たくさんの高齢者をケアする介護施設や病院では、介護食の存在が欠かせません。毎日の食事で栄養をとることは大切ですが、高齢者は咀嚼する力や飲み込む力(嚥下機能)のレベルに個人差があるため、次のような種類の介護食を提供する必要があります。
・きざみ食
・ソフト食(軟菜食)
・ムース食
・ミキサー食
・ペースト食
・ゼリー食
・流動食
また、ユニバーサルデザインフード、スマイルケア食、嚥下調整食学会分類などは、職員同士で共有できる介護食の基準です。食事の対応が標準化されるため、品質の安定化に有効。高品質の介護食は、誤嚥などの事故を防ぎます。個別で最適な介護食を提供し、安全に食事をしてもらうことは、介護施設や病院において非常に重要です。種類ごとの特徴や調理方法、注意点などを十分に理解し、より良いケアにつなげましょう。
目次
介護食が必要とされる理由

介護食を導入する主な目的は、高齢者の誤嚥を防ぐこと。誰しも高齢になれば咀嚼する力は衰えていき、食べ物を食道や気管に詰まらせる恐れがあります。厚生労働省が実施した人口動態調査の結果によると、誤嚥性肺炎は主な死因の第6位に入っており、全体の4.1%を占めています。令和7年の死亡者数(人口10万対)は6万4,396人となっており、令和6年の6万3,667人から700人ほど増加。今後はさらに高齢化が進むとみられているため、誤嚥性肺炎の発生は多くなるかもしれません。
このようなデータからも推測できるように、介護施設や病院で提供される介護食は「誤嚥性肺炎の予防」という役割を担っているのです。食事療養において万一の事故が起これば、利用者や患者にも大きな不安が残ります。そういった不安を感じず、安心して過ごしてもらうためにも非常に重要な点といえるでしょう。食事の時間が楽しみになると、QOL向上につながるメリットもあります。
介護食の種類・特徴を一覧表でチェック

続いて、介護食の主な種類・特徴を表でまとめてみました。
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介護食の種類 |
調理の基本 |
咀嚼・嚥下のレベル |
見た目・食感 |
注意点・調理のポイントなど |
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きざみ食 |
・食材を約5mm〜2cmに細かく刻む |
・咀嚼する力が弱っている |
・介護食の中では、最も普通食に近い |
・飲み込む力が弱い方は、誤嚥の可能性がやや高まる |
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ソフト食 (軟菜食) |
・食材が歯茎や舌でつぶせる程度にやわらかくする |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・きざみ食は難しい |
・見た目は普通食に近い |
・細かく刻んだり、すりつぶしたりする手間はない ・食材ごとに分けて、丁寧に調理する必要がある |
|
ムース食 |
・食材をミキサーにかけ、固め直す |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・口の中で食べ物がまとまりにくい |
・固める際の形によって、おいしそうな見た目に仕上げることができる |
・ソフト食の一種として扱われることも多い ・少しでも咀嚼できる場合の選択肢として有効 ・調理の手間がかかる |
|
ミキサー食 |
・食材(料理)をミキサーにかけ、なめらかなポタージュ状にする |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・きざみ食やソフト食が難しい |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・水分量が多ければ、適宜とろみをつける ・彩り良く仕上げると食欲増進につながる ・攪拌前の食材(料理)について、実物や写真などで説明する |
|
ペースト食 |
・食材をミキサーにかけ、しっかりとすりつぶす |
・咀嚼する力と飲み込む力が弱っている ・ミキサー食では誤嚥する可能性がある |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・基本はミキサー食と同じだが、水分量が少ない ・ペースト状で粘度があるため、誤嚥しにくい ・彩り良く仕上げると食欲増進につながる ・攪拌前の食材(料理)について、実物や写真などで説明する |
|
ゼリー食 |
・食材をミキサーにかけ、ゼラチンや寒天などで固める |
・咀嚼する力がかなり弱っている |
・本来の食材や普通食とは大きく異なる |
・型抜きして、もともとの食材に似せると食欲増進につながる |
|
流動食 |
・固形物をこして、液体状にする(経口摂取の場合) |
・咀嚼する力と飲み込む力だけでなく、消化する力も弱っている |
・液体状 |
・具体例として、具材なしのスープ、重湯、ヨーグルトなどがある ・経管摂取する場合の流動食は、専門的な栄養剤などが選択される |
ミキサー食の作り方と注意点

ミキサー食は一般家庭でも準備することがありますが、特に難易度が高いともいわれる介護食です。本項目では、ミキサー食の作り方と上手に作るための注意点をまとめてみました。
ミキサー食の作り方
ミキサー食を作るときの基本工程は非常にシンプルで、その名の通り、食材をミキサーに入れて攪拌すること。一般的なレシピでは、攪拌が終わった食材を水や出汁で薄めて仕上げます。
ミキサー食の注意点①攪拌しやすい食材を使う
ミキサーでの調理は、向いている食材と向いていない食材があります。ほうれん草や小松菜といった葉物野菜の穂先、でんぷん質の多いイモ類や豆類などはミキサーにかけやすい食材です。料理でいうと、肉じゃがやシチューなどの煮物も攪拌しやすいものに含まれます。反対に、弾力のあるキノコ類やこんにゃく、繊維質が多い野菜、脂肪分が少ない魚肉や赤身肉はミキサーでの調理におすすめできません。
