近年は業務効率化に有効なAIへの注目が集まっており、介護業界でも少しずつ導入が進められています。今回の記事では、介護業界におけるAI活用のメリットや事例を詳しく解説。将来に備えて解決すべき課題についてもまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
介護業界でAIが注目される背景
介護業界でAIが注目される背景には、「高齢化の進行」「介護サービス需要の増加」「介護人材不足」という現状があります。では、各項目について詳しくみていきましょう。
高齢化の進行
日本は超高齢化社会といわれており、「令和7年版 高齢社会白書」によると、令和6(2024)年10月1日時点の高齢化率(総人口に対する65歳以上人口の割合)は29.3%です。昭和中期〜後期にかけては一桁台で推移していましたが、平成初期以降は急激に上昇。平成17(2005)年には20%を超え、高齢化は進行し続けています。また、今後の高齢化率をみると、令和22(2040)年には34.8%、令和52(2070)年には38.7%まで上昇すると推測されています。
介護サービス需要の増加
介護サービスの利用者となるのは主に高齢者です。高齢化が進めば、介護サービスの需要も増えていきます。しかし、日本は高齢化が進む一方で、総人口は減少傾向にあるのです。その点を考慮した場合、全国における介護サービスの利用者数は令和22(2040)年がピークになると推測されています。これは、現役世代と高齢者の人口バランスが崩れ、従来の社会保障やインフラが維持できなくなるといわれる「2040年問題」の一つ。現役世代が減少する中でも、安定した介護サービスの提供体制が必要とされています。

介護人材不足
前述したように、日本の総人口は減少傾向にあり、社会の支えとなる現役世代も減りつつあります。そのため、人材不足に悩む業界も増えているのです。介護業界は特に雇用状況が悪化しており、有効求人倍率は高い水準で推移しています。令和6(2024)年度のデータをみると、全体の1.14倍に対し、介護関連職種は4.08倍。離職率は低下傾向にありますが、令和5(2023)年度は13.1%となっており、決して低い数値とはいえません。今後増加する高齢者のケアを充実させるには、介護人材を確保するだけでなく、定着しやすい労働環境を整えなくてはならないでしょう。
介護業界におけるAI活用のメリット
介護業界においてAIを活用した場合、主に次のようなメリットが期待できます。
メリット①業務効率化と職員の負担軽減
AIは、人間と同じようにデータを集めて学習したり、予測や判断を行ったりするコンピューター技術です。特定の業務をAIに任せることで効率化につながり、前述したような人材不足を補える可能性もあります。また、介護関連の業務は多岐にわたり、職員の身体的・精神的負担が増えやすいことも問題視されています。人材不足かどうかにかかわらず、職員一人ひとりの負担を軽くする手段の一つとして、AIを導入するメリットは大きいといえるでしょう。
メリット②介護サービスの品質向上・安定化
職員の負担が大きく、余裕がない状況のままでは、介護サービスの品質が低下したり、不安定になったりします。AIによって業務が効率化されると、現場に余裕が生まれ、介護サービスの品質向上が期待できます。業務内容によっては職員ごとに対応が変わってしまう場合もありますが、AIの活用で標準化を図ることもできるでしょう。業務の標準化は、結果として品質の安定化につながります。介護サービスの需要増加が見込まれる今後において、AI活用は重要な要素の一つといえるでしょう。

メリット③介護サービスの利用者や家族の満足度向上
介護サービスの品質は、利用者や家族の満足度にも影響を与えます。AIにより品質の向上・安定化が実現すれば、満足度の向上も期待できるでしょう。利用者や家族との信頼関係が築きやすくなるため、介護サービスの内容に関する相談や提案もスムーズに行えるようになります。また、満足度の向上はトラブル防止にもつながります。職員の精神的負担を抑えるという点でも大きなメリットがありそうです。
介護の現場はどう変わる?AI活用事例をチェック
では、介護の現場におけるAI活用事例の一部をチェックしてみましょう。
事例①音声入力による記録業務の効率化
毎日の記録は、利用者の状態や状況を把握するために欠かせない業務です。しかし、介助などのケアを優先して記録が後回しになったり、過去の記録を閲覧するのに手間や時間がかかったりすることもあります。そんな場面で役立つのが、音声入力による介護記録システムです。AIの学習機能によって、専門用語を含めた読み取り精度が向上。利用者のケアをしながら入力・確認ができる点も大きな魅力とされています。
事例②ケアプラン作成のサポート機能
適切なケアを行うには、各利用者の状態や状況を考慮した計画を立てることが重要です。事例①でご紹介した介護記録システムには、ケアプラン作成のサポート機能が搭載されているものもあります。AIが記録されたデータを分析してケアプランを提案するため、担当職員の経験・知識による差が出にくくなります。作業時間も短縮されることから、職員の負担軽減にも効果的です。

事例③ケア品質の向上や事故防止に役立つ見守り機能
高齢者が多い介護施設では、日常生活においてもさまざまなリスクが想定されます。AIを搭載した見守りカメラは、利用者と職員、両方の安心感につながるツールです。ベッドから起き上がる際に転倒したり、車椅子からずり落ちたりするなど、利用者の危険な状況を検知して通知。職員がすぐに駆けつけて対応することができます。また、日中の活動状況や夜間の睡眠状況などを分析し、個別の生活リズムを把握できるツールもあります。品質向上のためにケアプランを見直すきっかけとしても有効です。
事例④コミュニケーションツールとしてのAI活用
AI搭載のコミュニケーションロボットが使われることもあります。特に、一人暮らしの高齢者は孤立しやすく、他者とのふれあいも少ないことから認知症のリスクが高まります。人間のように話せるAIとの日常会話は、そうした問題点をサポートできるのです。ロボットによって異なりますが、クイズや歌などのレクリエーション、服薬時間のリマインド、離れた家族やヘルパーとの通話など、さまざまな機能を搭載。在宅介護をサポートする現場のほか、入居型介護施設などでも活用されています。
今後のAI活用に関して介護業界が抱える課題
介護業界でAI活用を進めるには、次のような課題もクリアしなければなりません。
専門知識や技術の必要性
業務の一環としてAIを使いこなすには、ある程度の専門知識や技術が必要です。同時に、すべてをAI任せにはできないことを意識するのも重要でしょう。全職員がしっかりと研修を受けることで、利用者や家族の安心感にもつながります。活用方法については、外部の専門企業やコンサルタントに相談するという手段もあります。

プライバシー保護やセキュリティ対策
活用事例で挙げた見守りカメラなどは、健康状態や日常生活の様子をはじめ、個人的な情報を扱うことになります。そのため、プライバシーへの配慮が欠かせません。また、情報の流出を防ぐためのセキュリティー体制も整える必要があります。
初期費用や維持費などの経済的負担
AI活用によって業務効率化が図れる可能性は高まりますが、初期費用や維持費がかかることも大きなポイントです。AI導入の費用対効果をシミュレーションし、継続できるかどうかという点も見極めなくてはなりません。
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