給食の提供は、多くの病院や介護福祉施設において重要な業務の一つです。給食業務に採用される調理方式はさまざまですが、近年は特にニュークックチルの注目度が高まっています。今回の記事は、そんなニュークックチルの導入をテーマにお届けします。
基本的な導入パターンや主なメリット、事前に確認すべき導入チェックリストなどを詳しく解説。ニュークックチルの特長をまとめていますので、ぜひ導入検討の際にもお役立てください。
目次
ニュークックチルの導入パターンは2つ
ニュークックチルの作業は、全体的に次のような流れで進んでいきます。
①食材を仕入れる
②食材の下処理と加熱調理を行う
③加熱調理後、90分以内に中心部が3℃以下になるまで急速冷却を行う
④急速冷却後の完全調理済み食品はチルド状態で保存する
⑤チルド状態のまま盛り付けを行う
⑥盛り付けした器ごと再加熱カートに入れてチルド保存し、タイマーをセットする
⑦再加熱完了後、カートから取り出して配膳する
こうした工程があることを踏まえながら、2つの導入パターンをみていきましょう。

セントラルキッチン方式を採用するパターン
まずは、セントラルキッチン方式によるニュークックチルから紹介します。セントラルキッチンは、施設とは別の場所に構える調理専用施設のこと。病院や介護福祉施設だけではなく、飲食店やスーパーなどでも採用されています。前述したニュークックチルの工程でいうと、①〜④までをセントラルキッチンで行い、その後は適温を保ったまま病院や介護福祉施設へ配送します。つまり、施設内の厨房が担当する工程は⑤〜⑦のみです。
また、セントラルキッチン方式を採用するパターンは2つに分かれます。契約した給食委託業者がセントラルキッチンを所有している場合と、病院や介護福祉施設が独自にセントラルキッチンを設置する場合です。独自のセントラルキッチンは、建物や設備を一から整える必要があるため、準備段階でかなりのコストがかかります。
施設内で全工程を行うパターン
ニュークックチルは、①〜⑦までの全工程を施設内で完結させることもできます。ただし、セントラルキッチン方式と比べると、新たに導入する厨房機器が多くなります。食材の下ごしらえなどで従業員や作業時間を確保しなくてはならないことも考慮すると、小規模施設にはあまり適さないパターンといえるでしょう。
ニュークックチルを導入するメリット
ニュークックチルを導入すると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか?本項目では、4つの主なメリットをまとめてみました。

メリット①HACCPに基づいた衛生管理の徹底
調理後に急速冷却を行うニュークックチルは、食中毒の菌などが発生しやすい温度帯を素早く通過させており、製造から最大5日間のチルド保存ができます。再加熱後にすぐ配膳できるという点も、食中毒の防止策として有効です。また、セントラルキッチンは厨房業務に特化しているため、HACCPに基づいた衛生管理が徹底しやすくなります。食の安全性が高まることは、非常に大きなメリットといえるでしょう。
メリット②業務効率化と省人化
ニュークックチルは、業務効率化と省人化を実現しやすい調理方式です。導入パターンにかかわらず、「一定期間のチルド保存ができること」と「自動で再加熱ができること」は業務スケジュールに余裕をもたらします。特に、セントラルキッチン方式を採用するパターンでは、施設内の厨房における作業が大幅に削減され、従業員の負担はかなり軽くなるでしょう。盛り付けや配膳がメインになることから、少人数でも対応できるようになります。人手不足に悩む厨房でも安定的に業務を行うことができ、従業員の採用・育成にかかる手間や時間が少なくなる可能性は高いでしょう。
メリット③水道光熱費と人件費の削減
大量の食材を効率的に調理するニュークックチルは、水道光熱費の削減にもつながります。特に、委託によるセントラルキッチン方式を採用するのであれば、主な調理工程で使う水道やガス、電気などの費用は大きく削減される可能性があります。また、メリット②でもお伝えした通り、盛り付けや配膳は少人数で対応できるため、結果的には人件費の削減にもつながるでしょう。
メリット④食事の質と利用者満足度の向上
食事の提供ごとに調理を行うクックサーブでは、従業員によって味や仕上がりが変わってしまうこともよくあるといいます。それに対し、大量調理を基本とするニュークックチルでは、食事の質が安定しやすくなります。メリット①で述べた衛生管理の件と同様、調理を専門的に行うセントラルキッチンでは特に安定性が高いといえるでしょう。
また、メニューによって例外もありますが、温かい料理は60℃〜70℃、冷たい料理は5℃〜12℃が適温といわれています。その点、再加熱して温かいうちに配膳するニュークックチルは、食事のおいしさが損なわれにくいのです。病院や介護福祉施設の利用者にとって、食事は楽しみの一つになっていることも多いため、ニュークックチルの導入が利用者満足度の向上につながるかもしれません。
ニュークックチルの導入チェックリスト
最後に、ニュークックチルの主な準備項目をまとめたチェックリストをみておきましょう。

チェック項目①必要機器と設置場所・動線
ニュークックチルでは、加熱調理に使うスチームコンベクションオーブン、急速冷却に使うブラストチラー、盛り付け後に使う再加熱カートなどの大型厨房機器が必要です。導入パターンにあわせて必要な機器を精査し、事前に設置場所や動線を確保しておきましょう。
このほか、仕入れた食材や調理済み食品を保管する冷蔵庫、倉庫などの容量も見直しておくと安心です。また、再加熱カートは高温になるため、専用の食器やトレイを使うことが推奨されています。入れ替えが必要であれば、過不足のないように準備しておきましょう。
チェック項目②スタッフ体制のシミュレーション
メリット②でもお伝えしましたが、ニュークックチルは従来の厨房とは作業工程が大きく異なり、導入後は業務効率化と省人化を図ることができます。導入前と同じ勤務シフトでは、人員や人件費において無駄が生じてしまうかもしれません。ニュークックチルを導入した場合の一日のスケジュール、必要な人員配置などを細かくシミュレーションしておくといいでしょう。
チェック項目③ニュークックチルに適したメニュー
ニュークックチルは急速冷却と再加熱を行うため、あまり適していないメニューもあります。特に揚げ物や炒め物は食感が大きく変わってしまうことも多く、注意が必要です。導入の際は、献立を作成する管理栄養士の意見も聞き、具体的なメニューや献立サイクルなどについてすり合わせをしておくといいかもしれません。
チェック項目④イニシャルコストとランニングコスト
ニュークックチルは、再加熱カートなどの必要機器が高額であることから、イニシャルコストが高くなりやすいといわれています。しかし、ここまでお伝えしてきたように、業務効率化、省人化、コスト削減、食事の安全性確保と品質改善など、複数のメリットも期待できます。長期的かつ安定的にニュークックチルの運用を続けるには、ランニングコストも含め、費用対効果がどの程度になるか試算することも重要です。
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