2024年に創設された新制度により、介護施設の経営情報等の報告義務化が決まりました。この記事では、義務化となった背景を振り返りながら、提出先の報告書フォーマットで届出をする際の内容や対応手順について詳しく解説します。あらかじめ準備をしておけばスムーズに取り組みやすくなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
介護施設の経営情報が報告義務化された背景
厚生労働省は、介護サービス事業者の経営情報の収集とデータベースの整備を行い、国民にわかりやすく公表する制度を2024年の4月に創設しました。今後の人口の変化や介護現場での人手不足、物価上昇、災害などのさまざまな影響を踏まえた支援策の検討の必要性によるものです。
介護保険法の改正も行われ、第115条の44の2によって、都道府県知事が介護サービス事業者の経営情報等の調査や分析を行い公表するように努めることと、介護サービス事業者が経営情報等を都道府県知事に報告しなければならないことが定められ、2024年4月1日から施行されています。
一部対象外となる場合もありますが、原則として全ての介護サービス事業者は、経営情報等を都道府県知事に報告することが義務付けられました。介護サービス事業者は、厚生労働省の運用するデータベースシステムによって都道府県知事に経営情報等を報告します。そして、都道府県知事は情報の調査や分析を行い、厚生労働省・厚生労働大臣に報告する仕組みです。これらの仕組みにより、厚生労働省が把握した情報や分析結果が国民に公表されます。
報告義務化となる対象や経営情報内容
ここでは、報告義務化に関する主なポイントとして、対象となる事業者や報告する経営情報の具体的な内容をまとめました。
報告義務化の対象となる介護サービス事業者
経営情報等の報告義務化は、基本的に全ての介護サービス事業者が対象ですが例外もあります。事業所や施設の全てが下記に該当する場合は報告の義務はありません。
- 当該会計年度に提供を行った介護サービスに係る費用の支給の対象となるサービスの対価として支払いを受けた金額が100 万円以下である者
- 災害その他都道府県知事に対し報告を行うことができないことにつき正当な理由がある者
経営情報の主な報告内容
報告する経営情報では、施設の名称や所在地などの基本情報、収益や費用、職員に関する情報などを報告します。具体的には下記の項目の報告が必要です。
事業所又は施設の名称、所在地その他の基本情報
下記の内容は報告が必須の項目です。
- 事業所又は施設の名称
- 法人等の名称
- 法人番号
- 介護事業所番号
- 介護事業所で提供しているサービスの種類
- 法人等の会計年度末
- 法人等の採用している会計基準
- 消費税の経理方式
事業所又は施設の収益及び費用の内容
下記の内容には、必須項目と任意記載の項目が含まれています。下線のある項目が必須項目です。
●介護事業収益
○うち施設介護料収益
○うち居宅介護料収益
○うち居宅介護支援介護料収益
○うち保険外収益
●介護事業費用
○うち給与費
■うち給与
■うち役員報酬
■うち退職給与引当金繰入
■うち法定福利費
○うち業務委託費
■うち給食委託費
○うち減価償却費
○うち水道光熱費
○うちその他費用
■うち材料費
・うち給食材料費
■うち研修費
■うち本部費
■うち車両費
■うち控除対象外消費税等負担額
●事業外収益
○うち受取利息配当金
○うち運営費補助金収益
○うち施設整備補助金収益
○うち寄付金
●事業外費用
○うち借入金利息
●特別収益
●特別費用
●法人税、住民税及び事業税負担額
事業所又は施設の職員の職種別人数その他の人員に関する事項
下記の職種ごとに、常勤や非常勤別の人数の記載が必要です。また、職種ごとの給与及び賞与は任意記載です。
- 管理者
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- 看護師
- 准看護師
- 介護職員(介護福祉士)
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 柔道整復師・あん摩マッサージ師
- 生活相談員・支援相談員
- 福祉用具専門相談員
- 栄養士・管理栄養士
- 調理員
- 事務職員
- その他の職員
- 上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者
- 上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
その他必要な事項
下記は、報告に必要なその他の事項で、下線は必須項目です。介護サービス以外の事業を行う事業者で、介護サービスとそれ以外の事業の収益や費用を分けて報告できない場合は、できる限り任意記載項目の報告を行いましょう。
- 複数の介護サービス事業の有無
- 介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
- 医療における事業収益
- 医療における延べ在院者数
- 医療における外来患者数
- 障害福祉サービスにおける事業収益
- 障害福祉サービスにおける延べ利用者数
期限内の報告が必要
報告内容は、毎会計年度終了後の3か月以内に行う必要があります。2024年3月31日から12月31日までに会計年度が終了する報告に限り、2025年3月31日までとなっていたため、2025年度は違いに注意しましょう。
参照:厚生労働省 介護保険法第115条の44の2の規定に基づく介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等に関する制度に係る実施上の留意事項について 2024年
報告書フォーマットに入力する対応手順
介護サービス事業者が都道府県知事に経営情報等を報告する際には、厚生労働省が2025年から運用を開始した新システム「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」で行うこととなっています。厚生労働省の資料を参考に、まずは全体像を把握しておきましょう。下記は主な手順です。
1. GビズIDを取得し、システムにログインする
2. メニュー画面にて「経営情報データ登録」を選択する
3. 損益計算書等のデータを登録する
4. 届出対象事業所のデータを登録する
5. 事業所の連絡先を登録する
6. 追加情報を登録する
7. 登録内容を確認して、届出内容を確定する
データの登録方法では、システム上で直接入力する方法の他に、ファイルをアップロードする方法を組み合わせることができ、ファイルを活用すると全て直接入力で行うよりも登録時間を短縮できます。登録方法は、利用している会計ソフトウェアの機能に合わせて選びましょう。届出が完了すると、登録したメールアドレスに届出完了のメールが届きます。また、報告内容を修正したり、過去に報告した内容を確認したりすることも可能です。
経営情報の報告前に用意しておきたいもの
システムに入力する前には、報告手順の把握とあわせて、あらかじめ報告する情報をまとめておき、必要なものをそろえてから行うとスムーズです。主に必要な内容を下記にまとめましたので、チェックリストとしてご参考ください。
□GビズID
□収益・費用等の情報
□届出対象事業所の情報
□事業所連絡先の情報
□追加情報
□収益・費用等のデータに含まれる介護以外事業に係る情報
□収益・費用等のデータに含まれる各事業所の職種別人数・給与
GビズIDは、専用サイトであらかじめ作成が必要です。データ登録については、直接入力とファイル登録によって情報の用意の仕方が変わるため、入力方法に合わせて準備しましょう。「収益・費用等のデータに含まれる各事業所の職種別人数・給与」のうち、職種ごとの常勤換算数は必須ですが、常勤職員と非常勤職員を区分できない場合は単に常勤換算数として記載可能です。
ナリコマには給食費のコスト削減実績があります!
