HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字を取った用語で、国際的に認められた衛生管理の手法です。2021年6月1日より、病院や介護施設における集団給食施設を含め原則として全ての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理に取り組むことが義務化されました。事業所では「一般的な衛生管理」と「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づいて、衛生管理計画の作成や従業員への周知、必要に応じた手順書の作成などが求められています。
一方で近年では、病院や介護施設の給食及び給食業界全体で人手不足が深刻化しており、衛生管理の難しさにもつながっています。こうした状況下で、給食の衛生管理にもAIの活用が注目されるようになりました。この記事では、HACCPの概要を振り返りながら、温度管理AIや異物混入検知AI、衛生モニタリングAIなど、AIとHACCP対応を組み合わせた衛生管理の自動化がどのように課題解決に貢献できるのかを解説します。
目次
AIとHACCP対応の関係性と開発事例
ここでは、給食の提供に必要なHACCP対応のポイントを整理しながら、人手不足が影響する衛生管理の課題や、AIを活用したHACCP対応システムの開発事例について解説します。
給食の提供に必要なHACCP対応
HACCP対応は、業種や調理方式、食事の提供方法などによって取り組み方が細かく異なります。給食の衛生管理計画を立てる際には、衛生管理に必要な各項目について「いつ・どのように実行するか」と「問題があった時の対応」を明確にすることがポイントです。
病院や介護施設の給食では介護食の提供も多く、ミキサー等を使用する調理は通常に比べて衛生面でのリスクが高いため、より確実な衛生管理の実施が重要です。また、セントラルキッチンで調理された食品を施設で受け入れる場合にも、手引書を参考にしたHACCP対応が必要です。セントラルキッチンで主な調理を行うため、施設の厨房では手作業による汚染リスクの削減に役立つものの、異物混入や温度管理などには引き続き注意しましょう。
厨房の人手不足解消や業務負担軽減に向けて、近年ではクックチルやニュークックチルの調理方式も注目されています。クックチル食品は調理後に急速冷却する工程があり、毎食ごとに調理から行う従来のクックサーブ方式と比較して細菌の増殖を抑えやすく、衛生管理もしやすい方法です。さらにニュークックチル方式では、食品を冷たい状態で盛り付けし、提供直前に再加熱するため、衛生面でのリスク低減に役立ちます。
厚生労働省 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書~委託給食事業者~ 2021年
厚生労働省 セントラルキッチンから食事供給を受ける医療・福祉施設(サテライトキッチン)におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書 2022年

HACCPに基づいた衛生管理の課題とは?
病院や介護施設の給食の衛生管理では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理に加えて、従来の「大量調理施設衛生管理マニュアル」も引き続き役立ちます。マニュアルでは、重要管理事項として原材料の管理方法や加熱調理の温度管理、使い捨て手袋を交換するタイミングなど、さまざまな注意点が詳しく記載されています。
人手不足の場合、一人当たりの業務量が増加するほど衛生管理への対応も困難になる恐れがあるため、より注意が必要です。例えば、マニュアルには「調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい。」という記載があります。しかし、提供する食事数が多いほど、盛り付けに時間がかかり、人手不足の場合はとくに提供までに時間がかかってしまいます。
そのため、提供直前ではなく事前に冷たい状態で盛り付けまで行えるニュークックチル方式を導入するなど、調理方式の選び方を工夫することも課題解決に役立ちます。
AIとHACCP対応の開発事例
給食関連業務の効率化に向けてAI機能がさまざまに活かされており、HACCP対応に役立つ技術の開発も行われています。例えば、給食センターから各施設への配送時に、AIによって最適な配送ルートを導き出すシステムの開発事例があります。人手不足の影響でトラックの運転手も最小限の人数で運用することが求められる中、「調理後2時間以内の喫食」の課題解決が期待されるシステムです。
また、衛生管理の基本となる手洗いについて、AIが適切な手洗いかを判定するシステムも開発されています。個々の従業員の手洗いをその都度確認する困難さと、チェックの際の業務負担を改善できるシステムです。専用デバイスを手洗い場に設置することで、PCモニターを見ながら正しい手洗い方法を学ぶこともでき、手洗いの品質向上にも役立ちます。
温度管理AIとデジタル記録で業務効率化
大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理食品の加熱温度管理で温度と時間の記録を行う必要があり、揚げ物や焼き物などの調理方法別に手順やルールが設けられています。また、調理後の温度管理も同様に定められています。例えば、加熱調理後に冷却する例としては「中心部が75℃の状態で1分間以上加熱し、30分以内に中心温度を20℃付近まで下げる」といった管理が必要です。

