近年は高齢化が急速に進み、医療・介護福祉系サービスの需要が増え続けています。そんな中、新たに注目されているのが、今回テーマとして取り上げる「科学的介護」です。本記事では、科学的介護のメリットや厚生労働省が管理する専用システムの概要、関連する加算制度などについて詳しく解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
現場が変わる!科学的介護情報システム(LIFE)
科学的介護は、主観的な感情や推測に頼らず、明確な根拠に基づいて行う介護のことです。類似するものとして、医療分野で重視されるEBM(Evidence-Based Medicine/科学的根拠に基づいた医療)があります。EBMは、文献などで最新・最良の科学的根拠を把握し、患者の臨床状況や価値観、医師の専門技能も考慮した上で最適な医療を提供することです。その過程において、医療従事者の経験や勘、抽象的な理論、実証されていない方法などは排除されます。
これを介護分野に置き換えた場合、EBMの科学的根拠に当たるのは、介護施設・事業所ごとに蓄積される利用者のデータです。科学的介護は、蓄積されたデータを活用し、各利用者の状態・状況に配慮したケアができるようにすることを目的としています。
科学的介護を行うメリット
科学的介護によって、次のようなメリットが生まれます。
メリット①介護サービスの品質が向上する
根拠に基づいたケアによって、介護サービスの品質が向上します。利用者は、自分に合ったサービスが選びやすくなります。
メリット②介護サービスが標準化される
これまでは、介護職員の主観や経験によって左右される部分がありました。一方、科学的介護は根拠となるデータがあるため、客観的な視点を持つことができるのです。介護サービスの内容や品質が職員によって変化することなく、標準化されます。
メリット③職員の負担軽減と生産性向上につながる
データを活用することで、利用者ごとに考えていたケアの内容などが決めやすくなり、介護職員の負担が軽減されます。通常業務がスムーズに進めば、生産性向上も期待できるでしょう。
メリット④利用者や家族の理解度が高まる
利用者や家族に介護サービスの詳細を説明する際、数値などの具体的なデータが提示できるようになります。理解度が高まることで、利用者のケアにおいて重要な信頼関係も築きやすくなるでしょう。

科学的介護情報システム(LIFE)とは
厚生労働省が管理する科学的介護情報システム(LIFE:Long-term care Information system For Evidence)は、令和3年度介護報酬改定にあわせて運用が始まりました。それまで運用されてきたVISIT(monitoring& eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care)とCHASE(Care, HeAlth Status & Events)の二つを統合。新たなシステムによって科学的介護を推進し、サービスの質を高めることで自立支援や重度化防止につなげる狙いがあります。
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旧:VISIT |
旧:CHASE |
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◆2017(平成29)年度〜運用 ◆通所・訪問リハビリテーション事業所が対象 ◆リハビリテーションに関するデータ(計画書、議事録、プロセスなど)を収集 |
◆2020(令和2)年度〜運用 ◆すべての介護サービスが対象 ◆ADL(日常生活動作)、栄養状態、口腔・嚥下機能、認知機能、ケアの内容など、サービスを利用する高齢者の個別データを収集 |
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介護施設・事業所がデータを提出 ↓ データの分析結果をフィードバック |
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科学的介護情報システム(以下、LIFE)は、VISIT・CHASEと同様、介護サービス利用者のさまざまなデータをまとめて収集し、分析とフィードバックを行います。令和6年度介護報酬改定ではフィードバックについての見直しが行われ、当初の介護施設・事業所単位に加え、利用者単位でも確認できるようになりました。また、データの提供方法もExcelファイルからブラウザ上の閲覧に変更。ほかにも、最大12カ月分のデータの時系列表示、ヒストグラムやレーダーチャートなどの多様なグラフ表示が追加されました。LIFEの具体的な活用方法については、のちほど解説します。
科学的介護推進体制加算はどんな制度?
LIFEの活用に関連する加算は、次のようなものがあります。ただし、すべてが対象になるとは限りません。サービスや加算の種類によって算定要件が異なるため、事前によく確認しておくといいでしょう。本項目では、令和3年度介護報酬改定で新設された科学的介護推進体制加算(LIFE加算)について詳しくご説明します。
- 科学的介護推進体制加算(I)(II)
- ADL維持等加算(I)(II)
- 個別機能訓練加算(II)(III)
- リハビリテーションマネジメント加算
- リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(I)(II)
- 短期集中リハビリテーション実施加算(I)
- 栄養マネジメント強化加算
- 栄養アセスメント加算
- 口腔衛生管理加算
- 口腔機能向上加算(II)イ・ロ
- 褥瘡マネジメント加算(I)(II)
- 褥瘡対策指導管理(II)
- 排せつ支援加算(I)(II)(III)
- 自立支援促進加算
- 薬剤管理指導の注2
- かかりつけ医連携薬剤調整加算(II) など

