ケアの概念にはさまざまな事柄が関係するため、教育方法にも工夫が必要です。ケアの本質や実践における課題を把握したうえで、効果的な研修を設計していきましょう。この記事では、看護や介護におけるケアの概念のポイントを押さえながら、ワークショップ型教育のメリットや研修設計のコツ、体験学習プログラムで得られることを解説します。
目次
看護や介護に必要なケアの概念
ケアとは何かを端的に解説するのは難しく、教育方法を検討する際にも悩まされることがあります。日常生活でも「ケア」という用語はよく使われていますが、看護や介護の現場ではプロとしての視点から考えることが必要です。ケアの概念や本質、実践による課題などを改めて振り返りながら、教育方法を検討していきましょう。
さまざまな広がりを持つケアの本質
看護や介護についてのケアの本質を探っていくと、さまざまな広がりを感じることもあるでしょう。公益社団法人日本看護協会による「改訂版 看護にかかわる主要な用語の解説」の中では、「ケアリング」について、世話をする・面倒を見る・思いやるといった行動を指すと表されています。また、ケアを提供する人は、提供する相手を大切に思い、成長や自己実現に向けて集中して取り組むことや、それによってケアを提供する人自身も成長することなどが定義されています。
公益社団法人日本介護福祉士会で提示されている「求められる介護福祉士像」の中では、尊厳と自立を支えるケアを実践することが挙げられ、認知症ケアの実践力の向上等も求められています。

ケアの概念と実践による課題
実際の現場においては、ケアをする側の意思に偏ってしまうことも見られ、ケアをされる側の自立を否定してしまうといったケースもあるため、ケアの本質では実践における課題を認識することも大切です。また、ケアをされる側の状態によってケアの仕方も変化するため、状況に合わせたケアのスキルを学ぶことも必要です。ケアの本質は、実際に業務に就いてからも悩まされることがあるため、継続した研修の設計などでスタッフをサポートできると良いでしょう。
ケアの種類に合わせた教育方法
ケアを行う際には、ケアの概念や本質を理解することに加えて、実践に向けた具体的なケア方法を学ぶことが必須です。ケアの本質を押さえたうえで、さらにケアの種類ごとにより詳しく実践的な研修を構成するのも役立つでしょう。
例えば、介護では、食事介助・入浴介助・排泄介助の三大介助と呼ばれるケアが身体介護の基本となり、看護におけるケアにも含まれる内容です。ほかにも、喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケア、褥瘡のケア、介護事業所向けの法定研修となっている認知症ケアやターミナルケアなど、個別に学ぶべきケアはさまざまにあります。褥瘡のように介護士が行えない処置と行うべきケアが混在する場合もあるため、業務の範囲も改めて抑えておくと参考になるでしょう。
また、精神的サポートもケアの本質につながり、高齢者の話し相手になるといった心のケアも日常的に必要です。こうした個別のケアについて、より身に付けやすい教育方法を検討してみましょう。
ワークショップ型教育のメリットとは?
ワークショップ型教育とは、参加者が自主的に活動しながら実践的なスキルを身に付ける教育方法です。例えば、特定のテーマや課題について、話し合ったり、実際に作業を行ったりして学びます。
講義とはまた違うワークショップの魅力
講義型の研修では、受講者は聞き手に徹する場合が多いでしょう。知識や技術を知るうえで効果的ではあるものの、話を聞いただけで全て理解したつもりになってしまうケースもあり、実践で活かしづらいデメリットが難点です。研修にワークショップを取り入れることで、実際に取り組んでさらに理解を深めるステップを組み込むことができます。

