病院は、人々が健やかに暮らしていくために欠かせない施設の一つです。しかし、近年ではさまざまなコストが高騰しており、病院を存続させること自体が非常に厳しくなってきたといわれています。今回お届けするのは、そんな病院経営についての記事です。厳しいといわれる現状を詳しく解説し、コスト削減のポイントなどもあわせてお伝えしていきます。ぜひ最後までお読みください。
目次
病院経営にも影響するコスト高騰化

冒頭でも触れましたが、病院に限らず、かなり多くの事業に影響を及ぼしているのが近年のコスト高騰化です。新型コロナウイルスが世界中で流行した2020年は、人流が途絶え、各業界では人手不足が深刻に。その上、ECサービスの利用が増えたことで物流費が高騰し、結果的に食品やエネルギー資源などの値上げにつながりました。
そこに追い打ちをかけたのが、2022年2月に開始されたロシアのウクライナ侵攻。この二ヵ国が原産地となっている小麦のほか、ロシアが保有している天然ガスや原油、石炭などのエネルギー資源も高騰化してしまいました。さらに、2023年以降はパレスチナ問題などで中東地域の情勢が不安定になり、原油価格も安定しなくなってきたのです。
こうした状況に加え、国内では賃上げの動きが強まっています。病院などの医療機関も例外ではなく、2024年6月1日付けで診療報酬改定が実施されました。もちろん賃上げは悪いことではありませんが、経営側からすれば、人件費の増加がコスト全体に影響する事実は無視できないでしょう。
近年では多くの病院が赤字に
病院経営の状況は、主に医業利益と経常利益から判断します。医療行為で得た収入から医療のための材料費や経費を差し引いたものが医業利益、医業利益に本業以外の収入や費用もあわせて算出したものが経常利益です。
一般社団法人日本病院会などの三団体が行った「2024年度病院経営定期調査(期間:2024年7月22日~9月27日)」によれば、有効回答を得られた1,242病院のうち71.7%が医業利益において赤字だということがわかりました。2023年度の同調査では67.2%だったため、4.5ポイントも増えている状況です。

経常利益における赤字は2023年度が56.6%、2024年度が63.8%。こちらも医業利益と同様に赤字病院が増えている傾向にあります。ちなみに、水道光熱費などの補助金を除外した場合の赤字割合も2023年度が59.2%、2024年度が63.9%という結果が出ています。
また、病院では感染症の対応もあることから、2018年度〜2023年度の6年間を比較したデータでは新型コロナウイルスの影響が顕著に表れています。医業利益における赤字病院の割合は2018年度67.6%→2019年度63.7%→2020年度85.3%→2021年度73.5%→2022年度87.3%→2023年度83.3%。経常利益における黒字病院の割合は2019年度56.9%→2020年度73.5%→2021年度85.3%→2022年度 82.4%→2023年度 38.2%と推移しています。
2020年度〜2022年度で経常利益の黒字が多いのは、新型コロナウイルスの補助金が関係しています。黒字病院の割合がぐんと減った2023年度は、感染症法上で新型コロナウイルスの扱いが2類から5類になり、補助金の条件も変わったことが影響しているでしょう。
以上のような調査結果を踏まえると「近年の病院は純粋な医療行為のみで存続するのが非常に難しく、多少の補助金を受け取っても経営に余裕があるわけではない」といえそうです。
病院におけるコスト削減のポイント
続いて、病院のコスト構造と削減のポイントをみていきましょう。

人件費
病院を運営するには医師、看護師、医療事務員などをはじめ、たくさんの人手が必要です。人件費はコスト全体の50〜60%を占めていることが多いようですが、削減対象としてはおすすめできません。賃金が下がれば現場のモチベーション低下につながり、質の良い医療を提供できなくなる恐れもあります。
医薬品・診療材料費
病院では医薬品のほか、注射器やガーゼ、レントゲンフィルムなど医療用品を使います。仕入れ先との交渉によってコストを抑えられるかもしれませんが、医療行為の質を下げないようにすることが重要です。
病院給食費
入院設備のある病院であれば、患者さんに給食を提供します。原材料費や水道光熱費など、細かく見直せる部分が多く、コスト削減を検討しやすいでしょう。
設備費
医療機器や電子カルテなどをはじめとする減価償却資産の費用、それ以外の設備リース料はコスト削減の対象外です。しかし、職員寮や駐車場の賃貸料、設備のメンテナンス費用などは、交渉次第でコストを削減できる可能性があります。
外部委託費
病院では、一部の業務を委託でまかなっている場合があります。検体検査、給食調理、清掃、警備、クリーニングなど、委託する業務は病院によってさまざま。検体検査に関しては、質の良い医療を提供するためにもコスト削減の対象外とするのがいいでしょう。そのほかの外部委託費は見直す余地がありそうです。
その他の経費
上記以外でも、病院の経費にはいろいろなものが含まれています。通信費や広告宣伝費、福利厚生費、交際費など、コストが抑えられるものは意外と多いかもしれません。詳細な内容や費用だけでなく、「そもそも必要かどうか?」といったところまで丁寧に見直してみると、コスト削減につながるでしょう。
コストが変わる!?病院給食の運営方法

本項目では、コスト削減対象の一つである病院給食を取り上げます。前述の通り、給食は原材料費や水道光熱費を抑えることによるコスト削減が可能。ただ、それ以外にも運営方法そのものを見直すという手段もあります。
病院が直営で給食を提供している場合、厨房スタッフを採用したり、新人を育成したりする手間と費用がかかります。つまり、調理以外の業務もしっかりと管理していかなくてはなりません。また、献立作成や衛生管理を行う管理栄養士・栄養士の配置も必要です。
例えば、直営給食を委託給食に変更すると、スタッフの採用や育成が不要になります。献立作成や衛生管理なども含めた給食業務全般を丸ごと引き受けてくれる委託業者もあるでしょう。つまり、病院側は医療系の業務に専念できるようになるのです。しかし、委託管理費の値上げが続く昨今、給食委託以外の厨房運営方法にも注目が集まっています。
配食サービスは一般的にコストが高めではあるものの、「温め直すだけで提供できる」「食数の変更も柔軟に対応できる」といったメリットが。病院側の負担を減らすことができ、人件費や食材費、設備費などを削減できる可能性があるといえるでしょう。
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