医療機関は、人々の健康を支えるという大事な役割を担っています。医療行為やそれに関連する業務では、患者の安全を守ることが最も重要といえるでしょう。今回お届けするテーマは「病院給食における衛生管理」です。医療安全対策の視点から、病院給食の安全性確保について詳しく解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
厚生労働省が推進する医療安全対策

厚生労働省が取り組む医療安全対策は、医療における事故や不測の事態を防ぐことを目的とした施策の総称です。医療従事者は日々、細心の注意を払って業務に臨んでいるはずですが、医療機関における事故は毎年のように発生しています。
医療事故調査・支援センター(運営元:一般社団法人日本医療安全調査機構)によると、2024年の医療事故発生報告件数は349件で、2015年10月〜2024年12月までの累計は3,258件にのぼります。これは、あくまでも「医療事故として報告された事案」に限られたデータです。「医療機関や遺族等から医療事故調査・支援センターへの相談件数」をみると、2024年は2,043件、累計も17,330件となっており、決して少ないとはいえない件数です。つまり、結果的に医療事故として報告されなかったものの、患者の安全が脅かされた可能性のある事案が多いと考えられます。
参考:医療事故調査制度とは
医療・介護体制の安定化に欠かせない医療安全対策
日本は高齢化が急速に進んでおり、2040年にはピークを迎え、医療・介護分野の需要が高まるとみられています。ところが、少子化によって総人口は減少傾向にあることから、医療・介護分野の人材不足は深刻化する可能性も高いのです。しかし、医療・介護体制は今以上に安定させなくてはなりません。医療安全対策は医療・介護体制の安定化に欠かせない要素であり、品質向上にもつながります。少子高齢化の状況を踏まえると、今後、さらに細やかな安全対策が必要であることは明らかといえるでしょう。
病院給食に関する医療事故事例

公益財団法人日本医療機能評価機構のデータによると、2024年に報告された医療事故のうち、31.3%が「療養上の世話」において発生。病院給食に関する医療事故も、これに含まれます。過去5年間のデータをみると、34.8%(2019年)→33.6%(2020年)→30.4%(2021年)→32.1%(2022年)→31.2%(2023年)と推移。「治療・処置」の発生率と同程度であることを踏まえると、医療安全のためには、包括的な事故防止対策が必要といえます。では、実際にどのようなことが起きているのか、病院給食に関する事例をみていきましょう。
事例①誤嚥・窒息の発生
誤嚥・窒息は、病院給食において非常に多くみられる事故です。患者Aさん(統合失調症/50代女性)の事例では、昼食時に誤嚥が発生し、その日の夕食から食形態が常食→きざみ食に変更されました。このとき、病院側は食事中の見守りを提案したものの、Aさんには強く拒否されてしまったようです。その後、夕食下膳のため訪室した看護師が、嘔吐しベッドに倒れているAさんを発見。危険な状態が続いていましたが、最終的に家族がそれ以上の救命処置の継続を望まず、Aさんは亡くなりました。事故発生の背景・要因として、かき込むように早食いをする傾向にあったこと、本人の精神症状が不安定だったこと、食事中の見守りができていなかったことなどが挙げられています。
また、患者Bさん(脳梗塞後遺症・認知症/90代女性)の事例では、食事摂取状況を観察しに訪室した介護員が異変に気付いて報告。看護師が口腔内の出血や低酸素状態を確認し、ハイムリック法などの救急対応を行いました。事故発生の背景・要因として、食事介助に忙しい時間だったこと、他患者と離れた個室にてBさんが自力で食事摂取していたこと、看護師・介護員が義歯の装着を確認していなかったこと、弾力のある食材が提供されていたことなどが挙げられています。

