近年、AI(=人工知能)の技術は進化し続けており、さまざまな用途で活用されるようになりました。医療・介護業界でもサポート役として注目され、少しずつ導入が進められています。今回お届けするのは、病院や介護施設に欠かせない栄養管理業務におけるAIの活用事例です。AIが注目される理由、導入する際に注意すべきポイントなどもまとめて解説しますので、ぜひ参考になさってください。
目次
栄養管理業務でAIが注目される理由
栄養管理業務でAIが注目される理由は、主に二つあります。一つは「管理栄養士・栄養士の負担軽減」、もう一つは「栄養管理の精度向上」です。それぞれ詳しくみていきましょう。
管理栄養士・栄養士の負担軽減
栄養管理の中核を担う管理栄養士・栄養士の業務は多岐にわたりますが、職場内に同職種の人がいないこともあります。そのため、毎日が忙しくなりがちです。特に、給食を提供する病院や介護施設では負担が大きいといわれています。365日分の献立作成に加え、個別のアレルギー対応、摂食嚥下機能にあわせた食形態の選択、栄養成分の調整、栄養指導の実施など、食生活全般に関する専門的なサポートが求められるのです。さらに、人手不足が深刻な給食の現場では、管理栄養士・栄養士が調理業務も兼任しなければならないことがあります。
また、業務上の悩みを相談できる相手がいなかったり、連携を取るべき医師・看護師・介護福祉士・調理師などとのコミュニケーションがうまくいかなかったりすると、精神的な負担も増えてしまうのです。こうしたさまざまな負担を少しでも軽減するため、AIに栄養管理業務の一部を任せる方法が注目されています。

栄養管理の精度向上
食事は、入院患者や施設利用者の健康状態に直結するものです。病院給食は「治療の一環」、介護給食は「健康維持のために必要な栄養摂取」という重要な目的があります。栄養管理業務に不備があると医療・介護の品質が低下し、病状が悪化したり、心身の健康が損なわれたりするかもしれません。こうしたリスクを下げるために、栄養管理の精度を向上させるAIが注目されているのです。
栄養管理業務におけるAI活用事例
では、栄養管理業務においてどのようなAI活用事例があるのかみていきましょう。
献立作成をAIで自動化して負担軽減
献立作成業務は、管理栄養士・栄養士に大きな負担がかかります。前述した通り、病院や介護施設では食事に重要な役割があるため、きちんと食べてもらえるような工夫も必要です。味や見た目の良さはもちろんですが、患者や施設利用者が飽きないようにすることも大切でしょう。しかし、個別対応の献立を考えたり、限られたコストで栄養バランスを整えたりするには、ある程度の時間がかかってしまいます。
そんな献立作成業務の救世主といえるのが、AIを活用した自動献立作成システムです。食材・コスト・栄養バランス・アレルギーなどの制約を考慮し、複数のバリエーションで献立を自動作成。開発元やサービスの種類によって詳細は異なりますが、過去のデータから食材の出現頻度を分析したり、地域色や季節感などを取り入れたりする機能もリリースされており、サポート力も充実しているといえるでしょう。また、自動献立作成システムは研究・開発を行っている企業が多く、今後もさらなる進化が期待できそうです。

食事摂取量をAIの分析力で正確に把握
病院や介護施設では、食事摂取量を正確に把握することが栄養管理全体の品質向上につながります。しかし、看護師や介護職員などの目測によって摂取量を確認する場合、人によって基準が変わってしまい、データの正確性が損なわれるのです。そうした問題を解決するため、食前と食後に撮影した食事の画像をAIが分析し、摂取量を判定するシステムが開発されています。分析結果を患者や施設利用者のデータに統合することで、多角的なサポートを実現する狙いもあります。
AI音声入力により日々の記録業務を効率化
医療・介護の現場では、さまざまな職員が記録業務に追われています。栄養管理においても、記録は重要な業務の一つ。患者や施設利用者の状態・状況を詳しく正確に記録することが求められます。しかし、記録内容は個人ごとに異なり、時間もかかることが現場の課題として挙げられています。AIを活用した音声入力システムは、患者や施設利用者とのやりとりをそのまま録音し、自動で要約します。栄養管理業務の中では、特に栄養指導の記録において利便性が高く、ほかの職員とのデータ共有もスムーズになることが大きな魅力となっています。
栄養管理業務にAIを導入する際のポイント
栄養管理業務へのAI導入については、主に次のような注意点があります。
導入時のポイント①AIに任せる業務と目的を明確にする
「AIはツールの一つであり、万能ではない」という点は、管理栄養士をはじめ、栄養管理業務に携わる職員すべての共通認識として持っておく必要があります。その上で、AIにどのような業務を任せるのか検討しましょう。「作業時間を◯%削減する」などの具体的な目的を示すと、導入効果がイメージしやすくなります。
導入時のポイント②データの管理体制を整える
栄養管理業務では患者や施設利用者の個人的なデータを取り扱います。情報漏洩などが起こらないよう、AIで収集・分析するデータの管理体制を整えなければなりません。AIの運用全般については、セキュリティ対策を含め、事前準備や確認に十分な時間をかけましょう。また、研修などを実施し、職員のAIリテラシーを高めることも重要です。

導入時のポイント③AIの専門家や開発元と連携する
AIを導入し継続的に活用していくには、専門家や開発元との連携が欠かせません。特に、病院や介護施設の栄養管理業務は休みなく行うため、必然的にAIの活用頻度も高くなります。AI専門の人材を雇用したり、外部の定期的なサポート体制を築いたりしておくと、職員も安心して業務にあたることができるでしょう。
導入時のポイント④コストの増大も視野に入れる
導入するAIの種類にもよりますが、初期費用や維持費がかかることも想定しておかなければなりません。現場に必要なAIがどのようなものなのかじっくり検討し、導入後の費用対効果をシミュレーションしておいたほうがいいでしょう。
AIが普及すると管理栄養士の仕事はどうなる?
昨今のメディアでは、「AIによって仕事が奪われる」といった文言も散見されます。栄養管理業務におけるAI活用が一般化した場合、管理栄養士・栄養士の仕事はどうなるのでしょうか? 結論から先にお伝えすると、管理栄養士・栄養士の仕事が完全にAIと置き換わることはありません。理由は、AIと人が異なる役割を担っており、人にしかできない業務もあるからです。

AIは万能ではなく、100%信用できるツールではありません。ここまで述べてきたように、データの収集・分析、記録業務のサポートなどでは安定した能力を発揮してくれるでしょう。しかし、患者や施設利用者それぞれに寄り添ったカウンセリングをしたり、イレギュラーな状況に対応したりするのは、人である管理栄養士・栄養士だからこそできることなのです。
また、病院や介護施設の栄養管理業務では多職種連携も欠かせません。AIが意見交換をしながらより良い業務を行っていくことは難しく、人と人とのやりとりが重要になります。こうした点から考えると、将来的にAIは管理栄養士・栄養士を支援する形で進化していく可能性が高いといえるでしょう。
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