病院食の献立は、適切な栄養量を満たしながら、嚥下調整食・治療食・アレルギー対応・宗教への対応など、患者さまに合わせて個々に調整する必要があります。病院食は「まずい」といわれることも少なくないため、おいしく食べてもらえる工夫も欠かせません。行事食なども取り入れ、マンネリ化を防いで楽しい食事につながる献立作成が必要です。おいしい病院食の提供により、食事摂取量への良い影響も期待できます。この記事では、ナリコマで提供している一週間の献立例と、クックチル食品の特徴やクックチル方式による献立作成時の注意点を解説します。
目次
患者さまが抱える病院食への不安とは?

入院をするにあたって、患者さまはさまざまな不安や疑問を抱えることがあります。「入院したらどんな食事が出てくるんだろう?」というのもその一つです。食事に関しては例えば下記のような疑問が挙げられます。
- メニューはどのような内容か?
- おいしいか?
- 食事の時間は何時か?
- 食物アレルギーがあっても食べられるか?
- 一度の食事で食べ切れるか?
多くの方が、メニューの内容とおいしさを気にかけており、不安を抱かせる背景には、残念ながら「病院食はまずい」という意見がさまざまなところでいわれていることも影響しています。
病院食がまずいといわれてしまう理由
病院食がまずいといわれる原因には、例えば下記のような理由があります。
- 味が薄い
- 見た目がおいしそうに見えない
- 冷めている
- 同じようなメニューが出てくる
病状に合わせて内容を変更したり、嚥下しやすいようにとろみを付けたりすることで、、一般的な食事と味や見た目が異なってしまうことは避けがたい面があります。一方で、食べる側にとってはストレスになってしまうことも否めません。
また、入院中は治療に専念した環境で一人で過ごす時間が長く、コミュニケーションを取りながら楽しく食事をすることが難しいため、いつも以上に食事のまずさを意識してしまうこともあります。こうした環境では、冷めた料理や同じメニューが続くだけで、大きな不満につながりやすいです。

病院食のおいしい瞬間が入院生活の楽しみに!
さまざまな制限がある入院生活で、日常と同じように訪れる食事の時間は、患者さまにとって楽しみを感じられるひとときです。治療のための栄養面に優れた食事も、患者さまに食べてもらえなければその効果を発揮することができません。まずいと感じる食事が続けば残食も増えやすいため、病院食をおいしいと感じてもらうことで、完食につながり、患者さまの治療にも大きなメリットが期待できます。
岡山大学の「自己申告による入院患者の病院食の摂取量とその関連要因に関する研究」では、自己申告の病院食の摂取状況として、約4割が病院食の摂取量が半分以下と回答しています。食べられない理由の一つに「給食の問題」が挙げられており、「量が多すぎる」「食品ににおいがありご飯がまずい」という具体例が提示されていました。反対に、食事の摂取量が多い人は、食事に満足しており食事の時間を楽しく感じている、という結果も挙げられています。
このように、個々の患者さまにおいしいと感じてもらえる病院食の提供が、食事摂取量にも良い影響をもたらすことがわかります。
病院食の献立を組み立てる際に必要なこと
病院食は、それぞれの患者さまに適した栄養量があり、安全な食形態で提供することが大切です。また、アレルギーや治療食などの個別対応も欠かせません。献立を組み立てる際には、例えば以下のような複数の事柄を同時に満たし、かつおいしい食事を提供する必要があります。
- 栄養管理に従った適切な栄養量を満たす内容
- 患者さまの状態に合わせた適切な嚥下調整食
- 腎臓食や糖尿食といった各治療食への対応
- 食物アレルギーへの対応
- ハラールなど宗教に対応した食事
- 行事食や選択食への対応
