自然災害が頻発する日本では、非常時の備えに対する意識が高い人も多いかもしれません。「備えあれば憂いなし」という諺があるように、どんなことがあっても安心できる環境づくりは重要なタスクの一つといえるでしょう。
今回の記事は、医療・介護福祉施設における食事の災害対応についてお届けします。自然災害が増えている現状、各施設で食事提供体制を整えることの重要性、ニュークックチルを導入した場合の災害対応方法などをまとめて解説。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
医療・介護福祉施設では災害対応も可能な食事提供体制が重要

自然災害のリスクが高まっている現状
阪神・淡路大震災や東日本大震災などの経験・記録からわかるように、自然災害は時に甚大な被害をもたらします。ここ数年で特に注目されている南海トラフ巨大地震の30年内発生確率は、2025年1月1日に「70%〜80%(74%〜81%)」から「80%程度(75%〜82%)」に引き上げられました。もちろん、注意すべきなのは地震だけではありません。豪雨、暴風、洪水、高潮、土砂災害、干ばつ、異常高温など、近年は日本を含めた世界中で気候変動による自然災害が起こっています。
気候変動の主な要因は、温室効果ガスの増加や自然変動の影響で進行する地球温暖化です。「令和5年版 防災白書」によると、日本における100年当たりの年平均気温は1.30℃も上昇しているといいます。また、気温上昇と比例するように、1日の降水量が200ミリ以上となる大雨、1時間の降水量が50ミリ以上となる短時間強雨も頻発しているとのこと。さらに海面水温も上昇傾向にあるため、台風の勢力が強まり、これまで以上の被害が起こり得ると考えられています。
地球温暖化への対策としては、世界規模で温室効果ガス削減に向けた取り組みを実施。日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しています。しかし、こうした取り組みが行われるようになっても、自然災害が完全になくなるわけではありません。やはり、非常時の備えは必要といえるでしょう。
医療・介護福祉施設におけるBCP対策と食事提供のポイント
医療・介護福祉施設には、非常時でも通常業務が継続できるようにする「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」の策定が義務化されています。ここでいう非常時とは、前述した自然災害だけでなく、大火災やテロ攻撃といったものも含まれます。医療・介護福祉施設は、患者や高齢者、障がい者の安全と健康を守る場所。中には、医療機器や看護師などのサポートが必要な方もいるでしょう。人によっては命の存続に関わるため、通常業務の継続はとても重要なのです。
そのBCP対策の一つが、水と食料の確保。ところが、医療・介護福祉施設では禁止食のある方、咀嚼・嚥下機能が低下している方などもいるため、食事に関しては個別の細やかな配慮が欠かせません。治療の一環や栄養管理といった役割もあり、原則として食事提供を中断するわけにはいかないのです。こうした事情を考慮すると一般的な備蓄食だけでは対応しきれないことから、災害対応力の向上が必要といわれています。食事を提供している医療・介護福祉施設では、厨房のBCP対策もしっかり行っておくと安心感につながるでしょう。
電源があれば提供できる!災害時も準備しやすいニュークックチル

施設の厨房とは別のセントラルキッチンを活用するニュークックチルの場合、配膳までの作業は以下のように進みます。
(1)セントラルキッチンで食材の仕入れ・調理を行い、急速冷却後にチルド保存
↓
(2)完全調理済み食品をチルド保存のまま、各施設に配送
↓
(3)各施設の厨房でチルド状態の食品を盛り付け、器ごと再加熱カートにセット
↓
(4)提供時間にあわせて再加熱し、配膳を開始
この基本的な流れを踏まえ、ニュークックチルによる災害対応のポイントをまとめてみました。
ポイント①電源が落ちなければ食事が提供できる
ニュークックチルの魅力は、完全調理済み食品であること。献立内容にもよりますが、施設の厨房における調理業務は大幅に削減されます。非常時でも食事を提供するために重要なのは「電源の確保」です。
ニュークックチルで使用する厨房機器は主に2種類。ほかの調理方式も同様ですが、配送された完全調理済み食品を保存する冷蔵庫は欠かせません。また、器に盛り付けた後のチルド保存から再加熱までを行う再加熱カートは、ニュークックチルだからこそ必要な機器です。再加熱カートの代わりに、冷蔵機能がないリヒートウォーマーを使う施設もあるでしょう。
いずれにせよ、共通点は「電源があれば動くこと」。非常時でも電源が落ちなければ、チルド保存された食品は衛生面での安全性が保たれ、再加熱もできるのです。停電になる可能性もあるため、施設内に非常用自家発電設備が整っていると、より大きな安心感が得られます。
ポイント②調理職員以外でも準備できる
ニュークックチルを導入すると、施設の厨房で行うのは基本的に盛り付けと再加熱のみになります。従来の調理業務と比べ、かなり簡略化されているため、平常時は少人数で配膳まで完了できることが大きなメリットです。非常時には、誰もが対応可能な業務であることもメリットとして加わります。
非常時は、調理職員が施設まで出勤できないこともあるかもしれません。しかし、ニュークックチルは完全調理済み食品のため、器への盛り付けと再加熱カートの設定を行えば、調理職員が不在でも食事を提供することができます。料理が苦手な職員も対応しやすく、余計な負担がかかりにくいでしょう。
災害対応力の向上には備蓄食などの確保も不可欠

