環境問題への対策は世界各国で行われており、日本でもさまざまな取り組みが実施されています。ガスや電気といったエネルギーは、産業から家庭まで幅広く必要とされるもの。近年では、環境負荷軽減を考慮した多種多様な省エネ機器も登場しています。今回の記事は、厨房における省エネ対策をクローズアップ。需要が高まっている新調理方式、ニュークックチルを運用する際のエネルギー効率や環境負荷について詳しくお伝えします。
目次
ニュークックチルは省エネ対策になるのか

調理業務の負担軽減と省エネに効果的
セントラルキッチンを利用したニュークックチルの場合、以下のような流れがあります。
①セントラルキッチンで食材の下処理と調理を行い、急速冷却してチルド保存
②セントラルキッチンから各施設へ、チルド状態の完全調理済み食品を配送
③施設の厨房でチルド状態の食品を盛り付け、器ごと再加熱カートにセット
④施設の食事提供時間にあわせて自動で再加熱を行い、配膳開始
一部メニューをクックサーブで提供するケースもありますが、ほとんどが完全調理済み食品に置き換わるため、従業員の負担軽減につながるでしょう。また、従来の調理に欠かせなかったガスや電気、水道の使用量も抑えられます。そうした側面からみると、ニュークックチルの運用は業務効率化だけでなく、省エネにも有効といえるかもしれません。
再加熱カートの省エネ効果
再加熱カートは、ニュークックチルの運用において最も重要な厨房機器です。まずは、加熱方式ごとの主な特徴を確認しましょう。
【熱風加熱式】
カート内に熱風を循環させる方式です。加熱時間の目安は約60分〜90分。均一に加熱でき、食材の湿度を保つことができます。ふっくらとした仕上がりも魅力の一つです。ランニングコストが少し高くなる傾向にあります。
【マイクロ波式】
電子レンジと同じ、マイクロ波を利用する方式です。加熱時間の目安は約10分。適さない食材や形状もありますが、時短で効率よく温めるため、器や味の劣化を最小限に抑えることができます。
【IH式】
熱源を使わず、電気のみで加熱する方式です。加熱時間の目安は約10分。温める器の量にあわせて電力が消費されるため、省エネ効果が高いとされています。イニシャルコストは高めですが、ランニングコストは低く抑えられるのが魅力です。
【蒸気加熱式】
高温の水蒸気を利用する方式です。加熱時間の目安は約60分〜90分。熱伝導性に優れているため、均一に温め、食材の湿度も保つことができます。イニシャルコストは高いものの、性能面での優位性が評価されています。
厨房機器のエネルギー効率については、一般的に電気よりもガスのほうが高いといわれています。電気は発電や送電の際にロスが多くなりますが、ガスは製造や輸送のロスがほとんどありません。そのため、省エネに関してはガスのほうが有利なのです。しかし、今では環境に配慮する企業も増えています。各メーカーが販売する再加熱カートも進化しており、まったく省エネにならないとは言い切れません。
先ほどご説明した加熱方式だけでなく、その他の設計や機能、設置場所、使用頻度なども省エネ効果のレベルを左右します。食材の仕上がりや使い勝手の良さが重要なのはもちろんですが、省エネを意識するのであれば、再加熱カート本体の電力消費量やニュークックチルの運用における稼働時間なども事前に細かくチェックしておくことが大切といえそうです。
ニュークックチルに期待できる環境負荷軽減とは

ニュークックチルは、環境問題とどのように関係しているのでしょうか?本項目では、運用時に期待できる環境負荷軽減のポイントをまとめてみました。
①エネルギー消費による二酸化炭素排出量の削減
地球温暖化は、長年にわたり重大な環境問題として取り上げられてきました。温暖化が進むと、極端な気候変動、海面上昇による陸地の減少、高温や干ばつによる農作物の不作、伝染病の蔓延などが起こるといわれています。こうした現象は人々の生活様式だけでなく、生態系全体にも多大な影響を与えてしまうため、特に問題視されているのです。地球温暖化の主な原因は、二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガス。中でも、エネルギー消費による二酸化炭素の排出量については世界各国で対策がとられています。日本が掲げる目標は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的になくす「カーボンニュートラル」です。この実現に向けて、幅広い分野でさまざまな取り組みが行われています。
厨房において実践できる主な取り組みは、エネルギー消費を抑えること。ガスや電気は石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を燃やしてつくられますが、その際に大量の二酸化炭素が発生します。つまり、ガスや電気の使用量を減らすことが、環境負荷軽減につながるのです。ニュークックチルは調理工程をセントラルキッチンの一カ所でまとめて行うため、エネルギー消費の削減に貢献しているといえるでしょう。再加熱カートを省エネ設計のものにしたり、無駄のない業務スケジュールを組んだりすると、さらに環境負荷軽減の効果が高くなります。
②食品ロスの削減
食品ロスもまた、環境問題の一つとして対策が講じられています。農林水産省及び環境省が公表した2023年度の食品ロス推計値は464万トン。2000年度の980万トンを基準にすると53%削減されていますが、2030年度には56%削減の435万トンを目指しています。
食品ロスを減らすべき理由は、主に3つあります。大前提となるのは、「食べ物を捨てるのはもったいない」という考え方。日本はほかの先進国と比べて食品自給率が低いため、特にこういった意識が重要といえるでしょう。また、農産物や水産物、加工食品などの生産には相応のコストがかかります。食品ロスは、食卓に食べ物が並ぶまでにかかったコストも無駄にしてしまうのです。2023年度の食品ロスにおいては、4兆円もの経済的損失があったとみられています。
そして、最後の理由は環境への影響です。通常のゴミよりも水分が多い食品の焼却処理には、膨大なエネルギーを使用します。焼却によって二酸化炭素が排出されるため、結果的に地球温暖化を進めてしまう原因となるのです。ニュークックチルでは大量の食材をまとめて調理するため、一気に使い切ることができます。直営の厨房でやりくりするよりも効率的で、無駄がありません。食品ロスの削減には有効なシステムといえるでしょう。
ニュークックチルの導入は運用コスト削減にも効果大

ニュークックチルは、厨房の運用コスト削減にもなります。当然ランニングコストはかかりますが、費用対効果を考えると大きなメリットがあるといえるでしょう。本項目では、コスト削減のポイントをまとめてみました。
食材費
ニュークックチルは、大量仕入れによって食材費を抑えることができます。
ガス・電気・水道料金
再加熱カートは電源を使いますが、調理業務にかかるガス・電気・水道の料金は大きく削減されます。
人件費
厨房業務が効率化されるため、人件費も削減できるでしょう。盛り付けや配膳は、従来よりも少ない人数で対応できるようになります。また、再加熱カートの活用で、朝と夕方の無人化も可能です。
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