介護給食は、全国各地の特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで提供されている食事のこと。近年はさまざまなコストが上昇している状況にあり、介護給食の値上げも強く求められています。
本記事では、そんな介護の現場における給食をクローズアップ。給食の重要性についてお伝えするほか、調理にコストがかかる理由や厳しい現状、コスト削減方法などを解説します。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
介護給食の重要性
介護給食を口にしているのは、主に高齢者の方々。食事が生命を維持するために必要なのは言うまでもありません。ただ、介護施設における食事は、それ以外にも重要な意味があります。
介護給食の意味①十分な栄養がとれる
高齢者が健やかに暮らしていくためには、必要な栄養素をきちんととることが重要です。とはいえ、栄養バランスがとれたメニューを毎回自分で考えるのはなかなか苦労するでしょう。それだけでなく、高齢者は食が細くなる傾向が強いため、栄養不足になることもあるのです。
そういった問題点を解消できるのが介護給食。管理栄養士や栄養士が献立づくりに携わっているので、バランスよく十分な栄養をとることができます。
介護給食の意味②生活リズムが整う
一日の生活リズムが乱れると、心身の不調が出やすくなります。その点、介護施設では食事の提供時間が決まっているため、自然と生活リズムも整いやすくなるのです。また、旬の食材を使った料理や暦にあわせた行事食によって、季節の移り変わりを意識してもらうことができます。
介護給食の意味③毎日の楽しみや社会参加になる
高齢者が元気に過ごすためには、日常的な楽しみがあることも重要だといわれています。介護給食はそういった役割を果たすため、「食べるのが楽しい!」と思ってもらえるように工夫されていることも多いのです。
また、介護施設には自分以外の高齢者も大勢集まっています。みんなで食卓を囲んで食べることは、れっきとした社会参加。周りとのコミュニケーションも楽しめるので、活動範囲が狭くなりがちな高齢者の生活にもハリが生まれます。
介護給食の調理にはなぜコストがかかるのか?
一般的な給食と比べて、高齢者を対象とした介護給食はコストが増えがち。その主な理由は、高齢者でよく見られる嚥下機能や咀嚼機能の低下にあります。普通食では飲み込みにくい、噛みにくいといったトラブルを回避するためにあるのが、バリエーション豊かな食形態。まず、その種類について簡単にご説明しましょう。
①きざみ食
食材を細かくカットした食事。普通食に近い見た目に仕上がります。
②ソフト食
食材をやわらかく調理した食事。普通食に近い見た目に仕上がります。
③ミキサー食・ペースト食
ミキサー食は食材をすり潰し、ドロドロのポタージュ状にした食事。一般的なレシピでは、だし汁やスープを足して伸ばし、適度にとろみをつけます。ペースト食はミキサー食と同様に作りますが、水分量を少なめにするのが特徴です。
④ムース食・ゼリー食
食材をすり潰し、とろみをつけて固め直すのがムース食。すり潰した食材を寒天やゼラチンで固めるとゼリー食になります。どちらも彩りや形に変化をつけやすいのが特徴です。
⑤流動食
水のように飲める食事。重湯や具なしの汁物などが該当します。その特徴から、栄養摂取の面ではあまり期待できません。
どの食形態も調理に手間と時間がかかるものばかりで、コスト削減の難しさがうかがえます。介護給食の現場で値上げを求める声が聞こえてくるのも、当然といえるかもしれません。
介護給食が置かれる厳しい状況
冒頭でお伝えしたように、近年はさまざまなコストが上昇中。一般社団法人全国介護事業者協議会など3つの団体が行った「物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査(令和5年4月)」では、対象施設の90%以上が物価高騰の影響を感じているという結果が出ています。
給食業務と深く関わる次のコストに関しては、今後の動きも注視すべきでしょう。
①原材料費
2020年に流行が始まった新型コロナウイルスの余波、原産地における天候不順などによって、原材料費が高止まりしています。さらに、2022年頃からは円安が続いており、輸入に頼っている小麦などの価格も上昇。給食のコスト増に拍車をかけています。
②光熱費・車両燃料費
天然ガスや石油などの資源が豊富なロシアのウクライナ侵攻により、世界的にエネルギー価格が上昇しています。また、長期にわたって未解決のパレスチナ問題により、中東地域の情勢が不安定に。中東には石油原産国が多く、輸送ルートが確保しづらくなり、価格も上昇してしまうのです。給食においては調理に使う電気やガス、食材の運送費などが影響を受けます。
③人件費
日本では少子高齢化によって労働人口が減少しています。人員確保が難しくなっているだけでなく、最低賃金が引き上げられたこともあり、人件費は高騰。給食の現場で指摘されている人手不足の課題は、改善への道のりがよりいっそう険しくなっています。
こうしたコストの上昇は社会全体で問題視されています。ところが、介護施設の報酬は公定価格のため、一般企業のような値上げを実施することができません。コスト増に伴う問題は山積みで、介護給食はとても厳しい状況に置かれているといえるでしょう。
介護給食におけるコスト削減方法
介護給食は簡単に値上げできませんが、費用がかさんでも継続しなければならないのもまた事実。そのため、コスト削減については大きな課題となっています。本項目では、実際に使えるコスト削減方法を詳しく見ていきましょう。
