人材不足や業務過多が深刻化する医療現場。その解決策のひとつが「タスクシフト(業務移管)」です。医師や看護師が本来担うべきでない業務を切り分け、事務職や厨房業務など非医療部門に移すことで、専門職が本来の業務に集中できる体制を整えることができます。さらに、タスクシェアや人員配置を工夫することで、チーム全体で柔軟に支える仕組みづくりも可能です。今回は、医療マネジメントに欠かせないタスクシフトの基本から、非医療業務の移管・外注化の方法まで詳しく解説します。
目次
タスクシフト(業務移管)とは?注目される背景と目的
医療従事者の負担を軽減し、質の高い医療を持続的に提供するために注目されているのが「タスクシフト(業務移管)」です。
タスクシフトの定義と基本的な考え方
タスクシフトとは、特定の業務を他職種へ移管し、医療従事者の負担を減らすしくみのことです。たとえば、医師が担ってきた業務の一部を看護師や薬剤師へ、看護師の業務の一部を看護補助者や事務職に移すといった形です。タスクシフトを行うことで、専門職は自分の専門性を発揮すべき領域に集中でき、現場全体の仕事効率が高まるのです。
タスクシフトのポイントは単なる分担ではなく「責任をもって移管する」こと。業務を他職種に引き継ぐことで、役割の明確化やチーム内の信頼関係も強化され、結果として患者にとって安全で質の高い医療が提供できる体制へ導きます。

なぜ今タスクシフトが必要とされるのか
今、タスクシフトが強く求められる背景には、人材不足や業務量の多さといった医療現場の慢性的な課題があります。特に医師は長時間労働が続いており、働き方の見直しが必要とされています。
2019年には「働き方改革関連法」により、医師の時間外労働にも上限規制が設けられました。厚生労働省が公表したデータにおいても、平成28年や令和元年の調査と比べ、時間外・休日労働は減少傾向にあるものの、依然として長時間労働が課題として残っています。
過剰な労働時間をなくし、業務の偏りを解消するためには、医師が担う必要のない業務を他職種に移すタスクシフトが不可欠とされます。タスクシフトは患者対応の質も落とさず、業務効率化を進められる方法なのです。
タスクシフト(業務移管)で医療従事者の負担を軽減する
タスクシフトは限られた人員で医療を維持しながら、現場の過重労働を減らすためには欠かせないものです。業務の見直しを通じて、今いる人材で無理なく業務を回せる環境をつくることが目的です。
医師・看護師から事務職への業務移管
医師や看護師が行っている事務的な作業は、事務職に移すことで効率化が図れます。たとえば、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク)には以下のような業務を任せることができます。
- 患者からの問診や病歴の聞き取り(予診)
- 検査や処置の手順についての説明
- 入院時に患者や家族へ行う説明業務
- 医師の指示に基づく診療記録や書類作成
これらの作業は医師や看護師が担う必要はなく、業務を移管すれば、専門職が本来の業務に集中できる時間を増やすことができ、現場全体の効率化につながります。

厨房業務・清掃・物品管理など非医療部門の移管
医療行為そのものに直接関わらない、下記のような業務も、タスクシフトの対象となります。
院内清掃
清掃専門業者は清掃に関するノウハウをもっているため、効率的かつ安定した清掃体制が整います。必要な資材や洗剤の管理も不要になり、スタッフの負担が減ります。
物品管理
日々の診療で使う物品は種類も量も多く、購入や在庫管理には大きな手間と労力がかかります。こうした業務をSPD部門や専門業者に任せれば、選定から購入、在庫管理、物流までを一括で対応可能になります。診療スタッフや事務職は煩雑な管理業務から解放され、本来の業務に集中できるようになるでしょう。
厨房業務
病院給食は安定した提供が求められる一方で、早朝勤務や嚥下食対応など、厨房スタッフの負担も大きい業務です。外部委託すれば専門スタッフに任せられ、効率的で安全な食事提供が可能になります。直営を選ぶ場合でも、ナリコマのクックチルのような仕組みを導入すれば、調理工程を効率化し、衛生管理も徹底できるため、厨房運営にかかる負担を大幅に減らせます。
タスクシェアで柔軟に支える人員配置の工夫
タスクシフトと並んで注目されているのが「タスクシェア」です。業務を複数の職種で分担することで、一人の負担を減らし、チーム全体で支える体制を整えることができます。
タスクシフトとの違い
タスクシェアは、医師の業務を複数の職種で分担・共同化する仕組みを指します。医師もその業務に関わり続けるため、完全に移管するタスクシフトとは異なります。タスクシフトとタスクシェアについて、両者は混同されがちですが、厳密には異なります。
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タスクシフト |
・医師の業務を他職種に完全に移管する ・移管された業務に医師は関与しない |
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タスクシェア |
・医師の業務を複数の職種で分担・共同化する ・医師もその業務に関わり続ける |
タスクシェアは「共同作業」、タスクシフトは「業務移管」と整理すると分かりやすいです。両者は相反するものではなく、並行して進めることでより大きな成果が得られます。医師の働き方改革を進めるうえでいずれも重要な施策とされているのです。
チーム全体で支える医療体制づくり
タスクシェアの実践によって、チーム全体で支える仕組みが広がります。たとえば看護師が検査説明を補助し、薬剤師が服薬指導を担うなど、一人に偏っていた負担を減らせます。
人員配置を柔軟に見直すことで「その場にいるスタッフが即応できる体制」が生まれ、急な業務にも対応しやすくなります。結果として、医療従事者一人ひとりが自らの専門性を最大限に発揮できるようになり、患者にとっても安心できる医療サービスにつながっていくのです。

