患者や利用者を長期的にケアする病院・介護福祉施設の多くでは、毎日の食事提供が欠かせません。嚥下調整食の準備は、非常に重要な業務の一つ。今回の記事では、嚥下調整食の主な役割や料理例、作り方のポイントなどを解説します。現場の負担軽減につながる外注サービスについてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
誤嚥・窒息などの事故を防ぐ嚥下調整食
人が食事をするときの動作全体を「摂食」と呼びますが、その過程を細かくみると、次のような段階に分けられます。
①認知期
食べ物を認知し、口の中に取り込む段階です。食べる順番やペースなども判断します。「先行期」と表現されることもあります。
②準備期
口の中に取り込んだ食べ物を咀嚼して唾液と混ぜ、飲み込みやすい食塊にする段階です。「咀嚼期」と表現されることもあります。
③口腔期
舌を動かし、食塊を咽頭へ送り込む段階です。「嚥下第1期」と表現されることもあります。
④咽頭期
食塊を咽頭から食道へ送り込む段階です。「嚥下第2期」と表現されることもあります。
⑤食道期
ぜん動運動によって、食塊が食道から胃へ運ばれる段階です。「嚥下第3期」と表現されることもあります。
口腔期は誤嚥が起きやすい段階であり、特に注意が必要です。令和6年の「人口動態統計(確定数)」で公表された死因順位をみると、誤嚥性肺炎は第6位。食事は日常的に必要なものですが、誤嚥によって深刻な状況に陥る可能性もあるといえます。だからこそ、数多くの患者や利用者の命を預かる病院・介護福祉施設では、食事介助や見守りなどを確実に行い、万一の事故を防がなくてはならないのです。

嚥下調整食の主な役割
嚥下調整食は、嚥下機能や咀嚼機能が低下している方でも飲み込みやすく、食塊がまとまりやすいようにした食事のこと。食材や料理の形態を変えたり、適度なとろみを付けたりして調整するのが一般的です。嚥下調整食の提供には、次のようなメリットがあります。
嚥下調整食を提供するメリット①誤嚥・窒息を防ぐ
嚥下機能や咀嚼機能が低下している方の食事では、誤嚥や窒息のリスクが高まります。嚥下調整食は患者や利用者それぞれの状態にあわせて作るため、食事中の事故防止に効果的です。
嚥下調整食を提供するメリット②食べる楽しみがある
患者や利用者が食事をとれなくなった場合、胃ろう、経鼻経管、点滴などによる栄養摂取を行うことがあります。しかし、嚥下調整食なら問題なく食べられる方であれば、「口から食べる」という楽しみを維持できるのです。毎日の食事が楽しみになると、食欲増進やQOL(生活の質)の向上も期待できます。
嚥下調整食を提供するメリット③食事量の減少や低栄養を防ぐ
メリット②でお伝えした患者や利用者の食欲増進は、食事量の減少を防ぐことにつながります。きちんと食べてもらわなければ、治療や健康維持に必要な栄養をとることができません。低栄養は、さまざまな健康リスクを高めてしまいます。そのため、嚥下調整食が栄養摂取の要となるケースもあるのです。
嚥下調整食のコード別にみる料理例

嚥下調整食は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が公表しているコード(学会分類)によって分類されます。統一のコードを使用することで、調理員による品質のばらつきや引き継ぎ時などのミスが起きにくくなるため、安全性の向上につながります。
患者や利用者の安全確保は、非常に重要なポイント。だからこそ、多くの病院や介護福祉施設がコードに基づいた嚥下調整食を提供しています。本項目では、コード別にみた料理例をまとめてみました。なお、コード0j・0tについては嚥下訓練を目的とした食品に相当するため、今回は省略しています。
| 学会分類2021(食事)早見表 | ||||||||
| コード | 名称 | 形態 | 目的・特色 | 主食の例 | 必要な咀嚼能力 | 他の分類との対応 | ||
| 0 | j | 嚥下訓練食品 | ◆重度の症例に対する評価・訓練用 ◆少量をすくってそのまま丸呑み可能 ◆残留した場合にも吸引が容易 ◆たんぱく質含有量が少ない |
