病院給食は、患者の栄養状態を整え、より良い治療を行うための重要な役割を果たしています。病院が受け取る診療報酬は国が定めており、給食に関する費用もその中で賄われます。しかし、長期にわたり価格は据え置かれ、近年の急速な物価高騰によって病院の厨房運営はかなり厳しい状況に陥りました。
こうした状況は治療環境が悪化し、患者の不利益になる可能性もあるため、国は2024年から2026年の間に病院給食の値上げを実施しています。ところが、物価高騰はさらに進んでおり、依然として対策が必要です。ポイントとして次のようなことが挙げられます。
●仕入れ先を変更する
●安価に使える食材に切り替える
●高価な食材の使用回数を減らす
●食材や消耗品の発注数を調整する
●コストがかかる献立内容(揚げ物など)を見直す
このほか、完調品を使った業務効率化と省人化により、全体的なコスト削減を図るのもおすすめです。良質な病院給食を欠かさずに提供できるよう、安定した厨房運営体制を整えましょう。
目次
病院給食の重要性

病院給食は、1948年に「医療法」が制定されたことから始まりました。それ以前は患者やその家族が病室で自炊をしていたそうですが、「医療法」では、病院に対して給食施設と栄養士の設置が義務付けられています。
1950年に開始した「完全給食制度」では、患者の食事を管理することで栄養・衛生面の問題がなくなるよう、病院給食が治療の一環として位置付けられました。こうした経緯をみると、病院給食は昭和の頃から重要性が高まっていたことがうかがえます。
現在の病院給食は、「入院時食事療養」という名目で扱われています。患者を診断した医師の指示に従い、管理栄養士が一人ひとりにあわせた栄養管理計画を作成。アレルギーや食の好みも含めて栄養バランスのとれた献立を調整し、栄養指導なども実施します。もちろん、患者さんの状態が変われば、それに伴って栄養管理計画も変更。つまり、個別かつ細やかな対応が求められます。
以上のことからわかるように、病院給食は単なる食事ではなく、患者の治療や早期回復のために必要とされているのです。また、退院後の食生活において目安となる役割もあります。学校や社員食堂などで提供される給食とは意味や目的が大きく異なっており、重要性もより高いといえるでしょう。
病院給食を値上げした背景

病院給食は、2024年6月1日に続き、2025年4月1日、2026年6月1日にも値上げされています。1989年4月1日に導入された消費税はもともと3%でしたが、1998年以降に5%、8%、10%と税率が引き上げられてきたにもかかわらず、病院給食の価格は変化なし。2023年には全日本民主医療機関連合会や公益社団法人日本メディカル給食協会などが、厚生労働省に対して病院給食の値上げに関する要望書を提出しました。
こうした値上げには、近年急速に進んでいる物価高騰が大きな影響を与えています。その要因はいくつかありますが、ここでは主なものをまとめてみました。
物価高騰の要因①感染症の流行や天候不順
2020年頃に爆発的な流行が始まった新型コロナウイルスは、人の流れを途絶えさせ、日本だけでなく世界各国で経済的な打撃を与えました。当時上昇していた原材料価格は、新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきた現在も下がる気配はありません。
また、天候不順によって農作物が不作となるケースも多くみられました。不作になれば、価格が上昇したり、出荷が止まって代替品に頼らざるを得ません。もちろん、海産物についても同様のことがいえるでしょう。農林水産省がまとめた「食品価格の動向」では、2025年を基準値の100としていますが、2026年7月時点で103.1(生鮮食品も含む)に上昇しており、原材料価格の変化が数値として明確に現れています。
物価高騰の要因②ロシアのウクライナ侵攻など
2022年2月から現在まで続くロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー価格を変動させました。ロシアは石油、天然ガスなどのエネルギー資源が豊富。ところが、ウクライナ侵攻によって各国への輸出が制限される事態になったのです。
このほか、2023年10月に中東のイスラエル・パレスチナ問題が深刻化したこと(2025年10月10日、アメリカの仲介により停戦合意)もエネルギー価格に影響があります。中東はサウジアラビアをはじめとする石油生産国が集まっている地域です。そのため、周辺で軍事衝突が起こるだけでも輸送ルートが不安定になり、価格上昇につながってしまうのです。
物価高騰の要因③円安の継続
2022年以降のドル円相場は、急速に円安が進行中。年平均(TTS)は2021年110.80円→2022年132.43円→2023年141.56円→2024年152.58円→2025年150.71円と推移しています。2026年8月末日の月平均(TTS)は161.02円となっており、現在も円安傾向が改善されているとは言い難い状況です。
主な原因はアメリカと日本の金利政策が異なること、日本経済が停滞していることなどが挙げられます。円安は海外における価格競争で有利になるなどのメリットがある一方、輸入に頼る日用品や食品の価格は上がり、個人消費にまで多大な影響を及ぼします。
立て続けに行われた病院給食の値上げは、上記で述べた物価高騰の状況を考慮し、医療機関の負担を減らす目的があったようです。
病院給食の費用算出方法

