褥瘡を防ぐには、日頃の予防と、発生時の速やかな対策が重要です。また、予防と改善には栄養状態も深く関わっています。この記事では、DESIGN-Rと栄養介入による褥瘡改善に視点を当て、評価ツールを活用しながら、たんぱく質補給などの食事からの褥瘡予防に取り組むうえでの実践ポイントを解説します。
目次
褥瘡予防・評価に役立つスケール

褥瘡は、外部からの圧迫や活動性の低下、栄養状態の不良、皮膚の湿潤などのさまざまな要因が重なることで発生します。褥瘡を発生させないためには、日頃の予防的ケアと発生後の速やかな対処が大切です。ここでは、褥瘡の予防や対策に効果的な、状況に応じたスケールの活用について解説します。
褥瘡はまず予防から!日頃のアセスメント方法
褥瘡は、発生しないようにすることが最も重要です。日頃から予防に取り組むうえでは、発生の予測もポイントです。褥瘡の発生を予測して適切な対策を行うためには、以下のようなスケールを活用したリスクアセスメントが役立ちます。
- ブレーデンスケール:褥瘡予防で一般的によく使用されるスケール
- OHスケール:寝たきりの高齢者向けのスケール
- K式スケール:入院している寝たきりの高齢者向けのスケール
- 厚生労働省危険因子評価表:厚生労働省の「褥瘡対策に関する診療計画書」に含まれるスケール
個々のスケールによって評価の項目が異なるため、目的や対象者の状態に応じて適切なスケールを選択することが大切です。また、栄養介入の視点では、栄養状態に関する項目にも注目してみましょう。上記の中では、OHスケールを除いていずれも栄養に関する項目が含まれています。一方で、OHスケールには、骨の突出や浮腫などの項目が含まれており、栄養状態の把握に役立ちます。

褥瘡の状態を評価する「DESIGN-R」
DESIGN-Rは、褥瘡状態の判定に使用するスケールで褥瘡発生後に役立ちます。褥瘡は予防していても発生することがあるため、発生後には状態を正確に把握し重症化を防ぐ対策が重要です。
DESIGN-Rは、日本褥瘡学会が開発したスケールで、2002年に発表された「DESIGN」を経て、2008年に「DESIGN-R®」として公表されました。その後も項目の追加などの改定が行われ、世界的にも高く評価されているツールです。以下は、DESIGN-Rの評価方法の項目と特徴です。
DESIGN-Rの評価方法
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DESIGN-Rの主な項目 |
特徴 |
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Depth(深さ) |
発赤なしから、深部損傷褥瘡の疑いや深さの判定が不能な状態まで、8段階で評価する。 |
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Exudate(滲出液) |
滲出液なしから多量まで4段階で評価する。 |
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Size(大きさ) |
皮膚損傷範囲を測定し、7段階で評価する。 |
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Inflammation/Infection (炎症/感染) |
局所の炎症徴候なしから全身的影響ありまで5段階で評価する。 |
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Granulation(肉芽組織) |
創が治癒した場合や浅い場合などから、良性肉芽の占める割合、良性肉芽が全く形成されていない場合まで、6段階で評価する。 |
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Necrotic tissue (壊死組織) |
壊死組織の有無や状態を3段階で評価する。 |
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Pocket(ポケット) |
潰瘍面も含めたポケット全周から潰瘍面の大きさを差し引いた大きさを、5段階で評価する。 |
Depth(深さ)の点数は合計には含めず、Depth(深さ)以外の点数を合計します。深部損傷褥瘡(DTI)や深さの判定が不能な状態は点数ではなくアルファベットのみです。
褥瘡の原因と低栄養との関係