◆重度の症例に対する評価・訓練用 ◆少量をすくってそのまま丸呑み可能 ◆残留した場合にも吸引が容易 |
– | (若干の送り込み能力) | ◆嚥下食ピラミッド LO ◆えん下困難者用食品許可基準I |
|
| t | 嚥下訓練食品 0t | ◆均質で、付着性・凝集性・かたさ配慮にしたゼリー ◆離水が少なく、スライス状にすくうことが可能なもの ◆均質で、付着性・凝集性・かたさ配慮にしたとろみ水 (原則的には、中間のとろみあるいは濃いとろみのどちらかが適している) |
◆重度の症例に対する評価・訓練用少量ずつ飲むことを想定 ◆ゼリー丸呑みで誤嚥したりゼリーが口中で溶けてしまう場合 |
– | (若干の送り込み能力) | ◆嚥下食ピラミッド L0一部の(とろみ水) | ||
| 1 | j | 嚥下調整食1j | ◆均質で、付着性、凝集性、かたさ、離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの | ◆口腔外で既に適切な食塊状となっている (少量をすくってそのまま丸呑み可能) ◆送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要がある ◆1jに比し表面のざらつきあり |
おもゆゼリー、ミキサー粥のゼリーなど | (若干の食塊保持と送り込み能力) | ◆嚥下食ピラミッド L1-L2 ◆えん下困難者用食品許可基準Ⅱ ◆UDF 区分 かまなくてもよい(ゼリー状) |
|
| 2 | 1 | 嚥下調整食2-1 | ◆ビューレ・ペースト・ミキサー食など、均質でなめらかで、べたつかず、まとまりやすいもの ◆スプーンですくって食べることが可能なもの |
◆口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの (咽頭では残留、誤嚥をしにくいように配慮したもの) |
「粒がなく、付着性の低いペースト状のおもゆや粥 | (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) | ◆嚥下食ピラミッド L3 ◆えん下困難者用食品許可基準Ⅲ ◆UDF 区分 かまなくてもよい |
|
| 2 | 嚥下調整食2-2 | ◆ビューレ・ペースト・ミキサー食などで、べたつかず、まとまりやすいもので不均質なものも含む ◆スプーンですくって食べることが可能なもの |
◆口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの (咽頭では残留、誤嚥をしにくいように配慮したもの) |
やや不均質(粒がある)でもやわらかく、離水もなく付着性も低い粥類 | (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) | ◆嚥下食ピラミッド L3 ◆えん下困難者用食品許可基準ⅡⅢ ◆UDF 区分 かまなくてもよい |
||
| 3 | 嚥下調整食3 | ◆形はあるが、押しつぶしが容易、食塊形成や移送が容易、咽頭でばらけず嚥下しやすいように配慮されたもの多量の離水がない | ◆舌と口蓋問で押しつぶしが可能なもの ◆押しつぶしや送り込みの口腔操作を要し(あるいはそれらの機能を賦活し)、 かつ誤嚥のリスク軽減に配慮がなされているもの |
離水に配慮した粥など | 舌と口蓋間の押しつぶし能力以上 | ◆嚥下食ピラミッド L4 ◆UDF 区分 舌でつぶせる |
||
| 4 | 嚥下調整食4 | ◆かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどのないもの ◆箸やスプーンで切れるやわらかさ |
◆誤嚥と窒息のリスク配慮をして素材と調理方法を選んだもの ◆歯がなくても対応可能だが、上下の歯槽堤間で押しつぶすあるいはすりつぶすことが必要で舌と口蓋問で押しつぶすことは困難 |
軟飯・全粥など | 上下の歯槽堤間の押しつぶし能力以上 | ◆嚥下食ピラミッド L4 ◆UDF 区分 舌でつぶせる および ◆UDF 区分 歯ぐきでつぶせる および ◆UDF 区分 容易にかめるの一部 |
