リスクマネジメントの一つであるBCP(事業継続計画)は、自然災害や感染症拡大などの緊急事態が発生しても事業を続けられるようにするための取り組み。人の命を預かる介護・福祉・医療事業では特に重視されていることから、これまでに義務化も進められてきました。
BCPに欠かせない訓練の目的は「従業員への周知と防災意識の定着」と「改善点の発見と見直し」です。基本的には、以下のような手順で実施します。
①BCP策定と事前準備
②机上訓練(図上訓練)・実働訓練の実施と記録
③訓練結果の評価
④BCPの修正と更新
万一の際にBCPがきちんと機能することで、介護福祉施設の利用者や病院の患者の安心感にもつながります。策定・訓練などを丁寧に行い、介護福祉サービスや医療サービスの提供体制をより良く整えましょう。
目次
BCP訓練の目的とは?

防災用品は、その収納場所や使い方がわかっていなければ、いざというときに活用することができません。同様に、緊急時の対応についてまとめたBCPも、策定しただけでは意味がないといえます。冒頭でお伝えした通り、BCP策定後には訓練が必要です。訓練の実施には次のような目的があります。
BCP訓練の目的①従業員への周知と防災意識の定着
緊急事態は、いつ、どのように発生するのかわかりません。迅速に適切な対応がとれるように、BCPはすべての従業員に周知しておくべきです。訓練を行うと、緊急時のイメージに具体性が増し、一人ひとりが担う役割も明確になるでしょう。
また、訓練を日常的な業務の一環として取り入れることで、防災意識の定着も期待できます。従業員の防災意識が高いほど、いざというときの対応力も身に付きやすくなるでしょう。結果的に、従業員自身の安全を守ることにもつながります。
BCP訓練の目的②改善点の発見と見直し
時が経てば、事業内容や周辺の事情が変わるかもしれません。つまり、最初に策定したBCPがその後も通用するとは限らないのです。訓練によって、思わぬ改善点が見つかることもあります。従業員同士で意見交換をすれば、より良い内容に変更することもできるでしょう。さらに、設備などの不足・不備があっても事前に対処でき、安全性や安心感が高まります。
介護福祉施設や病院でのBCP訓練は特に重要

介護福祉施設には高齢者や障がい者、病院には病気を抱えた患者が集まっています。介護や看護、治療に直結する業務が滞った場合、大勢の命が危険にさらされてしまうのです。
特に、新型インフルエンザなどの感染症では重症化のリスクが高い人も多いため、深刻な事態を引き起こすかもしれません。従業員も感染して業務が回らなくなれば、さらなる混乱が生じてしまうでしょう。
また、介護福祉施設や病院は公共性が高い場所です。そのため、地域に貢献する役割も求められています。介護福祉施設であれば避難スペースの提供や在宅高齢者の支援、病院であれば急増した感染者や負傷者の受け入れなど、いろいろな役割が考えられます。
平時の主要な業務を継続することに加え、緊急時の対応を可能にする意味でも、定期的なBCP訓練が欠かせないといえるでしょう。すべての従業員がBCPを十分に理解し、訓練によって適切な対応力を身に付けていれば、弱い立場にある施設利用者や患者を安全に守り抜くことができるのです。
在宅医療の現場にも求められるBCP
BCP策定は、すべての介護福祉施設・事業所、そして災害拠点病院において義務化されています。2026年度の診療報酬改定では、通院が難しい在宅患者をケアする病院・診療所も義務化の対象になりました。医療機関では策定・訓練などの負担が増えますが、在宅患者はこれまで以上に安心して医療を受けられるようになるでしょう。
BCP未策定の施設・事業所はどうなる?
そもそもBCPを策定していない介護福祉施設・事業所では、業務継続継続計画未策定減算が適用され、基本報酬が減額となります。また、医療機関の場合は減算ではなく、機能強化加算や救急外来医学管理料といった診療報酬の要件を満たせなくなり、事実上の算定不可となります。経過措置がとられるケースもありますが、人の命を預かる施設・事業所としては、一刻も早くBCP策定を進め、適切な訓練を行うことが重要といえます。
BCP訓練の主な種類と内容

BCP訓練を大まかに分類すると、机上訓練(図上訓練)と実働訓練があります。それぞれを簡単に説明するなら、机上訓練は「会議室などに集まって議論しながら、緊急時の状況を想定した上で役割分担や対応手順などを確認する訓練」、実働訓練は「現地でBCPの内容に沿って行動し、対応力を向上する訓練」です。
訓練の実施方法は必ずどちらかというわけではなく、場合によっては机上と実働を組み合わせて行います。では、主な訓練の内容を具体的にみていきましょう。
電話連絡網・緊急時通報訓練
従業員同士が連絡を取り合うことができるかどうかを確認する訓練です。連絡網を準備し、きちんと機能するかどうか試します。連絡網を常に最新の情報にしておくことが重要なポイント。スムーズに連絡できる状況を整えておくと、業務を行う人員確保にも役立ちます。
対策本部設置訓練と意思決定訓練
対策本部設置訓練は、緊急事態が発生したと想定して対策本部を立ち上げる訓練です。内容は対策本部役員向け。どのような状況で立ち上げるのか、誰がどこに集まるのかなど、緊急時の初動対応を決めておきます。意思決定訓練は、状況の変化にあわせて対策本部役員が何をすべきか具体的にイメージする訓練です。
参集訓練
早朝や夜間、休日などの緊急時を想定し、従業員を集める訓練です。徒歩や自転車で移動可能な従業員を対象に、限られた人数で初動対応ができるかどうかを確認します。
代替施設への移動訓練
現在の施設などが使えなくなった場合を想定し、代わりとなる場所への移動や復旧の手順を確認する訓練です。前述したように、公共性の高い介護福祉施設や病院は緊急時の拠点となる可能性がありますが、甚大な被害を受けた際には移動を余儀なくされるかもしれません。施設利用者や患者をどのように移動させるか、各種ケアに関する重要な情報をどのように持ち出すかなど、細かなシミュレーションをしておく必要があります。
バックアップデータを取り出す訓練
電気や通信が止まった状況を想定し、業務に必要なバックアップデータを取り出す訓練です。近年では電子データが増えていますが、パソコンや通信機器がまったく使えない可能性を考え、紙ベースでの復旧を目指す訓練もあります。
総合訓練
BCPに基づき、緊急事態発生から復旧に至るまでの流れを時系列で確認する訓練です。近隣の関連事業者や施設、自治体などと連携して行われることもあります。
BCP訓練を実施する際の手順