加算対象となる介護サービスと単位数
施設系サービスは科学的介護推進体制加算(I)または(II)、通所・居住系サービスは科学的介護推進体制加算を算定することができます。基本的には要支援・要介護の利用者すべてが対象となり、1人当たりの加算単位は以下の通りです。
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施設系サービス |
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介護老人福祉施設 |
(I) 40単位 (II) 50単位 |
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地域密着型介護老人福祉施設 入所者生活介護 |
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【算定要件】 ・入居者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他入居者の心身の状況等に係る基本的な情報を、LIFEを用いて厚生労働省に提出していること ・必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたり上記の情報その他サービスを適切且つ有効に提供するために必要な情報を活用していること 注)科学的介護推進体制加算(II)の算定には「入居者ごとの疾病及び服薬の状況等の情報」も提出が必要 |
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介護老人保健施設 |
(I) 40単位 (II) 60単位 |
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介護医療院 |
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【算定要件】 ・入居者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他入居者の心身の状況等に係る基本的な情報を、LIFEを用いて厚生労働省に提出していること ・必要に応じて施設サービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたり上記の情報その他サービスを適切且つ有効に提供するために必要な情報を活用していること 注)科学的介護推進体制加算(II)の算定には「入居者ごとの疾病状況等の情報」も提出が必要 |
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通所・居住系・多機能系サービス |
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通所介護 地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護(予防含む) 特定施設入居者生活介護(予防含む) 地域密着型特定施設入居者生活介護 認知症対応型共同生活介護(予防含む) 小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 通所リハビリテーション(予防含む) |
40単位 ※1区分のみ |
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【算定要件】 ・入居者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他入居者の心身の状況等に係る基本的な情報を、LIFEを用いて厚生労働省に提出していること ・必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたり上記の情報その他サービスを適切且つ有効に提供するために必要な情報を活用していること |
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LIFEのデータ活用ではPDCAサイクルが重要
LIFEのフィードバックを有効的に活用するためには、PDCAサイクルが重要といわれています。PDCAサイクルは介護を含めた幅広い分野に通用する考え方で、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し、業務効率化や生産性向上につなげる」という目的があります。では、これを前提としたLIFEの活用方法をみていきましょう。
PDCAサイクルをスムーズに回すために
まず、どのような介護施設・事業所を目指しているのか、方針やビジョンを明確にしておきます。組織としての一体感を高め、PDCAサイクルをスムーズに回すことができるでしょう。また、介護施設・事業所では介護職員のほかにも看護職員、栄養士、生活相談員など、さまざまな職種の人たちが働いています。情報共有体制の構築は、各職員の専門的な知識や多角的な視点が生かせるようにすることも重要です。

Plan(計画)
毎日のケアについて、詳細な計画書を作成。目標を設定し、それを達成するためにどのようなケアを行うのか決定します。ただし、「車椅子を使っている利用者が元気に過ごせるようにリハビリを行う」といった大雑把な目標ではあまり意味がありません。例えば「利用者が安心して自宅に戻れるよう、車椅子がなくても歩行や移動ができるようにする」など、具体的な目標が望ましいとされています。
Do(実行)
作成した計画書に基づき、利用者ごとに適切なケアを提供します。LIFEの活用には正確なデータが欠かせないため、ケア状況について丁寧に記録しておくことも大切なポイントです。
Check(評価)
LIFEでフィードバックされた内容を、複数人の職員で確認し、気づいた点をまとめて共有。客観的に、目標の達成状況を把握します。自施設・事業所におけるデータの推移や変化を見るだけでなく、全国各地にある介護施設・事業所のデータと比較することも介護サービスの品質向上に役立ちます。
Action(改善)
LIFEでフィードバックされた内容に基づいて計画書を見直します。これまで行ってきたケアの効果はもちろん、利用者の意向・現状も踏まえながら、改善点や新たな目標について考えます。ここからPlan(計画)の工程に戻り、再びPDCAサイクルを回していくことになります。
食事に関するお悩みはナリコマへご相談ください
LIFEのフィードバックデータは、食事摂取量の減少、低栄養の傾向などもまとめて確認することができ、利用者の食生活改善に役立ちます。ナリコマの介護食は、食事摂取量が少なくても十分な栄養がとれる「少量高栄養」にこだわった独自製法を採用。多くの施設様にご好評いただいており、食事満足度の向上にも貢献することができます。常食と同じ献立のミキサー食・ゼリー食・ソフト食をご用意していますので、利用者様の状態にあわせた安心の提供体制も実現。食事に関するお悩みがありましたら、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。

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