近年の日本は高齢化が急速に進んでいることから、医療・介護福祉サービスの提供体制を整える動きが強まっています。安定した提供体制に欠かせない要素の一つが、経営面で大きな支えとなる報酬です。医療機関と介護福祉施設が受け取る基本的な報酬は公定価格(診療報酬、介護報酬)が適用されます。いろいろな加算が設けられていることも大きな特徴であり、それぞれ定められた要件を満たして加算を取得すると、収益の増加やサービスの質向上につながります。
今回の記事は、診療報酬における加算の一つ「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」に注目。今後求められる医療体制や多職種連携について詳しく解説し、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の概要をまとめてお伝えします。加算と関連する食事提供のポイントなどもみていきますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
包括的な医療が重視される社会的背景

冒頭でも少し触れたように、日本では高齢化が進み続けており、2040(令和22)年ごろには65歳以上の人口がピークを迎えるとみられています。「高齢社会白書」によると、2024(令和6)年10月1日現在の総人口は1億2,380万人。そのうち65歳以上の人口は3,624万人で、高齢化率は29.3%となっています。2005(平成17)年の高齢化率は20.2%だったため、20年ほどで高齢化が急速に進んでしまったことがよくわかります。
高齢化の背景には、出生数の減少も大きく影響しています。2025(令和7)年の出生数は統計史上最小の67 万 1,236 人となっており、合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む子どもの数)も過去最低の1.14を記録しました。このような少子化の状況が改善されなければ、現役の労働者として社会全体を支える若年層・中年層も減り続けます。つまり、現在運用されている社会保障制度などのしくみ自体が破綻してしまうかもしれないのです。
地域包括ケアシステムが高齢社会の支柱に
医療・介護福祉分野は増加する高齢者からの需要が高まりますが、一方で、少子化が影響する人材不足にも悩まされることになります。厚生労働省は、こうした社会情勢の変化を踏まえ、地域包括ケアシステムの構築を推進。その目的は次のように明記されており、医療機関や介護福祉施設はもちろん、自治体、地域住民なども含めた連携が必要とされています。
「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム」
多種多様な人々の連携を基本とした地域包括ケアシステムは、医療・介護福祉従事者の負担を軽減したり、高齢者の罹患や重症化を防いで医療費・介護費を抑えたりする効果もあります。今後も続いていく高齢社会においては、非常に重要な支柱の一つといえるでしょう。
医療の質を向上させる多職種連携

医療機関における多職種連携は、医師や看護師をはじめとするさまざまな職種のスタッフが協力し、それぞれの専門性を生かした業務を行うことです。このような体制はチーム医療とも呼ばれ、前述した地域包括ケアシステムを支える役割も担っています。
疾患の種類や症状、治療内容などは患者によって異なります。二つ以上の診療科で受診したり、複合手術を受けたりするケースも多いでしょう。専門的な知識・技術を持つスタッフの連携は、そういった複雑な治療の精度を上げたり、医療全体の安全性を高めたりすることにつながるのです。すなわち、患者にとっても大きなメリットがあるといえます。
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算にかかわるチーム医療
次の項目で解説するリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、下記のようなチーム医療(※)と深い関わりがあります。チームの目的、参加する主な職種を簡単にみておきましょう。
※チーム医療の呼称は医療機関によって異なることがあります。
リハビリテーションチーム
日常生活に影響する症状(障害)をケアするチームです。身体的な症状から精神的な症状まで、幅広くサポート。患者ごとに異なる問題を改善・解消し、早期の退院・社会復帰ができるように支えます。
【参加する職種】
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカーなど
栄養サポートチーム(NST)
疾患や治療状況(処置・手術などを含む)を踏まえ、患者にとって最適な栄養摂取・栄養管理の方法を提案するチームです。退院後にも良好な食生活や栄養管理を続けられるようサポートします。
【参加する職種】
医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、歯科衛生士など
摂食・嚥下支援チーム
摂食・嚥下機能に問題がある患者にあわせ、最適な食形態、嚥下訓練の方法などを提案するチームです。機能を回復・改善させることで食事が楽しめるようになるのはもちろん、QOLの向上にもつながるようサポートします。
【参加する職種】
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、言語聴覚士(ST)、歯科衛生士など
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算とは

