少子高齢化が進み続けている日本では、将来的にさまざまな業界で人手不足が深刻化するといわれています。病院・介護福祉施設における厨房も以前より人手不足が問題視されており、食事提供体制を今後どのように整えていくのか、という点が大きな課題の一つです。
本記事では、病院給食や介護給食の安定提供に欠かせない職員教育研修について解説。厨房オペレーションを円滑にするポイントを詳しくお伝えします。再加熱システムを導入するケースも取り上げますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
病院・介護福祉施設に求められる食事提供体制の安定化

病院・介護福祉施設は数多くの患者、高齢者、障がい者を抱えており、病気やけがを治療したり、健康的な生活を支えたりする役目を果たしています。その日常において定期的に必要とされているのが食事です。病院給食と介護給食には、それぞれ以下のような目的があります。
病院給食
病院給食は、患者への治療の一環として提供される食事です。栄養補給によって患者の体力を維持し、病気やけがの早期回復を目指します。治療内容や患者の状態にあわせ、特定の栄養成分やカロリーを調整したり、食形態を指定したりすることもあります。
介護給食
介護給食は、介護福祉施設利用者の低栄養を防ぎ、健康を維持するための食事です。主な利用者である高齢者や障がい者は、咀嚼・嚥下機能が低下していたり、手指が動きにくかったりするケースがよくみられます。その場合は食形態の変更や食事介助により、誤嚥・窒息などの事故を防ぐことも重要です。

食事提供が止まるリスクと事前対策の重要性
前述したように、病院・介護福祉施設の食事には重要な目的があります。何らかの理由で食事提供が止まった場合、患者や利用者の健康が損なわれてしまう可能性が非常に高いといえるでしょう。病状や健康状態によっては、食事ができなくなることで命の危機に瀕するかもしれないのです。
令和8年3月現在、災害拠点となる医療機関、すべての介護施設・事業所に対してBCP(事業継続計画)の策定が義務付けられています。BCPは自然災害やテロなどが発生しても重要な業務を継続できるようにするためのもの。病院・介護福祉施設では、非常食や飲料水を備蓄するのはもちろん、食事提供の継続方法についてもBCPに盛り込んでおく必要があります。
また、冒頭でもお伝えした通り、今後は人手不足が深刻化するといわれています。令和6年の高齢化率は29.3%と過去最高でしたが、同年の合計特殊出生率は1.15と過去最低になりました。少子高齢化の進行はこうしたデータをみても明らか。つまり、災害やテロなどの影響を受けずとも、人手不足によって厨房オペレーションが崩壊することも考えられるのです。
参考:令和7年版 高齢社会白書
持続可能な厨房運営を目指す!今後を見据えた教育研修の重要性

病院・介護福祉施設の厨房運営を安定させるには、すでに問題視されている人手不足に加え、近年続くコスト高騰化への対策も必要です。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した2020年以降は、ロシアのウクライナ侵攻、中東情勢の悪化、天候不順による不作や不漁、円安、賃上げなどが要因となり、原材料費・エネルギー費・物流費・人件費といったコストが大幅に上昇しています。令和8年3月現在も、原油価格に影響するイラン情勢の緊迫化が注目されており、さらなるコスト高騰化が懸念されている状況です。
人手不足やコスト高騰化への対策
厨房における人手不足やコスト高騰化への対策には、次のようなポイントがあります。
属人化の解消
「特定の職員がいないと業務が回らない」という体制は、その職員が不在になった途端に崩れてしまいます。人手不足であれば、同様に対応できる人材が確保できるとも限りません。こうした属人化を解消するには、厨房オペレーションのマニュアルを丁寧に作成し、誰もが同じように業務をこなせる環境を整えます。
業務全体の効率化
業務効率化は生産性の向上につながり、人件費などのコストをおさえる効果があります。また、残業が少なくなることで労働環境が改善され、人を集めやすくなるのも大きなメリットです。
厨房の省人化
業務効率化にもかかわる点ですが、献立や調理方式の見直し、自動調理器の導入などによって人員を減らすことも効果的です。厨房の省人化が実現すれば、ほかの業務に時間や労力を充てることができます。
職員教育研修の重要性
前述したような対策を施しても、現場で働く職員には相当の知識やスキルが必要でしょう。今後を見据え、長期的に活躍できる人材を育てるには、病院・介護福祉施設が教育研修を充実させることが重要です。業務内容に関してはもちろん、モチベーション向上やキャリアアップのための教育研修を行うのもいいでしょう。また、個人ワークだけでなく、ワーキンググループを設置し、厨房以外の職員も含めたメンバー構成にしたり、メンバー同士のディスカッションを行ったりするのも効果的です。
円滑な厨房オペレーションを実現するには

