2026年度診療報酬改定に伴い入院時の食事療養に係る見直しが行われ、2026年6月1日から入院時食事療養費に係る食事療養等の特別食加算の対象に嚥下食(嚥下調整食)が新設されます。
この記事では、2026年度診療報酬の改定内容全体の方針と、嚥下調整食が新設された背景や算定要件のポイントを解説します。算定条件を満たす嚥下調整食の特徴についてもわかりやすくまとめていますので、嚥下食作りや情報整理にお役立てください。
目次
2026年度診療報酬改定の具体的な方針

2026年度の診療報酬改定には、近年の社会情勢に伴う、物価や賃金の上昇、人口構造が変化する中での人材確保の難しさ、現役世代の負担を抑制する必要があることなどが背景にあります。そのうえで2040年頃を見据え、患者さまが適切に医療を受けられるようにすることと、医療従事者の持続可能な働き方につながる医療提供体制の構築が目指されています。また、より高度な医療や医療DX、イノベーションの推進などによる、安心・安全・高品質の医療の実現や、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保なども考慮されています。
主な基本方針のポイントは次のとおりです。
- 物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応
- 2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
- 安心・安全で質の高い医療の推進
- 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
中でも「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」は重点課題の位置付けです。人件費・医療材料費・食材料費・光熱水費・委託費などの高騰を踏まえた対応に加え、医療従事者の処遇改善や、ICT・AI・IoT等を活かした業務効率化などによる医療従事者の人材確保に向けた取り組みが具体的な方向性として示されています。

特別食加算に嚥下調整食が新設された背景
2026年度の診療報酬改定から、入院時食事療養費に係る食事療養等の特別食加算の対象に嚥下調整食が新たに追加されています。この改定もまた「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」の一つです。入院時の食事療養の質の向上を目指すうえで、以下のポイントを満たす嚥下調整食の新たな評価が行われることになりました。
- 美味しいこと
- 安全な食形態であること
- 適切な栄養量があること
改定前の特別食は、腎臓食や肝臓食などの疾病治療の直接手段としての食事が中心でした。今回の改定でこれらは「治療食」に位置付けられています。そして新たな項目として、摂食機能や嚥下機能が低下した患者さまに提供する食事として「嚥下調整食」が追加されました。
嚥下調整食の算定要件と施設基準

特別食加算について「1日につき3食を限度に1食につき76円」という条件は改定前と変更ありません。ここでは、嚥下調整食の主な算定要件と施設基準をまとめます。
適切な嚥下調整食作りとミールラウンドの実施
特別食加算の算定要件を満たすには、特別食の献立表を作成し、以下のポイントを押さえた嚥下調整食が必要です。
- 安全に食べられて、かつ食欲を促す食感の食形態
- 常食と同等の盛り付け
- 美味しさにつながる味や香りがある
- 美味しさにつながる適切な温度での提供
- 栄養量が配慮されている
以下のような場合は加算の対象となる嚥下調整食に該当しないため、違いを把握し注意しましょう。
- 単純にピューレやペースト状にしたもの
- 常食を刻んだだけのもの
- 刻みにとろみをかけただけのもの
- 主食のみを嚥下調整食にした場合
また、定期的に多職種によるミールラウンドを行い、嚥下調整食の必要性や、内容や摂取量などが適しているかを確認することも必要です。常食が適している場合には、嚥下調整食から速やかに変更します。
参考:厚生労働省 入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の実施上の留意事項について 2026年

多職種での試食会やカンファレンスを開催
嚥下調整食の評価につなげるには、以下のような施設基準を満たすことも必要です。
- 医師や管理栄養士・栄養士による検食を毎日行う
- 多職種による試食会・カンファレンスを定期的に開催する
- 一定の要件を満たした実習を伴う研修を修了した当該保険医療機関の管理栄養士を責任者とすること
検食は少なくとも毎日1食は行い、食形態や見た目、味が適しているかを確認します。さらに、その所見を検食簿に記入することが必要です。試食会やカンファレンスでは、食感だけでなく、盛り付けや味、香り、適切な温度、栄養量などを総合的に意識しましょう。
嚥下調整食の特別食加算の算定の場合、届出書に添付する書類に、嚥下調整食に係る責任者の氏名と職種を記載します。また、責任者となる管理栄養士だけでなく、嚥下調整食に関わる調理師なども責任者と同様の研修を修了していることが望ましいとされています。
参考:厚生労働省 入院時食事療養及び入院時生活療養の食事の提供たる療養の基準等に係る届出に関する手続きの取扱いについて 2026年
算定条件を満たす嚥下調整食の特徴