||
| 学会分類2021(とろみ)早見表 | |||
| 項目 |
段階1 薄いとろみ 【II-3項】 |
段階2 中間のとろみ 【II-2項】 |
段階3 濃いとろみ 【II-4項】 |
| 英語表記 | Mildly thick | Moderately thick | Extremely thick |
|
性状の説明 (飲んだとき) |
「drink」するという表現が適切な程度の口に因ると口腔内に広がる液体の種類・味や温度によっては、とロミが付いていることがあまり気にならない場合もある飲み込む際に大きな力を要しないストローで容易に吸うことができる |
明らかにとろみがあることを感じ、かつ「drink」するという表現が適切なとろみの程度口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらない舌の上でまとめやすいストローで吸うのは抵抗がある |
明らかにとろみが付いていて、まとまりがよい送り込むのに力が必要スプーンで「eat」するという表現が適切なとろみの程度ストローで吸うことは困難 |
|
性状の説明 (見たとき) |
スプーンを傾けるとすっと流れ落ちるフォークの歯の間から素早く流れ落ちるカップを傾け、流れ出た後には、うっすらと跡が残程度の付着 |
スプーンを傾けるととろとろと流れるフォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちるカップを傾け、流れ出た後には、全体にコーティングしたように付着 |
スプーンを傾けても、形状がある程度保たれ、流れにくいフォークの歯の間から流れ出ないカップを傾けても流れ出ない(ゆっくりと塊となって落ちる) |
|
粘度 (mPa・s) 【II-5項】 |
50-150 |
150-300 |
300-500 |
|
LST値 (mm) 【II-6項】 |
36-43 |
32-36 |
30-32 |
|
シリンジ法による 残留量 (ml) 【II-7項】 |
2.2-7.0 |
7.0-9.5 |
9.5-10.0 |
※「日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021」または日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ「嚥下調整食学会分類2021」(下記URL)を必ずご参照ください。
|
コード |
料理例 |
|
コード1j |
全粥ゼリー、パン粥ゼリー、みそ汁ムース、茶碗蒸し(具なし)、卵豆腐、ごま豆腐、プリン、ほうじ茶ゼリー |
|
コード2-1 コード2-2 |
重湯ゼリー、パン粥、塩ゆでほうれん草のペースト、かぼちゃの煮物ペースト、ビシソワーズ、ポテトサラダ(ペースト状)、野菜スープ(ペースト状)、麻婆豆腐(ペースト状) ※均質かつなめらかであれば2-1、不均質かつ粒・ざらつきがあれば2-2に相当 |
|
コード3 |
全粥、やわらかうどん、お粥のオムライス、だし巻き卵、白身魚のあんかけ、すき焼き(ムース状)、ミートボール(ムース状)、きんぴら(ムース状) |
|
コード4 |
グラタン、フレンチトースト、ひきわり納豆、ハンバーグ、麻婆豆腐、マグロの刺身、ふろふき大根 |
嚥下調整食における食材選びや作り方のポイント

嚥下調整食は、通常の食事よりも満足度が下がりやすいといわれています。きちんと食べてもらうには、嚥下や咀嚼がスムーズになることだけでなく、おいしさや品質(見た目・食感など)の良さも重要です。ここでは、上手に作るためのポイントをまとめてみました。
食材選びについて
嚥下調整食にはさまざまな食材を使うことができます。生鮮食品は鮮度の高いものを選びましょう。そのほかの適した食材、誤嚥に注意すべき食材については、次のポイントを参考にしながら選んでみてください。
▼適した食材の主なポイント
- やわらかくなりやすい(例:いも類)
- もともとやわらかく、そのまま食べられる(例:バナナ、アボガド)
- 骨や筋が少なく、身に脂がのったやわらかな肉・魚類
▼誤嚥に注意すべき食材の主なポイント