こうした条件を満たすことで、入院時食事療養の算定要件の基盤づくりにもつながります。加算の対象となる嚥下調整食は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」が基準です。また、行事食や選択食を取り入れることで、食事のマンネリ化を防ぎやすく、患者さまの食事の楽しみにつながります。
参考:厚生労働省 入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の実施上の留意事項について 2026年
病院食の一週間献立例:ナリコマ「やすらぎ」
- 【第1日目 朝食】
-
- 御飯
- ベーコンとじゃがいもの煮物
- 味噌汁(もやし・大根葉・油揚げ)
- 牛乳
- のり佃煮
- 【第1日目 昼食】
-
- 御飯
- さわらの柚庵焼き
- 白菜と鶏肉の炒め煮
- フルーツ(冷凍マンゴー)
- 【第1日目 夕食】
-
- 御飯
- 肉団子の甘酢あんかけ
- 高野豆腐の煮物
- 大根の青じそドレサラダ
- 【第2日目 朝食】
-
- 御飯
- ホッケのグリル
- 味噌汁(チンゲン菜・白ねぎ)
- 牛乳
- Ca昆布ふりかけ
- 【第2日目 昼食】
-
- 御飯
- 鶏肉のマリネソース焼き
- れんこんとちくわの金平
- フルーツ(冷凍オレンジ)
- 【第2日目 夕食】
-
- 御飯
- 銀ひらすの鳴門煮
- キャベツと豚肉の野菜炒め
- おくらのとろろ和え
- 【第3日目 朝食】
-
- 御飯
- 小松菜と鶏肉のソテー
- 味噌汁(里芋・玉ねぎ)
- 牛乳
- さけふりかけ
- 【第3日目 昼食】
-
- 御飯
- 白身魚のオーロラソース
- 切干大根と絹揚げの煮物
- 玉ねぎとアスパラの和風柚子ドレサラダ
- 【第3日目 夕食】
-
- 豚肉の他人丼
- 胡瓜とささみの甘酢和え
- 黄桃缶
- 【第4日目 朝食】
-
- 御飯
- プレーンオムレツ(ケチャップ)
- 味噌汁(大根・大根葉)
- 牛乳
- Ca昆布ふりかけ
- 【第4日目 昼食】
-
- 御飯
- 鶏肉のさっぱり煮
- ひじきと大豆の煮物
- みかん缶
- 【第4日目 夕食】
-
- 御飯
- さばの香味焼き
- 里芋の鶏そぼろ煮
- 白菜の浅漬け
- 【第5日目 朝食】
-
- 御飯
- 鶏つみれ
- 味噌汁(あさり・わかめ)
- 牛乳
- しそかつおふりかけ
- 【第5日目 昼食】
-
- 御飯
- いわしの生姜煮
- もやしと鶏肉の炒め物
- やっこ(醤油)
- 【第5日目 夕食】
-
- 御飯
- ポークチャップ
- キャベツとツナのフレンチドレサラダ
- フルーツ(冷凍マンゴー)
- 【第6日目 朝食】
-
- 御飯
- 白菜とウインナーの豆乳煮
- 味噌汁(里芋・平天)
- 牛乳
- のり佃煮
- 【第6日目 昼食】
-
- 御飯
- かれいの魚田(田楽味噌)
- ミニ肉じゃが(豚肉)
- パイン缶
- 【第6日目 夕食】
-
- 御飯
- 鶏肉の梅風味焼き
- 大根といかの炒め物
- ブロッコリーと玉ねぎのマヨサラダ
- 【第7日目 朝食】
-
- 御飯
- メヌケの山椒煮
- 味噌汁(わかめ・白ねぎ)
- 牛乳
- いりこみそ
- 【第7日目 昼食】
-
- 御飯
- 牛肉のオイスターソース炒め
- 卯の花
- 大根といんげんのごまドレサラダ
- 【第7日目 夕食】
-
- 御飯
- 白身魚のきのこソースかけ
- ごぼうと絹揚げの煮物
- フルーツ(冷凍オレンジ)
クックチル食品の特徴と注意点

クックチルとは、加熱調理した食品を急速冷却させ、チルド保存する調理方式です。あらかじめ調理を行い食品をストックしておけるため、毎食ごとに調理する手間が省けて、ピーク時の業務量の緩和に役立ちます。食事の際には、保存していた食品の再加熱と盛り付けのみの簡易作業で提供可能です。クックチル食品の活用により、次のようなメリットが期待できます。
- 空き時間に調理でき、業務効率化につながる
- 徹底した温度管理により、衛生環境を保ちやすい