特別食加算の算定につながる嚥下調整食は、個々の患者さまに合わせて適切に調整する必要があります。ここでは、嚥下調整食の分類も踏まえた特徴を解説します。
安全かつ食欲を促す食形態
特別食加算の対象となる嚥下調整食は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」を参考に考えられています。この分類は、国内の病院や施設、在宅医療、福祉の関係者が共通して使用できることを目的に作られた、嚥下調整食やとろみについての段階分類を示したものです。この分類を参考に、硬さ・付着性・凝集性などを調整して安全に嚥下しやすい状態にし、かつ食欲を促す食感も保ちます。
嚥下調整食の段階と特徴や食事例は以下を参考にしてみてください。
|
嚥下調整食の分類コード |
形態の特徴 |
食事内容例 |
|
嚥下調整食1j |
・均質 ・付着性、凝集性、硬さ、離水に配慮され、口に入れる前に適切な塊になっている ・ゼリーやプリン、ムース状 |
・おもゆゼリー ・ミキサー粥のゼリー ・ジュースや味噌汁のゼリー |
|
嚥下調整食2-1 |
・均質 ・なめらかでべたつかず、まとまりやすく、口の中で簡単に塊になる ・ピューレやペースト、ミキサー食など、スプーンですくって食べられる |
・ペースト状で粒がないおもゆや粥 ・ポタージュのペースト ・茹でた葉野菜のペースト |
|
嚥下調整食2-2 |
・不均質なものも含む ・べたつかず、まとまりやすく、口の中で簡単に塊になる ・ピューレやペースト、ミキサー食など、スプーンですくって食べられる |
・やや粒はあるがやわらかく離水もない粥 ・粒の残っている魚のペースト ・ブロッコリーなど粒の残っている茹で野菜のペースト |
|
嚥下調整食3 |
・形はあるが、舌と口蓋間で簡単に押しつぶせる ・口の中でばらばらにならずにまとまりやすく、飲み込みやすいように配慮されている ・多量の離水がない |
・離水が少ない粥 ・ミキサーにかけてゲル化剤などと共に再形成した卵料理 ・短く切りやわらかく茹でた麺類(つゆはとろみを付けて絡める程度) |
|
嚥下調整食4 |
・硬くない、ばらけない、張り付きにくい ・歯や歯ぐきで押しつぶしやすりつぶしが必要だが、箸やスプーンで切れるやわらかさ |
・やわらかいご飯や全粥 ・やわらかい人参のグラッセ ・熟してやわらかくなったバナナ |

常食と同じように提供する
嚥下調整食はピューレやペーストの状態になっていると、常食と比較して見た目は異なりますが、特別食加算では常食と同じように提供することが求められています。献立にある常食と同等の盛り付けかつ、味・香り・適切な温度・栄養量に配慮して作ることが必要です。
食事の見た目もできるだけ常食に近づけるように配慮しましょう。例えば、ミキサーにかけてゲル化剤などで再形成するオムレツであっても、常食のオムレツと同じ形に整えることで見た目の違和感は減少します。また、食事を提供する前には、多量の離水や食形態が変化していないかを、その都度目視確認しましょう。
市販品は使用できる?
市販されている嚥下調整食であっても、算定条件を満たしていれば使用可能です。安全な食形態で常食と同等の要件を満たしていれば、他社の製造した嚥下調整食を活用することもできます。ただし、市販品のゼリーやムースなどは、場合によって硬い場合もあり、製品によって該当する嚥下調整食の分類コードが異なるため、注意しましょう。
特別食加算に向けた体制整備

嚥下調整食で特別食加算を目指す場合は、さまざまな条件を満たすためにも、病院内での体制整備が必要です。加水せずに作るミキサー食や効率的に栄養価を高める食材の使用など、美味しい嚥下調整食作りには多くの工夫も求められます。しかし、近年では調理スタッフの人手不足や給食部門の赤字といった課題もあり、体制整備の難しさにつながっています。そのため、体制整備では以下のような、厨房環境の改革も参考にしてみてください。
- セントラルキッチンの導入
- クックチル・クックフリーズ・ニュークックチルなどの新調理方式の導入
- 完全調理済み食品の活用
ナリコマには病院向けの献立&4形態食のご用意があります

病院向けの完全調理済み食品を提供するサービスはさまざまにあるため、こうしたサービスの活用も嚥下調整食の提供に役立ちます。ナリコマでは、病院さま向けのクックチル献立があり、28日サイクルと365日サイクルから選べます。普通食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の形態があり、それぞれ栄養価をキープした調理方法を工夫しています。完全調理済み食品のため、施設の厨房内では再加熱や盛り付けなどの簡易作業で配膳でき、調理経験の少ないスタッフでも簡単に作業可能です。導入前にご試食もできますので、まずは一度お気軽にご相談ください。
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