近年は健康管理への関心が高まっており、各種メディアでもさまざまな用語や情報が取り上げられています。本記事でピックアップするPHRは、健康に関する個人情報管理の一つ。PHRの仕組みやメリット、活用方法などをまとめて詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、参考になさってください。
目次
PHRとは
日本で医療機関や介護施設を利用した際には、検査結果、受診履歴、処方箋の内容、施設利用状況などが記録され、一定期間にわたり保管されます。そういった個人の健康にまつわるデータをPersonal Health Record(パーソナル・ヘルス・レコード)といい、PHRはその頭文字を取った略称として使われています。PHRは複数箇所で記録されたデータを集約したもので、本人が自由に閲覧し、必要に応じて活用できることが大きな特徴です。
EMR・EHRとの違いは?
PHRに似ている用語として、EMRとEHRがあります。EMRはElectric Medical Record(エレクトリック・メディカル・レコード)、EHRはElectric Health Record(エレクトリック・ヘルス・レコード)の略称。どちらもPHRと同じく健康に関する個別データですが、主に医療機関やその関連施設で活用されるものを意味しています。
EMRは電子カルテに含まれるデータのことで、一つの医療機関内で共有し、活用することを目的としています。一方、EHRは電子カルテだけでなく、血圧や脈拍といったバイタルサイン、体重、既往歴、検査や診療の詳細、処方薬の内容など、より多くのデータを集約。外部の医療機関や関連施設と共有し、連携できるようにすることが目的です。
PHRを活用するメリット【個人の場合】
では、個人でPHRを活用するメリットをみていきましょう。
健康管理のきっかけづくり
生活習慣病の予防やダイエットなど、健康管理に関心がある人は多いかもしれません。しかし、株式会社マーケティング・コミュニケーションズがオンラインで実施した「令和5年度 男女の健康意識に関する調査(対象者:20歳以上70歳未満)」によると、「健康ではないと思う」と回答した人は男女共に20%を超えています。
また、「気になる症状への対処ができているか」という質問では、世代や性別を問わず、ほぼ50%〜60%の人が「十分に対処できていない」と答えています。つまり、健康管理をしたほうがいいと思っていても、実際には手の回っていない人が多いのです。PHRは検査結果などの具体的な数値が目に入るため、健康への危機意識が強くなる可能性も高いでしょう。だからこそ、健康管理をはじめるきっかけとして有効と考えられています。
食事や生活リズムの改善点が見える
PHRには食事内容や睡眠時間などの記録も含まれます。食事や生活リズムの改善点が見え、日常生活における意識改革になるでしょう。食生活は、主食・主菜・副菜をそろえたり、不足しがちな栄養の豊富な食品を取り入れたりするだけでも改善されます。
また、毎日の就寝・起床をなるべく規則正しい時間にすると、睡眠の質を上げるのに効果的です。このように、PHRを参照して日常生活を整えることで、心身を健やかに保てるようになります。
定期的な運動のモチベーションを維持
散歩やジョギングといった定期的な運動をPHRとして記録すれば、健康増進に役立てることができます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」によると、成人は1日約8,000歩の歩行に加え、息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上行うことが推奨されています。
せっかく定期的に運動していても、記録がなければ実際の運動量がわかりません。運動内容や時間などの詳細を記録しておくことで自己分析ができ、モチベーションも維持しやすくなるでしょう。また、自身のペースを守りながら、達成したい目標が決めやすくなります。
遠方に暮らす家族の見守り
PHRは、本人の同意があれば家族も閲覧できます。例えば「遠方に暮らす高齢の親が心配」など、家族が見守りのために活用することも可能。「バイタルサインが正常値か」「食事をきちんととれているか」といった詳細が確認でき、家族全員の安心につながります。
PHRを活用するメリット【医療機関の場合】
医療機関でPHRを活用する場合には、次のようなメリットがあります。
データ化による業務効率化
患者情報が次々と増えていく医療機関にとって、データ化されたPHRは業務効率化の助けになります。紙ベースで保管した場合と比べると、閲覧がスムーズ。ほかの医療機関や患者への情報提供も簡単で、業務時間が短縮できます。長時間労働や人手不足が課題となっている医療業界では、非常に大きなメリットといえるでしょう。
緊急時に必要な情報の確認
医療機関は、急病で搬送される患者はもちろん、予期せぬ交通事故や自然災害などに遭った患者を診察することも多いでしょう。そうした緊急事態に対応する場合でも、患者の既往歴やアレルギーはもちろん、受診や服薬の状況などを早急に把握しなければなりません。
ところが、患者が正しい情報を伝えられない状態だったり、かかりつけ医との連絡がとれなかったりすると、どのような処置をすればいいのか判断できないケースがあります。その際、必要な情報をPHRによって確認することで、医療機関も迅速かつ適切な処置ができるのです。
健康管理の個別アドバイスが可能
医療機関においてPHRの確認ができれば、患者に対して健康管理のアドバイスがしやすくなります。患者にとって最適な食生活や生活習慣を総合的に判断し、健康増進をより丁寧にサポートできるようになるのです。
また、患者と医療従事者がコミュニケーションをとりやすくなる一面もあります。結果として医療の質、患者の満足度が上がることも期待できるでしょう。
PHR活用に便利な健康アプリも登場
政府が提供するマイナポータルは、マイナンバー制度を使ったPHR活用サービスの一つ。ただし、行政手続きの円滑化が主な目的のため、健康に関わるデータは医療費や予防接種、薬などに限定されています。前述したようなメリットを得るには、幅広くカバーする民間サービスを利用するといいかもしれません。本項目では、その一部をご紹介します。
自己管理に使えるベーシックな健康アプリ
「SaluDi」「健康日記」「FiNC」などは、自己管理がしやすくなるベーシックな健康アプリです。食事や運動、歩数、体重、睡眠などのデータを記録することができます。ウェアラブルデバイス等の測定機器と連携できるアプリもあります。
お薬手帳にさまざまな機能を追加
薬の飲み合わせなどが確認できるお薬手帳は、「お薬手帳プラス」「eお薬手帳3.0」「EPARKお薬手帳」「つながる薬局」などのアプリが登場。それぞれ詳細は異なりますが、処方箋の送信、オンライン服薬指導といった利便性の高さが魅力です。
食生活に特化したサービス
「あすけん」や「カロミル」は、栄養管理に最適なアプリです。毎日の食事を記録することで、栄養士やAIのアドバイスが受けられます。また、ベルシステム24のオンライン食事・栄養指導ソリューションは企業向けのサービスですが、こちらも食生活の専門的なサポートを行っています。
栄養バランスのとれた食事で健康をキープ
食生活の記録は、PHRの中でも特に重要といえるデータです。心身の健康維持には栄養バランスのとれた食事が欠かせません。ナリコマでは、医療・介護施設に最適な献立サービスを展開中です。栄養バランスはもちろん、見た目やおいしさにもこだわっています。食事の内容や提供方法について見直しをご検討の際には、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
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