近年、AIはさまざまな方面から注目を集めています。飲食店や病院、介護施設などの厨房でも、少しずつ導入されるようになってきました。今回の記事では、厨房業務におけるAIの活用事例を紹介。自動化や省人化などにつながる事例をピックアップし、導入時に確認すべきポイントもまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みください。
目次
AIによる改善が期待される厨房業務の現状
AIの主なメリットとは
AIは「Artificial Intelligence」の略称で、日本語では「人工知能」と呼ばれるコンピューター技術のことです。機械が人間と同じような学習・判断・予測などを自動で行い、データやパターンを収集・分析しながら成長します。一般的に、導入することで次のようなメリットがあるとされています。
- ビッグデータの収集と活用
- 自動化による生産性向上
- 慢性的な人手不足の解消
- 人件費や採用費などの削減
- 長時間作業における人的ミスの減少
- 24時間体制の監視によるリスク回避と安全性向上
- 高温・高所の現場、被災地等における危険作業の代行 など
課題が多い厨房業務の現状
では、AIによる改善が期待される厨房業務の現状をみていきましょう。
人手不足の深刻化
厚生労働省が公表している「一般職業紹介状況」の資料によると、令和7年8月の有効求人倍率は1.20倍、新規求人倍率は2.15倍です。これを飲食物調理従事者に限定すると、有効求人倍率は2.37倍、新規求人倍率は3.68倍となり、明らかに高水準であることがわかります。厨房の人手不足は以前より問題視されていましたが、労働人口が減少傾向にある近年では特に深刻化しているのです。
各種コストの高騰
各種コストの高騰は、今や一般家庭にも影響を及ぼしている問題です。2020年以降、社会はさまざまな変化を迎えました。新型コロナウイルス感染症の大流行による経済活動の停滞、世界的に発生した異常気象、ロシアのウクライナ侵攻、中東地域の情勢悪化、円安の進行といったことが続き、結果的に原材料費やエネルギー費、人件費などが高騰してしまったのです。こうした不安定な状況は、しばらく続くとみられています。

厳しい労働環境
厨房の労働環境は厳しく、一人ひとりの負担が大きくなりがちです。前述したような人手不足の問題も影響し、長時間労働や早朝・深夜帯の勤務が常態化していることもあります。また、調理に使うガスコンロや厨房機器などがあるため、高温多湿による熱中症リスクも高いといわれています。令和7年6月1日以降は厚生労働省が下記のような職場を対象に熱中症対策を義務化。日常的に食事を提供する飲食店や病院、介護施設などの厨房はこの件に該当しており、適切な対応が求められています。
「WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業
※厚生労働省リーフレット「職場における熱中症対策の強化について」より抜粋
DX化(デジタル化)の遅れ
日本はパソコンやスマートフォンが広く普及している一方、AIの開発などは他国よりも遅れています。また、従業員の高齢化やIT人材不足など、さまざまな理由によってDX化(デジタル化)が進まない業界は多いようです。厨房においてはデジタル技術の活用が少しずつ増えていますが、まだまだアナログな作業も残っています。
厨房業務におけるAI活用事例
厨房業務におけるAI活用は、まだ実験段階であることも多いものの、どの事例をみても期待値の高さがうかがえます。本項目では、その一部をピックアップしてみました。
国内での事例
惣菜の盛り付け作業をロボットに置換
ある惣菜工場では、盛り付けロボットを導入しています。時間当たり1,000〜1,500食の生産を目標としているものの、近年大きな問題となっている人手不足にも悩まされていたとのこと。一部の作業を自動化したことにより、人員は2名削減。今後、ロボット活用の幅が広がることにも期待しているようです。
害獣・害虫駆除対策としてAIデバイス設置
ある介護施設では、害獣・害虫駆除の実証実験として厨房にAIデバイスを設置しました。照明がない空間にも適した赤外線センサー搭載の検知システムで、ネズミやゴキブリなどの発生を24時間監視。害獣・害虫の増加が問題となっている昨今では、こうしたデバイスの需要も高まりそうです。
AIの需要予測による厨房業務効率化
飲食店における需要予測をAIが行い、業務効率化や食材・エネルギーのロス削減を狙った事例もあります。販売実績・営業日カレンダー・販促キャンペーンなどの店舗データに加え、気象データもAIが学習。高精度の需要予測を立てることで人員配置や発注量・仕込み量を最適化したり、厨房機器の無駄な稼働を抑えたりする効果が期待されています。
調理から配膳までロボット従業員が行うレストラン
羽田空港内のレストラン「AI_SCAPE(アイ・スケープ)」では、調理から配膳まで、すべての工程をロボット従業員が担当しています。厨房ではレトルト食品の加熱調理や盛り付けを行い、その後も、配膳ロボットへの受け渡しやドリンクの提供などが行われます。厨房だけに限定しないAIの活用は、将来的にさらなる注目を浴びそうです。

海外での事例
【韓国】大量調理ロボットによる自動化
韓国には、給食向けの大量調理ロボットを開発している企業があります。厨房をハイリスクな環境と捉え、食材の投入や調理、排出をロボットに任せて自動化。従業員が事前準備と検収を行うだけで済むような現場を目指しています。調理のバリエーションは揚げ物、スープ、炒め物などがあり、最大2,000人分まで対応可能です。
【イギリス】モニタリングによる食品ロス削減
イギリスでは、飲食店の食品ロス対策として、モニタリングシステムが開発されています。厨房のごみ箱をモニタリングし、廃棄された食品の種類・量を判別。判別しにくいものは従業員が正確なデータを入力することで、AIが学習してくれます。また、廃棄食品の換算コストとごみ処理時に発生するCO2排出量も表示。こうしたデータを収集・分析し、食品ロスの削減につなげています。
厨房業務にAIを導入する際のポイント
AIは厨房業務の自動化や省人化に効果をもたらしますが、導入時に注意すべきポイントがあります。本項目では、特に重要な3つのポイントをみておきましょう。
技術的な知識と対応力
AIを正しく活用するには、従業員にもある程度の技術的な知識と対応力が必要です。勉強会や研修などを十分に行うのはもちろん、外部の専門家と連携をとり、サポート体制を整えておくことも大切でしょう。
現場に最適なAIの選定
現場に合わなかったり、従業員が使いにくいと感じたりするAIを導入しても、その効果はあまり期待できません。課題を丁寧に洗い出し、どのようなAIが適しているのか、じっくりと選定する必要があります。場合によっては、専門家に相談するのもいいでしょう。

イニシャルコストとランニングコスト
一般的な厨房機器や設備と同じく、AIの導入にはイニシャルコストとランニングコストがかかります。導入前にはシミュレーションを行い、費用対効果を具体的な数値でみておくといいでしょう。また、補助金・助成金制度が利用できる可能性もあります。情報収集や自治体への問い合わせなどは、早めに済ませておきましょう。
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