褥瘡は床ずれともいわれ、長時間同じ部分が圧迫されることや、摩擦、ずれなどによって引き起こされます。圧迫されることによる血行不良や栄養が届かないことなどが影響し、皮膚がただれたり、傷ができたりしますが、皮下組織や骨にまで損傷が及ぶなど状態は個々に異なります。ここでは、褥瘡の原因と栄養状態の関連について解説します。
褥瘡のリスクと予防方法
褥瘡の原因には、次のような状態が影響します。
- 身体が不自由で姿勢を変えることが難しい
- 皮膚が弱くなっている
- 皮膚が湿っている
- 骨が突出している
- 栄養状態が低下している
- 薬の副作用で免疫力が低下している
例えば、寝たきりの状態や、車いすに座ったままの生活など、姿勢を変えることが難しいと褥瘡になりやすいです。仙骨部分や尾骨、かかとなど、骨が突出した部分は強い圧迫により褥瘡ができやすいのが特徴です。ベッドで上半身を上げた際に身体がずれることや、汗や排泄物などで皮膚が湿っている状態が長いことも影響します。また、このような外部からの直接的な影響だけでなく、低栄養状態も褥瘡の治癒を妨げる原因の一つとして重要視されています。
褥瘡の予防と改善には、以下のポイントに気を付けると効果的です。
- 定期的に体位変換を行う
- 体圧を分散させる用具を取り入れる
- スキンケアで皮膚を保護する
- 低栄養を回避する
低栄養予防・改善が褥瘡改善につながる
褥瘡の発生原因は複数ありますが、褥瘡が発生するときに低栄養状態になっていることは珍しくありません。一般的に身体が傷を治す際には栄養素が必要です。褥瘡についても同様で、栄養が不足していると、体に自然に備わっている修復力が上手く働かないことがあります。
そのため、その他のケアを行っていても十分な効果を感じられない場合はとくに、栄養素の摂取を意識すると効果的です。経口摂取を基本に、口から食べることが難しい場合には経管栄養や静脈栄養などの最適な方法を利用し、褥瘡治癒に役立つ栄養素を取り入れることで改善が期待できます。
栄養素を意識した食事からの褥瘡予防

日々の食事で栄養素の摂取を意識し低栄養を予防することで、褥瘡の予防や改善につながります。褥瘡の予防と治療に関する研究では、栄養介入によって褥瘡の治癒速度が増し、大きい褥瘡の方が栄養介入による治癒効果が期待できるといった結果も報告されています。
とくに褥瘡では、皮膚をつくる材料となるたんぱく質や亜鉛などの栄養素が重要です。以下は、褥瘡予防や改善に関わる栄養素の例です。
- たんぱく質
- 亜鉛
- 鉄
- ビタミンA
- ビタミンC
食事では、エネルギー量も重視したいポイントです。エネルギーが不足すると体内のたんぱく質が分解されてエネルギー源として使われてしまうため、褥瘡の治癒には十分な量のエネルギーが必要です。栄養バランスの良い食事や栄養補助食品などを取り入れ、基礎疾患なども考慮しながら、個々の体調や体質に合わせた栄養管理が役立ちます。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 褥瘡の予防と治療に関する研究 1)栄養介入の効果の検討、2)保護機材の効果の検討 2010年
褥瘡予防に向けた栄養介入の実践ポイント

褥瘡の予防や改善では、スケールを活用したリスクアセスメントや、DESIGN-Rによる評価などでその都度状態を把握するとともに、適切な栄養管理で低栄養を予防することが大切です。ここでは褥瘡の治癒に関連する栄養介入の実践ポイントをまとめました。
栄養評価ツールを活用する
栄養管理においても、以下のような栄養評価ツールの活用が役立ちます。
- MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form):アセスメントの前段階で使う高齢者向けのスクリーニングツール
- CONUT(Controlling Nutritional Status):低栄養を判断する要素の一つであるアルブミン値などをスコア化できるツールで栄養スクリーニングにも役立つ
- SGA(Subjective Global Assessment):体重や食事摂取量の変化などの主観的かつ包括的な評価で低栄養を発見しやすいアセスメントツール
- MNA(Mini Nutritional Assessment):MNA-SFより詳細に栄養状態を評価するのに役立つ高齢者向けのアセスメントツール
栄養スクリーニングツールで低栄養リスクのある対象者を抽出し、栄養アセスメントツールでより詳しい栄養状態の評価が可能です。これらのツールを活用し、栄養管理と褥瘡予防につなげていきましょう。
栄養管理プロセスを意識する
褥瘡予防・改善に向けた栄養管理では、栄養スクリーニングや栄養アセスメントによって得た情報を基に、必要な栄養量を適切な補給方法で提供します。さらに、定期的なモニタリングと評価を行い、状態に応じて内容を調整しながら継続していきます。
栄養管理では、国際的な基準である「栄養管理プロセス」を参考にするのも役立ちます。栄養管理プロセスの主な流れは以下の通りです。
1. 栄養アセスメント(栄養状態を評価する)
2. 栄養診断(栄養状態を判定する)
3. 栄養介入(栄養補給・栄養教育・栄養カウンセリング・栄養ケアの調整などを行う)
4. 栄養モニタリング・評価
栄養管理プロセスは、栄養管理の手法の標準化に役立つため、共有しやすいメリットがあります。栄養問題を整理して捉えやすくなる点も特徴です。
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