- 食事提供時の作業を簡素化できる
- 厨房業務をマニュアル化しやすい
一方で、食品の保管場所や専用機器が必要になるなど、次のようなデメリットもあります。
- クックチル食品の保管場所が必要
- 冷却・加熱などに使用する専用機器と設置スペースが必要
- クックチル方式に不向きなメニューがある
クックチル献立は不向きなメニューに注意
クックチル方式での調理には、揚げ物や炒め物といった相性の良くないメニューもあるため、献立作成や調理の際には工夫も必要です。揚げ物や炒め物は、再加熱後に食感が損なわれやすいことが理由の一つです。不向きなメニューを避けることで、献立がマンネリ化しやすくなるため、以下のポイントにも注意してみてください。
- 再加熱方法を工夫する
- 献立のバリエーションを増やす
- 旬の食材を使用した料理に力を入れる
- 行事食を取り入れる
ナリコマの多彩でおいしいクックチル献立
ナリコマのクックチル食品は、病院食に必要なさまざまな制限や基準に配慮しながら、患者さまそれぞれに合った食事をおいしく召し上がっていただけるよう、さまざまなこだわりと工夫を取り入れて製造しています。28日サイクルと365日サイクルの献立があり、嚥下調整食や治療食、禁止食、行事食にも対応可能です。
◆4形態食
患者さまの嚥下力や咀嚼力に合わせて、「普通食」「ソフト食」「ミキサー食」「ゼリー食」の4形態をご用意しております。
|
食形態 |
特徴 |
|
普通食 |
素材本来のおいしさを生かした家庭的な味わいで、適度にやわらかく調理された食事。 |
|
ソフト食 |
歯茎や舌でつぶせるほどにやわらかく、食材の食感も楽しめる食事。 |
|
ミキサー食 |
特殊な機器で調理し、水や出汁で薄めることなく素材のおいしさを残し、少量でも十分に栄養を取れる食事。 |
|
ゼリー食 |
ミキサー食をゼリー状にした、つるんとした食感の食事。 |

◆治療食・アレルギー対応
ナリコマの28日サイクル献立は、制限したい成分別の治療食に展開できます。食事ごとの成分別の展開指示書を利用することで、簡単に院内基準の治療食に対応可能です。
各種治療食の一例
- エネルギーコントロール食
- プロテインコントロール食
- ファットコントロール食
- 減塩食
- 貧血食
また、食物アレルギーのある方や食事の影響を受けるお薬を飲んでいる方など、禁止食のある患者さまにも、別の献立に変更してご用意できます。食事セットの差し替えはもちろん、1献立ごとに差し替えることも可能です。
◆行事食・郷土料理
ナリコマの行事食・歳時食では、日本の伝統や季節を感じられるお食事をご用意し、入院中でも季節の移ろいを感じられるように工夫しています。
行事食・歳時食の一例
- お正月:お節料理
- ひな祭り:ひし型寿司
- 敬老の日:松茸ご飯
また、月に2回ほどの頻度で郷土料理も献立に取り入れております。
郷土料理の一例
- 北海道の味噌らーめん
- 岩手県の田楽
- 香川県のしっぽくうどん
- 福岡県のがめ煮
行事食や郷土料理が患者さまの気分転換につながり、明るい気持ちで心身ともに回復していただくことを目的としています。
(※28日サイクル献立の行事食・歳時食の可否は、病院さまごとにお選びいただけます。)
◆おいしさを徹底追及した調理法
ナリコマのクックチル食品は、食材選びから調理方法まで徹底しておいしさを追求しています。
ナリコマのこだわりポイント
★味付けの基本:毎朝自社でとる一番出汁を使用
★主要調味料:家庭で親しまれるメーカーの製品を採用
★行事食:高級食材も活用
★自家製おやつ:栄養補助食品としてだけでなく、間食の楽しみを意識
★自家製パン:
イーストと併せて自家製の天然酵母を使用
飲み込みやすいように水分量を増加
★再加熱への対応:
作り立てのうまみを閉じ込める独自製法でおいしさを保持
変色や硬くなりやすい部分を調理工程で除去

ナリコマのオリジナルシステムで献立確認も簡単に!