食材の種類や数、仕入れ方法などの見直し
まず何よりも見直すべきところは、食材です。単価が高くなった食材の代わりになるような食材を探したり、ロスを生まないように発注数を最低ラインに抑えたり。食材によっては、冷凍品に切り替えると安くなる場合もあるでしょう。ほかの仕入れ先を再検討し、現状より安くしてくれる業者に変更する方法もあります。
レシピや献立の見直し
食材でのコスト削減が難しいようなら、調理工程の見直しも必要です。これまでのレシピを確認し、煮込み料理などを時短でできるように工夫する、別々に仕込んでいた食材をまとめてみるなど、より効率的な調理方法を選択するといいでしょう。
また、献立自体を変更するのも有効。油の使用量を減らすために揚げ料理を少なくするなど、味や品質を落とさない方法も考えられます。
外部サービスの活用
介護給食を直営で提供しているなら、外部サービスの利用もコスト削減になるかもしれません。完成品が施設に届く配食サービスでは、冷凍やチルド保存のお弁当、温めて盛り付けるだけのお惣菜などがあります。
ほかにも、給食業務を丸ごと委託したり、調理と衛生管理のみを委託したりすることでコストが変わる場合もあります。
介護給食のことならナリコマにおまかせください
値上げを求める声が多い介護給食について、コスト面の話題を中心にお届けしました。ナリコマでは、値上げが難しい介護の現場にぴったりの献立サービスを提案しております。
365日日替わりのメニューをお届けする「すこやか」は、行事食や郷土料理などもご用意。高齢者の方々も毎日楽しくお召し上がりいただけます。ミキサー食やソフト食、ゼリー食などを提供することも可能です。介護給食のコストでお悩みの際には、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
コストや人員配置の
シミュレーションをしませんか?
導入前から導入後まで常にお客さまに寄り添うナリコマだからこそ、厨房の視察をしたうえでの最適解をご提案。
食材費、人件費、消耗品費などのコストだけでなく、導入後の人員削減について個別でシミュレーションいたします。
スムーズな導入には早めのシミュレーションがカギとなります。
まずはお問い合わせください。
こちらもおすすめ
セントラルキッチンに関する記事一覧
-
BCPの義務化!介護施設に必要なBCP策定と実践について
BCPは「Business Continuity Plan」の頭文字を取った用語で、日本語では事業継続計画を意味しています。危機的な状況下でも重要な事業を中断させない、または早期復旧させるための計画です。多くの事業者にBCPの策定が促されていますが、中でも介護施設ではBCP策定が義務化されています。
この記事では、介護施設でBCPの策定が義務化された背景や内容、BCPの種類、BCP策定に伴う日頃の備えについて、BCPの取り組みや認知度にまつわる調査結果などを踏まえて詳しく解説します。 -
災害時に役立つBCP!病院や介護施設が備えておくべきことは?
BCPは「Business Continuity Plan」の頭文字を取った用語で、事業継続計画を意味しています。危機的な状況下でも重要な事業を中断させない、または早期復旧させるための計画です。この記事では、さまざまな災害がある中で、BCPが病院や介護施設に必要な理由とその役割について、高齢者が災害時に受ける影響と共に解説します。
-
DXリテラシーで給食の現場が変わる!具体的な取り組みやメリットを解説
みなさんは、「DXリテラシー」という言葉に聞き覚えがあるでしょうか? 近年では、業界を問わずDXリテラシーの重要性を意識する企業が増えてきています。今回の記事は、そんなDXリテラシーについて詳しくお届け。「そもそもDXって何?」という疑問を抱く方にもご理解いただけるよう、言葉のルーツや定義、その重要性もしっかりとお伝えします。給食現場における具体的な取り組みやDXリテラシー向上のメリットについても解説。ぜひ最後までお読みいただき、今後の参考になさってください。
コストに関する記事一覧
-
今後どうなる?給食業界の課題と将来性を詳しく解説
給食は、保育所や学校、病院、老人ホームといったさまざまな施設で提供されています。施設を利用する人々にとって、給食は健やかな生活を送るために欠かせないものでしょう。ところが、その一方で、現在の給食業界は大きな課題をいくつも抱えています。
今回の記事で取り上げるテーマは、給食業界の将来性。近年における業界の動向や解決すべき課題を挙げ、今後の展望について解説します。ぜひ、最後までお読みになってください。
-
老人ホームは食事で選ばれる時代!最先端のクックチルシステムとは?
今や老人ホームを選ぶポイントは、おいしい食事!厨房で再加熱するだけの簡単調理で、さまざまな食事形態にも対応可能な「クックチル」について解説していきます。
-
365日通して食を楽しもう!介護・福祉施設や病院の献立について解説
みなさんは、365日の献立をどのように考えているでしょうか?「衣食住」という言葉があるように、食事は人が生きていく上で絶対に欠かせない要素の一つです。今回の記事は、そんな食事の献立について詳しくお届けします。
人の暮らしに深く関わる献立の重要性をお伝えし、介護・福祉施設や病院における献立のポイントについても解説。献立作成を日常的な業務として行っている管理栄養士・栄養士の意見もピックアップしてご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。