物価が上昇している近年、食材費の値上げに伴い給食委託会社の利用料も値上げすることがありますが、食材費だけでなく厨房管理費の値上げも同じく打診される場合があります。こうした給食委託会社からの値上げ要求に対して、厨房管理費が値上げする理由等の疑問などと共に厨房運営でお悩みの施設さまもいらっしゃることでしょう。
この記事では、給食委託会社の料金形態から、厨房管理費が高騰する理由などについて詳しく解説します。老人ホームなどの介護施設の厨房管理費を削減し、より効率の良い厨房運営に切り替えるコツをご紹介しますのでぜひご参考ください。
目次
給食委託会社の料金形態について
給食委託会社の料金形態は、個々の契約内容によって異なる部分がありますが、大きな違いとして管理費制と食単価制に分けることができます。
- 管理費制:毎月の管理費としての定額費用と食数による食材費を支払うスタイル
- 食単価制:各種経費込みの1食あたりの単価を毎月の食数分に乗じて支払うスタイル
管理費制は委託費制と呼ばれることもありますが、人件費や経費などのさまざまな費用を合計した定額になっているのが特徴で、それに加えて食材費を請求されることが多いです。定額の分は固定金額のため、予算を立てる際にわかりやすいメリットがあるでしょう。また、食材費は食数によって変動した金額の支払いとなります。
食単価制の場合は、人件費や経費などその他の費用と食材費を合計し、1食あたりの金額として設定されています。食べる人の人数が多い施設など、食数の変動が少ないケースで取り入れられやすいスタイルです。
給食委託会社に値上げを打診されたときは?
給食委託会社の費用は、料金形態などにより見え方が異なります。値上げを要求されたときには、今までの請求内容と見積もり内容を参考に比較し、どの部分の値上げが必要なのかを調査しましょう。委託会社に詳しく問い合わせるのも一つの方法です。全体の請求内容を参考に、管理費や食材費を計算して1食あたりの金額を表してみると、比較検討がしやすいこともあります。
その上で、値上げをせずに済むサービスの利用方法や自社の運営方法がないかを検討してみましょう。難しい場合は、他の給食委託会社の利用を新たに検討するか、自社の厨房運営方法を今一度見直すなどの対策方法があります。
老人ホームの厨房管理費が高騰するのはなぜ?
近年の消費者物価指数では、物価の上昇が目立っています。2023年度の平均では2022年と比較して総合指数が3.0%上昇しており、2024年度の平均では2023年と比較して総合指数が2.7%上昇と、上昇傾向にあるのが特徴です。野菜や米など食品の値上がりが目立ち、飲食店ではメニューの値上げが見られ、一般家庭においても野菜が買えないことによって野菜不足の心配の声も挙げられています。
こうした状況のため、老人ホームなど介護施設用の給食でも食材費が高騰することは容易に想像できますが、ではなぜ給食委託会社では厨房管理費も値上げの対象となっているのでしょうか。厨房管理費の詳細は個々に異なる場合もありますが、管理費制の料金形態の場合、人件費や厨房設備の維持管理費、衛生管理費など、さまざまな費用が含まれています。これらの中でコストの多くを占めている費用が人件費です。
人件費が高騰している理由として挙げられるのが、最低賃金の上昇です。厚生労働省の「令和6年度地域別最低賃金改定状況」によると、全国加重平均額で5.1%の引き上げが見られました。都道府県によって最低賃金時間額の改定価格は異なりますが、6%以上引き上げられた地域も少なくありません。2022年度の全国加重平均額が961円だったのに対し、2023年は1,004円、2024年は1,055円となっており、年々上昇していることがわかります。
公益社団法人全国老人福祉施設協議会の「特養の食費に対する物価高騰の影響」の中でも、利用者一人一日あたりの食費の状況の中で、約5割は調理員の人件費となっており、2022年から2024年にかけて調理員の人件費の平均は37.4円増加していました。こうした状況から、給食委託会社の厨房管理費が高騰している原因には、人件費の高騰が大きく影響していると思われます。
参照:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年度平均」2024年
参照:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年度平均」2025年
老人ホームの厨房管理費を削減するには