ミキサー食の注意点②粘度と水分量は嚥下機能に合わせる
ミキサー食は、粘度や水分量も注意しなければなりません。水分が多いと誤嚥が起きやすく、粘り気が強すぎると喉に張り付いてしまいます。とろみをつける場合は片栗粉や葛を使いますが、市販のソースやタレ、ドレッシングなどで和えるのもおすすめです。食べる方の嚥下機能にあわせて調整しましょう。
ミキサー食の注意点③見た目にこだわる
先にまとめた一覧表の通り、ミキサー食は見た目がドロドロのポタージュ状になります。ムース食やゼリー食、ペースト食以上に、おいしそうな見た目に仕上げるのが難しいといえるでしょう。一覧表では彩りの良さや事前説明などが食欲増進につながることをお伝えしましたが、お皿の形や色でおいしそうに見せたり、調味料を盛り付けの最後に加えたりするのもいいでしょう。
介護食の提供に関して、明確な基準はある?

介護食はさまざまな種類がありますが、安全性も重視する介護施設や病院では安定した品質で提供することも大事なポイント。品質の安定化には、職員同士が共有できる基準も必要です。広く認知されている基準として、以下の三つが挙げられます。このような基準を参考にすることで、介護食の品質と安全性向上につながります。
介護食の参考基準①ユニバーサルデザインフード(UDF)
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、日本介護食品協議会による市販品の規格です。冷凍食品やレトルト食品などの加工食品だけでなく、介護食の調理に欠かせないとろみ調整食品などがあります。規格に適合した食品のみ、パッケージに専用マークが付けられています。
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ユニバーサルデザインフード(適合食品の区分) |
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区分 |
かむ力の目安 |
飲み込む力の目安 |
かたさの目安 |
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1. 容易にかめる |
かたいものや大きいものは、やや食べづらい |
普通に飲み込める |
普通食よりも少しやわらかい食品 |
|
2. 歯ぐきでつぶせる |
かたいものや大きいものは食べづらい |
ものによっては飲み込みづらいことがある |
歯ぐきでつぶせるくらいにやわらかく調理された食品 |
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3. 舌でつぶせる |
細かくてやわらかければ食べられる |
水やお茶が飲み込みづらいことがある |
舌でつぶせるくらいやわらかく、細かく調理された食品 |
|
4. かまなくてよい |
固いものは小さくても食べづらい |
水やお茶が飲み込みづらい |
そのまま飲み込める形状、ペースト状などの食品 |
|
【UDF拡張規格】 そのままの状態では「容易にかめる」〜「かまなくてよい」のかたさに当てはまらないが、水分や温度など食事の際に条件が加わることで、各区分のいずれかと同程度の食べやすさになるもの |
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ユニバーサルデザインフード(とろみ調整食品の区分) |
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とろみの状態 |
目安 |
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薄いとろみ |
さらっとした状態 (強いまとまりはなく、軽くとろみがついた状態) |
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中間のとろみ |
程よいとろみがついた状態 (スプーンですくうとトクトクと流れる状態) |
|
濃いとろみ |
しっかりとしたとろみがついた状態 (傾けてもゆっくり流れ、形が保たれやすい状態) |
|
非常に濃いとろみ |
形が崩れにくく、しっかりまとまる状態 (ポタッ、またはズシリと落ちる状態) |
介護食の参考基準②スマイルケア食
スマイルケア食は、農林水産省による規格です。ユニバーサルデザインフードと同様、市販品が対象。咀嚼する力や飲み込む力だけでなく、栄養補給についても盛り込まれているのが大きな特徴です。
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識別マーク |
詳細 |
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青 |
かむこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品 |
||
|
|
黄 |
5 |
容易にかめる食品 |
かむことに問題がある方向けの食品 |
|
4 |
歯ぐきでつぶせる食品 |
|||
|
3 |
舌でつぶせる食品 |
|||
|
2 |
かまなくてよい食品 |
|||
|
|
赤 |
2 |
少し咀嚼して飲み込める性状のもの |
飲み込むことに問題がある方向けの食品 |
|
1 |
口の中で少しつぶして飲み込める性状のもの |
|||
|
0 |
そのまま飲み込める性状のもの |
|||
介護食の参考基準③嚥下調整食分類2021
