老人ホームは高齢者を対象とした施設のこと。近年ではニーズが多様化しているため、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム、ケアハウスなど、さまざまな施設があります。そういった老人ホームの多くで欠かせないのが、施設内で過ごす高齢者への食事です。毎日の献立はもちろん、お正月や節分など、季節のイベントにあわせた行事食を提供しているところもあります。
今回の記事は、老人ホームにおける行事食をクローズアップ。行事食のメリットや注意点、ちょっとしたアイデアなどをまとめてお伝えします。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
老人ホームで行事食を提供するメリット
まず、老人ホームの行事食にどんな役割があるのかみておきましょう。本項目では、行事食を提供することで得られる主なメリットをまとめました。
行事食のメリット①食を通して季節が感じられる
一般的にいわれている行事食の魅力は、食を通して季節が感じられることです。春は桜餅、夏は鰻の蒲焼き、秋はお月見団子、冬は年越しそばなど、四季の変化がみられる日本では行事食のバリエーションも豊富。旬の食材を使った料理や地域によって特色が異なる郷土料理も、行事食として取り入れることがあります。
老人ホームでは暦や季節の認識が薄れている方もいます。そういったケースでは、行事食が四季のイメージを呼び起こすこともあるでしょう。もちろん、認識能力に問題がない高齢者にとっては、行事食が季節の移り変わりを楽しむきっかけになります。
行事食のメリット②食事が楽しみになる
前述したように、行事食には日常的な食事とまったく異なる趣向があります。普段なら出てこないようなものが食べられることに、特別感を抱く方も少なくないでしょう。老人ホームにおける行事食の提供は、食事を楽しむ機会が増えるだけでなく、高齢者の食欲を刺激する効果も期待できます。
高齢者は、嚥下機能や咀嚼機能が低下しやすくなる世代です。食べることにストレスを感じ、食欲が落ちてしまうこともあります。食欲が落ちて食事量が減ると、栄養が足りなくなってしまうことも。体力が落ちていたり、疾患を抱えていたりする高齢者の場合は、栄養不足によって重大な健康問題が発生するかもしれません。そういった意味では、行事食が高齢者の健康を支える要素の一つになると考えてもいいでしょう。
行事食のメリット③生活の質が向上する
先に挙げた二つのメリットにも通じる部分ですが、行事食を取り入れるとメリハリが生まれ、生活の質が向上します。老人ホームでは集団生活が基本。レクリエーション等はあっても、やや単調な日々になりがちです。そんな日常生活の中で提供される行事食は、特に華やかさや物珍しさが際立ちます。
また、高齢者が施設職員やほかの利用者と楽しみを共有し、コミュニケーションをとる機会が増えるのもメリット。人との関わりは「社会に参加している」という意識が芽生え、生きがいを感じるきっかけになります。
老人ホームの行事食における注意点
続いて、老人ホームで行事食を提供する際の注意点をみていきます。
行事食の注意点①咀嚼・嚥下しやすい食形態
毎日の食事を提供している老人ホームでは、咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者のために、いろいろな食形態を準備しているでしょう。行事食でも、誤嚥などの事故を防ぐために同じような配慮が必要です。献立内容にもよりますが、食材を小さくカットしたり、とろみをつけたりしたほうがいい場合があります。食材の形がわからなくなってしまうミキサー食などは、彩りよく仕上げたり、イベントに関連するデコレーションを施したりするといいでしょう。
行事食の注意点②治療中の疾患を考慮する
老人ホームには、持病などで治療を受けている高齢者もいるでしょう。そういったケースでは医療機関からの指示で糖分や塩分の摂取量が制限されていたり、特定の食品を控えていたりすることがあります。行事食を提供する際も、ほかの人と同じ献立内容にはできません。事前に個別の情報をしっかりと確認し、栄養バランスなどを調整します。治療に影響がない範囲で、行事食の魅力が伝わるような工夫もあるといいでしょう。
行事食の注意点③食べる環境にもこだわる
前述したメリット①でお伝えしていますが、行事食には「高齢者に季節を感じてもらう」という重要な役割があります。提供時には、イベントの趣旨にあわせた飾り付けをしたり、音楽を流したりするのがおすすめです。献立内容はもちろん、食べる環境にもこだわることで、行事食への期待がよりいっそう大きくなるでしょう。
老人ホームに最適!行事食を楽しむためのアイデア
老人ホームで過ごす高齢者に行事食を楽しんでもらうには、どんな方法があるのでしょうか?本項目では、具体的なアイデアをまとめてみました。
行事食のアイデア①イベントは幅広く取り入れる
老人ホームの行事食は高齢者が対象ですが、イベントを取り入れる際はあまり世代にこだわらず、バリエーションを持たせるといいでしょう。ひな祭りにはちらし寿司、こどもの日にはお子様ランチ風のワンプレートごはんなど、一般的に子ども向けとされるイベントでも、高齢者にあわせた行事食を提供することができます。
桜や紅葉が楽しめる時期には行楽弁当風、お祭りや花火大会が多い夏は屋台めし風といったアレンジを考えてみてもいいかもしれません。また、冬至はゆず湯に入る習慣がありますが、お風呂の代わりに、ゆずを使ったお菓子やお茶を楽しんでもらうのもおすすめです。
行事食のアイデア②郷土料理で食文化を知ってもらう
