近年では物価高騰が進んでおり、労働者の所得に影響する「最低賃金」への関心も高まっています。今回の記事では、最低賃金の上昇と厨房業務のコスト管理がどのように関係しているのか詳しく解説。はじめに最低賃金制度の概要を確認し、厨房におけるコスト削減策や外注化のメリット・デメリットについてお伝えしていきます。ぜひ最後までお読みください。
目次
最低賃金制度による社会全体の変化
最低賃金制度は昭和34年4月15日公布の最低賃金法によって定められ、現在に至るまで運用が続いています。労働者が受け取るべき最低賃金額を国が定め、使用者はその額以上の賃金を支払わなければなりません。仮に、双方が合意の上で最低賃金額に満たない支払いを設定しても、それは無効となります。最低賃金は大きく2種類あり、詳細は以下の通りです。
地域別最低賃金
都道府県ごとに定める最低賃金額です。業種、職種、年齢、雇用形態(正社員・派遣社員・パート・アルバイト・嘱託など)にかかわらず、すべての労働者に適用されます。
特定最低賃金
特定地域内の特定産業において、地域別よりも高い水準で定められる最低賃金です。例えば、北海道の乳製品製造業、千葉県の鉄鋼業など、地域によって特定産業の種類も異なります。特定最低賃金は基幹的労働者に適用されるものであり、「18歳未満または65歳以上の人」「雇用が一定期間未満で、技能習得中の人」「特定産業でも軽易な業務に従事している人」などは適用外です。
参考:特定(産業別)最低賃金全国一覧 (令和8年1月29日現在)

最低賃金に関連する社会の動向
最低賃金制度の運用により、社会全体では以下のようなメリット・デメリットが生まれています。
最低賃金制度のメリット
- 労働者の所得増加により生活水準が向上する
- 労働者のモチベーションが上がり、生産性向上や人手不足解消につながる
- 職種や地域、雇用形態などによる所得(賃金)格差が縮小される
- 消費行動が増え、経済全体が活発化する
- 若年層の地方移住が期待できる
最低賃金制度のデメリット
- 特に中小企業では、人件費増大によって廃業のリスクが生じる
- 人件費削減のために雇用の機会が減る可能性もある
- 扶養内の労働者は、社会保険料の負担を抑えるため “年収の壁”を考慮しなければならない
地域別最低賃金の全国加重平均額は上昇し続けており、厚生労働省が提供しているデータによると、約25年間で以下のように変化していることがわかります。令和5年度と令和7年度のデータを比べると、わずか2年間で100円以上の上昇がみられますが、これは物価高騰が急速に進む近年の状況が考慮された結果でしょう。令和7年度については、はじめて全都道府県の地域別最低賃金が1,000円超となったため、非常に大きなニュースとして取り上げられました。
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地域別最低賃金の全国加重平均額 |
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平成14(2002)年度 |
663円 |
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平成20(2008)年度 |
703円 |
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平成28(2016)年度 |
823円 |
|
令和元(2019)年度 |
901円 |
|
令和5(2023)年度 |
1,004円 |
|
令和7(2025)年度 |
1,121円 |
参考:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省(令和7年度)
今後も最低賃金の引き上げを検討していく国の方針を踏まえると、使用者となる企業等では業務全体にかかわるコスト削減策の実施や勤務状況の改善などを行い、できるだけ安定した運営体制を整えることが重要といえるのではないでしょうか。
最低賃金上昇が厨房業務に与える影響
飲食店や給食調理施設などの厨房では、「ストレスの多い労働環境」「業務量の多さ」「早朝・深夜勤務の多さ」「給与水準の低さ」といった理由から、人手不足が深刻化しています。少子高齢化が急速に進み、将来的に労働者の減少が見込まれる日本では、どの業界においても人材確保が重要な課題となっており、厨房の現場も例外ではありません。前述したように、最低賃金の引き上げは人件費増大に直結します。ところが、近年は厨房におけるコスト管理が厳しい状況にあるのです。

