今回のテーマは、医療・介護・福祉を中心に幅広い分野で注目されている「QOL(Quality of Life)」です。QOLの定義などをお伝えすると共に、病院や介護福祉施設におけるQOL向上の重要性を解説。QOLを高める食事のポイントについてもまとめていますので、ぜひ参考になさってください。
目次
QOL(Quality of Life)の定義
QOLとは
QOL(Quality of Life)は、「疾患がないだけでなく、自分らしく充実した生活を送り、心身が満たされた状態であること」を重視する概念です。日本語では「生活の質」「生命の質」「人生の質」といった訳が多くみられます。1945年のアメリカでは、がん患者への臨床試験においてQOLに近い概念があったとされています。そして、1960年代〜1970年代には、現在認識されているようなQOLの概念へ発展したと考えられているようです。日本の医療界に導入され、研究が進められるようになったのは1984年以降。その後は医療だけでなく、介護や福祉、教育など幅広い分野で注目されるようになりました。
QOL低下の要因
QOLは、場合によって大幅に下がることもあります。では、その主な要因をみていきましょう。
①病気やけが
病気やけがによって身体機能が低下すると、QOLも下がってしまいます。治療のための通院や入院、服薬など、日常生活にさまざまな制限が生じるでしょう。また、家庭や職場での過ごし方にも影響を及ぼすかもしれません。
②生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れは、QOLの低下に直結します。例えば、食事や睡眠が不規則になったり、不十分になったりすると、慢性的な体調不良に陥ってしまうかもしれません。さらに、普段からあまり歩かない、定期的な運動をしていないといった場合も、体力が低下して疲れやすくなってしまいます。
③メンタルヘルス不調
精神的なストレスの蓄積は、意欲やコミュニケーション能力の低下を招きます。うつ病などの疾患に発展すると、食欲減退や暴飲暴食、不眠などが生じ、身体的なストレスが増えてしまいます。いずれにしても、QOLの低下は避けられないでしょう。
④不安定な経済状況
経済的な不安も、QOLの低下につながる要因です。生活必需品の購入も躊躇するような状況が続けば不安や不満が生まれ、幸福感が下がってしまいます。また、プライベートで楽しむ余裕がなくなり、ストレスを感じやすくなる可能性もあります。
⑤自然災害などの非日常的な状況
地震や台風などの自然災害は、QOLを著しく低下させることがあります。避難生活は毎日のストレスが蓄積されるだけでなく、先々への不安も重なります。新たな自然災害への恐怖心を抱いてしまうことも考えられるでしょう。

QOLの低下を防ぐためにできること
前述したQOL低下の要因を踏まえると、日常生活においては以下のような点を意識することが大切です。
- 食事や睡眠などの生活リズムを整える
- 栄養バランスの整った食事をとる
- 適度な運動を取り入れる
- こまめな休息や十分な睡眠をとる
- 心身の不調を感じた場合は早めに対処する
- 仕事の安定性や働きやすさを見直す
- 趣味や習い事などの楽しみを見つける
- 自分なりの目標を設定し、生活にハリを持たせる
このような心がけによってQOLを維持、または向上させると、心身も健やかに保つことができるでしょう。
病院や介護福祉施設におけるQOL向上の重要性
病院や介護福祉施設では、かねてからQOLの向上が重要といわれてきました。本項目では、医療・介護・福祉分野とQOLの関係について詳しくお伝えします。
医療にとってのQOL
病院は本来、疾患やけがを治したり、心身の不快な症状を改善したりする場所です。しかし、QOL向上の視点でみると、単に治療を行うだけではなく、患者の意向を汲むことも必要といえます。例えば、日常生活に支障がない程度まで回復しても、患者がやりがいを感じていた仕事に復帰できなかったり、長年大切にしてきた趣味が楽しめなくなったりするのであれば、QOLは下がってしまうでしょう。
また、入院と在宅のどちらでも療養が可能な場合は、患者のQOLを考慮することもあるようです。入院生活では病院内の規則はもちろん、医療上の安全を守るために必要な制限事項などもあります。慣れない生活でストレスが蓄積し、治療に影響を及ぼすかもしれません。つまり、患者によっては在宅療養にしたほうがQOLの維持や向上につながるのです。
ただし、サポートしてくれる家族がいないなど、在宅療養の環境が整っていなければ、入院のほうが適していると考えられます。患者によっては「何かあったときにすぐ対処してもらえる」という安心感から、あえて入院を希望することもあるでしょう。このように、患者のQOLを重視することで、医療体制のあり方は大きく変わります。

介護・福祉にとってのQOL
介護福祉施設は、主に高齢者や障がい者の日常生活を支援しています。QOL向上の視点でみると、利用者が自分らしい生活を送れるようになることが大きな目標となります。そして、QOLと共に重視されているのが、食事・排泄・入浴・更衣・整容・歩行といったADL(Activities of Daily Living/日常生活動作能力)です。
ADLを高めると自立した生活の幅が広がり、QOLの向上につながります。しかし、介護福祉施設では、ADLが低い利用者のQOLを向上させることもできるのです。例えば、手が不自由で、いつも介助付きで食事をする利用者がいるとします。その利用者が自助具を使って一人で食事ができるようになった場合、QOLも向上したといえるでしょう。つまり、介護福祉施設では、できるだけ利用者の希望に沿った支援を行うことが重要なのです。
QOLを高める「おいしい食事」のポイント
QOL向上のためには、おいしく、満足度の高い食事をとることが有効です。では、主なポイントをみていきましょう。
五感が刺激される食事
視覚・嗅覚・味覚・触覚・聴覚への刺激は、食事の楽しみを増幅させます。味、香り、食感などはもちろんのこと、全体の彩りや盛り付け、お皿のデザインなどにもこだわると、より満足度の高い食事になるでしょう。
季節感のある食事
旬の食材を使った料理のほか、おせち(お正月)やちらし寿司(ひな祭り)などの行事食は、いつもと違った雰囲気が楽しめるでしょう。食事は毎日繰り返されるため、季節にあわせて変化をつけるとマンネリ化防止になります。飾り付けやBGMなどの空間演出にこだわるのもおすすめです。

栄養バランスのとれた食事
QOLには、心身の健康状態も大きく影響します。主食・主菜・副菜を基本に、栄養バランスのとれた食事を心がけるといいでしょう。また、毎日楽しく、飽きずに食べられるよう、献立が偏らないようにすることも重要です。
会話をしながら楽しむ食事
誰かと一緒に食べる「共食」は、一人で食べる「孤食」よりも食事の時間が充実しやすくなります。会話によってコミュニケーションをとることで信頼関係が強まるのもまた、QOL向上につながるでしょう。
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