- 繊維が強く、かみ切りにくい(例:たけのこ、ごぼう)
- 果汁が多い(例:桃、梨、柑橘類など)
- 薄くて張り付きやすい(例:のり、わかめ、レタス、薄切りのきゅうり)
- かたさ・弾力がある(例:いか、たこ、練り物、こんにゃく、きのこ類、もち)
- パサパサしてまとまりにくい(例:パン、ふかしいも、ゆで卵、焼魚)
- すすりやすい麺類(例:そば、ラーメン)
- まとまりのない粉や顆粒(例:ふりかけ、きなこ、ごま、佃煮)
- 加熱してもやわらかくならない(例:ナッツ類、桜えび)
- 酸味が強い(例:酢、香辛料、レモン)
作り方について
嚥下調整食はコードによって細かな違いはありますが、作り方の基本として、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 十分なやわらかさになるまでじっくり加熱する
- 火の通りやすさ、食べやすさを考慮した切り方にする(例:隠し包丁を入れる、皮を厚めにむく、繊維を断ち切る、小さく切る)
- 揚げ物に使う食材は下ゆでし、やわらかくしておく
- だし・マヨネーズ・練りごま・豆腐・すりおろし蓮根などを組み合わせることで、やわらかさ・なめらかさを出す
- 口の中でまとまりやすいよう、あんかけ料理にする
- コードにあわせてゼラチン、とろみ剤を適切に使用する

スマイルケア食やUDFにも注目!
嚥下調整食は、丁寧かつ確実に対応しなくてはなりません。ところが、調理工程が複雑だったり、手間がかかったりすることから、現場の負担が増えやすくなります。そういった負担を軽減するには、スマイルケア食やUDFとして認定された市販品の活用もおすすめです。
スマイルケア食
農林水産省が定めた介護食品の規格です。健康維持のために栄養補給が必要な人向けには「青」、かむことが難しい人向けには「黄」、飲み込むことが難しい人向けには「赤」のマークを表示。「黄」は四段階、「赤」は三段階に細かく分かれています。
UDF(ユニバーサルデザインフード)
UDFは、日本介護食品協議会が定めた「食べやすさ」に配慮した規格です。既出の「学会分類2021(食事)早見表」にも表記されている通り、コード1〜4に相当する区分があります。うまく活用すれば、調理工程を減らしたり、食材のコストを抑えたりすることができるでしょう。
現場の負担軽減には嚥下調整食対応の外注サービスが◎

スマイルケア食やUDFを取り入れても現場の負担が大きい場合には、嚥下調整食の対応が可能な外注サービスを検討してみましょう。主な外注サービスは、委託(全面委託・部分委託)と配食の二種類があります。
委託は食材の仕入れや献立作成、配膳などに至るまで、厨房業務を全面的に依頼することもでき、現場の負担はかなり軽減されるでしょう。ただし、委託業者が人手・人材を確保するため、人件費などを含むコストが増大しやすいというデメリットがあります。そのため、業務の一部のみを依頼して、委託のコストを抑える方法もあります。
配食はチルドや冷凍の惣菜・弁当を届けてくれるサービスです。温めるだけで提供できるパターンが多いため、こちらも現場の負担軽減に効果的。しかし、コストが割高になったり、献立がマンネリ化したりすることもあります。
どちらのサービスも、事前のリサーチや見積もり依頼、試食会への参加などを積極的に行い、自施設と相性の良い業者を選ぶといいでしょう。
嚥下調整食の対応はナリコマにおまかせ!

ナリコマの献立サービスは、弊社セントラルキッチンから完全調理済み食品をお届けします。簡単な仕上げをするだけで提供できるため、厨房業務の効率化やコスト削減に効果的。嚥下機能や咀嚼機能が低下した方には、ソフト食・ミキサー食・ゼリー食もご用意しております。普通食のおいしさをそのまま楽しんでいただけるよう、同じ献立を採用。多くの施設さまにてご好評いただいております。嚥下調整食についてお困りでしたら、ぜひ一度ナリコマにご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
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