介護施設や病院などにおいて、介護食は嚥下食や嚥下調整食と呼ばれることもあります。日本摂食嚥下リハビリテーション学会による「嚥下調整食学会分類」では、コード名で細かく分類されており、ユニバーサルデザインフードをはじめとする他の分類との対応についても記載されています。
|
学会分類2021(食事)早見表 |
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コード |
名称 |
形態 |
目的・特色 |
主食の例 |
必要な咀嚼能力 |
他の分類との対応 |
|
|
0 |
j |
嚥下訓練食品 |
◆重度の症例に対する評価・訓練用 |
◆重度の症例に対する評価・訓練用 |
– |
(若干の送り込み能力) |
◆嚥下食ピラミッド L0 |
|
t |
嚥下訓練食品 0t |
◆均質で、付着性・凝集性・かたさ配慮にしたゼリー |
◆重度の症例に対する評価・訓練用少量ずつ飲むことを想定 |
– |
(若干の送り込み能力) |
◆嚥下食ピラミッド L0の一部(とろみ水) |
|
|
1 |
j |
嚥下調整食1j |
◆均質で、付着性、凝集性、かたさ、離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの |
◆口腔外で既に適切な食塊状となっている |
おもゆゼリー、ミキサー粥のゼリーなど |
(若干の食塊保持と送り込み能力) |
◆嚥下食ピラミッド L1-L2 |
|
2 |
1 |
嚥下調整食2-1 |
◆ビューレ・ペースト・ミキサー食など、均質でなめらかで、べたつかず、まとまりやすいもの |
◆口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの |
「粒がなく、付着性の低いペースト状のおもゆや粥 |
(下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) |
◆嚥下食ピラミッド L3 |
|
2 |
嚥下調整食2-2 |
◆ビューレ・ペースト・ミキサー食などで、べたつかず、まとまりやすいもので不均質なものも含む |
◆口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの |
やや不均質(粒がある)でもやわらかく、離水もなく付着性も低い粥類 |
(下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) |
◆嚥下食ピラミッド L3 |
|
|
3 |
嚥下調整食3 |
◆形はあるが、押しつぶしが容易、食塊形成や移送が容易、咽頭でばらけず嚥下しやすいように配慮されたもの多量の離水がない |
◆舌と口蓋問で押しつぶしが可能なもの |
離水に配慮した粥など |
舌と口蓋間の押しつぶし能力以上 |
◆嚥下食ピラミッド L4 |
|
|
4 |
嚥下調整食4 |
◆かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどのないもの |
◆誤嚥と窒息のリスク配慮をして素材と調理方法を選んだもの |
軟飯・全粥など |
上下の歯槽堤間の押しつぶし能力以上 |
◆嚥下食ピラミッド L4 |
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学会分類2021(とろみ)早見表 |
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項目 |
段階1 薄いとろみ 【II-3項】 |
段階2 中間のとろみ 【II-2項】 |
段階3 濃いとろみ 【II-4項】 |
|
英語表記 |
Mildly thick |
Moderately thick |
Extremely thick |
|
性状の説明 (飲んだとき) |
「drink」するという表現が適切な程度の口に因ると口腔内に広がる液体の種類・味や温度によっては、とロミが付いていることがあまり気にならない場合もある飲み込む際に大きな力を要しないストローで容易に吸うことができる |
明らかにとろみがあることを感じ、かつ「drink」するという表現が適切なとろみの程度口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらない舌の上でまとめやすいストローで吸うのは抵抗がある |
明らかにとろみが付いていて、まとまりがよい送り込むのに力が必要スプーンで「eat」するという表現が適切なとろみの程度ストローで吸うことは困難 |
|
性状の説明 (見たとき) |
スプーンを傾けるとすっと流れ落ちるフォークの歯の間から素早く流れ落ちるカップを傾け、流れ出た後には、うっすらと跡が残程度の付着 |
スプーンを傾けるととろとろと流れるフォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちるカップを傾け、流れ出た後には、全体にコーティングしたように付着 |
スプーンを傾けても、形状がある程度保たれ、流れにくいフォークの歯の間から流れ出ないカップを傾けても流れ出ない(ゆっくりと塊となって落ちる) |
|
粘度 (mPa・s) 【II-5項】 |
50-150 |
150-300 |
300-500 |
|
LST値 (mm) 【II-6項】 |
36-43 |
32-36 |
30-32 |
|
シリンジ法による 残留量 (ml) 【II-7項】 |
2.2-7.0 |
7.0-9.5 |
9.5-10.0 |
※「日摂食嚥下リハ会誌25(2):135–149, 2021」または日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ内の「嚥下調整食学会分類2021」を必ずご参照ください。
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