一般的に、非常時の備えは「最低でも3日間を自力で過ごせること」が目安とされています。その理由は、災害発生後72時間は救命救助活動が最優先となるからです。ライフラインの復旧、支援物資の輸送などは、即座に対応できるわけではありません。甚大な被害がある場合には、目安の3日間を過ぎてもまったく手が回らない可能性もあるでしょう。そのため、実際には1週間ほど対応できる備えが推奨されています。
先ほどニュークックチルの災害対応についてお伝えしましたが、消費期限(調理日を含めて5日間)を過ぎてしまうと衛生面での安全性が保てなくなります。医療・介護福祉施設では、非常時に想定される必要数を見極め、備蓄食などを確保しておくことも重要です。特に注意すべきポイントは、患者や高齢者、障がい者にとって食べやすいこと。非常時は誤嚥性肺炎が起きやすいといわれているため、できる限り個別の状態にあわせた食事がとれるようにしておくと安心です。咀嚼・嚥下機能が低下していても食べやすいおかゆ、介護食などの備蓄食があるといいでしょう。
ナリコマの献立サービスなら災害対応も安心

ナリコマは、医療・介護福祉施設に最適なニュークックチルの献立サービスをご提案しております。ミキサー食、ゼリー食、ソフト食とバリエーション豊かな介護食をご用意しています。また、365日(または28日)日替わりの献立により、長期利用の方も飽きずにお召し上がりいただけます。
非常時にも、安全が確認できれば通常通りに配送可能。2016年4月の熊本地震、2024年1月の能登半島地震など、災害対応の実績もございます。また、長年培ってきた介護食のノウハウから生まれた「ひまわり非常食」も好評。栄養価も考慮した3日間の非常食をご購入いただけます。いざというときの安心をお求めの際には、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
クックチルに関する記事一覧
-
完調品とクックチルを比較!介護施設や病院に最適な給食運営モデルとは?
完調品(完全調理済み食品)の活用やクックチル方式の導入は、介護施設や病院の給食運営で注目される方法です。いずれも厨房の人手不足対策などの課題解決に役立つ一方、目指す方針によって適する運営モデルは異なります。
この記事では、それぞれの特徴を解説しながら、完調品とクックチル方式を活用した給食運営モデルを比較します。また、完調品とニュークックチル方式を組み合わせることで、さらなる業務効率化も可能です。自施設に最適な給食運営を検討する際にぜひご参考ください。 -
厨房業務と最低賃金の関係とは?調理師不足時代に求められる食事提供体制の見直しと外注化
最低賃金の引き上げが続く中、厨房業務を抱える現場では人件費の上昇が避けられない課題となっています。とくに調理師不足が慢性化する医療・介護・給食の現場では、「人を確保したいが、人件費が合わない」という悩みを抱える施設も少なくありません。
今回は、厨房業務と最低賃金の関係を整理しながら、最低賃金の上昇が続く中での課題と、食事提供体制の見直し、そしてナリコマのクックチルを含めた外注という方法について解説します。 -
2025年最低賃金 引き上げ率の最新動向|2025年の地域別・年次比較を厚労省データから読み解く
2025年の最低賃金の引き上げ率は、医療・介護・給食をはじめとする施設運営にも影響が出やすい水準となりました。とくに地域別の違いは人件費の見通しに直結するため、年次比較も含めて、どれくらい上がってきたのかを押さえておくことが大切です。
今回は、厚労省のデータをもとに2025年の最低賃金動向を整理し、業界ごとの影響を踏まえつつ、厨房運営の見直しといった視点も交えながら、自施設に合ったコスト対策を解説します。
人材不足に関する記事一覧
-
医療AIで変わる現場の姿|病院・介護施設の導入事例から学ぶ業務効率化
医療や介護の現場では、AI(人工知能)の活用が急速に進んでいます。診療データの分析や業務の自動化、職員の負担軽減など、AIの役割は多方面に広がりつつあります。今回は、病院・介護施設における医療AIの導入事例や成功事例をもとに、どのように業務効率化が実現されているのかを紹介します。自施設での活用を検討する際のヒントとしてお役立てください。
-
医師偏在対策が急がれる医療現場の現状!厨房人材不足にはどう対処すべき?
近年の日本は少子高齢化が進んでおり、総人口も減少傾向です。さまざまな社会保障を必要とする高齢者が増える一方、主な労働者である若者が減少しているため、将来的に多くの問題が生じるとされています。人材不足は、早期に解決すべき問題の一つ。医療業界は高齢者からの需要増加が見込まれており、良質かつ効率的な医療提供体制の構築が課題とされています。
今回の記事では、医療業界の人材不足解消に向けた医師偏在対策をクローズアップ。医師の偏在が起こっている現状や、その対策について詳しくお伝えします。記事後半では、厨房などの非医療部門における人材不足に関しても解説。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。 -
厨房業務とタスクシフトで現場を効率化|外注・委託化で省人化と人件費削減を実現
医療・介護現場では、人材不足が深刻化するなかで厨房業務の負担が大きな課題になっています。その解決策として注目されるのが「タスクシフト(業務移管)」です。厨房業務を外注や委託化、省人化によって効率化することで、人件費を抑えつつスタッフが本来業務に集中できる環境を整えることができます。今回は、厨房業務におけるタスクシフトの考え方と、外注・委託化を通じた効率化の方法を解説します。