介護福祉施設や病院では、立場が弱い高齢者や障がい者、患者のみなさんを守る使命もあります。BCP訓練は次のような手順を踏み、丁寧に行うことが重要です。
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①BCP策定と事前準備 |
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BCP訓練の目的を確認し、訓練の種類を決定。緊急事態を想定したシナリオなど、基本となる内容を作成します。また、全従業員への事前説明、システムなどの準備も行います。 |
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②机上訓練(図上訓練)・実働訓練の実施と記録 |
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BCPの内容に沿った訓練を実施し、記録に残します。 |
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③訓練結果の評価 |
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すべての訓練が終わったら、記録をもとに結果を振り返ります。訓練によって見えた課題や改善点があれば、まとめておきます。 |
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④BCPの修正と更新 |
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課題や改善点に対し、BCPを適宜修正します。また、必要であれば情報を新しい内容に更新し、改めて全従業員に周知します。 |
BCP訓練の実施記録とは
BCP訓練を実施した際の記録は、以下のような点をまとめておきます。
◆訓練の概要
実施日、参加者、参加人数、想定した状況(訓練のシチュエーション設定)を正確に記録する。
◆実際に行った訓練内容(時系列)
誰が(Who)、いつ(When)、どこで(Where)、何をしたか(What)を時系列で並べ、具体的に記録する。
◆計画通りにできたこと、できなかったこと
計画通りにできたこと、計画通りにできなかったことをまとめる。計画の中断や変更があれば、そのときの状況や時間などもあわせて記しておく。
まとめた記録は、前述したステップ③訓練結果の評価で活用しましょう。
BCP策定・訓練に関する具体的な取り組み
介護福祉施設や病院においてBCP策定・訓練がどのように行われているのか、具体的な取り組みをピックアップしました。
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BCP策定・訓練に関する取り組み |
目的や効果 |
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医療法人社団洛和会 洛和会ヘルスケアシステム【京都府】 |
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介護施設利用者の避難が必要な場合に、独歩可能者・避難困難者等がわかるよう色分けすることを定式化 |
職員の共通認識を形成し、施設全体の状況を把握しやすくする |
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避難誘導が終わった居室は、誰が見てもわかるようにする |
誘導の重複を防ぎ、無駄をなくす |
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パンフレットなどに掲載される間取り図を図上訓練に使用 |
準備が少なく、スムーズに訓練が進められる |
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職員が自身の判断に基づき「どのように行動するか」を根拠とともに説明する |
自分以外の職員がどのように動くか知ることができ、判断力が磨かれる |
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医療法人社団友愛会 岩砂病院・岩砂マタニティ【岐阜県】 |
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産科病棟において「発災から60 分以内に分娩ができる状態、緊急産科外来に対応できる状態にする」ことを目標としたブレインストーミングを実施し、各対応の優先度、必要なリソース、所要時間などを確認する |
最も人員が少ない深夜帯の対応が強化される |
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リハビリテーション科において、屋外でリハビリを行う場合は「患者名、担当セラピスト、行き先(ルート)、出発時間、帰院予定時間を明記する |
日常的な取り組みとして定着し、災害時にも患者やセラピストの所在がわかりやすい |
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日本赤十字社【東京都支部】 |
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通常の災害救護訓練や防災訓練に加え、大学や企業などと連携するパートナーシップ協定を結ぶ |
国士館大学のキャンパスを、都外から集まる救護班へのロジスティックセンターとして使用し、大規模災害時にも高い対応力を維持する |
緊急時の備えは確実に!

BCPを機能させるには日頃の訓練が重要となりますが、それ以外にもきちんと備えをしておくことでより安心感が高まり、いざというときに地域とも連携しやすくなります。介護・福祉・医療事業における高齢者や障がい者、患者への給食は、緊急時でも止めるわけにはいきません。水はもちろん、非常食や栄養機能食品などもしっかりと備蓄しておく必要があるでしょう。
ナリコマでは、介護福祉施設や病院に最適な完全調理済み食品をお届けしております。緊急時にもできる限りの対応を心がけており、非常食もご用意。提供しやすさやおいしさにこだわっているだけでなく、嚥下機能に不安がある方向けにソフト食、ミキサー食、ゼリー食も展開しています。緊急時にも対応可能な献立サービスをお探しの際には、ぜひ一度ご相談ください。
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