病院給食の費用は、1994年から導入された「入院時食事療養費制度」に従って算定されています。制度発足当初は一日当たり1,900円と定められており、1997年には+20円の1,920円に値上げ。2006年に実施された診療報酬改定では、一日当たりから一食当たりの算定に変更されました。しかし、一食当たりの価格は640円だったため、一日当たりでは以前と変わらない1,920円のまま。その後2024年6月1日まで、病院給食の価格は据え置かれてきたのです。
費用の算出方法としては、まず、国が一食当たりの総額と患者の自己負担額を決定。その二つの差額を入院時食事療養費として、医療保険から病院などに支給しています。2026年診療報酬改定で行われた値上げによって、現在は下表のように変わっています。
|
食事療養基準額 (食費の総額) |
− |
標準負担額 (患者の自己負担額) |
= |
入院時食事療養費 (保険給付額) |
|
食事療養基準額 |
2026年 6月1日以前 |
引き上げ額 |
2026年 6月1日以降 |
|
690円 |
+40円 |
730円 |
|
|
標準負担額 |
|||
|
一般所得者 |
510円 |
+40円 |
550円 |
|
住民税非課税世帯 |
240円 |
+30円 |
270円 |
|
住民税非課税世帯かつ 所得が一定に満たない70歳以上 |
110円 |
+20円 |
130円 |
三度にわたる値上げが行われても、物価高騰の影響はかなり大きく、病院給食の現状はまだまだ厳しいようです。では、実際の給食現場で行われている対策を見ていきましょう。
病院給食における物価高騰への対策

病院を含めたさまざまな給食現場では、物価高騰を乗り切るためにさまざまな対策をしているようです。株式会社エス・エム・エスが実施した「物価高騰による施設等の給食への影響調査(期間:2023年7月24日〜8月2日)」によると、調査対象施設の99.6%が食材の値上がりを実感しているとのこと。それに伴い、新たなメニューの開発や献立づくりも難航している施設が多いようです。以下に、物価高騰への具体的な対策をまとめてみました。
- 単価が高い食材を使わなくなった、もしくは使う回数が減った
- 肉や魚より安価な豆腐、大豆製品を使うようになった
- 揚げ物の回数を減らした
- ロスが出ないように発注数を調整している
- 安く仕入れるために業者を変更した
- 食材だけでなく、消耗品にも無駄がないか見直した
このように、現場ではコスト削減に向けた工夫が行われています。今のところ物価高騰の状況がすぐに改善される見込みはないため、病院給食に関しても引き続き何かしらの対策を続けていかなければならないでしょう。
完調品の活用も視野に
前述した対策以外に、業務の流れや人員配置といった厨房運営を見直すことも全体的なコスト削減につながります。具体的には、業務効率化と省人化に向けた見直しがおすすめです。
たとえば、再加熱して提供する完調品(クックチル、ニュークックチル、クックフリーズ、真空調理)を取り入れることで、調理業務は大幅に削減され、少人数での対応が可能になります。食材費が以前より高くなるケースは考えられますが、給食の調理・提供にかかる水道光熱費や人件費の大幅な削減が期待できるでしょう。つまり、費用対効果が大きければ、導入検討する価値は高いといえます。
病院給食のことならナリコマにおまかせください

値上げが実施されても、なお厳しい病院給食の現場。ナリコマでは、そんな病院給食に最適な献立サービスをご用意しております。慢性期・精神科病院には365日日替わりの「すこやか」、急性期・回復期病院には28日日替わりの「やすらぎ」がおすすめです。
クックチル、ニュークックチルを採用することで、厨房職員の負担を削減。栄養価も計算済みで、治療食の展開も可能です。咀嚼・嚥下機能の低下が気になる方には、ミキサー食、ソフト食、ゼリー食もお選びいただけます。病院給食についてお悩みがありましたら、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
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