集中力や理解力を高めるワークショップ型教育
ワークショップ型教育では、例えば下記のようなメリットが挙げられます。
- 研修参加時の集中力を維持しやすい
- 研修へのモチベーションが高まる
- 自身で考えながら取り組むことで理解が深まる
- 他の価値観を知ることで視野が広がる
- 疑問点をすぐに解決しやすい
- 社内研修では良好なコミュニケーションの構築につながりやすい
一方通行になりやすい講義と異なり、ワークショップによる体験を通じて集中力や理解力が高まり、得られるメリットが広がります。しかし、一方で下記のようなデメリットもあります。
- 一度に提供できる内容が限られ、幅広い知識の提供には不向き
- 研修の質が参加者によって左右される
- その場にいるだけで満足してしまうケースがある
- 進行役に専門的なスキルが望まれる
これらのデメリットを上手に解消しながら、コツをつかんだワークショップ型教育を構築していきましょう。
ワークショップ型教育を研修に加えるコツ
自社施設でワークショップを取り入れた研修を行う際には、ワークショップの一般的な基礎を把握しておくと設計しやすくなります。ここでは、ワークショップの環境作りや設計手順のコツ、役立つ手法を解説します。
ワークショップの環境作り
ワークショップを取り入れた研修では、ファシリテーターと呼ばれる進行役のスキルと、会場の雰囲気が重要です。ファシリテーターは、参加者の積極的な気持ちを引き出せる力のある人を選ぶと良いでしょう。雰囲気作りでは、参加者が安心して発言し行動できるような雰囲気が求められます。アイスブレイクと呼ばれる、雑談やゲームの時間を作り場を和ませるのも効果的な方法です。
ワークショップの設計手順
ワークショップの設計手順やポイントは、下記を参考にしてみてください。
①ワークショップや研修の目的・テーマを決める
②ワークショップや研修のゴールを決める
③ファシリテーターの決定や会場などの準備を行う
④参加しやすい人数を検討する
⑤タイムスケジュールを作成する
⑥個人ワークを取り入れる
⑦フィードバックと振り返りのステップを取り入れる
いきなりグループワークに取り掛かると受講者がなじめない場合もあるため、個人ワークから始めて段階を経てグループワークに移行するのもおすすめです。事前準備では必要な用具もそろえましょう。ワークショップをスムーズに進められるように、あらかじめルールを設けて共有するのも方法の一つです。フィードバックと振り返りのステップは、次のワークショップに向けた改善点を検討するうえで役立ちます。

ワークショップで役立つ手法とは
ここでは、ワークショップで良く使われる手法を解説します。研修のテーマに合わせて効果的な手法を取り入れましょう。
ブレインストーミング
参加者がテーマに沿った発想や自由なアイデアを出し、紙やホワイトボードなどに書いていく手法です。グループに分かれて書き出していき、連想の結果などを導き出します。出されたアイデアについての否定は必要なく、多数のアイデアを出すことと新しい発想を引き出すのがポイントです。
親和図法
たくさんのアイデアを整理するのに効果的な手法で、テーマに沿った連想の結果を書き出し、親和性のある内容などでグループに分けるのがポイントです。グループ分けを行うことで情報が整理され、共通の認識が生まれやすくなり、問題の全体像も見えてきます。
ワールドカフェ
5人程度のグループを作り、リラックスした雰囲気の中で一つのテーマについて話し合ってもらう手法です。グループ替えを途中で行い、多くの人と話すきっかけを作るのもポイントです。メンバー内での理解が深まり、新しいアイデアを得るきっかけになります。
体験学習プログラムで得られること
実習は実際の現場で行われますが、「体験」には実習とは違う捉え方があります。体験に視点を置いて学習プログラムを考えることで、また違う教育方法が見えてくることもあるでしょう。
介護では、職場体験プログラムとして、未経験者が介護職を体験し、向き不向きや職場選びなど、就業までの道のりを考えることができるサービスもあります。実際に体験することによって、より具体的に検討できるのが魅力です。こうした体験に視点を当てた教育方法は、自社施設で研修を行う際にも役立つでしょう。

三大介助の一つ「食事介助」を体験する
介護では、実際に食事介助を体験するプログラムもよく見られます。利用者さまの普段の姿勢で食べ物を食べさせてもらう、といった体験をすることで、利用者さまの気持ちや業務の注意事項などをより理解できるようになるでしょう。ケアをされる側の立場になることで、課題も見えやすくなります。また、介護食を実際に食べてみる体験も役立つ学習プログラムです。
厨房業務の改善にも体験が役立つ
病院や介護施設の厨房では近年人手不足が問題となっており、クックチルやニュークックチルなどの新調理システムへの変更で改善を促す例も多いです。従来のクックサーブ方式と比べると大きく変わる部分がありますが、厨房改革にも体験を通した学習プログラムを取り入れることで理解を促すことができます。新調理システムに使用する専用機器に触れたり、食事を試食したりといった体験をしてもらうことで、厨房改革のイメージを持ちやすくなるでしょう。
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