医療・介護福祉の現場では、毎日さまざまな形で患者や高齢者、障がい者のケアを実施しています。今回テーマとして取り上げる「栄養評価」は、健康維持にかかわる重要な業務の一つです。本記事では栄養評価の重要性を解説し、病院や介護福祉施設における栄養ケア・マネジメントのプロセスを詳しくお伝えします。ぜひ最後までお読みください。
目次
患者や高齢者のケアに欠かせない栄養評価
栄養評価は、病院であれば患者、介護福祉施設であれば高齢者や障がい者の栄養状態を管理するために実施します。栄養面における問題を早期に解決し、良好な栄養状態を保つことが目的です。
栄養評価を実施することの重要性
患者、高齢者、障がい者をケアする上で要注意といわれるのが、低栄養です。低栄養の状態を放置していると、健康上のリスクが高まります。実際に起こり得る症状として、次のようなものが挙げられます。
体重減少
1カ月以内に3%以上、3カ月以内に5%以上、6カ月以内に7.5%以上の体重減少がみられるようになります。6カ月以内に2〜3kg、または3%以上減っている場合も、低栄養のリスクがあると考えられます。
筋肉量・筋力の低下
低栄養のまま体を動かそうとすると、筋肉の中にあるたんぱく質を消費してしまいます。その結果、筋肉量や筋力が低下し、転倒しやすくなったり、疲れやすくなったりすることがあります。

免疫力の低下
免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。また、病気が治ったり、傷口が塞がったりするスピードも遅くなってしまいます。
むくみやすくなる
血液に含まれるたんぱく質の一種、アルブミンの濃度が下がります。血管内に保つべき水分が外に出ていってしまうため、全身のむくみがみられるようになります。このほか、体内に必要な栄養や代謝物質が運ばれなくなり、いろいろな不調を招きやすくなります。
認知機能の低下
低栄養は、脳の働きにも大きな影響を与えます。脳が栄養不足になると認知機能が低下し、無気力になったり、買い物や趣味などのために動くのが面倒になったりする可能性が高まります。
活動量の減少
低栄養によって身体機能が低下し、さまざまな不調を抱えるようになると、必然的に活動量が減少します。外出せず、自宅でじっとしていることが多くなれば食欲減退を招き、低栄養の状態が改善されないという悪循環が生まれてしまいます。
上記のような症状を見逃してしまうと、人によっては重大な疾患につながったり、要介護に移行したりする可能性も出てきます。病院も介護福祉施設も、患者や利用者が健やかに暮らせるようにサポートする役割を担っています。だからこそ、栄養評価によって問題の有無を見極め、適切なケアで低栄養を防ぐ必要があるのです。
栄養評価を含む栄養ケア・マネジメントのプロセス
栄養評価は栄養アセスメントともいわれ、管理栄養士が中心となって実施する栄養ケア・マネジメントの一部として実施されます。では、病院や介護福祉施設において具体的にどのようなことが行われるのかみていきましょう。
基本となる5つのプロセス
①栄養スクリーニング
はじめに、信頼性・妥当性が検証されたツールを用いて栄養スクリーニングを実施します。体重の変化、BMI値、食事摂取状況といった複数の項目をチェックし、患者や利用者が低栄養、またはそのリスクがあるかどうか判断することが目的です。
②栄養評価(栄養アセスメント)
栄養評価(栄養アセスメント)は、低栄養またはそのリスクがあると判断された対象者の栄養状態をさらに詳しく調べ、評価します。栄養スクリーニングよりもチェック項目が多いツールを用いて、具体的な問題点や改善点を明らかにすることが目的です。対象者に適した栄養ケアを行うためには、栄養評価を正確に行うことが重要とされています。
③栄養ケア計画の策定
栄養評価の結果に基づいた栄養ケア計画を策定します。明らかになった問題点や改善点への対策を立てると共に、達成可能な範囲での目標を設定するのが一般的です。管理栄養士はもちろん、対象者のケアにかかわる医師、看護師、薬剤師、介護福祉士などを含めた多職種連携が欠かせません。
④計画の実施とモニタリング
栄養ケア計画の策定後は、対象者本人とその家族に内容を丁寧に説明し、同意を得ます。事前にきちんと納得してもらうことで、病院と患者、介護福祉施設と利用者の間に信頼関係が築かれ、計画が進めやすくなります。栄養状態にあわせたスケジュール(リスクが高いほど高頻度)でモニタリングすることが重要です。
⑤総合的な評価
栄養状態の変化や目標達成状況などを確認した上で、計画の内容や実施方法について総合的な評価を行います。その評価によって、計画の継続・修正・終了を判断します。

栄養スクリーニングや栄養評価に用いるツール
前述したように、栄養スクリーニングや栄養評価では「信頼性・妥当性が検証されたツール」が用いられます。主なツールとして、次のようなものがあります。
MNA®️(Mini Nutritional Assessment)/MNA®️-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)
高齢者に特化して開発されたツールです。MNA®️は全部で18項目ありますが、初期スクリーニングに用いるMNA®️-SFは6項目のみに絞られています。
SGA(Subjective Global Assessment)
主観的包括的栄養評価とも呼ばれています。特別な器具や装置を使わず、病歴、身体所見などから栄養状態を評価することができます。身体測定のほか、血液検査や尿検査も不要のため、簡便なツールとして広く知られています。このSGAをベースに開発されたPG-SGA(Patient Generated-SGA)は、がん患者を対象としたツールです。
MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)
在宅患者を対象に開発されたツールで、ほかより少ない評価項目数が特徴です。BMI値・体重減少・急性疾患かつ栄養摂取不足の3項目の合計スコアで低栄養のリスクをチェックします。近年では、急性期病院の入院患者に用いることもあります。
NRS2002(Nutritional Risk Screening 2002)
急性期病院の入院患者を対象に開発されたツールです。初期スクリーニングはBMI値・体重減少・食事摂取量低下・重症疾患の有無の4項目を評価します。いずれかに該当した場合は栄養障害と疾患、加齢の3項目の合計スコアから低栄養のリスクを判断します。
低栄養防止につながる栄養評価の支援サービスとは
栄養ケアは、病院・介護福祉施設以外の場所でも実施されています。例えば、栄養ケア・ステーションは管理栄養士や栄養士が地域住民のために栄養管理を行う拠点です。全国各地に500カ所以上配置されており、毎日の食事や栄養状態についてはもちろん、治療、介護予防、介護・自立支援といった専門的な相談にも対応しています。

また、企業が主体となったサービスもあります。例えば、医療や教育など幅広い事業を展開するSMSグループでは、薬局事業の一環として栄養ケアサポートを実施。IT技術も取り入れ、高齢者の低栄養防止に力を入れています。社員食堂などで食事提供を行うエームサービスグループでは、アスリートのケア、企業内の食育・健康支援などにも対応した栄養管理マネジメントシステムを構築しています。企業が独自に行っているサービスはまだそれほど多くありませんが、ニーズにあわせて増えていく可能性もあるでしょう。
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