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、2024(令和6)年度の診療報酬改定で新設されました。主な目的は、急性期病棟で起こりやすい医原性の寝たきり状態を防ぐこと。多職種連携によってリハビリテーション、栄養管理、口腔管理が一体的に実施できる体制を評価します。本加算の新設により、従来のADL維持向上等体制加算は廃止となりました。
また、2026(令和8)年度の診療報酬改定では施設基準や区分などが変更に。一部の算定要件を緩和し、より多くの医療機関が加算を取得しやすくなりました。では、令和8年6月現在における概要をみておきましょう。
加算の区分番号と対象病棟
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、複数の区分番号があり、それぞれ対象となる病棟が決まっています。
- A233……急性期病棟、特定機能病院入院基本料・専門病院入院基本料を算定する病棟
- A304……地域包括医療病棟
- A308-3……地域包括ケア病棟
加算の算定要件
区分ごとに異なる算定要件の基本をまとめると、以下のようになります。スタッフの配置やリハビリテーションの実施割合など、かなり細かい要件が設けられているため、加算を取得するには十分な確認をとってから体制を築くことが重要です。
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リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の算定要件(概要) |
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区分 |
A233 |
A304 |
A308-3 |
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加算1 |
加算2 |
加算1 |
加算2 |
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専従・専任 配置 |
専従の療法士1名 専任の療法士1名 専任の管理栄養士1名 |
病棟の配置職員のみ (療法士 専従2名、管理栄養士 専任1名) |
専任の管理栄養士1名 + 病棟の配置職員 (療法士 専従1名) |
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専従者の 兼務規定 |
専従者は、他の業務の専従者との兼務は不可 |
◆専従者は、原則他の業務の専従者との兼務は不可
◆チームにかかわる加算の専従者との兼務は可能 |
病棟内の入院医療管理料を算定する病床の専従者との兼務可 |
◆病棟内の入院医療管理料を算定する病床の専従者との兼務可
◆入院医療管理料の場合、病棟のリハ栄養口腔体制加算との兼務可 |
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業務内容 |
◆48時間以内の評価 ◆リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の評価と計画についての定期カンファレンス ◆口腔管理を提供する体制と歯科診療との連携体制(望ましい要件) ◆指導内容を診療録に記録 |
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3日以内 リハ実施割合 |
疾患別リハを実施した患者のうち、 3日以内に開始した患者が8割以上 |
入棟患者のうち、3日以内に開始した患者が6割以上 |
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休日リハ 実施割合 |
8割以上 |
7割以上 |
8割以上 |
7割以上 |
7割以上 |
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ADL 低下割合 |
3%未満 |
5%未満 |
3%未満 |
5%未満 |
要件なし |
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褥瘡 |
2.5%未満 |
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疾患別リハの 算定制限 |
専従・専任:9単位まで |
専従:6単位まで |
× (病棟の専従者のため算定不可) |
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点数 (14日間) |
150点 |
90点 |
110点 |
50点 |
30点 |
ケアの充実につながる食事提供のポイント

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算には、毎日の食事も深く関係しています。加算の取得にはケアを充実させることが重要ですが、食事提供においても押さえておきたいポイントがあります。
ポイント①適切な食形態の選択
摂食・嚥下機能が低下している患者には、一般食ではなく、嚥下調整食を提供します。ミキサー食、ゼリー食、ペースト食、ムース食など、幅広い種類の中から適切な食形態を選択し、確実に対応することが重要です。咀嚼・嚥下訓練(リハビリテーション)として活用できるほか、誤嚥性肺炎の予防としての役割もあります。
嚥下調整食を提供する際、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が公表している分類方法を参考にする医療機関も少なくありません。スタッフ同士で共有できる基準を設けることで、食事の品質安定や提供ミスの防止などにつながります。
ポイント②ADLの維持に必要なエネルギー・栄養摂取
加算の算定要件にあるように、ADL(日常生活動作)の維持も重要なポイントです。体を健やかに保ち、スムーズに動かすために必要なエネルギー、栄養がとれる献立作成が求められます。嚥下調整食を提供する場合、特に食事量の減少や低栄養に注意しなければなりません。低栄養は筋力・筋肉量の低下をはじめ、さまざまな心身の不調を引き起こします。
ポイント③食欲増進につながる工夫
食形態を適切に選び、エネルギーや栄養価のバランスを整えたとしても、患者本人の食欲がなければきちんと食べてもらうことができません。食事の盛り付けや彩り、香りなどにもこだわることで、食欲増進が期待できます。また、可能な範囲で行事食を楽しんだり、好きな献立を選んだりできる環境を整えるのも効果的でしょう。
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