ニュークックチル方式で活用される再加熱機器では、加熱不足解消に向けて、AI技術を活かした自動補正機能を備えた機器も登場しています。また、厨房の人手不足対策でも注目されるAI搭載の調理ロボットでは、AI機能による調味料の自動投入やレシピ学習に加え、高度な温度管理機能を備えたものもあります。プロの料理人の火加減を再現したり、一般的な機器よりも高い温度設定ができたりする機器もあるため、加熱温度管理にも役立つでしょう。
また、HACCPに関する記録方法をデジタル化することで、業務効率化をさらに進めることが可能です。紙やホワイトボードでの管理から専門アプリによる管理に切り替えたことで、作業時間を9割削減し、取引先からの信頼向上につながった事例も報告されています。
参考:株式会社カミナシ 「こだわりの干物」を製造する紀州高下水産、衛生管理に『カミナシ』を導入し、承認業務の工数を9割削減 2022年
異物混入検知AIで点検作業を効率化
近年では、異物混入の点検にもAI技術が注目されています。大量調理施設衛生管理マニュアルには、原材料の異物混入がないか点検する作業も重要管理事項として記載されています。異物混入を防ぐためには、基準を明確にし従業員に周知したうえで常に慎重に確認することが大切ですが、人手不足や目視検査よる確認の限界などの課題もあります。

異物混入検知AIを活用すれば、人の目で確認するよりも高精度な点検が期待でき、検査の品質を一定に保つことが可能です。異物混入検知AIでは、カメラで撮影した映像をAIが分析することで瞬時に異物を発見することができるため、製品をカメラに通すだけで点検できます。点検作業の効率化と点検精度向上の両方が期待できるでしょう。しかし、異物混入検知AIシステムでは、誤検知の懸念も挙げられることがあります。誤検知が多いとかえって効率化を妨げるため、精度の高いシステムや環境に合うシステムを選ぶこともポイントです。
衛生モニタリングAIで衛生環境を管理
AI技術とカメラを組み合わせる方法は、衛生環境のモニタリングにも役立ちます。先述したAIが適切な手洗いかを判定するシステムの開発事例のように、個人の感覚などに頼りがちな手洗い作業も、衛生モニタリングAIシステムによって管理することが可能です。

例えば、衛生モニタリングAIシステムを活用し、医療現場における手指衛生を管理することも可能です。医療現場では、患者さまに触れる前後や清潔無菌操作の前など、動作のタイミングごとに手指衛生が求められます。AIモバイルカメラを利用して、各瞬間の手指衛生の実施を確認するシステムも開発されています。
また、人が不在の時間帯でもネズミの発生を検知できる、AI搭載のカメラシステムも開発されています。飲食業界ではネズミ被害が大きな損失につながるため、店舗や倉庫の課題解決に役立つことが期待されています。
参考:PR TIMES 感染の8割は手から!WHOが推奨する手指衛生の「5つの瞬間」をAIカメラシステムが検知 2025年
PR TIMES 飲食業界で深刻化するネズミ被害に対抗!旭東みらいテクノロジー、AI搭載「ネズミ検出カメラ」を開発 2025年
最新技術を活用したナリコマのセントラルキッチン!
ナリコマのクックチル食品を製造するセントラルキッチンは全国に6ヶ所あり、最新技術を積極的に取り入れています。衛生管理ではHACCPの理念に基づき、手洗いや異物混入対策などのルールを多数設けております。データの活用もセントラルキッチンの強みで、加熱・冷却のそれぞれの段階で温度を記録・管理しており、安心・安全なお食事を担保しています。また、AIで導き出したルートで配送も効率的に行っております。

自施設での厨房整備が難しい場合は、ぜひナリコマのクックチルやニュークックチルのご利用もご検討ください。HACCPの理念に基づいて製造されたクックチル食品が個別包装された状態で届くため、厨房での衛生管理をより効率化できます。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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