先述したように、食材費に影響を与える近年の物価の上昇は避けられず、食事の品質を保ったうえでの対策が難しいことから、コスト削減では厨房管理費の削減に注目するのも役立つ方法です。その中でも、多くのコストを占める人件費の削減がポイントとなります。
給食委託会社に全面的に給食業務を委託している場合、人件費を削減して欲しいと一概に要求するのは難しい面がありますが、自社で運営する場合は工夫次第で人件費の削減が可能です。近年の介護業界では人手不足の課題が深刻なため、少ない人数で厨房業務を回すことができれば、人件費削減と共に人手不足の課題解決にも役立つでしょう。
人件費を削減するポイント
管理栄養士と調理員によって個々の業務の種類は異なりますが、老人ホームなどの介護施設の食事に関する業務では、例えば下記のような内容があります。
- 献立の作成
- 材料の発注
- 入荷の際の検品
- 食材の下処理や調理
- 食事の盛り付け
- 利用者さまへの配膳
- 食器や厨房の後片付け
- 衛生管理
食材の調理では、一般的な加熱調理のほか、個々の利用者さまに合わせた介護食作りなども必要になります。これらの一連の業務において、少人数で作業可能な業務や縮小できる業務、または機械などを使って自動化できる業務がないかを探してみましょう。
ただし、業務量の変更がないまま単に少人数で業務をこなそうとするだけでは、業務の質が落ちるほか上手く回らなくなりデメリットが増えるため注意が必要です。厨房管理費の中で人件費を削減する際には、食事の質をキープすることも忘れずに意識しましょう。
調理方式の変更で人件費を削減
人件費を削減するには、厨房業務そのものの運営方法から見直すことも役立ちます。注目されている方法の一つが、調理方式の変更です。従来の方法は、食事の度に調理を行うクックサーブと呼ばれる方法でしたが、近年では、下記のように、クックチルをはじめ作り置きに視点を当てた複数の調理方式が活かされています。業務の効率化によって人件費の削減につながります。
- クックチル:加熱調理した食品を急速に冷却してチルド保存しておき、食事前に再加熱と盛り付けを行って提供する方法。
- ニュークックチル:クックチルの方式を応用し、チルド状態で盛り付けまで行ってから保存しておき、食事前に再加熱して提供する方法。
- クックフリーズ:クックチルの方式と流れは同じで、冷却ではなく凍結させて冷凍保存する方法。
- 真空調理:食材と調味料を真空包装状態にしてそのまま低温加熱調理し、急速に冷却または凍結させて、チルド保存または冷凍保存を行い、再加熱と盛り付けを行って提供する方法。
効率の良い厨房運営を実現するクックチル
クックチルで作る食品は、チルド状態で保存が可能なため、料理のストックができるところが特長です。食品や状態によって個々の消費期限は異なりますが、製造日と消費日を含めて最大で5日間の保存が可能となっています。あらかじめ調理して保存しておけば、食事の際には再加熱と盛り付けのみで提供できるため、厨房での業務時間を効率良く使うことができるでしょう。
自社でクックチル食品を作る場合に限らず、他社のサービスを利用しクックチル食品として導入すれば、施設の厨房に専門の調理スタッフを採用する必要もなくなります。また、調理にかかる業務量が大幅に減少するため、少人数で業務を回すことでさらに人件費の削減が期待できます。自社で食材から仕入れる必要がなくなるため食材が余ることもなく、フードロスの改善につながり、廃棄コストも削減できるでしょう。
また、クックチル食品は衛生管理が整った環境で作られるほか、食事を温めてから提供するまでの流れもスムーズなため、衛生面でのメリットが期待できます。
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ナリコマには、365日日替わりのクックチル献立があり、老人ホームの毎日のお食事を飽きずに楽しめる味わいをそろえております。和食から洋食まで種類が豊富にあり、時には郷土料理も登場します。お正月やひな祭り、敬老の日などにちなんだ行事食や歳時食があるため、季節の移ろいを食事で体験してもらえることも魅力です。介護食にも対応しているほか、低栄養の防止に役立つMCTオイルを使用するなど栄養面も工夫して作っています。
また、クックチルとニュークックチルのどちらにも対応しているため、施設の厨房に合わせて最適な運営プランをご提案いたします。まずは一度、お気軽にご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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