れ替えが必須であれば、コストが大幅に増加してしまいます。こうした部分も含め、総合的なコストパフォーマンスを意識することも重要です。
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