事例②アレルギー対応ミス
「卵・小麦・乳による発疹・嘔吐」の既往歴がある完全母乳の乳児に対し、普通ミルクを与えてしまった事例があります。二度に分けて120mL与えた後、アレルギー症状が出てPICUへ移動する事態となりましたが、無事退院することができました。
アレルギー情報を聞いていた医師は、乳児の家族が「ミルクを与えて良いか」という質問に「はい」と答えたため、普通ミルクで問題ないと思ったとのこと。ところが、家族は「アレルギー対応のミルクを与えてくれると思った」という、まったく逆の認識でした。看護師も普通ミルクがオーダーされていることに違和感があったものの、医師にはアレルギー情報を伝えていたため、問題ないと思い込んでいたようです。この事例については、個々の思い込みや職員間のコミュニケーション不足などが大きな要因となっています。
事例③配膳ミス
食札を乗せる配膳車の階を間違えてしまい、2階で引き渡された配膳車に、3階の患者Dさん(クラウンデンス症候群・認知症/90代女性)に提供する食事が入っていた事例があります。2階にいた職員が気付いて3階へ食事を運び、配膳時間には間に合ったとのこと。しかし、Dさんに必要な補助食品が不足しており、職員が厨房まで取りに行ったようです。こうした配膳ミスの事例については、食札やお膳の確認不足によるところが大きいでしょう。
事例④食事提供体制の不備
患者Eさん(統合失調症/60代男性)は、看護師から食事トレイを受け取って移動する際、転倒して左第5指骨折の診断を受けました。Eさんがサンダルを履いていたこと、低血圧やめまいの症状があったことに加え、看護師が食事を手渡した後に患者から目を離したこと、配膳車の周りに患者が集まって廊下が狭くなっていたことも事故の背景・要因とされています。
病院給食を安全に提供するためのポイント

先ほどご紹介した事例からもわかるように、病院給食では、小さなミスが深刻な問題を引き起こすこともあります。本項目では、病院給食を安全に提供するためのポイントをまとめました。
①食事に関する患者情報を把握する
嚥下・咀嚼機能のレベル、アレルギーの有無など、患者によって異なる情報は事前にしっかりと把握し、治療に関わる全職員で共有しておくことが重要です。
②医師が指示したオーダーを複数人で確認する
医師は、食事に関する患者情報を元に食事のオーダーを発行。栄養士や看護師などが複数人で確認し、患者ごとの食札に明記します。この時点で適切なオーダーかどうか判断できれば、医療事故の防止にもつながるでしょう。
③厨房ではオーダーに沿った個別対応を確実に行う
調理時にアレルギー食材を使ったり、食形態を間違えたりすれば、患者の安全が脅かされます。厨房ではオーダーを確認するだけでなく、色の異なるトレイやタグなどを活用し、ほかの食事との違いが一目でわかるようにする工夫も必要です。
④配膳時は患者本人にも確認をとる
配膳時は患者にフルネームを聞き、食札やベッドネームとも合致していることを確認することが重要です。名前が名乗れない状態の患者や乳幼児などへの対応については、別途ルールを決めておくと誤配膳防止に役立ちます。
⑤食事介助の対応力を高める
食事中の事故防止には、看護師などによる介助も重要です。介助が必要な患者の基準を明確にすることはもちろん、対応する職員の知識やスキルを高めることも欠かせません。
「HACCPに沿った衛生管理」が義務化

厨房における衛生管理の徹底も、医療安全対策の一つです。2026年3月現在、あらゆる食品等事業者に対して「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」が義務付けられています。HACCPは国際的な基準ですが、病院給食ではそのまま実施することが難しいため、簡略化された衛生管理(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)を行うよう指導されています。院外調理で委託や配食サービスなどを活用する際も、衛生管理体制が徹底されている点を重視したほうがいいでしょう。
医療安全の確保におすすめ!ナリコマのクックチル

ナリコマのクックチルは、医療安全の確保に適した調理方式です。ナリコマのセントラルキッチンでは衛生管理や温度管理を徹底し、異物混入防止のため機械と人による目視でのダブルチェックを実施。病院さまにお届けした後は簡単な作業のみで提供できるため、厨房の省人化にもつながります。安心・安全な病院給食については、ぜひナリコマにご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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