暦や季節のイベントだけにこだわらず、旬の食材が使える郷土料理を行事食として提供するのも一つの方法です。郷土料理は北海道から沖縄まで各地にあり、行事食のバリエーションがぐんと広がります。遠く離れた土地の郷土料理は、食文化を新たに知る機会にもなるため、高齢者にとっても新鮮味が感じられるでしょう。
その土地特有の行事にまつわる料理であれば、由来や意味などの説明も加えると、よりいっそう興味を持ってもらえるかもしれません。もちろん、料理によっては高齢者が食べにくいこともあります。元のイメージを残しつつ、適宜アレンジを加えるといいでしょう。
行事食のアイデア③世界の食文化に触れてもらう
ハロウィンやクリスマスは海外由来のイベントですが、今では日本国内にかなり浸透しています。老人ホームでも、同じように世界の食文化を取り入れてもいいでしょう。ハロウィンならかぼちゃのスイーツ、クリスマスならローストチキンなどの料理が楽しめます。
また、オリンピックなどの世界的なイベントを取り上げるのもおすすめ。開催国の伝統的な料理を食べやすくアレンジして提供することもできるでしょう。ただし、クセの強い食材や料理は避けたほうがいいかもしれません。
ナリコマの献立サービスなら老人ホームの行事食も簡単
老人ホームでの行事食は、いろいろな角度から取り入れると楽しみの幅が広がります。しかし、高齢者が食べやすいよう配慮する必要があり、手間や時間がかかるのも事実でしょう。ナリコマがご提案する献立サービス「すこやか」なら、そんな老人ホームにおける行事食も丁寧にカバーします。
クックチル方式のため、再加熱と簡単な仕上げのみで提供可能。栄養バランスが計算された365日日替わりの献立は、現場の負担軽減にも貢献できます。ミキサー食、ゼリー食、ソフト食のご用意があるので、咀嚼・嚥下機能が低下している高齢者も安心です。もちろん、アレルギーや治療による禁食も展開できます。老人ホームの食事提供でお困りの際には、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
クックチルに関する記事一覧
-
介護現場に働き方の変化を|シフト柔軟化と業務改善で叶える離職防止と人材確保
今、介護現場の働き方の変化が大きなテーマとなっています。
慢性的な人手不足や離職率の高さに加え、2025年問題など将来の人材不足を見据え、柔軟な働き方や業務改善の必要性がますます高まっています。
今回は、シフト柔軟化・短時間勤務・業務改善策をどう取り入れ、「選ばれる職場」「続けられる現場」を目指していけるのか、取り組みのヒントや実践のポイントをお伝えします。
さらに、ナリコマのクックチルによる厨房業務の負担軽減策もご紹介し、働きやすさとサービス品質を両立するヒントをお届けします。 -
介護施設の経営情報報告義務化!提出先や対応手順を確認しよう
2024年に創設された新制度により、介護施設の経営情報等の報告義務化が決まりました。この記事では、義務化となった背景を振り返りながら、提出先の報告書フォーマットで届出をする際の内容や対応手順について詳しく解説します。あらかじめ準備をしておけばスムーズに取り組みやすくなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
-
2025年度から処遇改善加算一本化へ!変更点や賃上げに向けた対応方法を解説
介護職員処遇改善加算は、介護職員の賃金や環境の改善などを目的に取り入れられている制度です。利用には事業所が要件を満たす必要がありますが、介護職員の賃上げをはじめ、人手不足の課題解決にもメリットが期待できます。2025年度からは今までの環境が変わり、処遇改善加算一本化制度へと変更になりました。この記事では、主な変更点と共に、賃上げにつなげるための対応方法として取り組みのコツも解説します。
委託に関する記事一覧
-
給食委託をするときに気をつけたいこと
病院や介護施設などにおいて、患者さまや利用者さまの食事は欠かせないものですが、近年、病院や介護施設では給食業務における人手不足の問題がしばしば取り上げられています。給食の提供では、給食を直営して自社で用意する方法と、給食業務を外部に委託して他社に用意してもらう方法があり、給食委託は人手不足の課題解決の一つです。
給食委託では、一部を委託する、全ての業務を委託する、といった選択肢のほか、委託先の環境も個々に違います。委託して全てお任せすれば簡単なイメージもありますが、実際に利用するまでには検討するべき事柄がいろいろあるでしょう。利用の仕方によって得られるメリットなども異なるため、給食委託もベストな環境を手に入れるためにはそれなりの難しさがあります。
そこで今回は、給食委託の失敗例や選び方のコツなど、給食委託をする際に気をつけたいことをまとめました。課題解決の方法として、給食委託会社を利用する以外の方法についても解説します。給食業務の環境改善や課題解決にお悩みの際はぜひご参考ください。 -
給食委託会社の選び方は?正しい選び方のポイントを解説
今後の需要が見込まれる給食委託会社の選び方についてお届けする記事です。最適な給食委託会社を選ぶための重要なポイントを挙げ、項目ごとに詳しく解説。給食委託を検討する際にお役立ていただけます。
-
特定技能制度を活用したい!外国人の在留資格や雇用方法などを解説
近年の人手不足の課題解決の一つとして、特定技能制度が注目されています。この記事では、特定技能制度による在留資格「特定技能」の概要から、産業分野一覧、試験等の詳細や資格取得までの流れ、雇用方法などをわかりやすく解説します。病院や介護施設の厨房業務の人手不足にお悩みの施設さまはぜひご参考ください。