病院の給食部門は近年厳しい状況に置かれています。病院食にはさまざまな事柄が求められ、患者さまの治療食として重要な役割を担っているため、課題解決には早急な決断も必要になるでしょう。直営での運営が難しくなってしまったときに役立つのが、給食委託会社の利用です。
この記事では、病院食の重要性や課題を改めて振り返りながら、給食委託会社の選び方のポイントや成功例と合わせて、その他の課題解決に役立つ選択肢も解説します。上質な病院食を提供するための情報としてお役立てください。
目次
病院の給食では何が求められるか
日々生きる上で食事は欠かせないものですが、病院の給食ではさらに多くの事柄が求められています。大きな目的は患者さまの治療を支えることですが、細かく紐解いてみると病院食に求められることの重要性が見えてくるでしょう。
患者さまの体調や体質に合った食事
病院食には、治療食としての役割があります。医師の指示に合う内容で、病気の治療に役立つ食事であることが大切です。そのため、それぞれの患者さまに合わせ、個別の栄養管理計画を立てなければなりません。一般食における食事摂取基準だけでなく、例えば生活習慣病を抱えている場合には個々の病状に合わせた制限食を意識する必要があるでしょう。体調や体質の面では、患者さまがアレルギーのある食材に気を付けることも重要なポイントです。
また、病気やケガ、加齢などによって、噛む力や飲み込む力が衰えてしまっている患者さまもいらっしゃいます。一般的な形状の食品を食べるのが難しい方には、介護食を提供することが必要です。介護食に対応することも病院食に求められることの一つです。
完食してもらえる食事
患者さまの体調や体質に合わせた病院食は、栄養素の摂取基準や形状の工夫だけでなく、それぞれの方の嗜好も意識されています。栄養があり治療に役立つとはいっても、嫌いなものを無理に食べるのは苦痛も伴い、全部食べ切るのが難しいこともあるでしょう。
病院食は、治療のため一食ごとに計算された献立になっています。しっかりと治療に必要な栄養を摂ってもらうためには、完食してもらうことが重要です。患者さまに食事を完食してもらうためには、それぞれの方に美味しいと感じてもらうことが大切になるでしょう。
食べることが楽しみになる食事
入院生活はある程度の自由が制限され、好きな事を十分にできない毎日が続くことがあります。このような生活の中で、日々のアクセントになるのが食事の時間です。入院生活では食事が唯一の楽しみ、という声も少なくありません。完食してもらえる食事にもつながることですが、食べることが楽しみになる食事であることも病院食に求められている事柄です。
食事の時間を楽しみにしてもらうためには、食事の質が重要です。味わいが美味しいことはもちろん、見た目が食欲をそそるものであるかどうか、美味しそうですぐに食べたいと思えるかどうか、ということもポイントになるでしょう。食事の時間は毎日訪れるため、バリエーション豊富なメニューであることも役立ちます。
給食委託会社を選ぶためのポイント
病院給食は、運営方法として「直営」と「委託」のスタイルがあります。病院食作りを自社施設で直接行うのが「直営」で、病院食作り自体を他の専門会社に任せてしまうのが「委託」です。提供する病院側で食事の準備を全て行う分には全体管理ができますが、外部に委託する場合には提供したい食事を任すことのできる会社を選ばなければいけません。ここでは、給食委託会社を選ぶ際のポイントを解説します。
運営に必要な需要を満たしているか
まずは基本的な需要に沿う内容から確認してみましょう。根本的な運営に関係することでは下記のようなポイントがあります。
- コスト面
- 希望に沿う食事の提供力
- コミュニケーション対応力
コスト面で無理があると委託を継続できないため、経済面で無理なく利用できることは大切です。委託によって必要な病院食が提供できないと意味がないため、献立内容や介護食対応のほか、現地調理やクックチルなどの調理方式も確認しましょう。また、委託では双方の関係の構築も難しい部分です。自社の要望にしっかりと対応してくれるところを選ぶようにしましょう。
よりメリットのある病院食にするために
病院食にはさまざまな役割が求められていることから、希望をなるべく多く叶えられる給食委託会社を選ぶことも大切です。より細かく検討するうえでは、下記のポイントも役立ちます。
- 味の美味しさ
- メニューのバリエーション数
- 食事の盛り付けや見た目の印象
- 食材の特徴や仕入れ先
- 衛生管理
- 食事提供の安定性
安全で安定した病院食を提供するためには、衛生管理が徹底していることや、緊急時の対応が優れていることも大切です。会社の実績なども参考に検討してみましょう。
給食委託会社を利用した成功例
病院が給食委託会社の利用で成功した事例では、抱えていた課題を上手く解決できたケースがよく見られます。例えば、希望した通りの食事やそれ以上に丁寧な食事を作ってもらえた、献立のバリエーションを増やすことができた、患者さまに食事がおいしいと言ってもらえた、といったことなどがあるようです。
このような成功例につながる背景としては、給食委託会社とのコミュニケーションが上手くいっていることもうかがい知ることができます。
病院での食事の重要性
先述したように病院食には多くの事柄が求められており、需要に対応した食事を提供することがとても重要です。しかし、近年では給食部門が赤字になっている病院が増え、食事の提供に影響を及ぼすおそれがあり大きな課題となっています。
病院食では、近年の食材などの値上がりにより、2022年の調査では公定価格よりも食費が4%高いという現状も起きていました。2024年6月からは、患者さまの自己負担額が以前よりも30円高くなりましたが、それでも赤字解消には十分でないといわれています。
病院給食部門の赤字問題は、最終的には病院食の質に影響が出てしまいます。質を落とすことで対策しなければいけなくなると、治療食としての十分な働きも期待できなくなってしまうでしょう。食材の高騰などは社会全体の問題でもあるため、単純に給食委託会社を利用すれば問題が解決できるとも言い切れない現状があります。
給食委託以外の選択肢はある?
病院食の質を落とさないためにも、外部の食事を利用する際にはコスト面を含めて慎重な検討が必要になるでしょう。給食委託会社の利用で相性の良い会社が上手く見つからないときには、他の選択肢を探ることも一つの方法です。
クックチル・ニュークックチルに注目
クックチルおよびニュークックチルは、新調理方式として近年病院食においても注目されている方法です。調理した食事を急速に冷却して保存し、提供するときに再加熱するのが特徴です。クックチルおよびニュークックチルを使えば、作業時間の短縮や衛生管理がしやすくなるなどさまざまなメリットがあります。
クックチルやニュークックチルには、給食委託会社も対応していますが、ほかに直営支援型としてクックチルやニュークックチルを活かしたサービスを提供しているところもあります。病院食をどのように提供するかを検討しながら、必要なサービスを展開している会社を選ぶのも良いでしょう。
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