日本は世界有数の災害大国であり、万一に備える防災グッズや長期保管に適した備蓄品などが数多く製造・販売されています。近年は家庭や学校などに限らず、企業の防災対策も重視する傾向にあり、災害時にも業務を続けるためのBCP策定が推奨されています。
今回は、医療・介護福祉分野のBCPにおける食の課題に注目。患者や利用者の身を預かる病院・介護福祉施設にとって欠かせない食事提供体制の安定化につながるポイントを解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
BCPの策定は介護事業者と一部医療機関で義務化

冒頭でも少し触れましたが、BCP(=Business Continuity Plan)は自然災害だけでなく、火災やテロ攻撃なども含めた緊急事態が発生した場合の対応をまとめた「事業継続計画」のことです。事業への損害を最低限に抑えるほか、重要な業務を継続し、早期復旧を目指すために必要とされています。
2026年3月現在、すべての介護事業者と一部医療機関に対してBCP策定が義務付けられており、未対応の場合は基本報酬の減算があります。医療・介護福祉分野では、緊急事態に陥っても患者の治療や利用者のお世話を続けることが重要です。適切な対応ができなければ、患者や利用者の安全を確保できなくなるかもしれません。こうした背景が、BCP策定の義務化につながっているのでしょう。
また、今後は高齢化が進み、2040年以降は在宅医療の需要がピークを迎えるとみられています。厚生労働省は、2026年度の診療報酬改定において、在宅医療を支える病院や診療所(在宅療養支援診療所など)にもBCP策定を義務付ける方針で動いているようです。さらに多くの医療機関がBCP策定を徹底することは、国民にとっても大きなメリットがあるといえるのではないでしょうか。
患者や利用者を守るには食事提供の継続が重要

病院・介護福祉施設においては、患者や利用者への食事提供も継続すべき重要な業務としてBCPに盛り込まなくてはなりません。その理由として、以下のような点が挙げられます。
低栄養による健康被害を防ぐ
病院の患者に提供される食事は治療の一環として役目を果たしています。担当医師の指示に基づき、管理栄養士が献立を作成。患者の状態にあわせて栄養価を調整するケースも多いため、いつも通りの食事ができなくなると治療に直接的な影響を与えたり、病状が悪化したりすることも考えられるのです。
また、介護福祉施設の主な利用者である高齢者や障がい者は、低栄養によるリスクが非常に高く、食事が健康管理の要となります。低栄養になるとサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)やロコモティブシンドローム(運動器の衰えによる移動機能の低下)に陥ってしまうかもしれません。症状が進行すれば、健常と要介護の中間といわれるフレイル(虚弱)状態になることもあります。
さらに、栄養不足は免疫力低下を招きます。病院や介護福祉施設で季節性インフルエンザ、新型コロナウイルスなどの感染症が蔓延すると、患者や利用者の健康被害が大きくなる可能性も。食事による栄養摂取は、そういった感染症予防のためにも役立ちます。

精神的な安定をもたらす
病院・介護福祉施設では、患者や利用者の精神的な健康維持も重要な業務の一つです。災害発生時などの非日常的な状況は、「いつ日常に戻るのか」といった不安を増長し、心のストレスがたまりやすくなります。だからこそ、いつもと変わらずに食事を提供することが安心につながるのです。
職員の体力低下を防ぐ
緊急事態下の病院・介護福祉施設では、患者や利用者の健康・安全を守ることが第一です。しかし、そこで働く職員が動けなければ、適切な対応ができなくなります。職員への食事提供を継続することもまた、BCPで重視すべき部分といえるでしょう。
BCP対策として確認すべき食事提供のポイント

本項目では、病院・介護福祉施設に必要なBCP対策の視点から、食事提供に関するポイントをまとめてみました。
長期保存用食材・飲料水の備蓄
食材等がまったくない状況では、食事を準備することもできません。災害対策の基本として、調理が簡単かつ長期保存が可能なレトルトパックや缶詰、アルファ米などの備蓄と定期的な入れ替えが推奨されます。病院・介護福祉施設の場合、平常時の食事と同様、介護食(嚥下調整食)も必要です。ミキサー食、ゼリー食、ペースト食、流動食など、できるだけバリエーションが豊富になるよう準備しておくと安心でしょう。また、患者や利用者へスムーズに食事提供ができるよう、備蓄品を使った献立を作成しておくことも重要です。
食材に加え、飲料水の備蓄も欠かせません。水道設備が復旧するまでの期間を想定し、十分な量を見積もっておきましょう。また、災害時のストレスによって患者や利用者の食欲が低下する可能性もあります。そういったケースでは、手軽に栄養摂取やカロリー補給ができる野菜ジュース、お菓子、栄養補助食品なども役立ちます。
厨房機器・設備が使用不可になった場合の対応
ライフラインが寸断された場合、通常の厨房機器・設備は使えなくなります。カセットコンロとカセットボンベは、災害時にもすぐ使える調理器具として便利です。このほか、非常用発電機があれば使えるIH調理器やスチームコンベクションオーブン、バッテリー電源付きの冷蔵庫、ガス以外に薪でも煮炊きできる調理釜など、BCP対策になる機器・設備の導入を検討するのもいいでしょう。

緊急事態下での職員配置パターン
災害などが発生したタイミングで、厨房職員が必ずいるとは限りません。そういった状況でも食事提供ができるよう、BCPには緊急事態下での職員配置パターンも盛り込む必要があります。また、職員数が平常時よりも少ない可能性があることも考えておかなくてはなりません。
備蓄品の保管場所
食材や飲料水などの備蓄品は、すぐ取り出して運べる場所に保管しておくことが推奨されます。自然災害などで被害を受けにくい場所であることも重要です。丼やスプーンなどの食器類、おたまや菜箸などの調理器具、マスク、食品用ラップ、缶切り、キッチンクロス、使い捨て手袋といった備品も一緒にまとめておきましょう。
災害時に役立つ?完全調理済み食品の利点

病院・介護福祉施設で採用されることも多い完全調理済み食品(クックチル、ニュークックチル、クックフリーズ、真空調理)は、保管場所となる冷蔵庫や冷凍庫などが動いていれば、BCP対策としても有効な面があります。特に注目すべきは次の三点です。
①簡単な工程のみで提供できる
再加熱と盛り付けだけで提供できるのが完全調理済み食品の魅力です。厨房機器・設備が使えなくなった場合、調理工程はできるだけ少ないほうが安心して対応できるでしょう。
②限られた人員でも対応しやすい
完全調理済み食品は調理工程が少ないため、誰でも対応することができます。人員もほとんど必要なく、緊急事態下の限られた状況に向いています。
③衛生面での安全性が高い
災害時は平常時と比べて衛生管理が徹底しにくくなりますが、完全調理済み食品であれば、人の手が触れる時間を最小限に抑えることができます。集団食中毒の防止にもなるでしょう。
万一の場合にもできる限り対応!ナリコマの献立サービス

ナリコマではクックチルやニュークックチルを活用し、病院・介護福祉施設に最適な献立サービスを展開しております。災害時にも、お届けルートの安全が確認できれば弊社セントラルキッチンからの配送を実施。温めずにお召し上がりいただける「ひまわり非常食」は、通常の献立サービスと同様、普通食のほかにソフト食・ミキサー食・ゼリー食をご用意しております。食事提供に関するBCP対策でお悩みでしたら、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
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