例えば、産業向け電気料金の平均単価をみると、2023年度は2010年度よりも約74%も上昇。これは、原油の輸入価格高騰に起因しています。日本のエネルギー自給率は他の先進国と比べてもかなり低水準。2022年時点の数値をみると、ノルウェー855.1%、オーストラリア341.5%、カナダ188.6%、アメリカ106.7%といった上位国に対し、日本は12.6%です。再生可能エネルギーの活用も推進されていますが、それだけですべての需要に応えることはできません。
また、さまざまな食事を提供する厨房では、食品価格の動向も注目すべきポイントです。2020年の指数を100とした場合、2025年の指数は128.6(生鮮食品を除いた指数:128.3)となっており、急激な高騰が数値として表れています。
食品の価格動向|農林水産省(令和7年11月)
こうした背景があるものの、すべてが価格転嫁できるとは限りません。しかしながら、最低賃金を保障しなければならない制度のルールを踏まえると、それ以外の部分でコスト削減策を講じる必要があるのです。
厨房におけるコスト削減策のポイント
最低賃金の引き上げによる人件費増大に対し、厨房ではどのようなコスト削減策が有効なのでしょうか。本項目では、実践しやすいポイントをまとめてみました。
調理業務の省力化・機械化
調理業務の省力化・機械化は、固定費(水道光熱費や人件費など)の削減につながります。例えば、調理工程が少ないメニューへの変更、自動調理器やスチームコンベクションオーブンなどの導入などが挙げられます。従来と比べて調理業務が効率化されると、場合によっては人員を減らすこともできるでしょう。また、病院や介護施設などで管理栄養士が調理業務を兼任している場合は、その必要がなくなり、栄養管理業務に専念できるようになることもあります。

食品管理の徹底と見直し
食品ロス(食材ロス)を防ぐことも非常に有効なコスト削減策です。もともとの仕入れ先や発注数などを見直すのはもちろん、在庫を無駄にしない細やかな管理体制が欠かせません。近年ではAIなどを活用して在庫を最適化し、食品ロスを防ぐ管理システムもリリースされています。食品ロスを防ぐだけでなく、管理業務に割く時間や人員の削減も期待できるでしょう。事前にシミュレーションを行い、費用対効果が高ければ導入するメリットがあるかもしれません。
加工品や外部サービスの活用
缶詰や完全調理済み食品などの加工品、仕込み代行サービスや配食サービスなどを活用することで食品管理業務や調理業務が効率化され、コスト削減になることもあります。一般的な飲食店と病院などの施設では食事の提供目的が異なるため、現場にあわせた製品やサービスを検討・選択するのがポイントです。
また、主に人的コストの削減を目指す場合には、厨房業務を外注する方法もあります。委託費用はかかりますが、直接雇用にかかるコストがなくなるため、店舗や施設によってはメリットが大きいかもしれません。外注化のメリット・デメリットは、次の項目でまとめてお伝えします。
👉厨房業務のコスト削減策については、ぜひ以下の記事もご参考になさってください。
厨房業務を外注化するメリット・デメリット

厨房業務の委託などを検討する際は、以下のようなメリット・デメリットをきちんと理解することが重要です。
メリット
- 業務が効率化され、人手不足が解消される
- 採用や育成、労務管理などの負担が減る
- 食品の衛生・安全管理が徹底しやすい
- 献立作成や仕入れなども含めて託すことができる
デメリット
- 外注先のノウハウにより品質が左右されやすい
- 細かな希望や要望が伝わりにくいこともある
- 知識やスキルが向上しにくい環境になる
- 費用の値上げ時には交渉が難しいこともある
金銭的なコストを抑えるには、外注する業務を事前に洗い出しておき、複数社の見積もりを比較するといいでしょう。また、最低賃金が引き上げられると外注先の運営状況が変わる可能性もあるため、契約後はこまめなコミュニケーションをとることも重要です。
👉以下の記事では、給食委託会社の選び方について詳しく解説しています。
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