高齢者の栄養評価でよく話題になるのが「アルブミン(Alb)」です。血液検査で数値が出るため、現場では低栄養の目安として扱われてきた歴史があります。ただ最近は、アルブミンは栄養そのものよりも、炎症や病態の影響を受けやすいことがわかり、アルブミン値が低い=低栄養と結論づけるのは危険だと考えられるようになっています。
今回は、アルブミン値の位置づけを整理して、低栄養の指標として何を使うべきか、そして低栄養の改善策へつなげるための方法も考えます。
目次
アルブミン値は低栄養の指標としてどう使われてきたか

まずはアルブミンが何を示す数値で、なぜ低栄養の目安として使われてきたのかを整理しましょう。
アルブミンとは何か|血液検査でわかること
アルブミンは血液中に多く含まれるたんぱく質で、体内の水分バランス(浸透圧)を保ったり、薬剤やホルモンなどを運ぶ働きがあります。採血で測定でき、結果が分かりやすいことから、長く「栄養状態の指標」として参照されてきました。
アルブミンは、血管中の血液量や体内での水分の量を調整する役割を持っています。アルブミンの量が低下すると、血管内の水分が外に漏れてしまうことから、むくみが起こるようになります。また、アルブミンは体内へさまざまな物質を運ぶ役割も担っているため、アルブミン値の低下は代謝や内分泌のバランスが崩れてしまい、免疫低下を招いたり、全身の不調につながることもあります。
低栄養が進むと食事量やたんぱく質摂取が不足しやすく、痩せやすくなってしまうことから、アルブミン値が低い=栄養が足りていないと判断されていたという背景があります。
アルブミン値が低下する主な要因
実は、アルブミンが下がる要因は低栄養だけではありません。下記の要因でもアルブミン値が低下します。
- 肝機能障害
- 栄養不良
- 腎疾患
- 体液過剰(希釈)
- 心不全や感染症
身体の中で炎症が起きると、体は急性期反応として肝臓のタンパク合成の優先順位を変え、アルブミンが低下しやすくなります。高齢者の場合、慢性疾患や軽い炎症が重なりやすいため、食事が十分摂れていてもアルブミン値が下がることがあったり、食事量が落ちているにも関わらず、アルブミン値が下がりにくいために低栄養に気付けないパターンもあるのです。
アルブミン値だけで低栄養を判断できない理由

アルブミンは便利な一方で、栄養以外の要因でも変動するため、数値の読み方には注意が必要です。
アルブミンは炎症・病態の影響を受けやすい
アルブミン値が低い時には、栄養不足だけでなく、まずは炎症や病態がどれくらい影響しているかを考えます。主要な臨床栄養学会が協力して、新しい成人の低栄養診断基準として作られたのが「GLIM基準」です。GLIM基準では「アルブミン値は栄養指標ではなく、炎症指標、予後指標として用いられるべき」との記載があります。また「アルブミン値のスクリーニングでは、低栄養症例を見逃す可能性が少なくありません」とも書かれており、アルブミンは「見なくていい」ではなく、「低栄養であることの確定材料にはしない」というのがポイントでしょう。
低栄養を評価するために併せて見たい指標

低栄養の見逃しを防ぐには、体重や食事量など複数の情報を組み合わせて評価することが大切です。
身体計測・体重変化・BMI
低栄養を早期発見するためには、下記をチェックして身体の変化にいち早く気付くことが大切です。
- 体重の変化
- BMI
たとえば、6か月のあいだに2〜3kgほど体重が減っている場合や、1〜6か月の体重減少率が3%以上の場合は、低栄養のリスクを考えるきっかけになります。厚生労働省の「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」では、20~64歳のやせ(BMI 18.5kg/m²未満)は9.6%である一方、65歳以上の低栄養傾向(BMI 20kg/m²以下)は19.5%とされており、高齢者では低栄養リスクがより高いことがわかります。
年齢を重ねるにつれて、食事量の低下や病気の影響、筋肉量の減少などが重なり、本人も周囲も気づかないまま低栄養に近づいてしまうことがあります。だからこそ、体重やBMIはその時点の数値だけでなく、変化の流れを継続して見ることが大切です。
血液検査で併せて確認したい項目
血液検査では、アルブミン以外の項目も低栄養評価の参考になります。代表的な項目は以下のとおりです。
|
項目 |
見るポイント |
|
コリンエステラーゼ(ChE) |
たんぱく質やエネルギー不足の手がかりになる |
|
ヘモグロビン(Hb) |
貧血の有無を確認する目安になる |
|
総リンパ球数(TLC) |
栄養状態と関連して増減する |
|
総コレステロール値 |
150mg/dL未満は低栄養傾向の目安の一つとされる |
ただし、これらの数値も単独で判断するのではなく、体重変化やBMI、食事摂取状況などとあわせて確認することが大切です。
食事量・摂取状況・生活背景
低栄養を評価するうえでは、どれくらい食べられているかも重要です。GLIM基準でも、低栄養の診断には「体重減少や低BMI」などの身体の変化だけでなく、食事摂取量の低下や消化吸収の問題が原因として、下記のような状態も含まれています。
- 1週間以上、必要量に対して50%以下の摂取が続く
- 2週間以上、程度を問わず摂取量の低下が続く
- 慢性的な消化管の問題などで、消化吸収に悪影響がある
どれくらい食べられているのか、消化吸収を妨げている要因がないかといった要素も含めて確認します。あわせて、食欲低下の有無、食べにくさ、嚥下機能、口腔内の状態、食事形態が合っているかといった点も見ておきたいところです。
また、高齢者では生活背景も注目すべきポイントです。一人暮らしで食事の準備が負担になるなケースや、身体的に買い物が難しかったり、精神的なストレスなどからも食事量の低下につながることもあります。だからこそ、低栄養の評価は数値だけでは判断せずに、食事と身体の状態、生活背景とあわせて見ていくことが重要です。
栄養評価を「数値」だけで終わらせない

