飲食店や大型スーパーマーケット、病院、介護福祉施設、保育園など、厨房設備が整っている施設は少なくありません。今回の記事は、厨房における安全管理をテーマにお届けします。ヒヤリハットの事例を挙げ、厨房事故の防止策についても詳しく解説。ぜひ最後までお読みいただき、厨房の安全管理にお役立てください。
目次
厨房の安全管理を徹底すべき理由
厨房の安全管理は非常に重要であり、徹底すれば、さまざまなリスクを回避することができます。なぜ安全管理が重視されるのか、その理由をまとめてみました。
理由①安全な労働環境を整えるため
厨房は高温になりやすく、従業員が忙しなく動き回る場所です。ガスや電気が通っているだけでなく、大型の厨房機器なども導入されています。何らかの事故が起きた場合、重大な被害につながるケースも考えられるでしょう。従業員が安心して働ける環境を整えるためにも、日頃から安全管理をしっかりと行わなければなりません。
理由②業務効率化・生産性向上のため
厨房の安全管理には、機器や設備のメンテナンス、動線の確保なども含まれます。つまり、安全管理の徹底は業務効率化につながるのです。また、業務上の安全性が高くなれば、従業員のモチベーションも維持しやすくなります。やりがいを感じる従業員が増えることで、生産性向上も期待できるでしょう。

理由③提供する「食」の安全を守るため
厨房業務では、「食」の安全を守ることも重要なポイントです。喫食者がどのような人であれ、特定の食材によるアナフィラキシーショックや食中毒などが起これば、深刻な事態になるかもしれません。衛生面はもちろん、アレルギーが起きやすい食材の取り扱いなどについても、安全性を確保する必要があるでしょう。
理由④経済的損失や人材流出を防ぐため
厨房事故の発生は、経済的損失や人材流出につながります。従業員が怪我をしたり、病気にかかったりした場合、欠勤や休業による収入減少があるかもしれません。労働災害(以下、労災)として認められないケースでは、治療費が従業員の自己負担になります。
労災として認められるケースでは、その対応に時間がかかり、業務全体の効率が下がったり、売上が下がったりすることも考えられます。また、従業員が労災に関して訴訟を起こした場合、事業主が損害賠償責任を負う可能性も出てくるでしょう。さらに、長期休業や退職を余儀なくされる従業員がいれば、新たな人材の採用や育成も必要です。
理由⑤社会的信用を維持するため
厨房の安全管理が不十分になると、事故が発生するリスクも高くなります。労災として認定されるような事故が増えれば、取引先の企業や顧客などの信用を失ってしまうかもしれません。もちろん、従業員が不信感や不満を抱く原因にもなるでしょう。一度失った信用はなかなか取り戻すことができません。事業の継続や発展にもかかわるため、安全管理を徹底するのは当然のことと認識すべきです。
厨房事故事例からみるヒヤリハット
続いては、ヒヤリハットで済んだ、もしくは深刻な事態には至らなかった厨房事故事例をみていきましょう。
事例①濡れた床や汚れた床での転倒
- 食材をしまおうと冷蔵庫に向かった際、足を滑らせて転倒しそうになった。当時は寸胴鍋の洗浄作業によって床が濡れていた。
- 沸騰したお湯を鍋ごと移動させようとしたが、床が濡れていたため転倒しそうになった。とっさに鍋を手放したおかげで、火傷せずに済んだ。
- まな板の消毒に使ったお湯を流しに捨てようと、大きな鍋を両手で運んだ際、足を滑らせて転倒しそうになった。
- 天ぷら油が床に飛び散っていたため、足を滑らせ転倒してしまった。
- 厨房内に設置されたグレーチングが濡れており、滑って転びそうになった。
転倒は、厨房で特に起こりやすい事故です。日頃から床の掃除を徹底したり、床が滑りやすいことへの注意喚起を促したりすると事故防止につながるでしょう。
事例②刃物や割れた食器による負傷
- 包丁がまな板に張り付いて動かなくなった。力強く引っ張ったところ、包丁がはね、危うく手が切られるところだった。
- 食器洗浄を行っていた際、誤って皿を破損し、手を切りそうになった。
- ピーラーで野菜の皮をむいていたが、後方から話しかけられたので振り返ってしまい、指先を切りそうになった。
刃の付いた調理器具、食器、びん、缶、串など、作業時に負傷する可能性があるものは、正しい扱い方を徹底し、保管方法なども含めて安全性を考慮しなくてはなりません。

事例③換気不足・不完全燃焼による一酸化炭素中毒
- 故障した換気ダクトを放置したまま調理作業を行い、一酸化炭素中毒が発生した。
- 窓を開けず、換気扇も切ったまま業務用オーブンを使用し、一酸化炭素中毒が発生した。
- ガスフライヤーの経年劣化により不完全燃焼が起き、一酸化炭素中毒が発生した。
- 業務用コンロが正しく設置されておらず、バーナー下部から給気されなかった。適合サイズを超えた大きさの鍋を使用していたことも二次給気の妨げになり、不完全燃焼による一酸化炭素中毒が発生してしまった。
上記は該当しませんが、実際には従業員が亡くなってしまう深刻な事故も起きています。安全管理の一環として、換気設備のメンテナンスは非常に重要といえるでしょう。
その他の事例
- 蒸し器の扉を開けた際、高温の蒸気が吹き出して顔を火傷しそうになった。
- 調理中、油をなじませていたフライパンを右手に持ったまま、ガスコンロの左側に置いてあった食材を左手でつかもうとした。フライパンが大きく傾いて油がこぼれ、右手にかかりそうになった。
- 換気ダクトを掃除するため、ガスコンロの上に段ボールを敷き、丸椅子を載せた。そこに立って掃除を行っていたところ、バランスを崩して転倒しそうになった。
- アレルギー除去食を調理したが、冷蔵庫に入れたまま、提供し忘れてしまった。アレルギーを持つ喫食者自ら除去食がないことに気づき、大事には至らなかった。
上記にまとめた事例からもわかるように、厨房事故の原因はさまざまです。次の項目では、このような事故を防ぐために重要なインシデント分析についてお伝えします。
厨房における事故防止策にはインシデント分析が重要
厨房の事故防止策を講じるには、インシデント=「深刻な事態に発展するかもしれない出来事」の分析が重要といわれています。つまり、先に挙げたような事故事例を活用することができるのです。本項目では、インシデント分析を含む事故防止策の流れをまとめました。

①ヒヤリハットやインシデントの報告体制を整える
ヒヤリハットやインシデントに該当する出来事が起こった場合、速やかに報告することが重要です。管理者側は、報告者の氏名・日時・場所・発生状況・対応内容・再発防止策などをまとめて報告できる体制を整えましょう。
②報告を習慣化し、事故防止に対する意識を高める
「この程度のことは報告する必要がない」といった判断の甘さが、重大な事故発生につながる可能性もあります。ヒヤリハットやインシデントの報告は、遵守すべきルールとして全従業員に周知し、事故防止に対する意識を高めましょう。
③集まったデータを分析し、フィードバックを行う
ヒヤリハットやインシデントのデータを定期的に集計し、分析することが安全管理につながります。多発している内容、発生しやすい状況などをまとめて全従業員にフィードバックを行い、事故防止に役立てましょう。
④報告やフィードバックの内容を閲覧できるようにする
報告やフィードバックの内容は、全従業員がいつでも閲覧できるようにしておくことが大切です。一度起こったヒヤリハットやインシデントの再発防止につながり、厨房の安全性を強化できるでしょう。
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