職員教育研修は厨房オペレーションの円滑化にもつながります。実施プログラムの主なポイントは、以下の三点です。
衛生管理における意識を向上させる
病院・介護福祉施設は、集団食中毒などの被害が広がりやすい環境です。衛生面に関する職員の理解を深め、危機管理意識を高めることが事故防止につながります。国際的な衛生管理基準であるHACCP(ハサップ)についても、正しく理解してもらうことが重要です。
調理に関する知識・技術を向上させる
すでにお伝えしたように、病院給食や介護給食は個別に食形態を調整したり、献立内容を変えたりすることがあります。そのため、調理に関する知識・技術が十分に備わっていなくてはなりません。また、食事の品質向上につながるのも大きなポイント。患者や利用者の満足度が上がり、喫食率の向上も期待できるようになります。
役割分担と多職種連携について理解する
食事を口にする患者や利用者の安全を守るため、厨房職員は自身の役割だけでなく、医師・看護師・薬剤師・介護福祉士・管理栄養士などとの連携についても理解する必要があります。特に、献立作成や栄養管理を行う管理栄養士は密接な関係にあり、厨房職員に直接指示を出すことも。異なる職種への理解を深めるとコミュニケーションがとりやすくなり、業務効率化にも効果があります。
再加熱システム導入に関する教育研修のポイント

クックチルやニュークックチル対応の再加熱システムを導入する場合、厨房オペレーションにも大きな変更があります。次に挙げる三点も、前述した教育研修のポイントに加えておきましょう。
調理工程や献立を理解する
クックチルやニュークックチルは、調理後に急速冷却とチルド保存を行い、スケジュールにあわせ再加熱してから提供します。調理後すぐに提供するクックサーブの工程と大きく異なるうえ、提供までの温度管理が重要となるため、事前の教育研修は欠かせません。また、このような再加熱システムでは、揚げ物・焼き物・炒め物などの不向きな料理もあります。その点も理解しておいたほうがいいでしょう。
マニュアルで専用機器の使い方を学ぶ
クックチルとニュークックチルの調理工程では、スチームコンベクション、ブラストチラー、再加熱カート、リヒートウォーマーなどの専用機器を使用します。厨房での事故を防ぐためにも、マニュアルを作成し、正しい使用方法や注意点を学ぶ必要があります。
業務スケジュールや人員配置を把握する
再加熱システムの導入時は、業務スケジュールや人員配置も変更しなくてはなりません。チルド保存の工程によって効率的に業務が進み、省人化も実現しやすくなります。このメリットを最大限に引き出すためにも、厨房職員には新たな勤務体制をきちんと把握してもらうことが重要です。
ナリコマなら厨房職員の教育研修もしっかりサポート

ナリコマでは安心・安全な献立サービスだけでなく、厨房職員に必要な教育研修のサポート体制も整えています。厨房業務に関するお悩みはすべて専属アドバイザーが丁寧にヒアリング。お悩みの解決に向けて、最適なご提案をいたします。また、厨房運営の安定化について学べるセミナーも全国各地で開催中です。こちらもぜひお気軽にご参加ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
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急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
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