経営情報の報告に伴い、今後の経営状況について課題を感じる場合もあるかと思います。給食費のコスト削減にお悩みの際は、ぜひナリコマのサービスをご検討ください。ナリコマを導入していただいた介護施設さまからは、コスト削減につながったという事例が複数寄せられており、100床の介護老人保健施設で一ヶ月88万円の削減につながったケースもあります。
また、コスト削減にとどまらず、介護食作りの手間が削減された、少ない人数で業務を回せるようになった、利用者さまが以前よりも食べてくれるようになった、などのさまざまなお声をいただいております。ナリコマでは、施設さまに合わせた個別のコストシミュレーションのご提供が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
クックチルに関する記事一覧
-
介護現場に働き方の変化を|シフト柔軟化と業務改善で叶える離職防止と人材確保
今、介護現場の働き方の変化が大きなテーマとなっています。
慢性的な人手不足や離職率の高さに加え、2025年問題など将来の人材不足を見据え、柔軟な働き方や業務改善の必要性がますます高まっています。
今回は、シフト柔軟化・短時間勤務・業務改善策をどう取り入れ、「選ばれる職場」「続けられる現場」を目指していけるのか、取り組みのヒントや実践のポイントをお伝えします。
さらに、ナリコマのクックチルによる厨房業務の負担軽減策もご紹介し、働きやすさとサービス品質を両立するヒントをお届けします。 -
2025年度から処遇改善加算一本化へ!変更点や賃上げに向けた対応方法を解説
介護職員処遇改善加算は、介護職員の賃金や環境の改善などを目的に取り入れられている制度です。利用には事業所が要件を満たす必要がありますが、介護職員の賃上げをはじめ、人手不足の課題解決にもメリットが期待できます。2025年度からは今までの環境が変わり、処遇改善加算一本化制度へと変更になりました。この記事では、主な変更点と共に、賃上げにつなげるための対応方法として取り組みのコツも解説します。
-
育児・介護休業法の改正で小学校就学前まで残業免除!制度の周知の仕方は?
2025年から、改正された新しい育児・介護休業法が段階的に施行されます。これにより、小学校就学前までの子供がいる場合の残業免除や、介護のためのテレワーク導入などが可能となり、育児中や介護中により働きやすくなることが期待できます。この記事では、今回の改正内容とあわせて、制度の周知方法など事業所側が押さえておきたいポイントを解説します。法改正に沿った就業規則や勤務体制の見直しを行う際にぜひお役立てください。
コストに関する記事一覧
-
今後どうなる?給食業界の課題と将来性を詳しく解説
給食は、保育所や学校、病院、老人ホームといったさまざまな施設で提供されています。施設を利用する人々にとって、給食は健やかな生活を送るために欠かせないものでしょう。ところが、その一方で、現在の給食業界は大きな課題をいくつも抱えています。
今回の記事で取り上げるテーマは、給食業界の将来性。近年における業界の動向や解決すべき課題を挙げ、今後の展望について解説します。ぜひ、最後までお読みになってください。
-
病院給食は委託と直営どちらがおすすめ?
医療施設や介護施設などで絶対に必要なものといえば、毎日の食事。今回は、病院給食にスポットを当てた記事をお届けします。現在は調理師や管理栄養士などの人材不足、食材をはじめとするさまざまなコスト高騰に伴い、委託費の値上がりも懸念されています。そんな問題が浮上してきている中で、病院給食はどのように運営されているのでしょうか?
本記事では病院給食の現状について触れ、委託と直営それぞれのメリットやデメリットを解説。さらに、病院給食を効率よく運営するためのポイントやおすすめの調理・提供方法などをお伝えします。 -
年度末の赤字!予算不足の病院・介護施設の給食費を解決するクックチル
病院や介護施設の給食費・厨房管理費の予算オーバーの悩みは、近年さまざまなところで取り上げられています。物価高騰や人件費の上昇により、年度末の赤字が続くことも珍しくない状況で深刻な課題となっています。そこで注目されているのが、新調理システム「クックチル」です。
この記事では、近年の給食費の赤字について、原因やデメリットを詳しく掘り下げながら、課題解決に役立つクックチルの特徴やメリットを解説します。