栄養評価は判断して終わりではなく、食事改善に落とし込んで初めて意味があるのです。
低栄養評価は把握よりも改善へ
低栄養評価のゴールは、低栄養かどうかを判断することだけではありません。低栄養評価は、その結果をもとに、食事量の改善や食べやすさの見直しなど、実際の対策につなげることなのです。
数値や体重の変化からリスクを把握できても、改善につながらなければ意味がありません。食べられない原因を整理し、必要に応じて食事内容や提供方法を見直していくことが大切です。
低栄養改善には無理なく続けられる食事体制が大切
低栄養の改善には、必要な栄養をしっかり届けることは必要不可欠です。しかし、高齢者は食欲が落ちていたり、嚥下機能によっては一度にたくさん食べられなかったりすることもあります。栄養補助食品を使ったり、少ない量でも効率よく栄養を摂れることが大切です。
その一方で、食事を提供する現場では、利用者ごとの嚥下機能にあわせて食形態を調整するなど、個別の対応が増えやすくなってしまいます。丁寧な対応が求められる分、人手不足だったり、時間が足りなかったりする状況では、厨房業務に負担が大きくなってしまいます。
低栄養対策では「何を食べてもらうか」だけでなく、個別の食形態変更も含めて、無理なく回せる体制になっているかが重要です。個別対応や食形態の調整、喫食量の確認を無理なく続けられる体制があると、毎日の小さな変化にも気付きやすくなり、低栄養対策は進めやすくなるでしょう。

栄養改善を支えるしくみ「クックチル」
ナリコマが目指しているのは、「少量高栄養」の介護食です。味や見た目、栄養を追求し、製造方法から改良を重ねながら、食べきれる量で必要な栄養を満たすことを大切にしています。たとえ高栄養でも、食べきれない量では必要な栄養は十分にとれません。だからこそ、少量でもしっかり栄養を届けられる食事は、低栄養対策において大きな意味があります。
ナリコマのクックチルは、お食事がチルド状態で届き、厨房では加熱と盛り付けが主な作業になります。厨房業務の負担を抑えやすく、食形態も4種類を用意しているため、ミキサーで細かくしたり、刻んだりする対応は一切不要です。喫食量の確認や、利用者一人ひとりに向けた対応に時間を費やせるようになるでしょう。
ナリコマは、「少量高栄養」の介護食とクックチルの仕組みを通じて、現場で続けやすい栄養改善を支えています。
低栄養に関するお役立ち記事はこちらからチェック👇
アルブミン値による低栄養評価を食事改善につなげるために|ナリコマのクックチルという選択肢

アルブミン値は低栄養を考えるうえで参考になる指標の一つではあるものの、炎症や病態の影響も受けやすいため、単独で判断できるものではありません。アルブミンだけを栄養状態の指標として見るのではなく、体重変化やBMI、食事摂取状況、生活背景などをあわせて見ていくことが大切です。
しかし現場では、嚥下に合わせた食形態の調整や、食べられた量の確認など、ちゃんとやりたいことほど手がかかります。忙しい日が続くと、どうしても最低限の対応になってしまうこともあるでしょう。だからこそ、食事の内容だけでなく、厨房を無理なく回せる体制をつくっていくことも欠かせません。
ナリコマは食べきれる量で栄養を満たす少量高栄養の考え方で高齢者の栄養状態を支えます。低栄養評価をただの数値の確認だけで終わらせず、食事改善につなげていくためにも、ナリコマのクックチルもぜひ検討してみてください。
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