厨房業務を外注化してタスクシフト(業務移管)を支える
基本的に厨房業務は医師や看護師が行うものではありませんが、配膳や下膳、食事介助といった周辺業務に医療従事者が関わるケースは少なくありません。人手不足が深刻な現場では、本来の診療やケアに割ける時間が削られることもあり、厨房業務の効率化はタスクシフトを進めるうえで欠かせない視点といえます。
厨房業務が医療従事者に与える負担とは
規模の小さい病院や介護施設では、看護師や介護職が配膳・下膳を兼務することが少なくありません。こうした周辺業務に時間を取られることで、本来の診療やケアに割ける時間が減ってしまうのが現状です。
過去の調査では、70%以上の病院で看護補助者が給食業務(配膳・下膳)を担っていたことが報告されており、こうした状況は長年にわたり課題とされてきました。医療職が本来業務に集中できない原因のひとつとして、今でも改善の余地があるといえるでしょう。
外部委託やクックチルの導入で得られる効果とは
高い専門性が求められるのは医療職だけでなく、厨房業務でも同じです。
厨房業務を外部委託すれば、専門スタッフに調理や配膳を任せられるため、安定した食事提供と効率的な運営が可能になります。日本医労連の調査によると、病院給食業務の外部委託は部分委託を含め約70%にのぼっており、合理化や収支改善の手段として広く取り入れられています。また、厨房業務そのものも人材不足の影響を受けており、調理スタッフの確保が難しいという課題があります。
そこで注目されているのが、クックチルやニュークックチルといった新しい調理方式です。
クックチルとは、セントラルキッチンで大量調理した食品を急速冷却し、チルド状態で保存・配送する仕組みにより、現場では再加熱・盛り付け・配膳のみで提供が可能になるというもの。仕込みや調理の負担を大幅に減らせるため、少人数でも安定した厨房運営を実現できるのです。

クックチルは導入しやすく現場になじみやすい
クックチルのメリットは厨房業務の効率化だけではありません。衛生管理や温度管理の基準が徹底されているため、食中毒リスクを抑えつつ、安定した品質で食事を提供できます。また、現場での作業がシンプルになるため、調理経験の少ない方や高齢のスタッフでも比較的短期間で業務に慣れることができます。導入のしやすさと現場へのなじみやすさから、クックチルは人材不足対策と品質管理を同時に叶える方法なのです。
タスクシフト/タスクシェアを進めて専門性を活かせるしくみ作りを
タスクシフト(業務移管)は、医師や看護師の負担を軽減し、医療の質を持続させるためにはなくてはならないものです。非医療部門の業務を適切に移管すれば、専門職が本来業務に集中できる環境が整います。さらに、タスクシェアを取り入れることで、チーム全体で柔軟に支え合う体制が築かれ、人員配置の最適化にもつながります。
特に厨房業務の外注化や効率化は、人手不足に悩む現場を支える大きな一手です。ナリコマのクックチルは、調理工程の省力化と品質管理を同時に叶えられるほか、導入のしやすさも魅力のひとつ。

医療従事者が専門性を発揮し、患者や利用者に安心を届けられる環境をつくるため、タスクシフトとタスクシェアを計画的に進めることが、これからの医療マネジメントのカギとなります。厨房業務の効率化をご検討の際には、ぜひナリコマにご相談ください。豊富な実績とノウハウで、現場の課題解決を力強くサポートします。
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