2025年から、改正された新しい育児・介護休業法が段階的に施行されます。これにより、小学校就学前までの子供がいる場合の残業免除や、介護のためのテレワーク導入などが可能となり、育児中や介護中により働きやすくなることが期待できます。この記事では、今回の改正内容とあわせて、制度の周知方法など事業所側が押さえておきたいポイントを解説します。法改正に沿った就業規則や勤務体制の見直しを行う際にぜひお役立てください。
目次
育児・介護休業法の改正までの歩み
育児・介護休業法は、育児休業法として1991年に制定され、翌年の1992年4月から施行されました。改正に至る背景には、少子化により労働力人口が減少する中で、子育てをしながら働きたいと願う人が多くいるにも関わらず実現しにくい環境があります。また、高齢化が進み、家族の介護をしながら働く人が増えたことも大きく影響しています。育児や介護により離職してしまうことを避けるため、仕事と子育てや仕事と介護を両立できるようにすることが重要視されるようになりました。
2021年に改正され2022年から段階的に施行された内容では、育児休業を取得しやすい環境の整備や労働者に対する周知や意向確認などが義務付けられ、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されるなど、より育児や介護のために休業を取得しやすい環境作りが意識されました。
2024年の改正で2025年から段階的に施行される内容では、仕事と育児や介護の両立に加え、誰もが活躍できる社会の実現が意識されています。多様な働き方を組み合わせて育児中のキャリア形成も可能とし、仕事と介護を両立できる支援制度を活用できずに離職してしまう状況の防止も考えられています。
育児・介護休業法の改正後の内容まとめ
2025年から施行される育児・介護休業法の改正の概要は主に下記の3点です。
- 子供の年齢に合わせた柔軟な働き方の実現をより充実させる
- 育児休業の取得状況の公表義務の範囲を拡大させる
- 仕事と介護の両立支援制度の周知を強化させる
改正ポイントの詳しい内容は下記をご参考ください。
改正内容 |
変更点のポイント |
義務の程度 |
就業規則の見直しの必要性 |
施行日 |
子の看護休暇の見直し |
・小学校3年生修了までが対象 ・取得理由に「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式、卒園式」を追加 ・継続雇用期間6か月未満の労働者の除外不可 |
義務 |
必要 |
2025年4月1日 |
所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大 |
・小学校就学前の子を養育する労働者が対象 |
義務 |
必要 |
2025年4月1日 |
短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加 |
・テレワークを追加 |
ー |
選択する場合は必要 |
2025年4月1日 |
育児のためのテレワーク導入 |
・3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できる |
努力義務 |
必要 |
2025年4月1日 |
育児休業取得状況の公表義務適用拡大 |
・従業員数300人超の企業が対象 |
義務 |
ー |
2025年4月1日 |
介護休暇を取得できる労働者の要件緩和 |
・継続雇用期間6か月未満の労働者の除外不可 |
ー |
労使協定を締結している場合は必要 |
2025年4月1日 |
介護離職防止のための雇用環境整備 |
・介護休業や介護両立支援制度等に関する「研修の実施」「相談窓口の設置」「自社での利用事例の収集と提供」「自社での利用促進に関する方針の周知」のいずれかの措置を講じる |
義務 |
ー |
2025年4月1日 |
介護離職防止のための個別の周知・意向確認等 |
・介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知や意向確認を行う ・介護に直面する前の早い段階での情報提供を行う |
義務 |
ー |
2025年4月1日 |
介護のためのテレワーク導入 |
・要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できる |
努力義務 |
必要 |
2025年4月1日 |
柔軟な働き方を実現するための措置等 |
・育児期の柔軟な働き方を実現するための措置を講じる ・講じた措置の個別の周知や意向確認を行う |
義務 |
必要 |
2025年10月1日 |
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 |
・妊娠や出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取を行う ・聴取した意向について配慮する |
義務 |
ー |
2025年10月1日 |
法改正に伴う制度の周知と意向確認の仕方
先述したように、法改正に伴う取り組みでは「介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認」「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認」「妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取」などが必要です。
個別周知や意向確認、意向聴取を行う方法は主に下記の4つがあります。
- 面談
- 書面交付
- FAX
- 電子メール等
面談はオンライン面談も可能なため、従業員の希望も聞きながら最適な環境で行うと良いでしょう。FAXや電子メール等の方法は、従業員が希望した場合のみとなっているため注意が必要です。
個別周知や意向確認、意向聴取の時期や内容は個々に異なるため、それぞれあらかじめ内容を整理しておくのがおすすめです。給付金などの取得や制度の利用を控えさせるような個別周知や意向確認は認められないため、誤解を招くことのないように伝え方にも注意する必要があります。例えば、具体的には下記のような言動が当てはまります。
- 利用の申出をしないように抑制と捉えられる発言をする
- 申し出た場合の不利益をにおわせるように言う
- 利用の前例がないことを強調して伝える
上記のような言動は、個別の周知や意向確認時に限らず、全体的な観点から判断されます。一度上記のような言動を行った後に、個別の周知や意向確認が問題となる言動がなく行われた場合でも、利用を控えさせるような効果があったと認められれば、個別の周知や意向確認の措置の実施をしたと認められません。
資料でわかりやすく伝える
個別周知や意向確認の際には、わかりやすい資料を作成し提供するのも役立ちます。例えば、仕事と育児や仕事と介護の両立ができることをタイトルなどで目立たせて伝えて、自社の方針や目標、制度を利用した際のメリットなどを記載すると、従業員がより理解しやすくなるでしょう。
育児休業は性別を問わず取得できることや、時短勤務中や休業中に給付を受けられるなど、抱えやすい疑問への回答を踏まえるのも良い方法です。育児休業や介護休業等を申し出たことで不利益な扱いをしないことや、ハラスメント行為を認めないといった文面もあると従業員の安心感につながるでしょう。
厚生労働省のホームページでは、個別周知や意向確認書の記載例、社内研修用の資料をダウンロードできるため、参考にしてみてください。就業規則の作成や雇用環境整備にも役立てることができます。
育児・介護休業法の改正を人手不足解消につなげよう!
育児・介護休業法の改正によって変化させなければいけないことが増えますが、より働きやすい職場が意識されることをメリットと捉えると新しい改善策も見えてきます。自社の職場環境をより一層働きやすい環境に変化させ、採用力や定着率アップにつなげていきましょう。改正内容にあわせた変化は、取り組み方次第でより多くの人材採用につながる可能性もあります。
クックチルで厨房業務をより働きやすく改善
病院や介護施設の厨房業務は深刻な人手不足を抱えており、早朝からの勤務などシフトも過酷な状況であることが珍しくありません。しかし、調理方式を変えることでこうしたデメリットを解決できることがあります。中でも、クックチルやニュークックチルはおすすめの方法です。
クックチル食品を取り入れれば、再加熱や盛り付けのみで提供できるため、誰でも簡単に行うことができます。ニュークックチルシステムなら、盛り付けまで事前に行っておき食事の際に再加熱カートで自動的に加熱できるため、早朝や遅番の無人化も可能です。
ナリコマのクックチルが厨房運営をサポートします
ナリコマでは、病院や介護施設に特化したクックチル食品のご用意があります。介護食やアレルギー等の禁止食にも対応しているため、施設の厨房で個別に作る必要もありません。初めてでもわかりやすい調理レシピや動画解説があるため、仕事が覚えられないことによる離職も防ぎやすいでしょう。厨房改革にお悩みがある際は、ぜひ一度ご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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