ナリコマのオリジナルシステムでは、発注業務を一本化でき、禁止食や選択料理を一目で確認できます。予定・実施献立表や栄養分析表、アレルギーチェック表など、帳票類もアプリで簡単にダウンロード可能です。
ナリコマのクックチルを導入してくださる病院さまも増えており、食事内容改善はもちろん、業務効率化や人手不足解消、コスト削減などのお悩みの解決に役立っています。詳しくは下記もご覧ください。
ナリコマのサービスについて
https://www.narikoma-group.co.jp/service/
ナリコマの導入事例
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
こちらもおすすめ
完調品に関する記事一覧
-
食形態の変更はQOLに影響あり!工夫を凝らして高齢者の「食べる楽しみ」を支えよう
咀嚼機能や嚥下機能が低下した高齢者は誤嚥などの危険性があるため、食形態を調整した食事にする必要があります。主な種類としてきざみ食・ソフト食・ムース食・ミキサー食・ペースト食・流動食などが挙げられますが、安全性の確保と引き換えに、食欲が低下してしまうケースもよくみられます。
食欲低下は食事量の減少につながり、低体重・低栄養のリスクも高まってしまうのです。低体重・低栄養はフレイルなどを発症するきっかけとなり、QOLを著しく低下させます。高齢者のQOL向上を重視する介護施設では、単に食形態を変更するだけではなく、「食べる楽しみ」を維持する工夫も必要です。次のような点を心がけ、高齢者の豊かな食生活、QOLの維持・向上を目指しましょう。
・五感を刺激する
・本人の嗜好や希望に応える
・季節や行事にあわせた演出をする
・共食の機会を設ける -
医療・介護における高栄養食の重要性|特別食加算の対象となる嚥下調整食の課題とは
医療機関や介護施設で提供される食事は、「治療と健康維持のサポート」「日常的な楽しみの一つ」「自宅療養や在宅介護における食生活の向上」といった役割を担っています。近年では、咀嚼機能(かむ力)や嚥下機能(飲み込む力)が低下した患者や利用者に提供する嚥下調整食の重要性が再認識され、診療報酬における特別食加算の対象項目に追加されました。
嚥下調整食は食べやすさや飲み込みやすさを実現する一方、見た目の違和感などから食欲不振を招きやすく、低栄養になる可能性もあります。食事量が少ない患者や利用者には、高栄養食がおすすめです。
・カロリーや栄養価の高い食材を使う
・筋肉のもとになるたんぱく質を積極的にとる
・栄養価が下がりにくい調理方法にする
・栄養補助食品や医薬部外品を取り入れる
・一日の食事回数を増やし、必要な栄養を確保する
特に、高齢者は低栄養から体重が減少し、フレイル、ロコモティブシンドローム、サルコペニアなどを発症するリスクが大きくなります。日頃から、低栄養にならないような食生活をサポートしましょう。 -
低体重・低栄養のリスクと対策を解説!食事量が少ない高齢者のケアには嚥下調整食を活用しよう
高齢者の食事量・体重の減少は、フレイルや要介護への移行サインである可能性が高く、早期ケアが重要です。健康維持のためには、低栄養予防につながる以下のような対策が求められます。
◆生活習慣:「一日三食」「一汁三菜」を基本とし、一度に食べられない場合は分食による食事量の確保を行う。
◆栄養補給:毎日の食事における“ちょい足し”アレンジ、効率よく栄養がとれる食材の選定を心がける。
◆健康管理:歯科健診による口腔ケアを行い、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れる。
◆嚥下調整食(介護食)の活用:摂食機能のレベルにあわせた食形態に変更し、安全な食事環境を整える。
こうした日常的な取り組みによって栄養状態を改善し、自分らしくイキイキとした生活の基盤をつくりましょう。
経営課題に関する記事一覧
-
厨房業務とタスクシフトで現場を効率化|外注・委託化で省人化と人件費削減を実現
医療・介護現場では、人材不足が深刻化するなかで厨房業務の負担が大きな課題になっています。その解決策として注目されるのが「タスクシフト(業務移管)」です。厨房業務を外注や委託化、省人化によって効率化することで、人件費を抑えつつスタッフが本来業務に集中できる環境を整えることができます。今回は、厨房業務におけるタスクシフトの考え方と、外注・委託化を通じた効率化の方法を解説します。
-
医療MaaSと食事配送の可能性|医療×物流×給食の連携で変わる地域支援
医療MaaSと食事配送の考え方を取り入れることで、地域の医療・福祉施設における配送効率は大きく向上します。人手不足や多施設対応が進む中で、従来の配送のあり方を見直す動きが広がっています。今回は、医療MaaSの基本的な考え方を整理しながら、サテライト施設や配送ルート最適化の視点から、現場で実現できる地域連携の形について考えます。
-
老人ホームの食事はまずい?管理栄養士を悩ませる、高齢者が食事を食べない理由
老人ホームでは、利用者さまからの「食事がまずい」「食欲がわかない」といった声に、管理栄養士が悩む場面も少なくありません。食事がまずいと感じられる原因は複数あり、食事の味付けや料理の温度、加齢による味覚の変化、献立のマンネリ化などが関係しています。そのため、現状の問題点を見つけて改善していくことが必要です。この記事では、高齢者が食事を食べない理由を解説しながら、ナリコマのクックチル導入事例や365日サイクルの献立例、ナリコマのサービスの利用における便利なポイントをご紹介します。

